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第4話 貴方の春を願う
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しおりを挟むジルベールに連れてこられたのは、雑貨屋だった。
「騎士団で同い年の娘がいるやつに教えてもらったんだ」
そう言いながらドアを開けて中へと入っていく。グレースたちもその背に続いた。
「うわぁ、すごーい」
ミシェルがはしゃいだ声を上げる。ロビンも興味深そうに店の中を見回していた。
雑貨屋には、様々なものが所狭しと並んでいた。可愛らしい髪飾りに小物入れといった女の子向けのものから、木製のドラゴンの模型や玩具の剣といった男の子向けのもの。かと思えば、大人の女性向けと思われる化粧品もあって、本当にこれといった決まりはなく、色々なものが取り揃えられていた。
だからか店内は様々な年齢の人々がいて、なかなかに賑やかだった。
「初めて入ったが、すごいな」
「私たちも初めてです。表通りはあまり来たことがなくて……」
「俺も見回りで店の前を通ることはあったんだがな。さあ、ミシェル、何か欲しいものはあるか? ロビンも好きなものを一つ、選んでこい」
「師団長様?」
グレースは慌てて、ジルベールを呼ぶ。弟と妹も困ったようにグレースとジルベールを交互に見ていた。いや、弟はジルベールを睨んでいるが。
「せっかくの休日に付き合わせてしまっているんだ。それに対する対価だ。いいか、一つずつだぞ。ほーら行ってこい」
二人はジルベールに背を押されると、最初の一歩二歩は躊躇ったが、その内、嬉しそうに行ってしまった。黒と灰色の尻尾が、ぴんと立っている。
「師団長様……」
「いいんだよ。君には世話になりっぱなしだ。それにミシェルが選んできたものを選べば、俺が選ぶよりは喜んでくれるはずだ。五歳の女の子の欲しいものなんて、俺にはさっぱりと分からない。一緒に暮らしているわけでもないから、好みも分からないんだ」
それは確かにそうかもしれない、とグレースは曖昧に微笑むしかない。ジルベールは、確か三十歳くらいだ。独身で身近に子どももいなければ、分からないだろう。
「君も何か選ぶといい。今日の礼だ」
「いえ、弟と妹の分で充分です」
グレースは首を横に振った。ロビンはもう十歳だから大丈夫だろうが、五歳のミシェルは心配でちらちらと様子を確認する。ミシェルはぬいぐるみが並ぶ棚の前で真剣に吟味している。
「…………ありがとうございます。父が死んでから、何もしてあげられていなくて」
グレースは十五年間、誕生日になれば、両腕に抱えきれないほどのプレゼントをもらっていた。でも弟も妹もそんな贅沢を知る間もなく、今の暮らしが始まってしまった。普段、二人とも我が儘なんて言ったこともない。
「そんなことはない。君や母君が、きちんと向き合っていて、愛情を惜しみなく注いでいるから、二人とも良い子だ。それにロビンは、しっかりしているな。姉に近づく男をちゃんと警戒している。御父上の代わりを果たそうとしているのだろう」
「……まさか、それであんな態度に……?」
思いがけない言葉にグレースは目を丸くする。ジルベールは、くくっと喉の奥で笑った。
「今だって俺を警戒している」
ジルベールが顎でしゃくった先を見れば、ぴゅんと何かが引っ込んだ。黒い尻尾が見えたので、その正体は分かったが。
「す、すみません……師団長様にとんでもなく失礼なことを」
顔を青くしたグレースにジルベールは首を横に振った。
「いや、あれくらいの警戒心があるほうがいい。君はどうにも隙だらけだからな」
「隙?」
言われてみてもよくわからない。家族を悲しませるのは本意ではないから、それなりに警戒しているのだグレースだって。
「…………君は、聞かないんだな」
「聞いたら教えてくださいますか? 自分のどこに隙があるか、分からなくて……一応、夜道を歩かないようにしたり、男性とは二人きりにならないようにしたりと気を付けているのですが……」
グレースは今後の参考のためにもと言葉を添えた。
するとグレースを振り返ったジルベールは、まじまじとグレースを見つめた後、なぜか片手で口元を覆ってそっぽを向いてしまった。気のせいでなければ、彼は、多分、間違いなく――笑っている。
「師団長様? 私何か変なことを……?」
慌てるグレースにジルベールは、笑いを零しながら首を横に振った。
「違う違う。俺が言いたかったのは、『妹のこと』は聞かないんだな、という意味だったんだ。言葉を端折ってしまった俺が悪い」
「す、すみません……私ったらまた変な勘違いを」
本日二度目の勘違いに頬が熱くなって目を伏せる。
「俺にソフィアという恋人がいるという勘違いか?」
「忘れてください……っ」
からかうような声音に思わず睨みつけると、ジルベールは可笑しそうに笑って「はいはい」と軽く頷いた。
だが、ふと右手と左手に持ったぬいぐるみを真剣に見比べるミシェルに視線を向けると、寂しげな表情を浮かべる。
「……妹だけじゃなく、七歳の弟もいる。確かに血は繋がっているが、半分だけ。異母兄妹なんだ」
ジルベールが淡々と告げる。
グレースは手の甲を頬に当てて、熱を冷ましながら耳を傾ける。
「……俺の母は当時、酒場で女給をしていて、お忍びで訪れた父と出会った。父は身分を隠していて、冒険者だと言っていたそうだ。それで二人は恋人になって、俺ができた。俺ができて初めて、父は自分がただの冒険者ではなく……伯爵家の人間だと明かしたそうだ」
「そ、れは私が聞いてもいいお話なのでしょうか……?」
おろおろしながらグレースは確認する。
「君は面白おかしく言いふらしたりしないだろう?」
「もちろんです」
グレースはすぐさま頷いた。ジルベールはそれに満足そうに頷いた。
「俺の母は負けん気が強くて、嘘が嫌いだった。だから『認知も結構。一人で育てる』と告げて父を捨てた。だが、父は……母を諦めきれなかった。父の両親は、母が平民だったので猛反対していたようだが、それにもめげなかった。ただ父は……宝物を得る正しい方法を知らなかった」
意味がわからずグレースは首を傾げた。
「追い詰めて、追い詰めて、自分しか頼る者がいないような状況にすれば、母を得られると勘違いしたんだ。それで母の勤め先に嫌がらせをしたり、圧力をかけたりして仕事を辞めさせた。母は曲がったことも大嫌いだったから、逆にやる気をみなぎらせて徹底抗戦し、父の権力ぐらいではどうにもならない冒険者ギルドに資格を取って事務員として就職した。今もそこで働いている」
「すごいですね、お母様」
冒険者ギルドは、全ての人々に門を開いている場所だ。貴族や、例え王家の命であっても筋の通らないものは受け付けない。一切の寄付を拒否し、魔物を相手に奮闘する冒険者たちの命がけの努力によって運営費が賄われているため、ある種の独立した機関だ。
「ああ。だが……職が続かないから幼い頃は本当に貧乏だった。一日に小さな黒パンを一つ食べられれば幸運だという日もあった。それでも俺が十歳になって母が冒険者ギルドに就職してからは、暮らし向きは大分、改善されたがな。だが……」
そこで言葉を切ってジルべールは目を伏せた。
「……今度は俺を標的にした。姑息な人だから、俺の友人の親の仕事先に圧力をかけたりして、親が『ジルベールとは仲良くするんじゃない』と言うように仕向けたんだ」
「どうして、そんなことを……っ」
「母にとって唯一、俺が弱点だったからだよ。俺を攻撃すれば、母が自分に泣きつくと思ったらしい。結局、学校の先生にも何かしたんだろう。すまないが辞めてくれ、と言われて学校を途中で辞めた。だが、そうなると就職先がない。十三歳の学もない金もない当てもない、ないない尽くしの少年だ。腕っぷしに自信はあったから冒険者にでもなろうかと思ったが、俺から唯一離れなかったノエルが『騎士を目指しませんか』と声をかけてくれて、運よく俺は騎士になれた。そこからはもうがむしゃらに突っ走って、気づけば師団長という立場になった。伯爵位と言ってもそこまで権力があるわけではない。今なら俺の方が父よりは顔が利くから、大人しくなったものだよ」
「努力されたのですね」
「負けたくなかった。それだけだ……だが、未だに父は母を諦めていなくてな」
面倒くさそうにジルベールは溜息を零した。
「でも、弟さんと妹さんがいるということは、お父様はご結婚されたのですよね?」
「ああ。十年ほど前に痺れを切らした両親によって調えられ政略結婚をしたそうだ。だが、母を想い続ける父に愛想を尽かして、あの子たちの母親は妹を産んで半年後に若い男と駆け落ちしたそうだ」
「……まあ」
なんと言っていいか分からず、グレースはそうこぼすだけにとどめた。
「正直なところ弟は父親似なのであれだが、妹は母親似だから、本当に父の子どもかは分からない。だが父はそれにさえ興味がないんだ。そもそも弟にも妹にも興味がない。だが、俺に権力が通用しないと悟ると、今度は弟妹を使って俺に取り入ろうとしているんだよ。俺だってまだ年端も行かないあの子たちを邪険には扱えない。……祖父母も既に他界していて、唯一の肉親である父親に愛されない分、多少かまってくれる俺を兄だと慕ってくれている」
「師団長様のお母様は、そのことをどう受け止めているのですか?」
「…………そうだな、その、あまり人前では言えない罵詈雑言を父に向けていた、とだけ」
すっと視線をそらしたジルベールにグレースは「そうですか」としか言えなかった。
「ただ、子どもに罪はないから俺によく様子を見るように言ってくる。情に厚い人だから、心配なんだろうな。……母は二人に会ったことはないんだがな」
きっとジルベールの父親は、母親が情に厚いことを知っているからこそ、息子と娘を利用しているのだろう。同情で彼女を引き込もうとしているのかもしれない。それを分かっているから、彼の母親は幼い二人には会わないようにしているのだ。
「だから、俺個人は大事なものは作らないと決めている。父はきっと、未だに俺が大事だと思ったものを壊す隙を狙っているのだろうからな」
彼の言葉とは正反対の少女たちの軽やかな笑い声が聞こえてくる。小さな男の子が母親にねだる声も買ってもらった何かを喜ぶ少女の声も穏やかなのに、ジルベールの言葉と声だけが平和な世界から切り離されてしまったかのようだ。
「師団長としては、大事なものが持てる。守れる自信もある。君が認めてくれた通り、それだけの努力をしてきた。だが俺個人では持たない方がいい。だから恋人も作らないし、結婚もしないつもりだ」
静かに諦めたように告げるジルベールに、グレースはなんだかひどく悲しい気持ちになってきた。
「……なんで、君が泣くんだ」
驚いたように見開かれた青い瞳にグレースは、初めて自分が泣いているらしいことを知る。頬に触れてみれば、確かに指先が濡れた。
「ど、どうした? どこか痛むのか?」
ジルベールがわたわたしながらグレースの顔をのぞき込んでくる。
グレースは確かに彼に恋をしている。憧れだったものが、傍にいる分、ぐんぐん育って立派な恋心になった。
だからジルベールが恋人を作らない、結婚はしないといった時点でグレースは失恋したことになる。失恋は悲しいものだ、でも、違う。この涙は、違う。
「すまない、変な話をしてしまったな」
この優しい人が、幸せを諦めていることが、自分の失恋よりも何よりも悲しかった。
もちろん恋人を作ることや結婚が幸せのすべてではないことはグレースも知っている。
でも、きっとジルベールはそれ以外の幸せだって、諦めてしまっている。
「ちがいます、ちがうのです……っ」
グレースは両手で顔を覆った。何が違うのか自分でもわからないけれど、何度もそう繰り返した。
だってこれは、この涙は、あまりに自分勝手なものなのだ。ジルベールはそう納得して生きているのだから、グレースが泣いたってなんの意味もないことは分かっている。
でも、心というものは複雑だから、グレースは、心を寄せるジルベールが、グレースを助けてくれた優しい彼が幸せであるように願ってしまう。
「だが……こんなに泣いているのに……」
大きな手がグレースの手首をつかんでそっと顔から外して、のぞき込んでくる。鼻先が触れ合うような近さに青い瞳があった。
「あまり泣くと目玉が溶けてしまうぞ」
いつもグレースを助けてくれる大きな手が、壊れ物を扱うかのように繊細にグレースの頬をぬぐう。
剣を握るジルベールの手の皮膚は硬くて、彼が守り続けてきたものの証がそこにあるように感じられた。
「師団長様……っ」
グレースは彼の頬に手を伸ばした。
「……冷たい冬もいつか終わりがやってきます。雪がたくさん降って真っ白な世界になっても、いつか必ず春が訪れます」
祈りが涙に濡れていてはいけないと、なんとか止めようとグレースは頑張る。
青い瞳が呆然とグレースを見上げている。
「……だから、どうか、貴方に暖かな春が、訪れますように」
きっと幸せを願うのは重すぎるから、せめて優しい貴方がどうか、暖かい春に包まれて穏やかに過ごせますように。そう願いを込めて、グレースは微笑った。
父や母がそうしてくれたように、彼の頬にいつも笑みがありますようにと、触れたままだった彼の頬を撫でた。
ジルベールは、何も言わなかった。ただ青い瞳が、真っ直ぐにグレースを見つめて噛みしめられた唇が、はっと小さく息を吐き出した。
「……春は」
「ねぇね!」
ようやく口を開いたジルベールの言葉を遮るようにミシェルがクマのぬいぐるみを抱えてこちらに駆け寄ってきた。
グレースは、すっとジルベールから手を離す。ジルベールの手もまた離れて行った。それが少し寂しいなんて思う気持ちは、心の奥の一番、深いところにしまい込む。
残る涙をミシェルに気づかれないようにぬぐって、顔を向ける。
「ねぇね、これにする!」
ふわふわのクリーム色の可愛いクマのぬいぐるみは、ミシェルの瞳の色と同じ若草色のワンピースを着ていた。
「可愛いわね」
「それでね、あのね、しだんちょーさんのいもうとちゃんにはね、これがいいとおもうの」
ミシェルがもう片方の腕に抱えていた綺麗な薄紅色のウサギのぬいぐるみを差し出した。こちらの子は、赤のワンピースを着ていて可愛らしい。
「俺では選べなかったな。これにしよう」
ジルベールはいつもの彼に戻っていて、ほっとしたようにそれをミシェルから受け取っていた。
「師団長様、もしよろしければカードを添えませんか?」
「カード?」
「はい。あそこの棚にいくつかあるようですから」
グレースは、すぐそばの棚を指さし歩き出す。
そこには様々なデザインの可愛らしいメッセージカードが並べられていた。
「何を、書けばいいんだ?」
「別に難しいことなんていいと思います。……お誕生日おめでとう、ってただ一言添えられているだけでも嬉しいはずです」
グレースの提案にジルベールは戸惑っているようだった。
「俺はカードなんてもらったことも書いたこともないんだが……ミシェルだったら嬉しいか?」
「うん。かわいいカードだったら、もっとうれしい」
実の妹と同い年のミシェルの意見は、何より心強いようで律儀にミシェルに確認を取るジルベールはなんだか可愛らしく思えた。
「せめてカードは師団長様が選んでくださいね」
最初に釘を刺すとジルベールは、うんうんと唸りながら悩み始めた。
「……可愛い、とは?」
初歩的な問題にぶつかっているジルベールを横目に、グレースとミシェルは彼が無事にカードを選び終わるのと、ロビンが戻って来るのをじっと待つのだった。
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