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ふっと目が覚めて、腹減ったなって、キッチンで冷蔵庫を漁ってたら背中に熱がくっついた。

「なんでベッドいないの……、」
「なんか腹減って、つか2分前までベッドいたよ。」
「起きたらいないの寂しい。」

寝起きのキスと。寝ぼけた濡れっぽい目。エロいなーって。腰を撫でるとびくり。すこーしずつ意識はっきりして。顔が赤くなってく。

「……す、いません、」

それは何に対するすみませんなんだか。

「寂しかったの?」

コクリ。ぎゅーって胸に顔がうずまる。かわいいね。今日も。素晴らしくあざとい。首筋にキスしてやるとへらぁって笑った。

ウーバーするか、外で飯食うか、ベッドでイチャつくか、どっか遊びに行くか、ゲームするか。選択肢は色々ある。

「腹へんね?」
「確かに、」
「声ちょっと枯れてんね。喘ぎすぎたな。」
「喉痛いです、」
「ヤリまくったもんな、ハウスキーパー頼んで外食い行くか。ベッドも風呂も掃除すんのだりーわ。」

昨日着てきた服着ようとするから服貸してやると匂い嗅いでた。

「蓮さんの匂い、」
「ちょいデカいけど大丈夫だろ。お前にはもちょっとさらっとしたの着せたいけどな。」

俺の声聞こえてないぐらい喜んで鏡見ていた。服がちょこっとデカいせいで首元の痕が目立つ。胸元を整えてやるけど動くとすぐ見えるようになってしまう。いいか。俺のだし。

女に対する癖みたいなやつで、腰を抱いたりしがちだけど。たまに思ったら手を繋いでみたり。人通りの多いところでは少し離れるけど、飲んだら大体どっか触れてる。

いつもどっかに抱き痕が残ってて、全身俺が選んだものを身に付けさせて、ちょっとずつ俺が悠を変えていく。

バーで散々弄り倒してたらぱっと意識を失ってしまって。服を着せて隣に寝かせておくと悠の方の連れが話しかけてくる。

「蓮さんって悠とどうやって知り合ったんですか?」

痴漢したっていうのは流石の俺でも恥じらわれた。

「まぁ、ヴァロで、」
「あぁ、ゲームのほうか……だから色々知らないのか、」
「色々?」
「いや、最近悠ストーカー?みたいなのにあってて、」
「は?」
「喧嘩負けてんの見たことないからそんな心配する必要はないんっすけど、それがすっげーきめぇやつで。大学で土下座して抱けって言ったり、悠の服で講堂オナったり、まじでやべーやつだから、まぁちょっと気をつけた方がいいかもしんないっすね。」
「男?」
「まぁ、ヤリサーのメンバーっすよ。悠とヤリたくて入ったけど何十万払っても男は無理ってぶん殴っちゃって。それからずーっと付き纏ってたんっすけどこの前蓮さん大学に迎えきたじゃないっすか。それでなんでだってなったっぽくってエスカレートして。」
「まて。こいつマジで男無理なの?まず女とセックスできんの?」

女より抱かれるためみたいな身体してんのに?言葉だけでイキまくりなのに?悠以外に男なんて抱いたことないから知らないが、こんな全身性感帯みたいなやつが、女抱けんのか信じられない。あんななよなよして俺の前じゃ箸だって持てなそうなほど弱っちいのに。

真実なんだろう。こいつらの言葉は。でも目の前に突きつけられた現実が信じられないのだ。最近ヤリすぎて上手く勃たないと。中じゃないとイケないと。一人じゃ奥届かないとかビデオ通話で泣いてたのに。

男に手出しまくりの淫乱なら信じるんだよ。正直若干納得ぐらいの勢いなのだが。

「蓮さんの前じゃ別人なんですよ。本性隠してるのか、惚れたらあっちが本性なのか知らないっすけど、悠って言ったら大学じゃ伝説ですよ伝説。女に金貢がせるだけ貢がせて大学辞めさせたり、講堂でセックス講座って言いながら乱行パーティー始めたり、悠に入れ込んで風俗落ちした女から消費者金融たらい回しになってる女一人や二人じゃないですからね?高校なんてクラスメイトに手出しまくって女同士で刺し合いの喧嘩になって警察沙汰になったりしてんですよ。」
「マジで言ってんの?」
「マジですよマジ。今は受け取ってるか知りませんけど悠には金持ってくるだけの女が何十人といるんですよ。中学は知りませんけどね。地方の高校だの大学に行った女が悠の口座に会えもしないのに毎月バカみたいな金振り込んで数分の電話で永遠とか誓ってんですよ。」
「こいつユニクロばっか着てっけど。」
「いらないって言ってのに渡してくるんだそうで。相手男だったら万札ドブに捨てますからね。鳥肌たった。キモいから死ねって。」
「し、信じらんねー。」
「信じらんないのは俺らっすよ。好きとか。言うんだって感じだよな。」
「それな……、笑うんだなって思った。」
「でもこの前ウケましたよ。一人でイケないって顔面蒼白にして。俺らに相談してきましたからね。蓮さんの電話で勃起して喜んだり。忙しいっすからね。」

それ聞くといつもの悠なんだが。

「こいつの身体マジでおもれぇんっすよ。触っていいっすか?」
「え?あぁ、別いいけど。」

悠の先輩だという男が悠の身体に触れて、慣れた手つきで乳首に触れる。俺が触れたらすぐに喘ぎ出す悠が寝続けたまま、なんの反応もしない。本当にぴくりとも反応しない。

「ちなみにガチで悩んでますからね。AV見ても女に触られてもやべー薬飲んでもイケないって。」
「イケないねぇ。」

催眠なんてできないんだけどね。俺。こんな話聞くと騙されてんのかなって気持ちになるわけで、悠の浅い喉仏を撫でる。ぴくり。

本性か。

こいつらの変な話聞いて、意味わかんない気分になって、悠の首を両手で包んだ。えってドン引きした声が背後で聞こえるから、無視してゆっくり圧迫する。

眠りの中の深い呼吸ができなくなって、つーって涙が伝って、上手く声も出せない中で目が開いて視線があった。少しびっくりした様子で声が出せずに口がはくはくっと動く。

息ができなくて赤くなる顔。相変わらずエロい。何もかも。全身。それこそ女誑かしまくってるだけあるって話だ。

「悠。」
「っ……ぁ゛、」
「女貢がせて、飛ばせたって本当?」

何言ってるのって顔。ぶっちゃっけ。俺が知らないこいつを、どう頑張っても見れない不満だ。俺の知ってる悠をこいつらが知らないのと同時に。こいつらの知ってる悠を俺は知らないのだ。

「日々のあざといエロい俺を誑かす悠は演技?」
「ぃ゛……っぅ……!」
「なんで1人でイケなくて悩むんだよ。」
「ぅ゛ぁ……、」
「俺以外とセックスしないだろ。一生。なんの問題もないだろ。」
「っ゛~~~~!」
「このままイってみ?」

1人じゃ勃起できないらしいちんこが勃起して。びくんって身体が跳ねて。ズボンの上からちんこに触れてた足がむわっとあったかくなる。手を離すとむせて、声が出せなさそうだった。

「ごほっ……けほっ……、」

SMってのはお互いの同意の元で、安全な状況でやるのがルールだ。酒なんて入ってるときにやっちゃいけない。ましてやDV騒ぎで一回炎上してる俺がやるやつなんて危なっかしくて仕方ない。

くっきり手で締められたのが痕になって。顔色が悪い。息がうまくできなくて過呼吸になりかけてる。生理的に溢れた涙を指で掬って、呼吸がうまくできないのにキスをする。

「苦しいな。」
「っ……はぁっ、ぁっ、」

さっきも散々イカせたからパンツがびちょびちょなのは前からとして、この状況でがちがちに勃起してるのはすげーよ。

がっとズボンを下げるとゴムもしないで生で出しまくったのが尻からとろとろ溢れ出してた。ひくひく興奮したように呼吸のたびに動いて。

「もっかいする?」
「はぁ……ん、ぁっ♡ァっ……するっ♡」

ふらふらした身体で足を開いて指先で入口を主張する。バーの客も店員も盛大にドン引き。やべーことしてるって自覚はあるわけよ。飲みすぎてる自覚あるし。仕事じゃないと酔いやすい。勃たないくらい飲んだはずなのに、ばっきばき。客とヤルときなんて勃たせんの必死だってのに。猿みたくセックスのことで頭がおかしくなる。

「ははっ……♡一生誰も抱けなくなろうな。1人でオナニーもできなくて。俺以外の男にハメられてもイケなくて。そんな身体を誇れよ。悠もそれを望めよ……なぁ?」
「んっ……♡蓮さん、だけっ♡っ……♡俺っ、れんさんしか興味、」

知ってる。余裕で。知っているに決まっている。24時間いつかけても電話出て。何時呼び出しても飛んできて。服から美容室、香水、ピアス、メイク道具、下着の色まで、まじで全部。俺が渡したものだけで徹底してて。疑ったりしない。

そもそもこんな全身抱き痕だらけのやつ男も女も萎えるに決まってる。

だから、つまりそういうことを言いたいんじゃない。ぴったりと入口にがっちがちに勃起したちんこをくっつける。

「っ……♡ぁっ、いれって♡」
「入れてもいいけどイっちゃダメだよ。」
「っぁ……♡な、なん……ンン゛ぁっああ♡」

ゆっくり。ゆっくり。待ち望んでる中に入れてやる。ひくひくイき続けてるみたいに中が痙攣するけど。イけてない。ぼろぼろ泣いてる。

可愛い。可愛い。可愛い…ほんっとに可愛い。首絞められて過呼吸になってもイケるのに、俺がダメって言ったらハメたってイケない。腹の奥。どろどろしたヘドロみたいに汚い欲が。恐ろしいくらい満たされる。

入ったり出たり。ゆっくりピストン運動して。俺が中で達して。ゆっくり抜けると。悠はガチ泣きだった。

「うっ……ぁっ、ひどいっ……、」

バーの硬いソファで体を丸くして喉をひくつかせて泣く。泣く。逃げてった身体をもう一回引き寄せて背中に噛み付くとぐぅっと仰け反ってまた情けなく喘いだ。

「嫌?」

俺の一言にぐぅっと身体は一瞬強張って。でも。

「……や、じゃない、」

涙で掠れた声で返事する。

「好き……、」
「どこが?ひどいとこばっかだよ。」
「うぅ……ぜんぶ。ぜんぶすき……、」

涙でぐちゃぐちゃ。でも可愛い顔。のろのろ起き上がって、俺の身体の上に乗ってくる。ちんこに唇近づけて。上達しまくったフェラをしてくる。

「もっ♡……勃たない……?」
「飲みまくってるからなぁ……、」

ぐすぐす泣きながら。でも超うまいわけよ。誰より。初めから下手じゃないんだけど、もう練習してこいって言ったからレベチ。勃たないやついないってレベル。

ゆっくり勃ってきて、ある程度硬くなると悠は自分で腰を上げて、自分の身体の中に入れていく。悠の身体の中。どんな女より。エロくて。熱くて。俺のためのもの。

全部入れるとびくびくしたままギュゥって抱きついてきた。

「殺されても、いい……、」
「っ……、」
「だって、何されても、マジで、ぜんぶ、気持ちいい、ほんと何もかも、ぜんふ好き……♡すき、」

無我夢中で腰振って。自分の欲だけ満たしまくって。悠にイっていいよと言ってないことを思い出した。最後にイっていいと言うと、イってすぐに悠は気を失った。

そこでハッとなった。流石にやべーことをしたと。店は出禁になるし。悠の先輩たちは怖がって逃げ出した。あーあ。

と、なったのに。次の日悠はけろっと。

「蓮さん、」
「ん……?」
「俺、SM好きかも知れないです、」

ちなみSMの域など昨日のは余裕で超えていたが。普通に謝るタイミングを失った。ただの嫉妬だと。別に言えるぐらい気を許しているはずなのに。

「何が気持ちよかったの?」
「首、絞められるの、蓮さんに殺されるかもって思うと、めちゃくちゃ興奮します。」
「殺されたいのお前、俺に、」
「えっ……、わ、わかんないです。でも、がっつり痕残るのいいです。」

ぎゅーってベッドで抱きしめるときゃははって子供みたいに笑った。やべー奴って怒り抑えらんなかったり、ストッパー働かない奴のことを言うわけよ。結構。俺って典型的なタイプで。

そんなところが嫌なところなんだけど。その瞬間が一番生きてるって感じがして。こう自分の中でもやべー自分と普通でいたい自分がせめぎ合うんだよ。離れていく人を見て後悔すんだけど。

「悠さ。お前の先輩たちに聞いたんだけど。普段は全然性格違うんだろ?」
「え?そ、ですかね?でも今までは満たされてなかったから不機嫌でしたね。常に。女の子も。お金も。あっても何にも楽しくなかった。ゲームするようになって楽しいこと見つけたって思ったけど。蓮さんに出会って、満たされるってのを初めて知りました。」

ゴミだと思うけどね。俺なんて。だいぶさ。

「ほんとに。好きすぎて死んじゃう。」

見れないね。悠の先輩たちが言うこいつの本性なんて。多分てか絶対。見れる気がしない。諦めるしかないっぽい。

「……普通に昨日のはやりすぎたよ。ごめん。」

ぽかんとした悠が。気持ちよかったですよって。笑った。






先輩たち蓮さんに何言ったんだろ。怒ったような興奮したような。そんな顔で首を絞められた。あの。独占欲に満ちた顔。俺が泣くと蓮さんの顔はめちゃくちゃに高揚してて。すっげー好きだった。

くっきり残った首を絞められた痕。定期的にやってほしいな。蓮さんの満たされてる時のあの表情。かっこよすぎて何もかもどうでも良くなる。

でもあの瞬間のことを蓮さんは少し後悔しているようだった。自分で自分を抑えられなくなる瞬間。それが嫌なようだった。

どうしたら、そんなところも含めていいと伝わるだろうか。

そのぶっ飛んでるところが蓮さんの魅力なのに。優しいセックスもぐっちゃぐちゃに泣かされるのもおんなじくらい気持ちいい。

初めて女の子とヤった時。セックスってこんなもんかって思った。漫画とか動画は誇張されすぎてて。嘘つかれたみたいな気持ちだった。

でもそれより面白いことも知らないから誘われたらヤって。知らないうちにお金払うから抱いて欲しいって言われて。お金もらうと。金のないセックスが無駄に感じるようになった。

そんな世界が蓮さんにあって変わった。動画より漫画より。声が出て気持ちよくて我慢できなくて。好きで好きでたまらない。24時間相手のことを考えて。LINEの一文字に一喜一憂する。

女みたいで嫌な自分。

でも止められない。自分じゃイケない。蓮さんがいなくなったらどうするんだ俺って思う。けど。一生蓮さん以外とセックスしない未来最高すぎて無理。

これが好きって感情なんだ。景色に色がついた気分だ。恋ってマジで凄すぎる。多分一目惚れだったんだ。出会ったあの日から俺の中は蓮さんでいっぱいなんだ。

それなのに、背中に抱きついた蓮さんはエロいこともしないで。

「痕結構残るかな、」

そんなことを言って首筋にキスをする。

「大丈夫ですよ。全然。」
「ん……、」

くるり。身体を回されて胸のあたりに頭を埋めた。

「前日のことなんて気にしないタイプなのに今日はどうしたんですか?」
「いや……、痛かったなって思って、」
「それだけ……?」

らしくなく俺が蓮さんを甘やかす。頭を撫でると。また。ごめんとか呟いてくる。らしくない。らしくない。本当に気にしなくていいのに。何されても感じまくるように躾けたのは蓮さんじゃん。

「蓮さんの俺のこと泣かせるの好きですよね、」
「……後で後悔するけどな、」
「いっつも気だるそうな蓮さんが、すげー興奮した顔して、めちゃくちゃに俺のこと支配してくれるの最高ですよ。」
「……最高じゃないだろ、苦しそうじゃん、」
「俺ググったんですよ。なんでフェラも首絞められんのも苦しいのに気持ちいのか。なんでか分かります?」
「え、知らんけど、」
「真面目に考えてください。」

一瞬視線がそれで、うーんって悩んで。

「こっぱずかしいんだけど。」
「いいじゃないですか。」
「……あれじゃねーの、好き、だから的な、」
「んふふ、」
「なんだそのムカつく笑い。」
「いや俺もそう思ってたんですよ。蓮さんが好きだから何されても気持ちいいんだって、一人でイケないのはその一言に尽きるんですけど、首絞めが気持ちいいのは、頭に血が上って酸欠になるんですよ。それが人間の体的には苦しい状態なんですけど、その状態から脳が必死に逃げるために気持ちいいって錯覚するんですね。それがコカイン摂取したときと同じくらい気持ちいいらしいんですよ。」
「はぁ……?」
「つまり俺が首絞めを気持ちいいって思うのは蓮さんが好きなのはもちろんですけど、科学的にも証明された気持ちいいな訳なんですよ。」
「なんの話だよ。」
「だから、気持ちいいからやっていいですよ!!って話じゃないですか!!」

叫んだら蓮さんは数秒止まって笑った。やっといつものくだらなって馬鹿にした大好きな笑顔だった。

「高校卒業してすぐDV騒動で炎上して、店クビにされるわ、死ぬほどSNSで叩かれるわで、いい思い出なんもないのに、ヤってる時はめちゃくちゃ興奮するからさ、終わった後死ぬほど後悔するけど。周りドン引きだしな。絶対怖がると思ったし。」

言葉が言葉にならないような感じで。

「こんなことする自分大っ嫌いだよ。」

俺は最高に好きで困った。ぎらっぎらの顔で首絞めてほしいくらいだけど。

「……でも、お前好きなんだろ?」
「俺は、蓮さんがこんなことやっちゃだめだってなってる顔含めて好きですよ。」
「……指の跡、くっきり残ってる。」
「後悔してますか?」
「してるよ……、」
「蓮さんが付けてくれた痕なのに。」

ベッドからのそりのそりと起き上がって、寝っ転がった蓮さんの身体の上に乗る。薄いtシャツの中に手を滑り込ませて蓮さんの服を捲る。

胸の下にキスをしてぎゅーって抱きつく。蓮さんの肌の匂い。甘い。ミルクみたいな匂いだ。

「日常生活ではイライラして思い通りにならないことっていっぱいあるけど、俺の身体だけは蓮さんの思い通りだったらいいなぁ。」

ぴくり。またがった腰の下で脈を感じる。

「抑えられない自分に葛藤する蓮さんも好き。でも……俺、蓮さんに苦しいのもひどいのも気持ちいいって教えられちゃったから、満たされてる蓮さんの顔見ないと、満足できないよ。」
「っ……、」
「加虐性欲。自分を否定しなくていい。大切なのは受け入れてくれる相手を見つけること。」
「なんか悠、今日変だろ、」
「変なのはどう考えたって蓮さんだ。俺のこと世界一満たしてくれるのは蓮さんしかいないのに、なんで蓮さんは謝ったりするんだ、」

首の跡。身体の跡。バーでセックスしたこと。先輩にバレたこと。そもそもの出会い。俺たちの関係。

首元に手が伸びて触れられる。跡と蓮さんの指先は綺麗に一致して。この形が蓮さんのものだって分かる。

「DVじゃなくてSM。蓮さんの行為の全てに同意する。この跡だって、蓮さんが俺のためにつけてくれたもの。みんながドン引きしたって、自慢して歩ける。蓮さん。俺は昨日嫌がってた?」
「っ……、」
「蓮さんは、気持ち良くなかった?」

ぐっとゆっくり圧迫される喉。昨日の興奮した感覚が蘇って腹の奥がきゅぅって熱くなった。蓮さんの腰のものが身体の下で反応してる。

「……すげー気持ちよかった、」

手が緩んで、身体が起き上がって喉仏にキスされる。ちゅぅって吸いつかれて跡をのこされる。

「俺のもの……、何もかも、全部俺の、」

ぎゅぅって抱きしめられてベッドに引き戻される。数秒抱きしめられたままで固まる。しばらくしてシャツの中に手が入ってきて腹をするする撫でて乳首を摘む。

「んっ……♡」

くるりくるりと指の腹で先端を撫でられて、とんとんって優しく押される。じわぁってパンツの中が濡れる。

「気持ちいい?」
「んぅ……♡はぁ、きもいい、」
「俺のかわいい乳首、ほんとに大っきくなった。」

優しく柔らかに撫でられて撫でられて。

「はぁ……♡ぁぅ、もっと……♡」

欲が溢れ出す。

「もう少し刺激が欲しい?」
「ん……ん♡」

少し伸びた爪の先で先端を引っかかれるとぴくっと身体が跳ねる。時々柔く押し潰して、こりこりってつままれて。気持ちいいことで頭がいっぱい。

ゆっくり柔く刺激が溜まってきて、お腹の奥がじんってしてくる。中触ってほしいなって気持ちも出てくるけど、このままでもイケるなって気もして、考える余裕が残ってる。

「蓮、さん……♡」
「ん……?」

自分で腕伸ばして、キスすると、胸から手が離れて頭掴まれる。

「きす……すき、」
「いっつもおねだりしてくんもんね」

瞼にされて、目の下にされて、こめかみにされて、首筋にされる。

「ふぁ……♡んふふ♡」
「かわいいね」
「蓮さんもかわいい、」
「俺もかわいい?」
「全部かわいい……♡ぜんぶ好き♡弱いとこもいっぱい見せて。」
「全部受け入れてくれんだもんね」

もちろんだよって抱きつくと、ぐぅって苦しいくらいに抱きしめられた。

「悠、」
「はい……?」
「一緒住む?」
「っ……え、あ、す、みます?」

予想の斜め上の話だった。声裏返って身体が固まった。






「飯行かね?ここ食いたいって言ってなかったっけ?」

サークル仲間に飯に誘われて、らしくなく顔を出した。最近蓮さんの家に入り浸ってたから、絶対持ってかなきゃって物がPCくらいしか思い当たらなくて、舞い上がりすぎて適当に行くと返事をしてしまった。意外そうな顔される。

「うい」
「やほ、ぜってーこねぇと思ったんだけど」
「うぇーい、お前ら奢りな」
「わぁったよ」

来るか来ないかで賭けたらしい。あんま喋ったことないやつが一人勝ちしていた。

「まぁ、暇な日もある」
「最近やってる?」
「あんまし」
「だよな。ヤリサーのほう行ってんの?」

首見て後ろから痛そーって手伸びてきた。

「別そんな痛くないけどな、ヤリサーも行ってねぇよ。行っても女釣るのに使われるだけだしな。」
「さすがっす」
「さすがじゃねーよ。いいように使われてるだけだわ……」

こっちのサークルの3倍くらいヤリサーは上下関係がしっかりしているのである。意外かもしれないが、しきってるのが法学部の先輩で、未だにこき使われている。一回入ったら卒業まで逃がさないと言われた。

残り三年餌にされ続けるらしい。

「つかこの日イベント誘われてんだけどさ。悠も来ない?」
「別、行ってもいいけどお前らで出た方が(勝ちが)かたくね?」
「ゲストがペリパンドラらしいんだよ。」
「だからなんだよ。」
「顔がいいyoutuberが出るときはお前の出番だろうがッ……!客女多いだろうがッ……!奪って来いよッ……!」

どこもこんなんばっかである。男子大学生。ヤリサーだけがセックスのこと考えてるわけじゃない。みんな似たようなもんだ。

ため息半分。付き合いも大事なので暇なら行くと返事をする。ラーメン屋の列が縮まらねぇなって考えていたときである。

「お兄さんたち、こんにちは」

びくっと突然声をかけられたもんだからびびった。

「私、こういうものなんですが、興味ありませんかね。」

歌舞伎町の近くだからさ、ぜってー変な店だろうと思ったら、聞いたことのある芸能事務所だった。狙いはさっき俺が来るか来ないかで勝手に賭けしてたやつ。

すごってみんなざわついてて、変なところ歩いてるスカウトマンもいるもんなんだなって勝手に感心してた。でもあんまし興味ねぇなぁって輪から抜けた。

「あの、」

メインのスカウトマンの手伝いみたいな、同い年ぐらいの若い顔の整った男。

「プライベートの話なんですが、」
「え、はぁ……?」
「カメラが趣味で、あの、報酬はお支払いするので、撮らせていただけないですか。」

こちとら同棲間近で舞い上がって脳みそ働かないってのに変な話持ちかけて来んなよ。つかお前誰。

「いや、あんま興味無いんでやめときます、」
「30万、」
「は?」
「2時間だけ、それが今俺が出せる最大なんですけど、お願いします。」
「なんで俺なんて、」
「明らかに……ヤバいひとだから、」
「失礼すぎてびっくりするわ」

エロいとか、顔が好みだとか、死ぬほど言われてきたけど、面と向かってその言葉はっきり言うやつなんて久々にあったわ。ヤバいって。失礼すぎ。

「『動画より抜ける一枚』って言う名前でSNSに写真をあげてて、」

……待て。知っている。いや俺そんなSNS得意じゃねぇけど知ってる。知ってるくらい有名なアカウントだ。

「お願いします。」

2時間で30万は、情けないがだいぶ魅力的な数字だった。ラーメン食って、周りと解散した後、指定された高そうなホテルの一室にチェックインする。部屋の中はベッド以外機材でいっぱいだった。

「なんでスカウトマンなんてやってんの?これで十分食っていけそうじゃん。」

素直な疑問に。

「被写体の見方を習っているんです。あの人も最初は貴方をスカウトしようとしてたんですよ。」
「へー」
「でも……首の跡を見て、やめとけと。」
「あぁ、これ、」

カシャリカシャリと既にカメラを向けられていた。

「ベッド行った方がいい?てか服これでいいの?」
「スタイリストが選んだって言われても疑わないくらい似合ってますよ。貴方のための服だ。」
「首の跡つけた人が選んだ服だよ。」

そういうと、男はカメラの窓から視線を外した。

「恋人ですか?」
「いや……ただ、好きな人だけど」
「よく、そう言う行為を?殴られたりは?」
「殴られたことなんかないよ。多分なんか勘違いしてる。」

服を捲るとカシャリと音がなる。

「そのまま脱いでもらえますか。」

カシャリカシャリ。またカメラから外れた視線がぶつかった。

「脱げないように跡つけられてるんですか?」
「さぁ……どうなんだろ、痛そうって言われたけどね、サークルの奴らには」
「俺には虫除けに見えますよ。マメにつけられた虫除け。自分以外の誰にも触らせるなって書いてある。」
「そ、なのかな……、」

それなら嬉しいけどね。そこまで意識してるのかな。

「どんなポーズとればいいの?」
「んー……、寝てもらっていいですか?」

ベッドに寝ると、男が身体の上に乗った。写真を数枚撮りながら、片手が首に触れる。カメラが置かれて、両手が首に触れた。

「……相手、男の人ですか?」
「そうだけど、」
「へー、意外だ。」

ポーズを指定されて数枚撮られる。

「差別的な意味ではないんですが、貴方がゲイってのは正直意外です。」
「そう?」
「先週、色恋沙汰で女に刺された人を撮らせてもらってたんですけどね。少し雰囲気が似ているから。」
「あぁ……別に元から男の人が好きってわけじゃないですよ。他は正直無理だし、」
「最近?」
「最近ってか、蓮さんだけ、」
「へー……、その身体は蓮さんって人が作ったんですね。」

カシャリ。

「抜ける一枚って、具体的にどんなことすればいいの?」
「前に撮った写真みますか?」
「おぉ、みたい」

表情と生肌が多くて。事後や行為中の腰のけぞり。生々しい写真が大半をしめていた。

「俺もオナニーぐらいしたほうがいい?」
「え、あぁ……そこまでいいんですか。」
「別に減るもんでもないし、全然いいけど。あ、でも触んないでね。」
「怒られちゃいますか。」
「いや、萎えちゃうんだよね、蓮さん以外に触られると。悩み。」
「洗脳?」
「してないって言われたけど。どうだろ。」

普段はニップレス付けてるんだけど、ラーメン食うだけって思ってたから、適当に絆創膏しか貼ってなくって、剥がすときに少し感じてしまう。

「っん……♡」

こんなに感じやすいのに、ほかの人に触られると反応しないのはなんでなんだろう。剥がす動作だけで胸はつんと勃ってしまっていて、触って欲しそうに主張してる。

「エロい身体だなぁ」

パンツのポケットからスマホを取り出して、蓮さんの声を探す。配信とか今やってないかなって思ったけど、やってなくて、動画にした。

思い出すことがある。蓮さんとこうやってよく会うようになる前。電車で顔もしらなかったとき。ずっと触ってほしくて触ってほしくて自分の身体を開発してた。

おもちゃも色々買ったし、塗り薬とか飲み薬とかも使った。見るだけで分かるくらいエロくなったのは努力の賜物なんですよ。

パンツのベルトを外して、ゆっくり脱ぐと、カメラの男が近づいてきた。

カシャリ

「かわいいパンツ履いてるんですね。」
「ちゃんとこれ男物なんだよ。」

レースの入ったかわいい下着。脱毛してから蓮さんがくれた。勃起すると痛いけど、前みたいにガッチガチに勃起することないからあんまり問題ない。

「後ろがね、挿れやすいように空いてるの」
「これ日常で履いてるのエロすぎるでしょ」
「もっとすごいのもあるけど、マジで履いてる意味なくて笑うよ。かわいーけどね。」
「これも蓮さんの趣味?」
「選んでくれたのエロいのばっかだよ。」
「変態じゃん。」
「これとか、見て、履いてる意味なくない?」

カメラロール見せると男はえっちだーって笑ってた。前も後ろも透け透けで、太ももを入れる紐しかないのとか、隠れてるって思ったらスカートみたくペロって捲ると全部生肌だったり。

すっげーかわいいんだよ。元カノが履いていたやつよりめちゃめちゃかわいいパンツ、自分が履いてるのおもろいよね。

でも、毎日履くのはあれだよ。蓮さんをノリノリにさせないといけないから。いつでも興奮して欲しいからさ。

午前中の間ベッドで身体いじられてたから、まだ奥に感覚が残ってて、中出しねだったから指を入れたら中がとろっとした。

蓮さんの感覚。

指じゃ奥届かなくて寂しくなる。2本の指を粘膜が包み込んで、ぷくっと腫れた前立腺に触れる。

「っ……んぅ♡」

ゆっくり優しくとんとんするだけで身体がびくびくってする。抜き差しするとたらっとまだ身体に馴染んでない残った精液が中が垂れてしまう感覚があった。

「いっつも中出しされてんの?妊娠しちゃうよ。」
「ぁっ……♡ん、しちゃうかも、」

指じゃ絶対掻き出せない奥の奥。あったかいのが流れ込むあのなんとも言えない感覚。中毒的な快楽と幸福。身体が女だったら、100%妊娠してたよなって思える、その快感がたまらない。

もう片方の手でつんと張った乳首に触れる。こっちも優しく弱く刺激を溜め込んでいく。

「こっち向いて」

カメラのレンズと視線があって。カシャリ。それと同時に流してた動画の奥からイっていいよって声が聞こえてびくんってなる。

「はぁ……♡ぁっあ……ん♡」

おもちゃとか使わないでオナってるときって声が抑えられなくて乱れまくって、ってのはないけど、これはこれで悪くない。久しぶりに自分の身体に自分で触れると、こんなにここ感じてたっけびっくりすることあるけど、エロくなれるのはいいことだと思うようにしてる。

「中でイったの?」
「ん……♡ちょっとだけ、」

ゆっくり中から指を抜いて、まだ弱い痙攣が治まっていない入り口を見せる。

「……うわ、いや、勃つね。これ。」
「ほんと……?」
「俺、男の人は対象外なんだけどな……いや、ホントえっちだね。」

いっぱい撮られて、どれ使われんのかなぁとか考えていた時、スマホがぶーってなる。蓮さんの音。一人だけちゃんと変えてるからわかる。

「どうしました?」
「いや、仕事行く前に元気補給しようかと思って」

なんだその恋人みたいな電話の理由。嬉しいんだが。

「今、何してんの?」
「なんか、動画より抜ける一枚ってアカウント知ってます?」
「あーTw◯tterのアカウント?」
「それです。その人に撮られてます。」
「なんかいっつも面白いことしてんなお前。場所どこ?」
「風鈴会館の近くのホテルです、名前なんだっけ」
「現在地送ってあげたら?」
「んだね、ライン見てください」
「うい……おー店近いじゃん。邪魔しに行っていい?」

カメラの男視線を向けるとぜひって凄いアピールされた。

「蓮さんはどんな人なんですか?」
「うーん、イケメンのホスト?」
「すっげーいかにもだね。」
「それこそググったら出てくるよ。ほら、」
「え、あー、この人配信してる人じゃないの?暴露されてるの見たことある。」
「配信は趣味なんじゃね?よくわかんないけど。」
「女関連でめちゃくちゃ叩かれてた記憶あるけど大丈夫なの?」
「蓮さん女関係クソ雑だからね。しょっちゅう女の名前間違えるし、アフターバックれるし、まぁしょうがないのかも?」
「キミはセフレ?」

最初は確実にそうだったと思うけどね。どーなんだろって返事をした。あんまし考えたことなかった。

「たぶん?俺はめちゃくちゃ好きだけどね。蓮さんのこと。」
「ちなみに大学生?」
「うん」
「俺××××大の法学部なんだけどさ。悠くんだったりする?」
「え、なんで知ってんの?」
「いや顔は初めて見たけど、噂で聞いたことあって。」
「彼女寝取られるから気をつけろってやつ?」
「そう、それ。いや、まぁ、確かにすっげーイケメンだね。めっちゃくちゃ色っぽいし。」
「でも一個訂正するけど、自分から取ったことねーから。」
「余計たち悪いけどね。」
「勝手に別れてきて付き合おうって言ってくんだよ。」
「まぁ勝てる気しねぇわな。つか女抱けんの?」
「……いや無理だけど。」
「マジか。」
「触られると萎えんの……ガチで悩んでる、病院行こうかな……、」
「気づいた頃にはエロい治療になってるよ絶対」
「日本の医者馬鹿にしすぎだろ。行くとしたら精神科だから。」
「ガチすぎてウケんだけど」
「本気で悩んでんだよ!!」

触っていい?って聞かれたからいいよって大きく手を広げる。するすると喉仏に触れて、まばらに付いている跡を撫でられる。結構やらしい触り方なわけ。顔も蓮さんには劣るけど、全然いい方で、服のセンスもあって。ちょっとも反応しない俺の身体はどうなっているんだ。

「やっぱさ。男だから反応しないのかな。」

乳首の先をかりって引っ掻かれて、うーんざわざわってね変な感じよ変な感じ。

「絶対洗脳だって。」
「洗脳ってどうやって解くんだよ。」
「蓮さんにお願いして解いてもらうしかないだろ」
「かけてないって言ってたし、」
「じゃあ風俗でも行って女で試すとか」
「やったけど……、もうあんま抱く方に魅力を感じないわけよ、」
「えー、蓮さんはそんなうまいの?」

コクリ。

「悩んでるけど、まぁ蓮さんセックスうますぎるし超エロいし世界一イケメンだしちんこでかいし、あんな人に毎日ヤラれてたら、ほかに反応しないのも仕方ない気もする。」
「さすが、6股炎上男。大学1のモテ男もメロメロなわけだ。」
「マジメロメロ。大好き。結婚したい。」
「結婚は草。」

あー大好きだってベッドに倒れこんだからまた撮られた。

「なんで今撮んの」
「悠くんが恋してる顔なんて実はレアなんじゃないかと思って。」
「……うっさいな、」
「美形が照れてんのアニメみたいだわ。どんくらい好きなの?」
「いっぱい。」
「わかりやすく説明してよ。」
「……なんか、普通に初めて恋したよね。」
「そなの?」
「うん……、今蓮さん何してんのかなぁとか人生初めて考えたもんね。早く仕事おわんないかなーとか、ラインきただけでくっそ嬉しいし、電話するとさ会いたくなるわけ。仕事の愚痴言ってんのとかかわいーってなるし、男なのにさかわいいって言われんの好きになっちゃったわけ。」
「めっちゃくちゃ恋だね。」
「超恋ですよ。爛れてるけど。最高に恋だね。24時間蓮さんのこと考えてるもんね?女みてーな恋愛ソング書けそうだもんね?」

今日も今から会えるの超嬉しい。好き。会えるだけでテンション上がる。

ホテルのチャイムが鳴ってパンツに、雑にシャツだけ肩に羽織った状態で、扉を開けた。がっつりスーツの蓮さん。うわカッコいい。今さっきまであんなこと話してたからさ。もうね。最高に盛り上がってるわけ。気持ちが。

知らんうちに抱きついてた。

「うわっ、どした。」
「蓮さんが好きって話してたから、本物見たら沸いた。大好き。」
「なんだそれ。ウケる。」

軽く触れるだけのキスをされて。

「とりあえず部屋入れて。」

頷いて、腰抱かれたまま部屋に戻った。

「来てくださってありがとうございます。写真家の滝です。」
「いや招かれてもいないのに来てすいません。」
「全然。歓迎です。蓮さんの方も撮って大丈夫ですか?」
「いいで……いや、仕事の方は大丈夫だと思うんだけど、配信の方で他の人のイベント出て怒られたことあるんで、一応メールだけ適当でいいんで事務所に送っといてください。」
「了解です。」

事務所とかね。何が何だかなんだけど。あんまし興味ないので深掘りはしない。

「で、悠くんは、何やってんの?」

なんでくん付け?ベッドの上に座って肩を組まれる。

「さっき電話で説明した通りです、けど、」
「なんでそんな格好してんの?」
「写真撮られてたから、で……んっ♡」
「てっきりなんか服でも着せられてんのかと思ったら、脱いでるのは予想外なんだけど。」

かぷり。耳たぶ甘噛みされる。蓮さんの声が耳の近くで響いて心臓の音が早くなった。

「そんなエロい身体で脱いでなんかあったらどうすんの。」
「蓮さんにしか反応しないから大丈夫ですよ?それに相手男だし、」
「……俺も男なんだけど、」
「性別関係なく今は蓮さんしか興味ないです。」
「そうじゃなくて、ホテル連れこまれて、複数人いて逃げられないなんて可能性だってあるだろ」

蓮さんがまともなことを言っていて驚いた。てか、なんか、怒ってる気がする。

「蓮さん、怒ってる。」
「怒ってるっていうか、普通に嫉妬だけど」

びっくりして固まった。

「う、そだ……、」
「なんで?」
「蓮さん、俺が他の人の前で脱ぐの嫌?」
「嫌だよ。だから人前で脱げないように跡つけてんだろ。つかそうじゃなきゃ一緒住もうとか言わないだろ。」
「俺本当に他の人興味ないです、」
「知ってるよ。でもお前モテるんだろ。お前が興味なくても相手はお前のことそういう目で見るだろ。それも嫌なんだけど。」

嘘だって。思う。そんなのあり得ない。蓮さんが俺に嫉妬とか。するわけないでしょ。え。あ。顔熱い。熱い。

「そんな顔もすんのな。お前。」

顔、両手に包まれて、ぶちゅーって。噛み付くみたいにキスされる。舌が絡んでどんどん熱が上がってくる。カメラの音が聞こえなくなる。全部全部蓮さんになる。

「かわいいね。世界一。本当に。この世界にお前みたいな可愛い子が存在するって信じらんねーよ。」

なんだその笑顔。無理。かわいいって。褒め言葉だって教えたのがこの人なんだ。蓮さんに言われるかわいいが、俺好きで、嬉しくて。

「悠はさ、俺が他の女といるの嫌じゃない?お前を呼ばない日はアフターで他の女とホテルにいるんだよ。わかってるだろ。」
「わ、かってるけど、でも、蓮さんが俺だけのものになるわけないって、わかってるし、」

俺の場合、蓮さんが俺のこと呼んでくれるだけで嬉しかったし、抱いてくれるのが最高で、それ以上を考えたことなんかなかったし。考えちゃいけないものだと思ってた。

「嫉妬なんかしちゃダメだって、」
「なんで?」
「したら、呼んでもらえなくなるかもしれない、俺、蓮さんじゃないとダメなのに、蓮さんに嫌われたらマジで生きていけない、死んじゃう、」
「死んじゃうのかよ。」
「本当に全部全部大好きだから、」

ぎゅーって抱きしめられて。

「沼だね。お前本当に。底なしだよマジ。」

耳元で響く。

「お前のことで頭の中、毎日いっぱいだよ。この前アフターで飲みすぎてミスってお前の名前呼んでさ顔面ぶっ叩かれたの。ウケね。」
「マジ……?」
「マジだよマジ。お前以外いらねなーって、最近ずっと考えてる。嫉妬とかできたのか俺って自分でびっくりだしな。楽しくねーのな。これ。全然。客の気持ちやっとわかったわ。」
「蓮さん?」
「……閉じ込めときたいよ。俺そばにいないとき、外出るなって思う。俺嫉妬深かったのな。初めて知ったわ。」

甘いキスがふってきて、いつものタバコっぽい味が安心する。

「信じてるけどさ。俺以外のやつ好きになんないでね。多分そんなことなったらマジで俺お前のこと殺しちゃうわ。」
「っ……、」
「そんなくらい好きだよ。お前のこと。」

告白だって今気がついた。心臓が止まりそうだった。どきどきを通り越して痛かった。嬉しいのか苦しいのかわからなかった。

「お、俺も好きです、」
「うん」
「ぜ、絶対負けないです、俺の方が好き、です」
「ふっ、ははっ……なんで張り合うんだよ、どっちでもいいじゃん、」
「普通に、負けたくなくて、」
「そもそも最初に手出したの俺だけどな」
「そっ、かもだけど、でも……っ♡」

されたキスはいつもの蓮さんだった。セックスするときのやつで。ぐわって頭がピンクになる。腰抱っこされて、スーツの蓮さん上に乗せられる。

「え、あっ、汚れちゃう」
「いいよ汚して。今日他の奴相手するとか無理でしょ。普通に考えて。吐くよ俺。」
「っ……♡一緒、いてくれるの?」
「お前専用だよ。望んだたらいつでも全部投げ出して来るよ。」

ヤバい。でしょ。こんな蓮さん知らないし。甘すぎだし。意味わかんないくらい幸せだし。俺今日死ぬのか。死んでもいい。そんくらい幸せだ。

ぎゅーって首元に抱きつく。俺専用だって。もうマジ超にやけるんだけど。好きなんて返ってこなくていいって思ってたし。仕方ないとか寂しいとか、思えないくらい、都合のいい相手でも、それでもって思えるくらい好きな人。

初恋って叶わないって聞いたことある。この感情を知ることが大切なのかなって思ってた。

これね。なんて言葉に表すの?気持ちいいの、快楽の、先の言い表せない幸せ。生きててよかった的な。俺、ほんと、今生きてんのかな。

「きす、したい」
「ん。いいよ。いっぱいしよ。」

噛み付くみたいなやつじゃなくて。めっちゃ甘いやつ。それなのに息辛くなるくらいいっぱいして。頭の中ほわほわする。

「なんだその顔今からヤルんだぞ。」
「ん……♡する、いっぱい。」
「もうとろとろなの?」

唇が降りてきて、敏感な乳首を咥えて、もう片方も蓮さんの指先が摘んでくる。断続的な弱い刺激。息が荒くなる。

「はぁっ……♡ぁっ……♡」
「気持ちいいね」
「んっ♡ふぁっ……♡きもちぃ♡」

なんか今日めっちゃ感じるなってじんじんする頭で考える。蓮さんの仕事用に整えられた髪を撫でると少しだけ上を向いて視線があった。いっぱいしても蓮さん唇をみるとしたくなって。自分から蓮さんの顔に近づく。

「またキス?」
「ん……♡」

しょうがないなぁって顔。手で乳首弄りながら相手してくれる。

「ぁっ……♡あっんぁ♡なんか、今日へんっ……♡」
「いつもと違うの?」
「ん……♡ちがっ……あっ♡ひぁっ♡」

カリって爪でひっかかれただけ。さっきカメラの男にされたのと一緒。でも本当に全然違う。なんで違うのか自分じゃわかんない。腹の奥が一気に熱くなってきゅーって。やばい。これ。

「イっちゃ……♡あっ♡だめ……♡ひぁっぁっ♡」
「え、悠?イっちゃったの?」

蓮さんですらびっくりしてる。俺もびっくりだから、顔見ないで。

「わ、わかんない、今日おかしい、」

ちゅちゅってキスしながら、赤い顔見られる。やだ。もうなんか恥ずかしい。だめだ。キスも感じる。おかしい。おかしい。

「いっぱいイっていいんだよ。」
「うっ……ん、」
「どこ触ってほしい?いっぱいイクの怖かったらゆっくりにしてあげる。」

蓮さんもおかしいしさ。どことか。そんなの聞かれても困るよ。どうしよ。許可ないとイケないはずなのになんでイっちゃったの?お腹の奥も切ないし、乳首ももっと触ってほしいし、キスもいっぱいしてほしいし、抱きしめてほしいし、でもすぐイっちゃうの怖い。

「ぜんぶ、さわってほしい……けど、こわい♡」
「いっぱいイクの怖い?」

こくり。触られてないのに気持ちいいのどんどん溜まってくの変だ。なにこれ。おかしいもんさ。

「理由がわかったら怖くない?」
「え?あっ……♡理由わかるの……?」
「まぁ、なんとなく。」

行為が中断して、向かい合いながら抱っこされる。頭撫でられて、耳たぶ触られて、頬をふにふにされる。

「性欲なんて食事と一緒の生理現象でしょ。俺らはお互いそれを満たしてた。でも今は違うんじゃない?」
「でも、俺ずっと、出会ったときから蓮さんのこと好き、でしたよ。好きな人に抱かれて幸せだった、なにされても気持ちくて、これが恋なんだって思って、」
「うん。」
「ち、がうんですか?」
「悠はさ。俺が悠を好きになるって想像してなかったんでしょ。」

そう。そうだ。好きなってもらえるわけないって。今でも思ってる。

「想像してないことが起こって頭がバグってるんでしょ。」

たぶんそう。俺より蓮さんの方が俺の感情を正しく理解してる。

「じゃあちゃんと理解してよ。俺は悠が好き。現実です。」
「え、あっ……」

ぶわって鳥肌たつみたいな。胸の奥どくどくって血液大量に溢れるみたいな。乾いてた手に汗が浮き出て、顔がまたかって熱くなる。

「えー、泣いちゃうの?」

しょうがないなぁって笑顔、目頭に親指が触れて、涙拭われる。

「なんで気持ち良くなっちゃうかわかった?」
「っ……、蓮さんが、俺のこと好きって、わかって、し、幸せだから、」
「その日の盛り上がりなんて結局は感情論じゃね?」

なんで泣いちゃったのかわかんないまま、自分からキスをした。腰を撫でられて、身体全身に触れられる。喉の辺りにキスされて、胸の上に跡つけられて、その後もいっぱい上書きされる。お腹に上の薄い筋肉に甘噛みされる。

「お腹ひくひくしてんね。」
「はぁっ……♡んっ……♡」

確かめるように優しく手のひらで撫でられるだけで期待が降り積もる。イキそうになる。

「いつも俺のやつどこらへんまで入ってんの?」
「へ……?えっ、と……♡」

お腹を撫でる蓮さんの手に、自分の手を重ねて、前立腺のずっと上の辺に移動させる。

「この、くらい……♡」
「まぁ、いっつも終わった後掻き出せないわけだわな。指届くわけない。」

とんとんって入口に指先が触れる。

「ぁっ……♡ぅっん♡いれたらイっちゃ、う♡」
「いいよ。イきな。朝のやつのせいでローションいらないね。」

ゆっくり、でも指の2本くらい簡単に、俺の中は受け入れて、入ってくる感覚にびくびくって甘イキしてしまう。

「ぁっ~~~♡ひぁっ♡ぁっ♡イっちゃ♡ぁっ♡ぁっ♡」
「はは、マジで今日だめだめじゃん。」

溢れた涙をもう片方の手で拭われて視界が少しクリアになる。蓮さんは愛おしそうに笑ってて、頬を撫でてくる。でも中の指はイってるのに遠慮なしに入ってきて、もう身体全身いっぱいいっぱい。

「あっ♡ンン゛♡イクのおわってないからっ♡ゆっくり♡ぁっひぁ♡」
「んー。ゆっくりな。今日2回目だからすぐ入れても大丈夫だろうけどちょっとだけ慣らそうな。」
「ん……♡うっ、ん♡」

ゆっくり、でもちゃんと中に入って来て、ずっと痙攣してる中が暴かれていく。やっと腫れてる前立腺にとんって触れる。

「ンン゛~~~~♡あ゛っ~~~♡」
「今日の悠の中すっげー気持ちいいね。絶対。」
「っ~~~~♡イっちゃ♡あっ♡」

そうだ。指じゃ俺もやだ。蓮さんのでいっぱいになりたい。自分のことでいっぱいいっぱいだけど、気持ち良すぎて飛んじゃいそうだけど、蓮さんのほしい。ないと俺満足できない。ぎゅって蓮さんの袖を掴む。イクの収まってないし、もう上手く言葉も話せないけど。

「どーしたの?」
「なかぁ♡ほしぃ♡蓮さんのっ♡ぁっ♡ひぁっ♡」
「今入れたら意識飛んじゃわね?」
「っ……♡でもっ♡蓮さんのっ……ほしぃ♡さびしぃ♡」

ぐって一回前立腺を押し潰されて、びくびくって身体が跳ねた後、ゆっくり中から指が抜けて。

「はぁ……はぁっ……♡」

必死に息を整える。全然周り見えないくらいいっぱいいっぱいだった。気持ち良すぎてなにも考えられなかった。でも、俺の本能みたいなやつが。セックスの目的を知ってる。

俺のいろんな体液で汚れちゃった蓮さんのスーツに手を伸ばす。

「絶対お前今日はもたねーって、」

ガッチガチで脱がすのすら大変で、下着の上でも少し濡れてて、顔を近づけてキスをする。蓮さんの匂い。頭くらくらする。洗脳だよ。もう本当に。この匂い嗅いだら発情するように身体ができてる。

顔を上げて、起こすのすら辛い身体持ち上げて、今日は悠が気持ちよくなればいいよとか意味わかんないこと言ってる蓮さんの唇にキスする。

「蓮さんのが1番気持ちいい……♡お腹にいっぱいあったかいの出してくれないと、俺の発情おさまんない♡」
「っ……♡」

ぎゅーって弱い、それでも精一杯の力で首に抱きつく。

「蓮さんのじゃないと、俺、上手に孕めない……♡両思いなら……蓮さんとの赤ちゃんほしぃ♡蓮さんの精液貴重なんだよ……♡ほしい人いっぱいいるんだよ♡オナニーなんかっ、しないで♡毎日全部俺の中に出して♡」
「っ……はぁっ♡お前、ほんとさ、」

腰に当たる蓮さんのちんこがぐっと質量を増して、少し乱れた髪をかきあげる。さっきまでの目と違う。ぎらっぎらのいつもの優しくない蓮さん。

「そんなほしーの?」
「ほし、い♡」
「感じすぎて飛んじまうと思って優しくしてんじゃん。」
「や、さしいのやだっ……♡」
「ドMすぎな」
「っ~~~♡♡」
「つかそこまで言ったんだから飛ぶなよ。」
「へっ♡あっ……♡」
「ちゃんと意識はっきりしてる時に約束して。人形とセックスしたくねぇの俺。」
「っ……ん♡と、飛ばない♡気持ち、良くても我慢するっ♡」
「我慢じゃないだろ。気持ち良すぎて何回イっても、俺が満足するまで受け止めててくれるんだろ?」
「……ん♡全部、受け止める♡」
「ははっ……♡本当、たまんねーよ♡」

快楽がすぎると辛いって、もう蓮さんに出会ってから何回も味わってるのに、中毒的で暴力的な、度のすぎる快楽は、宗教のように俺を沼に嵌めて逃がさない。

「ぁっ♡ひっ……ンン゛♡ぁあ゛~~~~~ッ♡♡」
「まだ半分も入ってないよ……♡悠イクの早すぎ♡」
「あっ、はっ♡い、イクのっとまんな゛っ♡あ゛~~~♡」
「中すっげーうねって、ずっとイってんね。そんな気持ちいい?」

まだ中に入ってる途中。気持ちいいけどこんなの知らない。蓮さんとセックスできてるって改めて思うとダメだ。嬉しい。嬉しい。幸せ。気持ちいい。

「あ゛ッ♡ひっぁ♡♡だめっ♡飛んじゃ♡」
「飛んじゃうの?じゃあ止める?」
「や、やだっ♡うそっ……♡」
「ほら、腰逃げんなって、」

蓮さんの腕に腰が引き戻されて一気に奥に入ってくる。中が蓮さんのでぐぅって圧迫される。苦しいくらいの異常な快楽。

「あ゛ああっ~~~~ッ♡しんじゃう♡だめ♡♡イくのっとまんな♡♡」

圧迫されたまま。1番奥でゆっくり止まる。永遠に終わらない快感。死んじゃう。死んじゃう。本当におかしくなっちゃう。

「悠。」
「ぁっ♡ひっ~~~ッ♡ンン゛~~♡」
「だめなの?」

だめ。本当はもうだめだ。気持ち良すぎて快感が過ぎて蓮さんの顔もちゃんと見えない。息うまくできない苦しい。喘ぎ過ぎて喉痛い。

「っ~~~~♡ぁっ♡」
「悠?」
「もっ、と……もっとしてぇ♡」
「っ……♡あぁ、俺のこと全部受け止めて♡」

意識なんか何回も飛んだ。抜き差しされて奥に蓮さんのが届くたびにはって意識取り戻して、目の前に本当に星が飛ぶみたいな感覚。

「れ、んさっん♡ぁあ゛っ~~~ッ♡またイっちゃ♡」
「いっぱいイけって♡っ♡あ゛ー、すげー締まる♡」

イってるのに力任せに中に入って来て奥を突く。セックスのときのいかにもな生々しい音が響いてて、蓮さんの汗が身体に落ちた。蓮さんの顔、顔、見たい。必死に手、上げて蓮さんの顔に手伸ばした。

「なに、どーしたの♡」
「み、えないっ……♡あ゛っ♡」
「泣きすぎて見えないんだろ。何見たいの。」

手で涙拭ってくれて、やっと蓮さんの顔が見える。快感を逃すような、ギラギラした熱った顔。

「キスしたいの?」

沸騰したみたいに熱い舌にキスされる。舌の間から唾液が流れ込んできて、飲み込みきれずに口から溢れる。それでもまたいっぱいキスをして呼吸が苦しくなって、ぎゅーって蓮さんの頭に抱きついた。

「蓮、さん……♡す、きっ♡ンン゛っ~~~~ッ♡大好きっ♡」
「っ……♡はぁ……♡」
「あ゛っ~~~♡おっきくしないでっ♡♡」
「無理、ねぇっ、悠もっと言って♡」

これ以上は本当に無理だ。絶対飛んじゃう。約束守りたくても、絶対に無理。耳元に響く蓮さんの甘い掠れた声が頭の中をぐちゃぐちゃにかき乱す。

「っぁ♡すき……♡蓮さん♡すき……♡」

涙でまた前が見えづらくなって、でも自分から一生懸命蓮さんの唇を探してキスをする。

「はっ……♡ぁっ、かわい、かわいい、お前本当なんでそんな可愛いの♡」
「ぁあ゛~~~ッ♡ンン゛っ♡好き♡蓮さんっ♡大好き♡」
「っ……♡どこ出してほしーんだっけ?」

知ってるくせに、上手く息できないのに、意地悪で。そんなとこが大好きで。

「おくっ♡俺のなかっ♡大好きな蓮さんのでっ♡いっぱいにして♡♡」
「ッ゛~~~♡はぁっ~~~ッ♡♡」

欲しかったあったかいのが流れ込んでくる感覚。じわーって胸の奥が満たされる。キツく抱きしめられたまま、まだゆっくり流れてくる。

「おなか……♡いっぱい♡」
「はぁ……まぁ、朝も2回出してっからね。」
「めっちゃ……嬉しい♡幸せ♡大切にする」
「大切にしてくれんの?」
「蓮さんがくれたから……♡大切にする♡」

まだ息が整わない中、甘いキスが降ってくる。

「お前のこと全部好き。」
「っ……♡」
「お前に好きって言われると、幸せすぎて頭ふわふわするんだよね。」
「俺、もです。」
「マジ?一緒じゃーん。」

ぎゅーって抱きしめられて、本当いっつも一回ヤった後のこの時間最高に好きだ。普通怠くなるのが常なのに。なんで蓮さん相手だとこんな幸せなの。ずっとずっとこの時間続いてほしいって思う。

「てか、さっき思ったことあってさ。」
「はい……?へっ?ぁっ♡流石にちょっと休憩♡」
「いや違くて、」

胸に顔を埋め立てて吸いつかれる。それこそエロい舐め方っていうより、おっぱい吸われるみたいなちゅちゅってやつ。

「ぁっ……♡やらっ♡ぁん♡またイっちゃ♡」

まだ中に入ったままの蓮さんのを締め付けながら情けなくイってしまう。

「ほら、出た」
「へっ?な、にが?」

蓮さんが口を開けて舌を見せてくる。白い液体。

「ちょっと甘いんだよ。これ。」
「な、何これ?」
「母乳?」

自分の胸に少し残る白い雫。

「え?」
「悠、女になりたいって思ってる?」
「いや、さ、流石にそこまでは思ってない、です」
「あ。そうなの?」

自分の記憶。別にそんなことを考えたことはないはず。いや、あれ?女になりたいとは思ったことないけど。

「れ、蓮さんので、本気で孕みたいっては、か、考えてるかもしれないです。」
「最近?」
「……は、初めてしたときから、ですよ。」
「あーじゃあそれが原因かもな。」
「お、俺身体大丈夫ですかね……?」
「別にいっぱいでてるわけじゃないから心配しなくていいと思うけど。女性ホルモンの分泌の関係で男も出たりするらしい。」

女性ホルモンの分泌の原因がそれってことか。いや、恥ずかしい。蓮さんて的には、セックスを盛り上げる言葉の綾だってわかってるんだよ。わかってるけど。そこだけ。女の身体が羨ましいなって考えちゃうんだよ。

実際この頻度ヤリまくって大学在学中に妊娠したら大問題だし!?どうすんだよって話なんだよ!?それも全部理解してるし、わかってるし。

でもヤってる最中は、もうおかしくなってるから。本気で頭の中蓮さんので孕みたいって、男の身体じゃ孕めないの寂しいって、せっかくもらった精液無駄にしちゃうって、もうそう考えちゃうんだよ。

どうしようもないんだよ。顔熱すぎて死にそう。

「孕みたいの?」
「すいません、」
「孕んだら、赤ちゃんできるってことだよ?」
「す、いません」
「なんで謝んの。」
「だ、だって、」
「うん。」
「孕んだら、蓮さんのこと一生俺のものに、できるじゃないですか、」
「うん。」
「お、女の子だったら……れ、蓮さんとけ、結婚、できる、」

死にたい。マジで。何言ってんだ。俺。本当。ヤバいやつすぎる。

「蓮さんの、……そばにずっといたい。」
「ははっ……ふっはは、」

ぐしゃぐしゃって頭かき混ぜられて、抱きしめられて。キスされる。

「ちゃんと責任取るよ。毎日中出ししてんだから、いつできてもおかしくねーしな。」
「っ……」

死んでもいいくらい幸せだ。頭おかしくなる。いろんなものが溢れて、パンクするよ。マジ。結局最後まで現実かどうか信じらんなかった。





「ゆ、悠くん、僕ホントに悠くんのことが好きで。」
「あぁ、うん知ってるけど。」
「お金ならホントにいくらでも払うから、デートだけでも、」
「マジで無理。つか俺もうヤリサー入ってねぇって知ってるよな。」
「じゃ、じゃあこれだけでも受け取ってほしくて、」
「いらねーよ……、何で金渡してくんの?キモいんだけど、マジで、話しかけてこないでくんね。」
「なんであの男は良くって僕は、僕は、」
「こえーよ、」

腹をけり飛ばした。最近どこかから聞いたか知らないが、ヤリサーの人数が爆増したらしい。あの日のSNSに上げられた写真が、それはそれはバズりにバズって、滝という写真家は律儀に俺のアカウントをタグ付けしたもんだから、本当に面倒くさいことになった。ゲームサークルはある程度のレベルに達してないと入れないシステムだから、安心なんだけど、男も女も、ヤリサーの人数は爆増。大学最大規模のサークルがヤリサーの大学ってどうよ。

言っとくけど、相当頭いい大学だからな。全員頭のねじどうなってんの?

「あ、悠くんじゃん。」
「……お、お前、」

滝だった。全ての元凶。いやちゃんと30万貰ったので文句を言うつもりはないのだが。

「大変そうだね。」
「お前のせいじゃね?」
「いや蓮さんがそもそも影響力のある人だからね。気合入れるでしょ。就職決まりそうだし。」
「そなの?おめでとう。つか何年?」
「3年。」
「せ、先輩だったんですね。」
「いいよ。敬語なんて。悠くんのおかげで入りたいところに行けそうなんだ。今度ご飯おごるよ。」
「それはどうも。」
「蓮さんとはどうなの?」
「特に、変わらず、」
「毎日ヤってる?」
「……お前デリカシーないね。」
「いやまた撮らせてほしいなって。」
「やだよ。」
「もう、大学中全員知ってるって。次はもっと払うよ。機材もよくしたんだ。蓮さんはいいって言ってた。」
「なんでそっちに先許可とんの!?」
「配信の閲覧も増えたし、客も増えたし、個人的に会ったりしないなら別にいいってさ。悠くんだって人気になるの気分がいいだろ?」
「……いや、俺はあんまり、蓮さん以外から好かれても、今一つ喜びを感じないし。蓮さんだってただの金づるだろ。」
「悠くんだって金巻き上げればいいじゃん。さっきのだってなんで受け取んないの?」
「こえーだろ。昔女に刺されそうになったことあんの、もうこりごりなの!」
「金で釣れないってなるとなぁ……、あっ、セックスで盛り上がるラブグッズとか流してあげようか?」
「は?」
「こういうのやってるとさ、いろいろ新しいのもらえるんだよね。蓮さんとのセックスは今は十分盛り上がってるかもしれないけど、いつかはマンネリ化するかもしれないでしょ?その時に悠くんがもっとえっちになれるためのグッズとか、そもそも行為自体を盛り上げるやつとか、媚薬とか、いろいろあるよ。」
「……うるせ。」

立ち去ろうとしたら腕つかまれた。

「興味ある?」
「ない、」
「いやあるでしょその顔は。母乳とかもっと出たら絶対蓮さん喜ぶと思うよ?」
「う、るさい、」
「はい。これ、女性ホルモンをちょっとだけ多くできる薬。あげるから。試してみなよ。」
「い、いら」
「またほしくなったときは撮影よろしく。」

ちょっとファンだった有名なY〇uTuberから遊ぼうって来て遊んだらホテル連れてかれそうになったし、高校時代の仲良かった部活のメンバーと遊んだら身体触られたし、ノリで行ったカラオケで女に睡眠薬盛られたし、ヤリサーの先輩に呼ばれて行ったバーは乱交パーティーだった。

全部滝のあの写真のせいだ。あの写真のせいで、現実だけでなく顔を出してなかった、ネットまで出会い厨だらけになった。ちょっと恨んでる。

のに、この薬を突き返せない俺は、結局本当に俺だと思った。あぁ、蓮さん喜んでくれるかな。


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みんなの感想(2件)

鳶色
2024.05.22 鳶色

二人のお互いがお互いを補完し合う関係性が素晴らしいです!
悠のどこにでもいる大学生という設定は、話が進んでいくにつれて、本当にこんな人がどこにでもいたら大変だなとおもいました(^^;

解除
狛
2024.04.06

とても素敵な作品ありがとうございます。
とてもとても好きです。

解除
1 / 5

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