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本編 2
第四十六話 出かけた男
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リックの前をミアを片腕に抱いて、反対側の腕は妻に差し出してマヒロが歩いている。
一応、今回のことに関する説明は受けた。さっぱりと理屈はよくわからなかったのだが、真尋は全快した。あれだけ包帯まみれだったのに、今は無傷だ。今朝の鍛錬では簡単に放り投げられた。絶好調である。
ユキノの隣には、サヴィラがいて双子が乗っている乳母車を押していた。今日は見ての通り、家族水入らず(ありがたいことに、彼らはマヒロの護衛騎士であるリックも家族だと言ってくれる)でのお出かけで、市場に来ている。さすがにマヒロ一家の豪快なペットたちは、市民に免疫のできているブランレトゥではないので、留守番をしている。ミツルは、今現在、嬉々としてヴァイパーに仕事を教えていて、忙しいのだ。
グラウは、ブランレトゥを目指して以東の地域から大勢の人々がやってくる。温泉もありブランレトゥへ入る前に旅の疲れを癒そうと長期滞在をする人も多いので、交易も盛んだ。
「賑やかだな」
「ええ、本当。すごいわねぇ」
夫妻は市場に来るのは初めてなので、二人ともきょろきょろと興味深そうにあたりを見回している。
何分、親子そろって顔が良いし、存在感のある一家なのでとても目立っている。
「父様、あっちににね、古書の露店があるんだけど」
「どこだ?」
サヴィラの提案にマヒロがすぐさま食いついて、一行は古書の露店を目指して歩いていく。
古びた本が塔のように積まれ、露店いっぱいに並べられている。
「あなた、となりのお店を見ているわね。ミア、いらっしゃい」
「うん!」
マヒロの腕から降りたミアと一緒にユキノは古書の隣の露店に顔を向ける。マヒロに目だけでユキノを任されたので、リックはサヴィラから双子の乳母車を預かり、ユキノたちのほうへついていく。ユキノたちが向かったのは、毛糸を専門に取り扱う露店だった。
ミルクを飲んでから出てきたので、双子はすやすや眠っている。主の子になったばかりの双子だが、もともとマヒロにそっくりだったので、息子と言われても違和感がない。正直、まだ一人ではぐらぐらの首が怖くて抱けないが、リックも敬愛する主にそっくりな赤ん坊を心から可愛いと思っているのだ。
ちなみに遅く起きてきたジルコンとマイカ夫妻は、全快したマヒロと双子に「ま、マヒロだし、そんなこともあるじゃろ」「顔が良いから長生きするわよ~」とあっけらかんとしていた。さすが、悠久の時を生きる種族は器が違う。だが、マヒロが全快したため、かすかにあった遠慮がなくなったそうで、小一時間ほどマヒロは「わしの可愛いカタナがぁ~~」と泣きつかれていたが。
「セーターはもう時期的に間に合わないかもしれないから、マフラーを編みましょうか。ミア、どの色がいい?」
「んとねぇ」
色ごとに籠に入った毛糸をミアがのぞき込み、ユキノが優しくそれを見守る。
「あのね、ミア、ママとおそろいがいいなぁ。だめぇ?」
上目遣いのおねだりはとびきり可愛い。マヒロだったら店ごと買っていたに違いない。
「ふふっ、もちろんいいわよ。でもパパが拗ねちゃうから、何か模様を入れて、それを家族でお揃いにしたらどうかしら?」
「みんなでおそろい? それ、すてき!」
ユキノの提案にミアが顔を輝かせた。
母娘はあーでもないこーでもないと言いながら、家族の分の毛糸を何色も選び始める。リックは、双子の様子を気にかけながら、兎の母娘を見守る。マヒロが溺愛するのが頷けるほど、なんだかぽやぽやしてかわいらしい光景だった。店主の中年夫婦もほのぼのと眺めている。
それから家族分の毛糸を彼女らが選び終えると同時にマヒロとサヴィラが戻ってきて、マヒロが代金を支払い、アイテムボックスに大量の毛糸をしまった。
「いい本はあったかい?」
「うん。うちの図書館にあった本の初版本と、はるか昔に絶版になってたやつがあったんだ」
サヴィラが嬉しそうに教えてくれる。
勤勉な少年なので、暇があれば本を読んでいる。
「初版本っていうか、これはもともとが別の国の書物で翻訳されたものが出版されているだけど、初版と、うちにある第三刷では、翻訳した人が違っててね。解釈が違う部分があるんだよ。普通、翻訳者が別なら、新訳とか、新版で出版されるはずなんだけど、これはそういうのがなくてね」
サヴィラが嬉々として語ってくれる話に乳母車を押しながら耳を傾けつつ、歩き出した夫妻についていく。
同じ貴族の生まれでも、持って生まれた才能は違うものだ。エドワードは絶対に初版本と第三刷の解釈の違いの話なんてしない。血なんてつながっていないのに、ユキノに「探していた絶版本があってな、これはとある個性的な術式紋について書かれているんだが」と嬉々として話すマヒロにそっくりだ。
「そろそろ昼飯の時間だな。何が食べたい?」
「肉!」
「おやさい!」
サヴィラとミアが即座に答えた。
「ねえ、父様、あっちのエリアはいろんな屋台が出てるから食べ歩きしようよ」
「ミアもそれがいい!」
サヴィラの提案にミアが賛同し、じゃあそうしよう、と食べ物の屋台が並ぶほうへと歩き出す。
マヒロとサヴィラ、リックは味付けされたボヴィーニの薄切り肉をたっぷりと薄く焼いた小麦の生地で包んだクレープに似たものを手始めに選んだ。ユキノとミアは、同じ屋台の野菜がたっぷりのを半分こしている。
「私、食べ歩きなんて初めてだわ。歩きながら食べるって難しいのねぇ」
わたわたしながらユキノが言った。歩くことと食べることが同時にできずに、四苦八苦しているようだ。
育ちがよさそうだもんなぁ、とリックは感心しながら、空いているベンチを探す。騎士なんて忙しいときは、現場に走りながら食べるときもあるがユキノには絶対にできなさそうだ。
屋台エリアには、座って食べられるように休憩場所も用意されているのだ。サヴィラが先に見つけたが、ベンチは一つしか開いていなかった。
「俺は歩きながらでも食べられるから」
そういってサヴィラがユキノとミアを座らせた。
それからこのクレープみたいなものを食べた後は、交代で屋台をめぐり、再度集合するころにはもう一つベンチが空いて、全員が座れた。
マヒロが地の副属性魔法で蔦のテーブルを作ってくれたので、そこに戦利品が並ぶ。どれもこれもおいしそうだ。
「なかなかうまいな」
「ええ、本当。このジャガイモのやつ、おいしいわね。何で味付けしているのかしら」
「リック、これどこで買ったの? すごい美味しい」
「ああ、これはあそこの屋台だよ」
「ママ、こっちのニンジンもおいしいのよ」
にぎやかな昼食の席はとても楽しい。
いつの間にか起きていた双子たちも、あーうーと声を出したり、手足を動かしたりしてご機嫌だ。そして通りすがりに可愛いわね、と声をかけてくれる人は、「お父さん似ね」「パパそっくり」と口をそろえた。
「そういえば、ジーク様はいつ帰ってらっしゃるの?」
おもむろにユキノが言った。ジークとはもちろん、ジークフリートのことだ。
デザートを楽しむ家族を横目に本を読んでいたマヒロが顔を上げる。
「……知らん。逃げ回っているからな。無駄に視察の予定を入れたと聞いている」
「あらまあ。……うふふ、困った方、ね?」
なぜだろう。微笑んだユキノの笑みが心なしか冷たい。
そんな妻をちらりと見て、マヒロは本に視線を戻した。触らぬ神に祟りなしってやつかもしれない、とリックは自然な動作で顔を背け、双子に直接日が当たらないように乳母車のシェードを直し、子どもたちはデザートを無言で口に頬張った。
もしかしたら、今後、領主様が――といわず皆が――本当の意味で恐れるべきなのは、マヒロではなく、ユキノなのかもしれない。
「飯を食ったら、今日のところは帰るか。双子は初めての外出だからな」
「でも、その前にミルクバターは買い足しておかないと。たくさん飲むから、もうないのよ」
「それは重要だ」
子どもたちがデザートを食べ終えるのを待って、席を立つ。家で待っていてくれるジョンとレオンハルト、シルヴィアにと揚げ菓子を買って、市場を後にする。
近くの馬車止めに停めていた馬車をリックが少し先に行って、市場の出入り口につければ、サヴィラとユキノがそれぞれ双子を抱いて、マヒロが乳母車をアイテムボックスにしまい、一家が馬車に乗り込む。
「リック、とりあえず商店街に」
「分かりました」
マヒロの指示に従い、リックは慎重に馬車を出す。
市場から商店街はそんなに離れていない。目当ての店に着くとマヒロとミアだけが降りて、ミルクバターのたっぷり入った大瓶を購入して戻ってきた。
それから再び二人が乗り込むのを待って、今度こそ家に向けて馬車は出発する。
今日は天気もよく、少し汗ばむくらいの陽気なので、時折吹く乾いた秋の風が心地よい。グラウの町は、平和そのものだ。
リックは、久々の平穏に鼻歌など口ずさみながら、弟や両親に何をお土産に買おうかなと思考を巡らせ、馬車を牽く愛馬に時折声をかけつつ、家を目指した。
門から中へ入り、玄関先に馬車を停める。
リックは御者席から降りて、馬車のドアを開ける。
「ああ、寝てしまったんですね」
「はしゃいでいたからな」
マヒロの腕の中でミアはぐっすりと眠っていて微笑ましい。
リックはマヒロが降りるのを待ち、次に赤ん坊を抱えているユキノが降りるのに手を貸そうとしたところで、思わず剣に手をかけた。マヒロがミアをかばうように抱きしめて身構えた瞬間、玄関のドアが勢いよく開いて何かが転がり出てきた。
「知るか!! 出ていけ!! くそ野郎!!」
ナルキーサスの怒声が響き渡る。
「す、すみませんっ! ちがうんですぅ!! あだっ!! いたい!!」
玄関先に転がったのは、私服姿のレベリオだった。レベリオの上に長方形の平べったい大きな箱や花束が投げつけられると、ドアは勢いよく閉められた。
せっかく寝ていたミアがびっくりして起きているし、大きな声に双子まで泣き出した。
「あらあら、大丈夫よ、びっくりしたわね」
「ほーら、泣かないで大丈夫だよ」
ユキノとサヴィラはあやすのを横目に「キースぅ……っ」と泣き崩れるレベリオをみやる。
マヒロはあきれ果てた視線をレベリオに向けていた。
「レベリオおじちゃん、だいじょうぶ?」
ミアが心配そうに声をかける。
地面に突っ伏すレベリオは、ふるふると首を横に振った。
リックは、平和って尊いんだな、と遠い目になりながら、花束を拾い上げた。リックは花の名前など知らないが、赤や橙色が秋らしくてきれいだと思う。長方形の箱からは、深緑のドレスがのぞいていた。
「まあ、そのプレゼントの選択からして、大体は想像がつくが……うちの子のミルクの時間なんだ」
「あなた、ミルクは私とサヴィラであげておくわ」
ユキノがリックの差し出した手に掴まり、馬車を下りながら言った。片腕に抱いているマサキは、泣き止んだようだがうるうるした目で辺りを見ていた。次いで、サヴィラが降りてくる。
「だからちゃんと、面倒見てあげてくださいね。ほら、ミアもいらっしゃい」
顔を盛大にしかめたマヒロをさらっと流して、ユキノが夫の腕から降りたミアを連れ、中へ入って行ってしまった。
サヴィラが「頑張ってね」と心ばかりの応援をして、母の背についていった。
「馬車は俺たちが片づけておきますね!」
家の警邏をしている第二小隊の仲間が、そう言ってそそくさと逃げていく。
リックは気づいていた。広い庭の玄関近くに停められた馬車から、イチロとカイトが顔を出したがすぐに引っ込んだことを。関わり合いになりたくないのだろう。面倒くさいから。リックだって適当な用事を思い出して退散したかったが、あとでマヒロに恨まれるほうが面倒くさいと気づいて思いとどまった。
「はぁ……家、の中で暴れても困るしな……近くに店はあったか?」
「歩いて五分ほどのところにカフェがあります」
「じゃあ、そこへ行こう。ほら、レベリオ殿、立って下さい
マヒロが溜息をこぼし、レベリオを立ち上がらせ、リックはドレスの入った箱を抱える。
「おい、園田!」
「はい」
すぐに顔を出したところをみるに、ミツルは玄関で待機していたのだろう。
「所用で出る。これを。お土産のお菓子だ。あとは頼んだぞ」
マヒロがアイテムボックスから取り出したお土産を彼に渡す。
「かしこまりました。行ってらっしゃいませ」
すっとお辞儀をしたミツルに見送られ、リックはマヒロと彼に子どものように手を引かれて歩き出したレベリオとともに、家の近くのカフェへと向かうのだった。
高級住宅街に店を構えているだけあって、入店して通されたのは個室だった。
マヒロの居住まいや、リックという護衛騎士の存在、そして、べそべそしているが貴族らしい男を見て、判断してくれたのだろう。
マヒロとレベリオが丸テーブルを真ん中に向かい合うように座り、リックは護衛ですから、とマヒロの後ろに控える。
「ふむ、ケーキ類が充実しているな。一路が喜びそうだ」
マヒロは、優雅に足を組み、メニュー表に目を通している。レベリオは向かいの席につっぷして、べそべそしている。リックは、店員が小さなテーブルを壁際に出してくれたので、お礼を言って抱えていたドレス入りの箱と花束をその上に置いた。
マヒロが紅茶とサンドイッチを注文し、リックとレベリオにも彼は紅茶を頼んだ。
そう待たずして、給仕がサンドウィッチと紅茶のセットを運んできてくれる。
マヒロは、サンドウィッチを頬張って満足げに頷いた。どうやら彼の口に合ったらしい。
「この国は、飯がうまいな」
「そうですか? 他国へ行ったことがないので比べようがないのですが……」
「俺の祖国は美食の国でな。ここへ来た当初、道中の飯が散々だったのもあるが、サンドロの飯を初めて食べた時は感動した」
「サンドロさんの料理はブランレトゥでも庶民の間では有名ですからね。中には変装して食べに行く貴族の方もいらっしゃるとか」
リックもマヒロが分けてくれたので、サンドウィッチを一つもらう。
揚げ焼きにしたプーレにマーマレード系のジャムのハーブが効いたソースがアクセントになっていておいしい。
「む、おいしいですね」
「だろう? 今度、家族を連れて来よう」
サンドウィッチをほおばりながら、帰ったらエドワードにも教えてやろう、と頬を緩める。
でも、これは身内贔屓かもしれないが、パンはリックの実家で両親と弟が作る、ちょっとお値段お高めの上食パンのほうがこの具材に会う気がする。
「じ、じんぷざまぁ、私は、どうしたら、いい、いいんですか……っ」
べそべそしながらレベリオが言った。その姿は弟のアルトゥロにそっくりだ。
サンドウィッチを片手にマヒロは、面倒くさそうな顔を隠しもしない。いつも鉄壁の無表情なのに、今はだれが見たって面倒くさそうな顔をしているだろう。
「そもそも、どうして勝手に来たんです。私の連絡を待つように、会うときは私と妻が同席することを条件にと申し上げたはずですが?」
痛いところをつかれたのか、レベリオの肩が跳ねた。
だが、マヒロの言う通りだ。リックもレベリオとマヒロがその話をしている時も同席していたし、改めて文面にしたためた時、利き手を負傷しているマヒロに頼まれて代筆したのはリックだ。
「い、言い訳をしても……?」
「どうぞ」
マヒロが頷く。
「アゼル騎士が……帰還して、シケット村の報告書を受け取りました」
サンドウィッチを食べながらマヒロは彼の話に耳を傾けている。
「カイト神父様もイチロ見習い様もとても丁寧に報告書を書いてくださったので、ウィルフレッドはサインをするだけで済みました。ですが、やはり直接確認したいこともありまして……ウィルフレッドに神父様に聞いてくるように頼まれたのです。……もちろん、彼女の顔を見る予定はなくて、でも何かしたくてプレゼントを用意したのです」
マヒロがちらりとそれを一瞥した後、ナプキンで手を拭きながら、それで、と先を促す。
「それでお宅にお邪魔した際、ヴァイパーという青年が対応してくれました。彼は私に面会の約束の有無を聞いて、私が約束をしていないと告げると『では、お名前を頂戴して、言付けだけ受け取ります』と……それで私があなたへの伝言を頼んでいる時に、玄関のすぐ横の部屋から彼女が、出てきて」
治療室は玄関入ってすぐの応接間を使用している。何事もなければ、そこかリビングにいるので間が悪かったのだろう。
「プレゼントを渡したら、花はまだしも……ドレスを見た瞬間、蹴り飛ばされまして……」
ほかの女性陣ならともかく、ナルキーサスならやるな、と思った。
「めちゃくちゃに怒られて、結果、このようなことに……」
「領地視察とのたまい、逃げ回っているもう一人に比べれば、プレゼント持参で来たことはまだ良いほうですが……なぜ、怒られたとお考えですか?」
マヒロの冷静な返しにレベリオは考えるようなそぶりを見せた。
この夫婦のことなどよく知らないリックだが、ナルキーサス個人のことはマヒロを通して関わることも多く、さらには一緒に住んでいるので、好みなどは知っているほうだ。リックはこれまでナルキーサスが、それこそ親しくなる以前からドレスを着ている姿を一度だって見たことがない。むしろ、リックにどこで服を用立てているか聞いてきた理由が「動きやすそうだから」だった。
それにナルキーサスは、レベリオが男装をやめるようにと言っていることを疎ましく思っていたはずである。
「……昔、は、ああいったデザインのドレスが彼女は好きだったんです……」
「……ちっ」
マヒロは思いっきり舌打ちをした。いつもならばたしなめるところだが、リックは自分が舌打ちしないようにするので精一杯だった。
舌打ちされて、びくっとしているレベリオはこの間、過去を追うなとマヒロに諭されたばかりだというのに、まったくもって分かっていない。
「おい、リック。お前なら、今のレベリオ殿の立場だったとして、キースに何をプレゼントする?」
「私だったらですか? ……そう、ですね。服を贈るとしたら、ジャケットとか、でしょうか。もうすぐ寒さが厳しくなりますから、冬物のジャケット、もしくはコートを贈ります。それか無難にお菓子ですね。キース先生は今、子どもたちやユキノさん、アマーリア様とお茶を一緒にするのをいつも楽しみにされていますから」
「正解だ」
よくわからないが、正解を出せて嬉しくなり「ありがとうございます」とお礼を言った。
「ジャ、ジャケット……」
レベリオが驚き顔でつぶやく。
「レベリオ殿は、まだキースのあの格好を否定するのですか?」
「い、いえ……そういうわけでは……。本当に、彼女の好みがもうわからなくて……実はあのドレスも二年ほど前に用意したもので……」
言葉がだんだんとしりすぼみになっていく。
コシュマール子爵家を家宅捜索したら、ナルキーサスへの贈り損ねた贈り物が山のように出てきそうだ。
「深緑が似合うな、と……おもって」
「まずドレスの類は、今の貴方が贈ると逆効果です。彼女は自分の生き方を否定されることにうんざりしていますから。かといって、初手でこれだけの失敗をしているのですから、リックが言ったジャケットやコートどころか、そもそもプレゼントを嫌がるでしょう」
「そ、そんなぁ……っ」
眉を下げた顔がアルトゥロそっくりだ。
「きっとキースのほうは、私の妻が話を聞いてくれているでしょう。ですが……私は前にも言った通り、キースの味方です。当面、レベリオ殿は我が家に出入り禁止です」
「神父様ぁ!」
「宿の準備は?」
「まだです。勢いで出てきましたので……」
はぁ、とマヒロが溜息をこぼす。
妻への熱意は認めるが、勢いだけでどうにかなる問題ではないだろうに。
「第二小隊が近くで廃業した宿で暮らしていますから、そこに空き部屋のひとつもあるでしょう」
「上司の私が行ったら、迷惑では……?」
「それは確かに気は使いますが……何よりレベリオ殿は、仕事ができる上司です。それに育休――育児休暇に関して応援してくださったので、割と好意的に受け入れてもらえると思いますよ。第二小隊は妻子持ちが多いので」
リックは正直に言った。
「育休は、個人的に素晴らしいと思ったのです。出産は命がけであると……私は身をもって知っています、無事に生まれたって、産後に母子ともに何もない保証なんてどこにもないんです。何かあってからでは、遅いのです。本当は一か月ほどの休暇を準備できればよかったのですが……さすがに人員不足の今は難しくて」
レベリオは、切なげな面持ちで告げた。
「情勢が落ち着くのと同時にもっとその辺は整備していきましょう。大事なものがないやつは、未練がないので無茶をしてすぐに死にますから」
マヒロはきっぱりと言い切った。
「今、第二小隊はほとんどが家族を連れてきて、暮らしています。そこで、各家庭を観察してみてください。もちろん、勝手に部屋に入ったり、極々私的な時間を邪魔してはいけませんよ。ただ、夫婦や家族の在り方を見てください。貴方がいいなら、彼らに相談したっていいんです。私だけの意見が正しいなんてことは絶対にありませんから」
「こ、こんな情けない姿を見られて、今後に支障は来さないでしょうか」
「それは貴方次第です。でも、もうすでに大分情けないので、大丈夫ですよ」
マヒロさん、それは何のフォローにもなってないですよ、とリックは心の中で突っ込みを入れた。
「本当に尊敬される人間は、どんな姿を見せても尊敬されますから」
「神父様が言うと説得力がありますね……」
レベリオの言葉にリックは思わずうなずいていた。
マヒロは、破天荒だし気難しいし、割とわがままで類い稀なる親馬鹿だ。それでもリックは、今では誰より彼を尊敬している。だからこそこうして忠誠を捧げている。それは、きっと彼が途方もなく優しくて、愛情深く、自分の中にある信念に揺るぎがない真っすぐな人だからだ。
「一路と海斗に聞きたいことがあるそうですね。それはあいつらをそちらか……そうだ。丁度いいのでここにでも呼び出して話をしてください。個室ですし、我が家からも宿からも近いですから」
「分かりました。そうさせて頂きます。……あの、キースにはすまなかったと伝えておいてください。神父様と君の許可なしには……緊急時を除いては姿を見せないので、と」
「分かりました。では、帰りましょう。家の前までは一緒ですから」
そういってマヒロが席を立った。
ベルを鳴らして店員を呼び、退出を告げる。財布を取り出したマヒロを制して、レベリオが代金を支払い、店を後にする。
道中、レベリオは思案顔で無言だった。マヒロもそれほど自分から喋るタイプではないので、静かな帰り道は少し居心地が悪かった。
家が近くなり、ふとマヒロが足を止めた。
「レベリオ殿」
「はい」
俯いていたレベリオが足を止めて顔を上げる。
「…………これは厳しい助言かもしれませんが……。ゼロから始めることも、時には最善なのかもしれません」
リックの脳裏にかわいらしい双子の姿が浮かんだ。
文字通りゼロから、あの双子は人生を始めようとしている。夫婦がそれに悩んでいたことも、複雑な思いを抱えていることも知っているが、確かにそれは、双子の傷ついた心にとって最強の治療法でもあった。
「ゼロ、から……」
「その意味は次に会うときまでに考えてください。……リック、宿まで案内を。家は目と鼻の先だ。ひとりで帰れる」
「分かりました」
「いえ、神父様に何かあっては大変ですから、道順だけ教えてください。ここらの地図は、大体、頭に入れてきましたから」
レベリオの言葉にマヒロが第二小隊の宿までの道順を説明した。それほど入り組んでいるわけではないし、プリシラと違ってレベリオは方向音痴ではないので、大丈夫だろう。
レベリオはお礼を言って、宿へと歩き出した。
その背を見送り、マヒロの後について家を目指す。
「……そういえば、レベリオ殿、マヒロさんの怪我とか、あの赤ん坊は誰だとか聞いてきませんでしたね」
ふとリックは思ったことを口にする。
妻も子もいないので、煙草に火をつけたマヒロがちらりと振り返る。
「おそらくだが……宿について、自分の部屋を確保して、一息ついたときに気づくんじゃないか。賭けるか? あとで……そうだな。夕食時にでも小鳥が飛んでくるぞ」
ふーっと紫煙を吐き出して、マヒロは愉快そうに言った。
「賭けません。私だって飛んでくるほうに賭けたいので、勝負になりませんよ」
リックは苦笑をこぼす。
レベリオは冷静になってから、大いに混乱するだろう。今の彼は、妻を怒らせてしまったことで頭も心もいっぱいで、マヒロがどうなっていようと、子供が増えていようと、見えていないのだ。
「その……ジーク様のほうはどうされるんですか?」
「まあ、折を見て捕まえに行く。一路か海斗が」
「ご自分では行かないんですね……」
「見ての通り、子育てに忙しいんでな」
主はひょうひょうと言って、三度紫煙を吐き出すと短くなった煙草に火をつけて消した。
もう一本、取り出そうとしたとことでリックは目を細める。
「二本目は、ユキノさんに報告しますが?」
そう告げれば、マヒロはしぶしぶ煙草をアイテムボックスにしまった。そして、クリーンをかけて自分とリックから煙草の残り香をきれいさっぱり消してしまう。
「そういえば、こちらにいる間に、マヒロさんのやりたいこと、ってなんですか? 魔術学ですか?」
「確かにそれもあるが……春にとあることをしたくてな。もう少し計画をきちんと練ってから、お前にも話す」
「……領主家を乗っ取るとか、自分の国を作るとかじゃないですよね?」
割と真剣に聞いたのだが、とても冷たい目を向けられてしまった。
「んなわけがあるか。面倒はごめんだと言っているだろう。教会の宣伝も兼ねたことだ。今のところ、教会が大々的に担ったのは、インサニアの浄化と葬式だけだからな。そのことが悪いと言っているのではないが、信者を募るならもっと明るい印象もほしいんだ。それには丁度いいと思ってな」
「私としては危ないことじゃなければいいですが」
「危なくはないさ。でもそれを円満に行うためには、あの二組の夫婦に仲直りなり、離縁なりきっぱりと決着をつけてもらう必要がある」
「……ほどほどにしてくださいね」
「何を心配しているかは知らんが、本当に危ないことじゃないからな?」
その辺、リックはあまりこの主を信用しきれなかった。
いつだってリックの想像の斜め上どころか、遥か彼方にいるのがマヒロなのだから。ドラゴンを従魔にして死にかけた男の何を信用すればいいのかリックにはまだ分からない。
「リック、帰ったら腹ごなしに鍛錬に付き合え。今夜は雪乃特製の生姜焼きだからな。腹を空かせて最大限、おいしく食べたい」
「ショウガ焼き? ショウガで何を焼くんですか?」
「肉だ。うまいぞ」
「ユキノさんの料理はおいしいので、楽しみです。それに鍛錬はぜひ!」
勝手に浮かんでしまった笑みにマヒロは、くくっと喉を鳴らして笑った。
そして、この後、家に帰って広い庭でエドワードと本日の当番であった第二小隊のメンバーも参加して(気づいたら非番のカロリーナがいたが)鍛錬をし、温泉で汗を流して夕食の席に着いたところで、マヒロが言っていた通り『神父様、お怪我はどうしたんです!? あと、あの赤ちゃんはなんですか!?』と叫ぶ小鳥が飛んできたのであった。
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ユキノの隣には、サヴィラがいて双子が乗っている乳母車を押していた。今日は見ての通り、家族水入らず(ありがたいことに、彼らはマヒロの護衛騎士であるリックも家族だと言ってくれる)でのお出かけで、市場に来ている。さすがにマヒロ一家の豪快なペットたちは、市民に免疫のできているブランレトゥではないので、留守番をしている。ミツルは、今現在、嬉々としてヴァイパーに仕事を教えていて、忙しいのだ。
グラウは、ブランレトゥを目指して以東の地域から大勢の人々がやってくる。温泉もありブランレトゥへ入る前に旅の疲れを癒そうと長期滞在をする人も多いので、交易も盛んだ。
「賑やかだな」
「ええ、本当。すごいわねぇ」
夫妻は市場に来るのは初めてなので、二人ともきょろきょろと興味深そうにあたりを見回している。
何分、親子そろって顔が良いし、存在感のある一家なのでとても目立っている。
「父様、あっちににね、古書の露店があるんだけど」
「どこだ?」
サヴィラの提案にマヒロがすぐさま食いついて、一行は古書の露店を目指して歩いていく。
古びた本が塔のように積まれ、露店いっぱいに並べられている。
「あなた、となりのお店を見ているわね。ミア、いらっしゃい」
「うん!」
マヒロの腕から降りたミアと一緒にユキノは古書の隣の露店に顔を向ける。マヒロに目だけでユキノを任されたので、リックはサヴィラから双子の乳母車を預かり、ユキノたちのほうへついていく。ユキノたちが向かったのは、毛糸を専門に取り扱う露店だった。
ミルクを飲んでから出てきたので、双子はすやすや眠っている。主の子になったばかりの双子だが、もともとマヒロにそっくりだったので、息子と言われても違和感がない。正直、まだ一人ではぐらぐらの首が怖くて抱けないが、リックも敬愛する主にそっくりな赤ん坊を心から可愛いと思っているのだ。
ちなみに遅く起きてきたジルコンとマイカ夫妻は、全快したマヒロと双子に「ま、マヒロだし、そんなこともあるじゃろ」「顔が良いから長生きするわよ~」とあっけらかんとしていた。さすが、悠久の時を生きる種族は器が違う。だが、マヒロが全快したため、かすかにあった遠慮がなくなったそうで、小一時間ほどマヒロは「わしの可愛いカタナがぁ~~」と泣きつかれていたが。
「セーターはもう時期的に間に合わないかもしれないから、マフラーを編みましょうか。ミア、どの色がいい?」
「んとねぇ」
色ごとに籠に入った毛糸をミアがのぞき込み、ユキノが優しくそれを見守る。
「あのね、ミア、ママとおそろいがいいなぁ。だめぇ?」
上目遣いのおねだりはとびきり可愛い。マヒロだったら店ごと買っていたに違いない。
「ふふっ、もちろんいいわよ。でもパパが拗ねちゃうから、何か模様を入れて、それを家族でお揃いにしたらどうかしら?」
「みんなでおそろい? それ、すてき!」
ユキノの提案にミアが顔を輝かせた。
母娘はあーでもないこーでもないと言いながら、家族の分の毛糸を何色も選び始める。リックは、双子の様子を気にかけながら、兎の母娘を見守る。マヒロが溺愛するのが頷けるほど、なんだかぽやぽやしてかわいらしい光景だった。店主の中年夫婦もほのぼのと眺めている。
それから家族分の毛糸を彼女らが選び終えると同時にマヒロとサヴィラが戻ってきて、マヒロが代金を支払い、アイテムボックスに大量の毛糸をしまった。
「いい本はあったかい?」
「うん。うちの図書館にあった本の初版本と、はるか昔に絶版になってたやつがあったんだ」
サヴィラが嬉しそうに教えてくれる。
勤勉な少年なので、暇があれば本を読んでいる。
「初版本っていうか、これはもともとが別の国の書物で翻訳されたものが出版されているだけど、初版と、うちにある第三刷では、翻訳した人が違っててね。解釈が違う部分があるんだよ。普通、翻訳者が別なら、新訳とか、新版で出版されるはずなんだけど、これはそういうのがなくてね」
サヴィラが嬉々として語ってくれる話に乳母車を押しながら耳を傾けつつ、歩き出した夫妻についていく。
同じ貴族の生まれでも、持って生まれた才能は違うものだ。エドワードは絶対に初版本と第三刷の解釈の違いの話なんてしない。血なんてつながっていないのに、ユキノに「探していた絶版本があってな、これはとある個性的な術式紋について書かれているんだが」と嬉々として話すマヒロにそっくりだ。
「そろそろ昼飯の時間だな。何が食べたい?」
「肉!」
「おやさい!」
サヴィラとミアが即座に答えた。
「ねえ、父様、あっちのエリアはいろんな屋台が出てるから食べ歩きしようよ」
「ミアもそれがいい!」
サヴィラの提案にミアが賛同し、じゃあそうしよう、と食べ物の屋台が並ぶほうへと歩き出す。
マヒロとサヴィラ、リックは味付けされたボヴィーニの薄切り肉をたっぷりと薄く焼いた小麦の生地で包んだクレープに似たものを手始めに選んだ。ユキノとミアは、同じ屋台の野菜がたっぷりのを半分こしている。
「私、食べ歩きなんて初めてだわ。歩きながら食べるって難しいのねぇ」
わたわたしながらユキノが言った。歩くことと食べることが同時にできずに、四苦八苦しているようだ。
育ちがよさそうだもんなぁ、とリックは感心しながら、空いているベンチを探す。騎士なんて忙しいときは、現場に走りながら食べるときもあるがユキノには絶対にできなさそうだ。
屋台エリアには、座って食べられるように休憩場所も用意されているのだ。サヴィラが先に見つけたが、ベンチは一つしか開いていなかった。
「俺は歩きながらでも食べられるから」
そういってサヴィラがユキノとミアを座らせた。
それからこのクレープみたいなものを食べた後は、交代で屋台をめぐり、再度集合するころにはもう一つベンチが空いて、全員が座れた。
マヒロが地の副属性魔法で蔦のテーブルを作ってくれたので、そこに戦利品が並ぶ。どれもこれもおいしそうだ。
「なかなかうまいな」
「ええ、本当。このジャガイモのやつ、おいしいわね。何で味付けしているのかしら」
「リック、これどこで買ったの? すごい美味しい」
「ああ、これはあそこの屋台だよ」
「ママ、こっちのニンジンもおいしいのよ」
にぎやかな昼食の席はとても楽しい。
いつの間にか起きていた双子たちも、あーうーと声を出したり、手足を動かしたりしてご機嫌だ。そして通りすがりに可愛いわね、と声をかけてくれる人は、「お父さん似ね」「パパそっくり」と口をそろえた。
「そういえば、ジーク様はいつ帰ってらっしゃるの?」
おもむろにユキノが言った。ジークとはもちろん、ジークフリートのことだ。
デザートを楽しむ家族を横目に本を読んでいたマヒロが顔を上げる。
「……知らん。逃げ回っているからな。無駄に視察の予定を入れたと聞いている」
「あらまあ。……うふふ、困った方、ね?」
なぜだろう。微笑んだユキノの笑みが心なしか冷たい。
そんな妻をちらりと見て、マヒロは本に視線を戻した。触らぬ神に祟りなしってやつかもしれない、とリックは自然な動作で顔を背け、双子に直接日が当たらないように乳母車のシェードを直し、子どもたちはデザートを無言で口に頬張った。
もしかしたら、今後、領主様が――といわず皆が――本当の意味で恐れるべきなのは、マヒロではなく、ユキノなのかもしれない。
「飯を食ったら、今日のところは帰るか。双子は初めての外出だからな」
「でも、その前にミルクバターは買い足しておかないと。たくさん飲むから、もうないのよ」
「それは重要だ」
子どもたちがデザートを食べ終えるのを待って、席を立つ。家で待っていてくれるジョンとレオンハルト、シルヴィアにと揚げ菓子を買って、市場を後にする。
近くの馬車止めに停めていた馬車をリックが少し先に行って、市場の出入り口につければ、サヴィラとユキノがそれぞれ双子を抱いて、マヒロが乳母車をアイテムボックスにしまい、一家が馬車に乗り込む。
「リック、とりあえず商店街に」
「分かりました」
マヒロの指示に従い、リックは慎重に馬車を出す。
市場から商店街はそんなに離れていない。目当ての店に着くとマヒロとミアだけが降りて、ミルクバターのたっぷり入った大瓶を購入して戻ってきた。
それから再び二人が乗り込むのを待って、今度こそ家に向けて馬車は出発する。
今日は天気もよく、少し汗ばむくらいの陽気なので、時折吹く乾いた秋の風が心地よい。グラウの町は、平和そのものだ。
リックは、久々の平穏に鼻歌など口ずさみながら、弟や両親に何をお土産に買おうかなと思考を巡らせ、馬車を牽く愛馬に時折声をかけつつ、家を目指した。
門から中へ入り、玄関先に馬車を停める。
リックは御者席から降りて、馬車のドアを開ける。
「ああ、寝てしまったんですね」
「はしゃいでいたからな」
マヒロの腕の中でミアはぐっすりと眠っていて微笑ましい。
リックはマヒロが降りるのを待ち、次に赤ん坊を抱えているユキノが降りるのに手を貸そうとしたところで、思わず剣に手をかけた。マヒロがミアをかばうように抱きしめて身構えた瞬間、玄関のドアが勢いよく開いて何かが転がり出てきた。
「知るか!! 出ていけ!! くそ野郎!!」
ナルキーサスの怒声が響き渡る。
「す、すみませんっ! ちがうんですぅ!! あだっ!! いたい!!」
玄関先に転がったのは、私服姿のレベリオだった。レベリオの上に長方形の平べったい大きな箱や花束が投げつけられると、ドアは勢いよく閉められた。
せっかく寝ていたミアがびっくりして起きているし、大きな声に双子まで泣き出した。
「あらあら、大丈夫よ、びっくりしたわね」
「ほーら、泣かないで大丈夫だよ」
ユキノとサヴィラはあやすのを横目に「キースぅ……っ」と泣き崩れるレベリオをみやる。
マヒロはあきれ果てた視線をレベリオに向けていた。
「レベリオおじちゃん、だいじょうぶ?」
ミアが心配そうに声をかける。
地面に突っ伏すレベリオは、ふるふると首を横に振った。
リックは、平和って尊いんだな、と遠い目になりながら、花束を拾い上げた。リックは花の名前など知らないが、赤や橙色が秋らしくてきれいだと思う。長方形の箱からは、深緑のドレスがのぞいていた。
「まあ、そのプレゼントの選択からして、大体は想像がつくが……うちの子のミルクの時間なんだ」
「あなた、ミルクは私とサヴィラであげておくわ」
ユキノがリックの差し出した手に掴まり、馬車を下りながら言った。片腕に抱いているマサキは、泣き止んだようだがうるうるした目で辺りを見ていた。次いで、サヴィラが降りてくる。
「だからちゃんと、面倒見てあげてくださいね。ほら、ミアもいらっしゃい」
顔を盛大にしかめたマヒロをさらっと流して、ユキノが夫の腕から降りたミアを連れ、中へ入って行ってしまった。
サヴィラが「頑張ってね」と心ばかりの応援をして、母の背についていった。
「馬車は俺たちが片づけておきますね!」
家の警邏をしている第二小隊の仲間が、そう言ってそそくさと逃げていく。
リックは気づいていた。広い庭の玄関近くに停められた馬車から、イチロとカイトが顔を出したがすぐに引っ込んだことを。関わり合いになりたくないのだろう。面倒くさいから。リックだって適当な用事を思い出して退散したかったが、あとでマヒロに恨まれるほうが面倒くさいと気づいて思いとどまった。
「はぁ……家、の中で暴れても困るしな……近くに店はあったか?」
「歩いて五分ほどのところにカフェがあります」
「じゃあ、そこへ行こう。ほら、レベリオ殿、立って下さい
マヒロが溜息をこぼし、レベリオを立ち上がらせ、リックはドレスの入った箱を抱える。
「おい、園田!」
「はい」
すぐに顔を出したところをみるに、ミツルは玄関で待機していたのだろう。
「所用で出る。これを。お土産のお菓子だ。あとは頼んだぞ」
マヒロがアイテムボックスから取り出したお土産を彼に渡す。
「かしこまりました。行ってらっしゃいませ」
すっとお辞儀をしたミツルに見送られ、リックはマヒロと彼に子どものように手を引かれて歩き出したレベリオとともに、家の近くのカフェへと向かうのだった。
高級住宅街に店を構えているだけあって、入店して通されたのは個室だった。
マヒロの居住まいや、リックという護衛騎士の存在、そして、べそべそしているが貴族らしい男を見て、判断してくれたのだろう。
マヒロとレベリオが丸テーブルを真ん中に向かい合うように座り、リックは護衛ですから、とマヒロの後ろに控える。
「ふむ、ケーキ類が充実しているな。一路が喜びそうだ」
マヒロは、優雅に足を組み、メニュー表に目を通している。レベリオは向かいの席につっぷして、べそべそしている。リックは、店員が小さなテーブルを壁際に出してくれたので、お礼を言って抱えていたドレス入りの箱と花束をその上に置いた。
マヒロが紅茶とサンドイッチを注文し、リックとレベリオにも彼は紅茶を頼んだ。
そう待たずして、給仕がサンドウィッチと紅茶のセットを運んできてくれる。
マヒロは、サンドウィッチを頬張って満足げに頷いた。どうやら彼の口に合ったらしい。
「この国は、飯がうまいな」
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「俺の祖国は美食の国でな。ここへ来た当初、道中の飯が散々だったのもあるが、サンドロの飯を初めて食べた時は感動した」
「サンドロさんの料理はブランレトゥでも庶民の間では有名ですからね。中には変装して食べに行く貴族の方もいらっしゃるとか」
リックもマヒロが分けてくれたので、サンドウィッチを一つもらう。
揚げ焼きにしたプーレにマーマレード系のジャムのハーブが効いたソースがアクセントになっていておいしい。
「む、おいしいですね」
「だろう? 今度、家族を連れて来よう」
サンドウィッチをほおばりながら、帰ったらエドワードにも教えてやろう、と頬を緩める。
でも、これは身内贔屓かもしれないが、パンはリックの実家で両親と弟が作る、ちょっとお値段お高めの上食パンのほうがこの具材に会う気がする。
「じ、じんぷざまぁ、私は、どうしたら、いい、いいんですか……っ」
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サンドウィッチを片手にマヒロは、面倒くさそうな顔を隠しもしない。いつも鉄壁の無表情なのに、今はだれが見たって面倒くさそうな顔をしているだろう。
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痛いところをつかれたのか、レベリオの肩が跳ねた。
だが、マヒロの言う通りだ。リックもレベリオとマヒロがその話をしている時も同席していたし、改めて文面にしたためた時、利き手を負傷しているマヒロに頼まれて代筆したのはリックだ。
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「どうぞ」
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「カイト神父様もイチロ見習い様もとても丁寧に報告書を書いてくださったので、ウィルフレッドはサインをするだけで済みました。ですが、やはり直接確認したいこともありまして……ウィルフレッドに神父様に聞いてくるように頼まれたのです。……もちろん、彼女の顔を見る予定はなくて、でも何かしたくてプレゼントを用意したのです」
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「それでお宅にお邪魔した際、ヴァイパーという青年が対応してくれました。彼は私に面会の約束の有無を聞いて、私が約束をしていないと告げると『では、お名前を頂戴して、言付けだけ受け取ります』と……それで私があなたへの伝言を頼んでいる時に、玄関のすぐ横の部屋から彼女が、出てきて」
治療室は玄関入ってすぐの応接間を使用している。何事もなければ、そこかリビングにいるので間が悪かったのだろう。
「プレゼントを渡したら、花はまだしも……ドレスを見た瞬間、蹴り飛ばされまして……」
ほかの女性陣ならともかく、ナルキーサスならやるな、と思った。
「めちゃくちゃに怒られて、結果、このようなことに……」
「領地視察とのたまい、逃げ回っているもう一人に比べれば、プレゼント持参で来たことはまだ良いほうですが……なぜ、怒られたとお考えですか?」
マヒロの冷静な返しにレベリオは考えるようなそぶりを見せた。
この夫婦のことなどよく知らないリックだが、ナルキーサス個人のことはマヒロを通して関わることも多く、さらには一緒に住んでいるので、好みなどは知っているほうだ。リックはこれまでナルキーサスが、それこそ親しくなる以前からドレスを着ている姿を一度だって見たことがない。むしろ、リックにどこで服を用立てているか聞いてきた理由が「動きやすそうだから」だった。
それにナルキーサスは、レベリオが男装をやめるようにと言っていることを疎ましく思っていたはずである。
「……昔、は、ああいったデザインのドレスが彼女は好きだったんです……」
「……ちっ」
マヒロは思いっきり舌打ちをした。いつもならばたしなめるところだが、リックは自分が舌打ちしないようにするので精一杯だった。
舌打ちされて、びくっとしているレベリオはこの間、過去を追うなとマヒロに諭されたばかりだというのに、まったくもって分かっていない。
「おい、リック。お前なら、今のレベリオ殿の立場だったとして、キースに何をプレゼントする?」
「私だったらですか? ……そう、ですね。服を贈るとしたら、ジャケットとか、でしょうか。もうすぐ寒さが厳しくなりますから、冬物のジャケット、もしくはコートを贈ります。それか無難にお菓子ですね。キース先生は今、子どもたちやユキノさん、アマーリア様とお茶を一緒にするのをいつも楽しみにされていますから」
「正解だ」
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「ジャ、ジャケット……」
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「レベリオ殿は、まだキースのあの格好を否定するのですか?」
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「第二小隊が近くで廃業した宿で暮らしていますから、そこに空き部屋のひとつもあるでしょう」
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「それは確かに気は使いますが……何よりレベリオ殿は、仕事ができる上司です。それに育休――育児休暇に関して応援してくださったので、割と好意的に受け入れてもらえると思いますよ。第二小隊は妻子持ちが多いので」
リックは正直に言った。
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「今、第二小隊はほとんどが家族を連れてきて、暮らしています。そこで、各家庭を観察してみてください。もちろん、勝手に部屋に入ったり、極々私的な時間を邪魔してはいけませんよ。ただ、夫婦や家族の在り方を見てください。貴方がいいなら、彼らに相談したっていいんです。私だけの意見が正しいなんてことは絶対にありませんから」
「こ、こんな情けない姿を見られて、今後に支障は来さないでしょうか」
「それは貴方次第です。でも、もうすでに大分情けないので、大丈夫ですよ」
マヒロさん、それは何のフォローにもなってないですよ、とリックは心の中で突っ込みを入れた。
「本当に尊敬される人間は、どんな姿を見せても尊敬されますから」
「神父様が言うと説得力がありますね……」
レベリオの言葉にリックは思わずうなずいていた。
マヒロは、破天荒だし気難しいし、割とわがままで類い稀なる親馬鹿だ。それでもリックは、今では誰より彼を尊敬している。だからこそこうして忠誠を捧げている。それは、きっと彼が途方もなく優しくて、愛情深く、自分の中にある信念に揺るぎがない真っすぐな人だからだ。
「一路と海斗に聞きたいことがあるそうですね。それはあいつらをそちらか……そうだ。丁度いいのでここにでも呼び出して話をしてください。個室ですし、我が家からも宿からも近いですから」
「分かりました。そうさせて頂きます。……あの、キースにはすまなかったと伝えておいてください。神父様と君の許可なしには……緊急時を除いては姿を見せないので、と」
「分かりました。では、帰りましょう。家の前までは一緒ですから」
そういってマヒロが席を立った。
ベルを鳴らして店員を呼び、退出を告げる。財布を取り出したマヒロを制して、レベリオが代金を支払い、店を後にする。
道中、レベリオは思案顔で無言だった。マヒロもそれほど自分から喋るタイプではないので、静かな帰り道は少し居心地が悪かった。
家が近くなり、ふとマヒロが足を止めた。
「レベリオ殿」
「はい」
俯いていたレベリオが足を止めて顔を上げる。
「…………これは厳しい助言かもしれませんが……。ゼロから始めることも、時には最善なのかもしれません」
リックの脳裏にかわいらしい双子の姿が浮かんだ。
文字通りゼロから、あの双子は人生を始めようとしている。夫婦がそれに悩んでいたことも、複雑な思いを抱えていることも知っているが、確かにそれは、双子の傷ついた心にとって最強の治療法でもあった。
「ゼロ、から……」
「その意味は次に会うときまでに考えてください。……リック、宿まで案内を。家は目と鼻の先だ。ひとりで帰れる」
「分かりました」
「いえ、神父様に何かあっては大変ですから、道順だけ教えてください。ここらの地図は、大体、頭に入れてきましたから」
レベリオの言葉にマヒロが第二小隊の宿までの道順を説明した。それほど入り組んでいるわけではないし、プリシラと違ってレベリオは方向音痴ではないので、大丈夫だろう。
レベリオはお礼を言って、宿へと歩き出した。
その背を見送り、マヒロの後について家を目指す。
「……そういえば、レベリオ殿、マヒロさんの怪我とか、あの赤ん坊は誰だとか聞いてきませんでしたね」
ふとリックは思ったことを口にする。
妻も子もいないので、煙草に火をつけたマヒロがちらりと振り返る。
「おそらくだが……宿について、自分の部屋を確保して、一息ついたときに気づくんじゃないか。賭けるか? あとで……そうだな。夕食時にでも小鳥が飛んでくるぞ」
ふーっと紫煙を吐き出して、マヒロは愉快そうに言った。
「賭けません。私だって飛んでくるほうに賭けたいので、勝負になりませんよ」
リックは苦笑をこぼす。
レベリオは冷静になってから、大いに混乱するだろう。今の彼は、妻を怒らせてしまったことで頭も心もいっぱいで、マヒロがどうなっていようと、子供が増えていようと、見えていないのだ。
「その……ジーク様のほうはどうされるんですか?」
「まあ、折を見て捕まえに行く。一路か海斗が」
「ご自分では行かないんですね……」
「見ての通り、子育てに忙しいんでな」
主はひょうひょうと言って、三度紫煙を吐き出すと短くなった煙草に火をつけて消した。
もう一本、取り出そうとしたとことでリックは目を細める。
「二本目は、ユキノさんに報告しますが?」
そう告げれば、マヒロはしぶしぶ煙草をアイテムボックスにしまった。そして、クリーンをかけて自分とリックから煙草の残り香をきれいさっぱり消してしまう。
「そういえば、こちらにいる間に、マヒロさんのやりたいこと、ってなんですか? 魔術学ですか?」
「確かにそれもあるが……春にとあることをしたくてな。もう少し計画をきちんと練ってから、お前にも話す」
「……領主家を乗っ取るとか、自分の国を作るとかじゃないですよね?」
割と真剣に聞いたのだが、とても冷たい目を向けられてしまった。
「んなわけがあるか。面倒はごめんだと言っているだろう。教会の宣伝も兼ねたことだ。今のところ、教会が大々的に担ったのは、インサニアの浄化と葬式だけだからな。そのことが悪いと言っているのではないが、信者を募るならもっと明るい印象もほしいんだ。それには丁度いいと思ってな」
「私としては危ないことじゃなければいいですが」
「危なくはないさ。でもそれを円満に行うためには、あの二組の夫婦に仲直りなり、離縁なりきっぱりと決着をつけてもらう必要がある」
「……ほどほどにしてくださいね」
「何を心配しているかは知らんが、本当に危ないことじゃないからな?」
その辺、リックはあまりこの主を信用しきれなかった。
いつだってリックの想像の斜め上どころか、遥か彼方にいるのがマヒロなのだから。ドラゴンを従魔にして死にかけた男の何を信用すればいいのかリックにはまだ分からない。
「リック、帰ったら腹ごなしに鍛錬に付き合え。今夜は雪乃特製の生姜焼きだからな。腹を空かせて最大限、おいしく食べたい」
「ショウガ焼き? ショウガで何を焼くんですか?」
「肉だ。うまいぞ」
「ユキノさんの料理はおいしいので、楽しみです。それに鍛錬はぜひ!」
勝手に浮かんでしまった笑みにマヒロは、くくっと喉を鳴らして笑った。
そして、この後、家に帰って広い庭でエドワードと本日の当番であった第二小隊のメンバーも参加して(気づいたら非番のカロリーナがいたが)鍛錬をし、温泉で汗を流して夕食の席に着いたところで、マヒロが言っていた通り『神父様、お怪我はどうしたんです!? あと、あの赤ちゃんはなんですか!?』と叫ぶ小鳥が飛んできたのであった。
ーーーーーーーーーーー
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
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次回の更新は、4日(土)、5日(日) 19時を予定しております。
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