称号は神を土下座させた男。

春志乃

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番外編 2

五級騎士の災難

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 どうも、初めまして。
 俺は、アゼル五級騎士だ。鼬系の獣人族で二十一歳、男。鼬の獣人だから平均より大分小さくて細っこいが俊敏さにかけては自信があるんだぜ。好物は無論、肉だ。昨年の春の入団試験(三回目の挑戦)で合格し、半年間の見習い期間を経てクラージュ騎士団第一師団第三大隊へ所属していたんだ。でも一週間ほど前、音の月一日付で街道・運河・ダンジョンの監視を主な任務としている第三大隊から異動になり同じ第一師団でも花形とも言える領都の警護を主な任務とする第一大隊へと異動してきたんだ。
 異動のきっかけは、ブランレトゥそのものを巻き込んだ大きな事件によって第一大隊の人員が大幅に削減されてしまった結果、各大隊、そして、各師団から多少人員が補充されることになったからだ。第三大隊からは、二十名が第一大隊へと異動になった。一級騎士が一名、二級騎士が五名と二級への昇進見込みのある三級騎士が十三名、五級騎士は俺一人だ。四級以下は半人前も半人前という扱いなので「くじ引きで一人だけ」という狭き門を俺は見事に潜り抜けてきたわけだ。
 そして第一師団第一大隊第一中隊第六小隊所属になった俺は領主様も暮らす領都、もしかしたら領主様の目に留まって大出世なんてこともあるんじゃないかと夢を見ていた。

「まあ、夢は見るだけならタダだからなぁ」

 五級の俺の仕事は、騎士団本部の門番、ではなく、門番の補佐、である。
 騎士団の本部は、ブランレトゥの北、緑の地区に川の向こう、領主様の居城がある丘へと続く橋を護るように位置している。緑の地区は騎士団と魔導院で占められていて、騎士団内の広い敷地にはいくつか門がある。俺が居るのは様々な人の出入りが多い正門だが、他に騎士たちが暮らす寮から外へ出入りするための門、騎士団で働く掃除婦や料理人といった人々や騎士団に野菜や資材を卸す商人が出入りするための門なんかもある。
 俺の仕事は、門番業務に分類されるが正門番のように騎士たちの入出を記録したり、来客を案内したり、来客の身分証明書を発行したりはしない。正門の門番の中で一番の下っ端で新入りの俺は、来客の馬を預かったり、馬車をロータリーへ誘導したり、客人を案内するのが仕事だ。見習いと五級の違いなんて、騎士の制服を着ているかどうかくらいのものだ。
 とはいえ色々な人日が毎日やって来るので人間観察には事欠かないし、馬も好きだ。それにお客さんや御者さんたちと話をしていると色々なことが知れて面白い。
 彼らの口の上に上るのは、もっぱら美しい神父様の話題だ。
 最悪の天災・インサニアからこの町を救ったという英雄みたいな逸話を持つ神父様だ。
 騎士は三交替制なので毎日とはいかないが、それでもかなりの頻度で俺は神父様の乗る馬車を迎えたり見送ったりしている。神父様の馬車はロータリーの方へは行かない。本部の玄関に馬車を横づけすることが許されている身分だからだ。
 俺はまだ神父様も神父様と一緒にいるっていう見習い神父様も実物は目にしたことは無い。お二人は正門を通るのは出勤と退勤の時だけで仕事の合間にお出かけになる際は、馬たちがいる厩の方にある門から出入りしているからだ。ここを通る時は馬車に乗っているのだ。

「おい、来たぞ!」

 先輩の掛け声に騎士たちが一斉に姿勢を正して、俺も慌てていつもの場所へと言って姿勢を正して到着を待つ。
 蹄の音と車輪の音が聞こえて来て、美しい葦毛の馬と青毛の馬が引く馬車を神父様の護衛騎士であるリック護衛騎士が操り、その横を見習い神父様の護衛騎士であるエドワード護衛騎士が愛馬に跨り並走している。

「おはようございます」

 門の前で馬車は止まり、リック護衛騎士が穏やかな笑みを湛えて挨拶を口にすれば、門番たちが一斉に騎士の礼を取り、挨拶を返す。エドワード護衛騎士が門番に騎士カードを見せて身分を証明すると門が開かれて、リック護衛騎士が手綱を引いて馬車は中へと入って行く。
 俺は騎士の礼を取ったままその馬車を見送る。

「はぁー、緊張した」

 馬車が見えなくなった後、俺の五期上先輩の三級騎士・ダレンさんがふーっと息を零す。とはいえ、ダレンさんだけではなく門番たちが皆、気を緩めているんだけど。
 ダレンさんは、俺の相棒だ。騎士は基本的に二人一組で行動するため、配属された先で必ず相棒を得る。ダレンさんは二十五歳で年も近いし、同じような田舎の農村出身と分かってからは更に可愛がってもらっていて、仕事に関すること以外にも色んなことを教えて貰っている。ダレンさんは正門番なので、俺はダレンさんの指示で基本的には動いている。

「毎朝、何でそんなに緊張するんすか?」

 俺は訳が分からず首を傾げる。
 どうしてか先輩たちは皆、神父様の馬車が来ると先ほどのように一気に姿勢を正し、騎士の礼を持って迎える。配属初日、そんなことは知らなかった俺は暢気に構えていたものだから慌てたダレンさんに小声で指示されて騎士の礼をとって神父様の馬車を迎えた。

「神父様ってそんなにおっかない人なんすか?」

「…………いや、怖くはねーよ? 基本的には良い人だし、優しい人だ。俺、普通に尊敬してるしな。常に無表情だけど冷静で理知的で無駄がないし、何をしても洗練されてるし、格好いい。だけど、なんつーかなぁ、うん、実物に会えば分かる」

 ダレンさんの言葉はよく分からなかったが、周りの先輩たちはうんうんと頷いている。

「俺、神父様が実は王族だったとか言われても納得するぜ」

「確かにな」

 先輩たちがそう言って、可笑しそうに笑った。
 神父様は嫌われている訳ではない。怖がられている訳でもないけれど、騎士たちは確かに緊張しているんだ。
 すると不意に蹄の音が聞こえて、顔を向ければ見習い神父様の護衛騎士のエドワード護衛騎士が愛馬と共にこちらに戻って来る。

「ダレン」

「どうした、エディ」

 ダレンさんは呼ばれて首を傾げながら近づいて行く。エドワード護衛騎士が馬から降りてダレンさんと話をする、ダレンさんが笑いながらエドワード護衛騎士の肩を叩き、エドワード護衛騎士も可笑しそうに笑うと軽く手を挙げて愛馬に跨り、元来た道を戻って行った。

「お知り合い、なんですか?」

 戻って来たダレンさんに訪ねる。
 ダレンさんは、同期だからなとあっけらかんと告げた。

「えっ、同期!? だ、だってあの人って護衛騎士ですよね!? エリート中のエリートじゃないっすか!」

 俺は思わず去って行ったエドワード護衛騎士とダレンさんを交互に見る。

「あいつとリックは、間違いなく俺の同期だが、俺より六つ下、んでお前より二つ下だ」

「えっ!」

 俺は驚きに目を見開く。

「俺やお前と違って、十五で一発合格、その上、昇級試験もあっという間に駆け上り、今じゃ二級騎士の上、エリート中のエリートと名高い護衛騎士様だけどな。俺なんて苦労してどうにかこうにか去年、三級に合格したっつーのによ」

 そうは言いながらもダレンさんは、ははっと快活に笑う。

「ゆ、優秀ってことですよね?」

「おうよ。リックは属性は一つだが扱いが難しい地の属性を副属性まで完璧に使いこなす。エドワードは由緒ある貴族の出だけあって魔力量も質もかなりもんだし、二人とも頭の回転も速いし、剣に関しちゃ同期の中でも群を抜いてる。訓練の場で団長の目に留まって、カロリーナ小隊長の下に配属された。今はどうなっちまったか知らねえけど前の上司の中隊長はそれが気に食わなくてあれこれ邪魔してきやがってよ。ある日、三十人弱の盗賊団の討伐を二人で片付けて来いって、まだ五級騎士だったあいつらに言ったわけ」

「え!? それってつまり俺がもう一人、俺と一緒に行くってことっすよね!? 死ねってことじゃないっすか」

「そうそう、その通りだ。カロリーナ小隊長も激怒して危うく中隊長を燃やしかけたんだが、二人は「行ってきます」つって出かけちまって……んだが三日後、二人はあっけらかんと荷馬車に盗賊三十人積んで戻って来たっつーわけ。んで、団長に表彰されてその場で四級昇格。ちなみに見習い終わって一年後のことな。そんでまあそれからも活躍目覚ましく、最終的には今や神父様の護衛騎士だ。とはいえ、エディは気さくで人懐こいし、リックも真面目で誠実で二人とも俺より級が上なのに今でも同期だが年上の俺をきちんと立ててくれる良い奴らだよ」

「……イケメンで優秀で性格も良いとか、神様は彼らに色々与え過ぎでは?」

「ははっ、確かになぁ。さーて、この話はまた後でしてやっから仕事に戻るぞ」

 ダレンさんはそう言って、持ち場である石造りの土台の上にある机へと戻って行き、俺もその後ろへと控える。一応、屋根があって雨風はしのげるようになっている。
 こうして今日も俺は、せっせと門番の仕事に精を出す。








 門番は全部で六人いる。正門番二名が左右の門柱の前に立ち、三人目の正門番であるダレンさんは来客者の身元のチェックと来客証の発行、四人目の正門番はダレンさんと俺の向かいに居て、騎士たちの入出チェックをしている。そして俺ともう一人、俺と同じ下っ端騎士が雑用係としてそれぞれについているのだ。門番は基本、三級以下の騎士たちの仕事だ。ブランレトゥの東西と南の門も三級以下の騎士たちが管理を任されている。領主様や領主様の下へと訪れる貴族が出入りする北門だけは、二級以上の騎士の管轄になっている。
 門番の仕事は、ただ入出の管理をしているだけじゃない。臨機応変に対応しなくてはならないし、お客さんがどこへ行きたいのか、どこへ案内すればいいのかを瞬時に判断しなければならないからだ。それにクラージュ騎士団は貴賤を問わないため、貴族籍の騎士もいる。その奥方や使用人が来た時だって礼儀を弁えた適切な対応が求められるのだ。
 移動して来て早三週間、まだまだひよっこの俺だがどうにかこうにかこの仕事に慣れて来て余裕が出て来た。不思議なことにこの三週間で俺はあったことも無い神父様について詳しくなっていた。だって案内する人案内する人、皆が神父様と見習い神父様のことを話題に出すのだ。
 神父様は、それはそれは美しい人だとか養子として貧民街の孤児を二人引き取って、とにもかくにも溺愛しているとか。溺愛し過ぎて子供服を店ごと買おうとしたとか、息子のために本屋を買おうとしたとか、見習い神父様は見習い神父様で伝説の魔獣を三頭も従魔にしているとか、冒険者ギルドの一番人気の受付嬢と交際していて常にイチャイチャしているから胸やけがするとか。俺の中の神父様の人物像がますます謎に包まれて行く。

「やっぱり一度は見てみたいよなぁ」

 うんうんと唸りながら俺は、ハンカチに包まれた食堂で作ってもらったサンドウィッチを手に正門へと歩いて行く。今日は、昼からの出勤だ。このサンドウィッチは休憩時間の間食用だ。昼飯は先ほど食堂でたっぷりと食べて来た。

「交代の時間より少し早いけどまあいっか」

 騎士団は夜だからと門を閉じることは無い。夜の方が日中に比べて勤務人数は少ないが二十四時間体制で町を護っているので当たり前だ。故に門番も二十四時間、年中無休で営業中だ。

「よう、アゼル。早いな」

 後ろから肩を叩かれ振り返れば、ダレンさんが居た。

「ダレンさんも早いっすね」

「おう。ちょっと気になることがあってな」

「気になること?」

 俺が首を傾げるとダレンさんが足を止めて、辺りを見回した。つられて俺も周囲を見渡すが近くには誰もいない。するとダレンさんが小声で話し始める。

「今日の門番は、ローレンス二級騎士なんだがな」

「え? なんで二級騎士が門番を?」

 ローレンスという騎士は知らないが、三級以下の仕事である門番を二級騎士がやるなんて何かやらかしたと言っているようなものだ。
 ダレンさんは困ったように眉を下げる。

「ローレンス二級騎士は、お前と同じように異動してきた騎士だよ。確か彼は別の師団に居たんだが、厄介払いされて移動になったらしい」

 俺は、へぇ、と頷く。
 第三大隊から異動してきた騎士は、くじによって選ばれた俺以外、領主様や団長の力になる優秀な騎士が選ばれているが、遠くの師団なんかからは優秀な人たちに混じって厄介者が体よく監視の厳しい第一師団へと左遷されたという話を聞いたことがあった。

「それでローレンス騎士は、町の治安維持が基本の第三中隊に配属されたんだが、一昨日、やらかした」

「何をです?」

「……一昨日、ローレンス二級騎士は、相棒のピアース二級騎士と市場通りを警邏中に財布を落とした。それを子供が拾ってくれたんだが……ローレンス騎士は、あろうことかその子どもが自分の財布を掏ったんじゃないかと疑ったんだ」

「え、最低じゃないっすか」

「ああ、最低だとも。しかも疑った理由が、孤児院の子どもだったからだ」

「ますます最低っすね!!」

 俺はおもわず尻尾を膨らませて顔を顰めた。ダレンさんが、苦笑交じりに頷く。

「ピアース騎士と子どもと一緒にお遣いに来ていたジョシュア殿がローレンス騎士を窘めて、市場通りの人々の証言もあって誤解は解けたらしいが、ピアース騎士が上に報告してローレンス騎士は、ピアース騎士との相棒を解消、騎士として町に出るのを禁じられて、今度、審議にかけられる。その結果が出るまでは門番として人を見る目を養うように命じられたんだ」

「自業自得じゃないっすか。……でも審議にかけられるってことは厳罰が下されるってことっすよね?」

「ああ。なんたって孤児院は、冒険者ギルドの運営する機関だが、孤児院の設立に尽力したのは他ならない神父殿だ。領主様も団長も各ギルドもインサニアという脅威からこの町を救うほどの実力を持つ神父殿を絶対に敵には回したくないんだ。神父殿の手前、ローレンス騎士は間違いなく謹慎、減俸処分になるだろうさ。下手すりゃ降級、いや、除籍だな」

 そう言ってダレンさんは肩を竦めた。

「神父殿ってそんなに偉い方なんですか?」

「見習い神父殿は団長やレイ殿に匹敵するほどの実力、神父殿に至ってはSランクの冒険者、或は、宮廷魔導士長に匹敵するほどの実力をお持ちだ。この町全体を覆ったインサニアを浄化し、砦でアンデットの軍団に襲撃されていた領主様と仲間たちを助けて下さったのも神父様だ。そしておそらく、この王国で浄化の力を持つのはあのお二人だけだろう。団長も領主殿もギルマスたちも皆、神父殿の力をこの地に留めようとしている。それに万が一、神父殿の怒りを買ってしまえば、ブランレトゥはあっという間に神父殿の手に落ちるだろうなあ。非常に優秀な方だから人の上に立ち、アルゲンテウスを治め、繁栄させるくらいは訳ないさ」

「何て言うか……俺みたいな下っ端が心配すんのもあれっすけど、大丈夫なんすか? 騎士団、乗っ取られたりしません?」

 俺の問いにダレンさんは、ぱちりと目を瞬かせたあと、ははっと声を上げて笑った。

「ないない、だって神父様は神父様であって騎士じゃねえからなぁ。それにあの人、今、執務室で娘のドールハウスを作ってるし」

「……は?」

「この間まではせっせと服を作ってたけどな。すげーぞ。家を建てるのとまったく同じ工程で家を作っててな、今日は外壁に漆喰を塗ってたなぁ」

「……え?」

「神父様のお嬢様が大事にしているぬいぐるみのラビちゃんのお家だそうだ。ちなみにこのラビちゃんも神父様の手作りな」

「ちょっと言っている意味が分かんないっす」

 俺は真意を求めてダレンさんを見上げる。ダレンさんは、ふっと優しく目を細めて、可笑しそうに笑う。

「あの人は結局のところ、娘と息子に害がなけりゃ大人しいってことさ」

「おーい、ダレン!」

 大きな声がダレンさんを呼んでそちらに顔を向ける。建物の二階から手招きをしている。俺は知らない人だったがダレンさんには心当たりがあったようで「あ、忘れてた」と呟いて俺を振り返る。

「先行っててくれ、何かあったらすぐに知らせてくれ」

「はいっす」

 ダレンさんは「悪ぃ、今行く!」と返して駆け出していく。俺はその背を見送って、再び門の方へと歩き出した。
 神父様の謎がますます深まった。親馬鹿なのは知っているが、まさか娘のドールハウスを建設するとは思っていなかった。俺の考えている親馬鹿と次元がちょっと違うかも知れない。そうだよな、だって店ごと買っちゃうような人だもんなぁと俺は独り頷きながら職場である正門へと足を進めていた。
 辿り着いた正門でいつもダレンさんがいる机の前にいたのは、見知らぬ騎士だった。三十後半くらいの茶色い髪の騎士で背が高く引き締まった体をしている。彼の補佐をしていたらしい俺の同室でもある五級騎士のレイスが俺に気付くとほっとしたように表情を緩めた。

「おはようございます。第一師団第一大隊第一中隊第六小隊所属アゼル五級騎士です!」

 俺はとりあえず挨拶をした。
 ローレンス騎士と思われる男はちらりと此方を振り返る。青い瞳が俺を値踏みするように細められた。初対面から嫌な奴に違いないと俺の本能が伝えて来る。俺のふさふさの尻尾が不愉快だと揺れたり膨らんだりしないように気を付ける。

「ダレンはまだ来ないのか」

「はっ。俺が少し早めに来てしまっただけですのでダレン三級騎士は、時間通りにいらっしゃるかと」

「ちっ」

 まさかの舌打ちである。
 イケメンと言えなくもない面をしているのに言動がなんて残念な奴だろう。
 とはいえ、相手は二級騎士の先輩だ。俺は大人しくしていようとレイスの隣に並んだ。向かいの騎士の入出をチェックしている騎士が心配そうにこちらを見ていたので、ローレンスに見えないように、大丈夫です、と頷いて返した。
 三級以下しかいない門番の中では、どうやってもローレンスが一番上だ。上下関係がきっちりとして厳しい騎士団では上の者に逆らうことはできない。
 とりあえず、今のところは平和そのものだ。来客の姿もないし、門柱の上では小鳥が二羽ほど囀っている。穏やかな日差しと相まって、何だか眠くなってしまいそうだ。
 どうかダレンさんが一秒でも早く帰って来て、こいつと交代してくれますようにと願っていると、馬車の車輪の音が聞こえて顔をあげた。
 辻馬車が一台、こちらにやって来て門の前で止まった。町中で最も見かけるタイプの一頭立てで屋根のない二人乗りの安い辻馬車だ。馬車屋に頼んで家まで迎えに来てもらって、目的地に連れて行ってもらうときに使うもので町民たちがよく使う。
 だが降りて来たのは、明らかにその辺の一般人では無さそうな仕立ての良い服を着た男の子と女の子だった。男の子は、十一、二歳、女の子は四歳か五歳くらいだろうか。二人は手を繋いでいて、男の子は書類でも入っていそうな大きな封筒を女の子はうさぎのぬいぐるみをその腕に抱えている。
 男の子がお金を渡すと辻馬車の御者は、軽く帽子を持ち上げて頭を下げると元来た道を引き返して行った。
 門柱の前に立つ門番と男の子が何かを告げ、中へと入って来た。少し悩んだ後、石の台にはめ込まれた「来客者受付」のプレートを読んだのかこちらにやって来た。
 男の子は、女の子みたいに綺麗な顔をしていて淡い金色の髪に紫紺の瞳、有隣族特有の鱗がその頬に浮かんでいる。砂色の髪のとっても可愛い女の子は白い兎の耳からして獣人族だ。多分、二人は兄妹なのだろう。家族で種族が違うことはよくあることだ。どっちにしろ物凄く顔の良い兄妹だ。ご両親は美男美女なのだろう。

「あの、父に忘れ物を届けに来たのですが」

 声変り前の柔らかな少年の声がローレンスに問いかける。
 ローレンスは手元の帳簿に視線を落とす。忘れ物なんかだと騎士から「家族が届けにくるから」という連絡が来ていることが多い。忘れ物に気付いた騎士がシャテンを飛ばして持ってきてもらうからだ。これだけ大きな子供がいるということは、三十代以上で尚且つ二級以上の騎士だろう。三級以下の騎士は騎士として半人前なので給料も安くて結婚できないことはないが、養えないので殆どしない。
 兎系の騎士はいないので俺は美形で有隣族で二級以上で尚且つ三十代以上の騎士を思い浮かべる。あの人かな、この人かな、と考えているとローレンスが顔を上げた。

「そのような連絡は来ていない」

「父は多分、まだ気付いていないと思います。会議は午後二時からなので」

 男の子が言った。レイスが懐中時計を取り出して時刻を確認していたので俺も横から覗き込む。まだ午前十一時を過ぎたところだ。男の子の言う通り、気付いていないのかもしれない。

「連絡が来ていない以上、来客証は発行できない。こちらで届けておくから寄越せ」

 言葉遣いについてこいつは教わらなかったのだろうか、と俺は思わずローレンスを見上げる。レイスが「朝からずっとこの調子なんだ」と嘆くように言った。よく見るとレイスは心なしか昨日よりもやつれている気がする。
 男の子は、訝しむように目を細めてローレンスを見上げた後、持っていた茶封筒に視線をむけるとそれを抱えなおした。

「いえ、大事なものなので父か父の部下に直接渡したいのです。中には入れなくてもいいので呼び出してもらえますか」

 男の子はきちんと人を見る目を持っているし、しっかりした子だと俺は内心で拍手を送るが、どうやらローレンスはその態度がお気に召さなかったようで不機嫌そうに顔を顰めた。

「駄目だ。中身を改めた上、お前の父親に届ける」

「父は立場ある人間です。この書類も重要なものですから失礼ですが門番である貴方には中身を見せることは出来ません」

 男の子はきっぱりと言い切った。女の子が兄の背中に隠れて不安そうにしている。

「父のマヒロ神父か父の護衛騎士のリック護衛騎士を呼んで下さい」

 その一言に門番たちがざわめき立った。向かいの騎士・ハワードさんの顔が一気に青ざめて、門柱の前に立っていた騎士も二人、こちらを振り返って目を丸くしている。

「ローレンス騎士、い、今すぐに神父殿に伝令を飛ばして下さい!!」

 向かいの方でハワード騎士が言った。

「黙れ。三級騎士が二級騎士の俺に指図するな!」

 ローレンスが怒鳴りつけ、騎士はますます顔を青くした。ハワードさんは、自分の後ろに控えていた補佐のマルク四級騎士に小声で何か伝え、頷いたマルクさんが台を降りて駆け出す。

「俺の指示なく勝手に動くな!」

 そう叫んだローレンスが呪文を唱えて火矢がマルクさんに向けられた。マルクさんは慌てて避けたが腕をかすめたのか後ろに尻餅をついて転がった。彼を遣いに出そうとしたハワードさんが慌てて台から飛び降りて駆け寄る。
 ローレンスは謝罪もせずに台の上から男の子を見下ろす。男の子は妹を背に庇ったまま冷静にローレンスを見返した。

「生憎と俺は間抜けな上層部のように神父には騙されんぞ」

 こいつは何を言い出すんだと俺は目を剥いた。隣のレイスなんか気絶しそうである。
 神父様のご令息、確か名をサヴィラというはずの男の子は、それで、とローレンスの言い分の先を促した。娘は確かミアちゃんという名だ。

「少し優秀だからと言って神父の分際で騎士紛いのことをしているのがそもそもおかしいだろう。神父なら神父らしく、大人しく教会で神に祈りでも捧げておけばいい」

「分かった。今夜にでも俺から父にそう言っておこう。きっと父は大喜びでそうするだろうからな。後でお前が誰に怒られようと責任を取って除籍になろう、いや、晒し首になろうと知ったことじゃない」

 サヴィラくんは、あっけらかんと告げた。非常に物騒な言葉が混じっていたような気がする。マルクさんを助け起こした筈のハワードさんがその言葉に卒倒して逆にマルクさんに抱きかかえられている。
 俺は、先輩たちから聞いたクルィークの倉庫が森で発見されてからの数日間の神父様の話を思い出した。神父様が居なければ、どうにもこうにもならない案件だったため、神父様のところにありとあらゆる問題が集結してしまったが神父様は、確か目の前のサヴィラくんとミアちゃんが家で寂しがっているとかいう理由で三人同時に報告書を読み上げさせて尚且つ手元で別の書類を捌くという神の如き所業をやってのけ、事務官を泣かせ、一人は治療院送りにし、団長の胃を痛めつけながらも休みをもぎ取ったという話だ。
 先輩たちや友人たちから聞いた話をかき集めてつなげれば、間違いなくサヴィラくんが今のローレンスの話を報告したら町で誰に聞いても親馬鹿と言われる神父様は、喜んで騎士団を去るだろう。神父様が去るということは見習い神父様も辞去するということ。そうなれば、インサニア関連で何かしらの問題が起きたとしても、騎士団では対処できずに騎士だけではなく一般人にまで多くの犠牲を出してしまうことになりかねない。
 俺は五級だが人の話はしっかりと聞くことの出来る下っ端騎士である。
 そして時に大いなる犠牲を防ぐためには、小さな犠牲も必要だと俺は、知っているのだ。
 俺は大きく息を吸って、家族の顔を思い浮かべてからゆっくりと息を吐きだした。俺は十四人家族の一員なので、思ったよりも時間がかかってしまったのは御愛嬌だ。義兄や義姉、甥や姪の家族の顔まで浮かべなかったんだから許して欲しい。

「ロ、ローレンス騎士、失礼を承知で申し上げます。神父様は領主様が直々に頼み込んで騎士団で我々ではどうにもできない問題を解決してくださっていますのでその言葉は不適当かと!」

 ローレンスが俺を振り返った。
 俺は、ダレンさんの言葉を思い出して、サヴィラくんとミアちゃんを背に庇う。
 この二人に傷一つでもついたら騎士団は間違いなく更地になる。と俺の本能が訴えている。獣人族の野生の本能は命の危機に人族の数倍は敏感なのだ。

「今すぐにサヴィラ様に謝罪をなさって、発言を撤回してください」

「五級騎士の分際で二級騎士の俺にそのような口を利くとは……ダレンはどんな教育をしているのか」

 俺はその言葉に拳を握りしめることで耐えた。ダレンさんはまだ確かに三級だが尊敬に値する先輩だ。お前なんかとは訳が違うと叫びたいのをぐっと我慢する。ここで諍いが起きても、悔しいが五級の俺ではどうやっても二級の馬鹿には勝てない。俺の使命は間違いなく、この背の向こうに居る二人を無傷で守り通すことだ。だってそうしないと騎士団が更地になる。下手すればアルゲンテウス辺境伯が神父様になる。

「こちとら三回目の試験で漸く合格して騎士になれたんだぞ!? 村から初めて騎士様が出る、とそりゃあ盛大に家族と村の皆が祝ってくれた期待の星なんだぞ! このやろー!」と俺は心の中で言った。ごめん、口には出せなかった、本当にごめん。

「お前こそどんな教育を受けているんだ」

 だというのに俺の後ろからあきれ果てた声が聞こえて来た。サヴィラ様が折角庇った俺の背から出て何故か俺がサヴィラ様の背に庇われる格好になった。とん、と軽い衝撃を感じて首を捻れば、ミアちゃんが俺の足にくっついている。きゅっと俺のズボンを握りしめる小さな手に俺の母性がきゅんきゅんした。ん? 俺は男だから父性か?

「二級のお前がそこにいるということは、何かしらの問題を起こしたんだろう? そもそも自分より弱い者に手を出している時点でお前は騎士失格だ。俺の知っている優秀な騎士たちは皆、護るためにしか剣を抜かない」

 サヴィラくん、いや、サヴィラ様は、そう言い切ってローレンスを睨み付けた。年下とは思えない格好良さであるが、出来れば大人しくしていてくれと俺は心の中で叫んだが、俺の足は根っこでも生えたかのように動かない。サヴィラ様の俺よりずっと小さく薄い背が酷く頼もしく見える。
 いや待て、駄目だろ。それじゃ駄目だろ、俺! 頑張れ俺! 俺の足!

「第一、お前は二級の癖に騎士団や領主様と父の関係を全く理解していない。領主様や団長閣下が我が父を領地内に繋ぎとめるためにどれほど心を砕いているのか知らないんだろう。お前の不用意な一言が上の者たちが死に物狂いで保っている力の均衡を崩してしまうことをこれっぽっちも分かっていない。この鼬の五級騎士のほうがお前より状況をきちんと把握している点においては騎士として優秀だ」

 ありがとうございます、と俺は褒められたことに胸を震わせながらも、流石はあの優秀と名高い神父様のご子息、まだまだ幼い子供なのに大人の事情をきちんと理解している。流石だ。ローレンスは彼の爪の垢でも煎じて飲ませてもらえばいい。

「随分と生意気なクソガキだな。神父は目上の人間に対する礼儀をお前に教えなかったようだ」

「こっちはお前より確実に人生辛酸舐め尽くして生きてきたんだ。相手の目を見ればどんな馬鹿かくらいは容易く分かる。それにお前は俺より無駄に年を食っただけで尊敬には値しないんだから。俺がお前如きに敬意を払う理由もない」

 そういえばサヴィラ様は、今でこそまるで貴族の御子息のような佇まいだけれど神父様に保護される前は、貧民街で生きていたのだ。孤児たちのリーダーとして理不尽な大人たちから子どもたちを護っていた、俺よりずっと格好いい少年なのである。そりゃあ、こんな年食っただけの大人に怯む訳が無い。
 年食っただけのローレンスが額に青筋を立てながら降りて来て、俺は無理矢理足を動かして、サヴィラ様の腕をひっぱり自分の背中に隠す。俺たちの前に立ちはだかったローレンスはめっちゃでかい。俺は鼬系の獣人族だから普通より小柄なんだよ、大きくないんだよ。ローレンス、でかいよ。やばい、俺の膝が大笑いしだしているし尻尾はぶわっと膨らんでいる。

「ローレンス騎士、貴方が大人なら落ち着いて下さい! ねっ!」

ぺーぺーの俺じゃどうやったって二級には勝てないんだってと泣き叫びたいのをぐっとこらえて、精一杯、虚勢を張った。しかし俺の膝は、大笑いしている。
でも、俺の後ろには子どもたちがいて、俺の背にはアルゲンテウス領の平和と辺境伯の命が掛かっているんだぞ。頑張れ、俺!

「退け、五級。そこの生意気なガキには俺が直々に話をつける」

「で、出来ません! と、というか子供相手にむきにならない方が宜しいかと存じます! な、レイス!!」

 俺は友を振り返って同意を求めたがレイスは、俺の背後を見つめて固まっていた。いや、レイスだけじゃない、門番たちも騒ぎを聞きつけ集まって来た騎士たちも俺の後ろを見て固まっている。マルクさんの腕に抱えられたハワードさんが折角意識を取り戻したのに再び気絶した。マルクさんは「先輩、死んだふりは間違ってるって俺のばっちゃが言ってましたぁあ!」と叫ぶ。

「あ、テディ!」

 ミアちゃんの可愛い声がそれを呼んで、俺のズボンから離れていく。
 どしん、ずしん、と重い足音が近づいて来て、俺のすぐ後ろでそれが止まった。後ずさったローレンスの顔も真っ青である。俺の背後に物凄い濃い魔力の存在を感じる。間違いなくとんでもないもんが居る。憐れな俺の尻尾は、毛を逆立て膨らむことも忘れて、しゅんとなる。

「やっぱり、ついて来ちゃったか。もう駄目だろ、テディ」

 サヴィラ様が呆れたように言った。

「ぐー」

 野太い地響きみたいな鳴き声が背後で聞こえて来た。
 俺は、調子の悪い蝶番みたいにぎぎぎっと音を立てて振り返った。

「ひぃぃぃ!」

 俺のふわふわの尻尾が限界まで膨らんで、残念ながら俺の膝が大爆笑して腰が家出し、その場にへたり込んだ。
 大岩のように大きくてごっつくて凶悪な顔をしたAランクの魔獣、キラーベアがそこに居た。

「なっ、なっ、なっ」

 俺は言葉が出て来なかった。
 そういえばこの間、御者さんから「神父様はどえらいペットを庭で飼ってるんだよー」なんて話は聞いたが、まさかこれがどえらいペットの正体だとでもいうのだろうか。

「テディ、心配して来てくれたのね、ありがとう」

ミアちゃんが無邪気に抱き着いているし、サヴィラくんは呆れたように岩みたいにでかい熊の頭を撫でている。

「いやいやいや、テディって顔じゃねぇと思いますですよ!!」

 混乱を極める俺の口から漏れた言葉がそれだった。百人くらい人を食ってそうな凶悪なこの顔はテディなんて可愛い名前じゃない。

「な、なんで、キラーベアがここにいるんだっ!」

 抜剣したローレンスが叫んだ。

「ミア、これ持ってて。テディ、ミアに傷一つでもつかないようにちゃんと護るんだよ。あとこの人も」

 するとサヴィラ様がミアちゃんに封筒を預け、テディの頭を撫でると面倒くさそうに俺の前にやって来てローレンスと向き合った。

「クソガキ、お前が俺に挑もうってのか?」

「だって、俺はあんたに負ける気がしないもん」

そう言って笑ったサヴィラ様は徐にしゃがみ込むと地面に手をついた。

「《ヴァイン・バインド》」

 ローレンスが咄嗟によけようとするがそれより早く地面から飛び出した蔦がローレンスの左脚を捕らえた。蔦はあっという間にローレンスを捕らえて簀巻きにし、逆さ吊りにした。

「はっ、子どもに負けるとは大した騎士だ」

 サヴィラ様が立ち上がって鼻で嗤った。顔の造形が整っていると嘲笑すら綺麗なんだな、と俺はうんうんと頷く。
ローレンスは口に蔦で猿轡を噛まされていて呻くことしか出来ない。火の属性を持つローレンスが焼き払えないということは、つまり単純にサヴィラ様の魔力がローレンスより強く濃いということだ。

「ふむ、流石は俺の息子だ、実に素晴らしい」

 聞こえて来たのは耳に心地よい低く通る良い声だった。
 死んだふりから起き上がっていたハワードさんがまた倒れた。今度は本当に死んだかもしれない。
 悠然とこちらに歩いて来るのは、見たことも無いくらいに美しい人だった。艶やかな黒髪に二重の切れ長の銀に蒼の混じる瞳、高い鼻梁に完璧な形の唇、全てが彼を美しく引き立てている。しかし、表情筋は俺の腰と一緒で家出しているのか、驚くほど無表情だ。そして肌を一切見せない漆黒の神父服が逆にエロいと俺は混乱する頭で思った。
 その美しい人の隣には、淡い茶色の髪に琥珀に緑の混じる瞳を持つ可愛らしい顔立ちの少年みたいな人がいるが多分、あっちが見習い神父様のイチロ様だ。彼の後ろにはエドワード護衛騎士がいるし、マヒロ神父様の後ろにはリック護衛騎士が居る。

「パパ!」

「父様!」

 ミアちゃんとサヴィラ様が嬉しそうに神父様に駆け寄り、神父様はミアちゃんを抱き上げて、サヴィラ様の頭をぽんぽんと撫でた。怪我はないか、と問われて二人は、うん、とすぐに頷いて返した。

「あのね、パパね、忘れものしたでしょ? だからね、サヴィと届けにきたのよ」

 ミアちゃんがウサギと一緒に腕に抱えていたそれを神父様に渡す。神父様は、あ、と声を漏らす。

「父様、これ今日の会議で使うって言ってたでしょ? デスクの上がごちゃごちゃしているから忘れるんだよ」

「……お前、最近、一路とリックに似て来たな」

 サヴィラ様に窘められた神父様が拗ねたように言った。神父様は、それを見習い神父様に渡すようにミアちゃんに言った。はい、イチくんと渡されたそれを受け取りながらイチロ様が呆れたような目を神父様に向ける。

「そりゃあそうでしょ。君の書斎は散らかり過ぎだもん。ねえ、リックさん」

「はい。重要書類も多々ありますので、もう少しきちんと片付けられた方が良いかと存じます」

「あれは俺なりに整理整頓をしている最中でだな」

「父様、今度、俺も一緒に片付けてあげるから、綺麗にしようね」

 あれ?神父様って偉い人じゃなかったっけ?と思わず首を捻ってしまうくらいに和やかな会話だった。そっか、神父様は整理整頓が苦手なんだ、と俺と一緒だ、と勝手に親近感を持つ。

「それでサヴィ、ミア、この馬鹿はどうしてこんなことに?」

「あ、そうだった。父様、あの人、この馬鹿が放った矢で怪我したんだ、診てあげて」

「僕が行くよ」

 サヴィラ様がローレンスの矢で負傷したマルクさんを指差した。するとイチロ様が答えてマルクさんと彼に抱えられて気絶しているハワードさんの下へ駆け寄って行く。イチロ様が集まっていた騎士の中から顔見知りを呼ぶと魔法で担架を二つ作ってその上に乗せ、二人は騎士たちに運ばれて行った。

「それでこの馬鹿は?」

「この馬鹿がテディにびっくりして剣を抜いたから手っ取り早く捕まえただけだよ。いきなりテディが現れたから門番の人たち、びっくりしたみたい。俺のことは、そこの人が庇ってくれたんだ」

 サヴィラ様ぁぁああ。貴方はなんで出来たお子様なんだ、と俺は感動に両手で口を覆った。宙づりになってる馬鹿なんて自業自得だから差し出してもいいのに、騎士団と神父様の関係を考えて下さったんですね。

「そうか。サヴィラはますます魔法が上手になったな」

「この間、リックにコツを教えてもらったんだ」

「飲み込みが早くて素晴らしいですよ、すぐに俺より上手に使えるようになります」

「そ、そんなことないよ」

 神父様とリック護衛騎士に褒められてサヴィラ様は気恥ずかしそうに頬を染めて控えめに笑った。ミアちゃんが「サヴィは、すごいの、かっこいいの」と無邪気な笑みを浮かべている。ああ、この空間においてなんて癒される兄妹だろう。

「ああ、そうだ。せっかく来てくれたんだ、一緒に昼ご飯を食べよう。一路、ミアとサヴィとテディと一緒に先に行って仕度をしておいてくれ」

「はいはい。おいで、ミアちゃん」

 ミアちゃんが神父様の腕から見習い神父様の腕に移動する。サヴィラ様がテディに声を掛け、テディがしゃがみ込むとその首の後ろにひょいと飛び乗って跨る。

「真尋くん、ほどほどにね」

 イチロ様が振り返りながら言った。彼について行こうとしたエドワード護衛騎士はリック護衛騎士に襟首を掴まれている。

「父様の好きなようにしていいと思うけどね」

「こら、サヴィったら変なところが父親そっくりなんだから」

 イチロ様に怒られてサヴィラ様はペロッと舌を出した。イチロ様に抱えられたミアちゃんだけがきょとんとしている。

「安心しろ、俺もこんな馬鹿と同じ空気を吸っているくらいならミアとサヴィラを膝に乗せて昼飯を食べるほうが良いからな」

 神父様の言葉にイチロ様は肩を竦めると、行こう、と声を掛けてサヴィラ様を乗せたテディと共に歩き出した。
 神父様は、我が子たちの姿が見えなくなるとこちらにやって来て、座り込んだままだった俺の前に立った。近くで見ると本当に同じ人間か疑いたくなるほど美しい人だ。あとめっちゃ足長い。

「怪我は?」

「い、いえ、あの、はい、大丈夫です!」

 俺は慌てて立ち上がる。だが爆笑していた膝は相変わらずでふらついた俺を神父様が咄嗟に腕を掴んで支えてくれた。

「すみません、あ、ありがとうございます」

 神父様は煙草の香りがした。大人の男の匂いだ。俺もいつかはこんな風に煙草の匂いを自然に纏うような格好いい大人の男になりたい。(俺はこの時、神父様が俺より二つも年下だとは知らなかった)

「名は?」

「第一師団第一大隊第一中隊第六小隊所属アゼル五級騎士です。今月一日付で第三大隊からこちらに異動して参りました!」

「そうか。五級騎士で二級騎士とキラーベアと対峙するのは勇気が入っただろう? だが、息子と娘の為にその身を盾にしてくれたこと、礼を言う。将来を楽しみにしている」

「は、はい! 光栄です!」

 神父様は、俺の肩を労うようにぽんと叩いた。
 ヤバイ、これはヤバイ。と俺の獣人族としての本能が騒いでいる。
 この人は、呆気無く人を魅了して虜にする人だ。見た目だけじゃなくてもうなんかもう、本当に全部が全部、めちゃくちゃ格好いい。

「それで。リック、エディ、この馬鹿はどうするべきだと思う?」

 神父様は改めて宙づりのローレンスに向き直った。神父様の表情は、ぴくりとも変わらない。
 神父様の後ろに控えていた二人の護衛騎士(二人とも背が高くて体もがっしりしてるし、イケメンだ)は、神父様の視線の先を追うようにローレンスを見上げた。

「懲罰房にでも放り込みましょう。こういう手合いは性根から叩き直さないといけませんよ」

 リック護衛騎士が柔和な笑みを浮かべて小首を傾げた。凄い、言葉と顔が全然一致してない。隣でエドワード護衛騎士がちょっと引いてる。

「まあ俺の大事な大事な可愛い息子に生意気なクソガキなどと口を利いた馬鹿だからな。大事な書類だと言っているのに中身を検めさせろだことの神父には騙されないだことの……挙句の果てには神父は教会で大人しく祈ってろ、とはなぁ」

 あれ?と俺は頬が引き攣るのを感じた。
 神父様が来たのは、サヴィラ様がこいつを宙づりにした直後だったのにどうしてそれ以前のことを知っているのだろう。これではまるで見聞きしていたかのようだ。

「どうして俺が知っているのか気になるのか?」

 神父様は俺やローレンスの表情から、疑問を読み取ったのだろう。徐に人差し指を肩の高さにまで持ち上げた。するとピチチッと青い小鳥が神父様のすっとした人差し指の上に降り立った。

「ずっと見ていたからな」

 あ、と俺の口から間抜けな音が漏れた。
 俺は先輩から聞いた話を思い出したのだ。曰く神父様は、魔術学にも長けたお方で小鳥型の魔導具を使いこなすのだと。もしや、まさか、嘘みたいな話だけれど、本物にしか見えないけれど、神父様の指に止まった愛らしい小鳥は、多分、魔導具だったのだ。仕組みは分からないが、ここで起こったこと全てを神父様に伝えていたに違いない。
 神父様は、もう片方の手の指で小鳥の小さな頭をくすぐるように撫でた。小鳥は嬉しそうにその指に擦り寄った後、また小さな翼を広げてどこかへと飛び去って行く。

「お前が孤児院の子どもに暴言を吐いて、泣かせたこともずっと……見ていたとも」

 神父様が微かに笑んで小首を傾げた。艶々の黒髪がさらりと揺れる。

「我が親愛なる神は、慈悲深い神だ。その教えに従い、俺も気まぐれに慈悲を掛けてみたのだが、やはり馬鹿に慈悲をかけたところで気付きはしないな」

 あ、と俺は声を漏らした。
 ローレンスが門番になったのは、神父様の一言があったからなのだと悟る。でもそうだ、神父様が赦さなければローレンスは、町から戻った時点で謹慎処分になっていたに違いない。

「ローレンス、神父として一つ、教えをお前に説いてやろう」

 神父様が指を鳴らせば、蔦が溶けるように消えてローレンスが地に落ちた。逃げ出そうとしたローレンスはあっという間にリック騎士によって取り押さえられ、うつ伏せのまま這いつくばるようにして地面に押しつけらえる。リック騎士は涼しい顔をしているがローレンスはぴくりとも動けず苦しそうに呻いた。

「俺は神父であって神では無いから、我が親愛なる神ならば二度、慈悲を施そうとするかも知れないが、生憎と俺からの慈悲サービスは一回きりだ」

 神父様が白手袋を嵌めた手でローレンスの髪を鷲掴みにして顔を上げさせた。
 ローレンスの顔に恐怖がありありと浮かび上がった。

「貴様にも見せてやろうか、光一つ届かない前も後ろも上も下も右も左も分からない……本当の闇を」

 そう言って神父様が笑った。
 その笑みは、此の世のものとは思えないくらいに壮絶なまでに美しくて、恐ろしいものだった。
 びりびりと空気が震えて、俺の膝から力が抜けて、俺は、呆気無く気絶してしまったのだった。










 あの後、目を覚ましたら俺は癒務室のベッドにいた。
 どうやら俺は、神父様の威厳に中てられて気絶してしまったのだ。五級騎士の俺は神父様の威厳によって発動した威圧感と神父様の濃密で強大な魔力に呆気無く気絶して、ここに運ばれて来たのだ。レイスや三級の先輩たちは神父様たちから離れていたので、レイスは腰が抜けたが、他はちょっと膝が笑ったくらいで大丈夫だったらしい。

「あのあと団長が血相変えて飛んできてな、ついで心配してイチロ神父様と子供たちも戻って来てくれて、ミア様が「パパ、おなかすいたからごはん食べよ?」の一言で全てを丸く収めてくれたんだ」

 今日も今日とて門番業務をこなしながら、客の姿がないのを確認してからダレンさんがあの日の顛末を話してくれた。
 実は、神父様の魔力にモロに中ってしまった俺は、頭痛と吐き気がひどすぎて三日ほどベッドの上で過ごす羽目になって、今日は久しぶりの門番業務だ。

「ミア様の一言がなかったらローレンスは首と胴が繋がっていたかも怪しいが、とりあえず今はお前より酷い魔力酔いで治療院で絶賛治療中だ」

「へ、へぇ……」

 俺は自分の頬が引き攣るのを感じた。
 神父様の敵意や殺意が俺に向けられたものではなかったから、俺の方はまだ軽く済んだのだと治癒術師も言っていたのを思い出した。

「神父様がお前のことをとても心配して、気にかけて下さっていたぞ」

「そうなんすか?」

「ああ。息子たちを庇ってくれた騎士に酷いことをしてしまったと」

「そんな、俺が軟弱だったばっかりに倒れただけで……なら、元気ですって姿を見せに行った方がいいですかね?」

「今朝もここを通るから、それで充分なんじゃないか? 神父様はお忙しい方だし、あ、ほら来たぞ」

 噂をすれば何とやら神父様の馬車の姿が見えて、門番たちが姿勢を正す。
 並走していたエドワード護衛騎士がいつもどおりカードを見せて門を開けると馬車が中へと入って来る。そのまま通り過ぎていくかと思った馬車は俺たちの目の前で止まった。リック護衛騎士が、御者席から降りて馬車のドアを開ける。
 まさかと思っていたら、やっぱり神父様が中から降りて来た。馬車の中にいるらしいイチロ様に何かを言われたのか、分かった、と頷くとドアを閉める。エドワード騎士が馬から降りて、手綱をリック騎士に渡すと今度はエドワード騎士が御者席に座って馬車はさっさと入り口の方へと行ってしまった。
 朝見ても相変わらず神父様は美しい。朝から良いものを見た気分になれる御尊顔だ。

「おはよう、アゼル騎士。調子はどうだ?」

「は、はいっ! しっかり休養いたしましたので万全であります!!」

 俺は正していた姿勢を更に正して答える。
 神父様は俺の姿を頭の頂から足の先までじっと見ると、無表情を(多分)少し緩めた。そして、リックと声を掛ければ後ろに控えていたリック護衛騎士が俺にバスケットを差し出す。

「マヒロ神父様からのお詫びの品です。皆さまで休憩の時にでもどうぞお召し上がりください」

 受け取るべきか、否か俺だけでは答えが出せずに台の上から降りて来て俺の隣に並んでいたダレンさんを見上げた。ダレンさんは、俺の視線を受け止めると、うけとれ、と唇だけを動かした。

「あ、有難く頂戴いたしますっ!」

 受け取ったバスケットは何が入っているのかズシリと重かった。

「そう畏まる必要はない。鼬の獣人族は肉が好きだと聞いたから、肉の塊を知り合いに頼んでローストしてもらったんだ。特製のソースが瓶に入っているから、ナイフで切り分けてソースをかけて食べると良い。パンに挟んでも美味いぞ」

「マジすっか!? 俺、肉は大好物っす! ありがとうごいます!」

「アゼル、素直が過ぎるっ!」

 小声でダレンさんに怒られて俺は、あ、と声を漏らして慌てて取りつくろうとしたが神父様が「素直で良い」と言って下さったので俺は無意味な言い訳を探していた口を閉じる。

「腹に一物抱えて仮面を張り付けた者と話すより裏表のない素直な者と話しているほうが俺も楽だからな。だが、それよりも本当に体はもう大丈夫なのか?」

「はい。治癒術師にももう大丈夫だとサインを貰いましたので。それに神父様が下さった肉を食べればもっと元気になるので大丈夫です!」

「そうか。本当にすまなかったな。……ああ、そうだ。俺の息子と娘が改めて礼を伝えてくれと言っていた。庇ってくれて本当にありがとう。今度、教会にでも遊びに来ると良い」

「はっ、光栄なお言葉であります!」

「門番業務は地味だが、その実、多くの人々と言葉を交わし情報を得る大事な仕事だ。ここに立っているだけで知れることが山のようにある。それに顔を覚えてもらえると言うことは、必ず役に立つ。門番は三級以下の騎士が担うことと地味であることで閑職と誤解されがちだが、門という入り口に置いて不穏分子を排斥する大事な仕事だ。アゼル騎士が、そして、他の騎士たちがここでしか出来ない経験をしっかりと自分の物とし、アルゲンテウスの民を護る剣として、団長閣下を支え、領主様を護る盾として、誇り高きクラージュ騎士団の騎士として成長できるように祈っている」

 神父様が腰からロザリオを外して俺の頭上に翳した。ガラス玉みたいな透明な玉の中には、銀にも蒼にも見える不思議な液体が揺れていた。

「この優秀な騎士たちに祝福の風が吹きますように」

 ふわりとどこからともなく吹き抜けた風が俺の髪の毛を揺らすように吹き抜けて行った。肌を撫でたその風は、普通の風なんかではなくて、言葉に出来ない何かを纏っていた。
 神父様は「頑張れよ」と俺の頭をぽんぽんと撫でるとくるりと背を向けて去っていく。リック護衛騎士が、俺たちに一礼し、すぐに背を追っていき、横に並んだ。

「……ダレンさん」

「ん?」

「……なんか、分かったかも知れないっす」

「そうか、分かったか」

 顔を上げれば、ダレンさんと目が合った。

「神父様は、なんかこう、うん、言葉では言い表せない人っすね……謎が深まりました。でも……でも、めちゃくちゃ格好いいっす!!」

 たはーっと俺は顔を輝かせる。
 あんな風に格好良く素敵な大人の男になりたい。俺、大人だけど!!

「ははっ、そうかそうか。なら神父様の言葉通り、今日も仕事を頑張れよ、あと鍛錬もな」

「はいっす!!」

 俺は神父様から貰ったバスケットを手に決意新たに仕事に望むのだった。
 この三日後、俺は先輩たちの雑談の中で神父様がまだ十九歳(俺の二つ下)という衝撃の事実を知ることになったのだけれど、それはまた別の話なので割愛する。




――――――――――――
ここまで読んで下さって、ありがとうございました!
いつも閲覧、感想、お気に入り登録、本当にありがとうございます!!

モブ視点は楽しいですね♪
皆さん、お忘れかも知れませんが本来のサヴィラは小生意気な子ですし、度胸も据わってます。何せ真尋も当初はサヴィをクソガキ呼ばわりしてましたからね(笑)
今は大好きな父様がいるので大人の前でも委縮することは早々ありません(特にローレンスみたいな奴)、大好きな父様の愛は偉大です!!

年末ってなんでこうも忙しいのでしょうね……(遠い目)

次のお話も楽しんで頂ければ、幸いです。
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