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本編
第三十三.五話 抱き締める人
しおりを挟む「インサニアが発見された、か……」
「イチロさんが殲滅に成功したそうですが、これで脅威は去ったと思われますか?」
リックは腕を組みドアに寄り掛かって思案するマヒロに尋ねる。リックは、エドワードと共に貧民街近くの詰所で待機していて、速攻で騎士たちがまとめた報告書片手に騎士団へと走り、現在はマヒロの元に報告に戻っていた。
夜は随分と深くなって、あれだけ賑やかだった屋敷の中は、嘘のように静まり返っている。
マヒロは、珍しく眉間に皺を寄せて目を閉じていたが、暫しの間を置いて首を横に振った。
「インサニアが、隠れていた、という時点で人為的な何かを感じる。ザラームの件もあるし、油断は出来ん。明日は、俺も貧民街に出向こう。この件はどこまでの人間が知っている?」
「城壁の見張り警備は、運のいいことに我々の派閥の隊でしたのでウィルフレッド団長から直接、箝口令が敷かれたそうです。ウィルフレッド団長も明日は、こっそり貧民街に伺うそうですが……そうは言っても人の口にドアはありませんから。どこで誰が見ていたか……冒険者たちは良く分からないのですが、イチロさんに非常に懐いたとのことでイチロ神父さんが黙ってろと言うなら墓まで持っていくと……ちなみに狼系の獣人族で構成されたパーティーなんですが」
「ああ、あれは昔から犬に好かれる男だからな。……インサニアについては、口外しないほうが良いだろう。下手をすれば大きな混乱を招くからな」
マヒロはため息交じりに言った。
「……住民たちへの被害は?」
「夜になってアンデットに襲われた者が多いそうですが、急遽、クエスト内容はアンデット討伐に変わりましたのでその名目の緊急クエストで招集を受けた治癒術師たちが治療に当たっています。幸い、今のところ、死の痣は報告されていませんし、死者も居ません。シグネさんとトニーさんが先頭に立って、住民たちを纏めて下さっているそうです」
「そうか、明日、お礼を言わない、と……」
不自然に途切れた言葉にリックは首を傾げる。くるりとマヒロは部屋の中を振り返り、慌てたように中へと戻って行く。リックもその背に続いて中に入れば
サヴィラがベッドの上で背中を丸めていた。
「どうした」
リックは、何時の間にやら用意されていたランプに魔力を込めて灯りを入れる。僅かに光が差した部屋の中、サヴィラの顔は真っ青だった。
「吐きそうか?」
ベッドに膝をついて、サヴィラの背を擦るマヒロが尋ねるとサヴィラは頷いたが、次の瞬間、我慢の限界だったのかおえっと嘔吐いてベッドとマヒロのズボンの上に戻してしまった。とはいえ、固形物は食べていないから出て来たのは補水液と胃液くらいのものだった。吐しゃ物独特のツンとした臭いが鼻を突く。リックは慌てて足元に置かれていた空の桶をマヒロに渡した。マヒロはそれを自分とサヴィラの間に入れる。
「うっ、おぇ、ごめっ、ごめんなさっ」
サヴィラがやけに焦ったように告げてマヒロから距離を取ろうとすれば、マヒロは逆にその背を抱き寄せて、優しく擦る。
「大丈夫だから、全て吐いてしまえ。辛いかもしれないがその方が楽になれるから」
穏やかな声には咎める色など欠片も見つからなかった。
サヴィラは、左手でマヒロの腕を縋る様に掴むと、桶の中に二、三度嘔吐した。
「どうした?」
隣のベッドでナルキーサスが体を起こした。部屋の中に漂う臭いに気付いて心配そうに目を細めた。
「嘔吐か?」
「ああ。まだ、出そうか?」
サヴィラは、ふるふると首を横に振った。体力の限界だったのか、そのままマヒロの方に倒れ込む。起き上がったナルキーサスが、サヴィラの首筋に触れた。
「熱が上がったな……吐き気を緩和する薬と胃の薬を煎じて来てやろう。そろそろアルトゥロとも交代しないとならんしな。ミアはどうだ?」
ナルキーサスがブーツを履き、どこからともなく懐中時計を取り出して見ながら言った。
「ミアは、大分熱も下がって、今はぐっすり眠ってる」
「それは重畳」
そう告げてナルキーサスはすたすたと部屋を出て行った。隣でドアを開閉する音が聞こえた。
「リック、窓を開けてくれ」
「はい」
リックは、ベッドに一番近い大きな窓を開ける。途端にふわりと冷たい夜風が頬や髪を撫でた。
「ごめ、なさ……汚して……言わないで、ちゃんとそうじ、するから、言わな、でっ」
途切れ途切れにサヴィラが言った。一体、どういう意味だ、とリックは首を傾げる。ネネ達に言わないで、というにはやけに必死だ。羞恥や心配をかけまいという心遣いよりもその声に恐怖が滲んでいるような気がする。
マヒロは、僅かに目を細めると汚れたズボンやシーツ、サヴィラの服に手を翳して呪文を唱えた。するとふわりと呆気無い程、汚れが消え去って元通りになる。
「綺麗になるものは、汚れとは言わん。誰にも言わないから安心すると良い」
マヒロの穏やかな声にサヴィラは彼に寄り掛かったまま肩の力を抜いて頷いた。
「ほら、口を漱げ」
マヒロがカップに魔法で水を満たすとサヴィラに口を漱がせる。サヴィラは、熱が高くて体が辛いのか、ぐったりとしているがどうにか口を漱いだ。元々、有隣族は平熱と呼ばれる体温が人族に比べて低いから、触って熱いと感じる程の熱が有ればかなり辛いだろう。
「とはいえ、一度は洗ったほうが気持ちがいいな。リック、そっちの空いているベッドのシーツを剥がして、ここと替えてくれ」
「はい」
よいしょとマヒロがサヴィラを抱き上げた。リックはすぐに言われたとおりにシーツを取り換える。ついでに毛布も取り換えておく。
綺麗になったベッドにマヒロがサヴィラを横たえ、皮袋に氷水を入れ直すとサヴィラの額や腋に当てる。冷たいのが心地よかったのか、サヴィラの表情がほんの少しだけ緩んだ。
マヒロはベッドの縁に腰掛けてサヴィラの髪を撫でて、頬の鱗に触れた。一瞬、その指の動きが止まって、マヒロが首を傾げたが何も言わなかったのでリックも気にしないことにした。
「…………怒らない、のか?」
サヴィラの言葉に彼の腹をぽんぽんと撫でていたマヒロの手が止まった。
紫紺の瞳は、ぼんやりとしたままマヒロを見つめている。
「何を怒るんだ? 怒ることなど、一つもない」
サヴィラは、ゆっくりと首を横に振った。
「ノアとミアを……おれは、ずっと……隠してた」
熱に掠れた声が少しだけ震えた。サヴィラがマヒロ越しにミアを見る。
リックもちらりとミアを確認するが、ミアはマヒロの神父服にくるりと包まれたまますやすやと眠っている。その隣でネネがミアに張り付くようにして眠っていた。
「……ずっと、俺たちの家に居たんだ、二人とも……っ」
まるで罪を告白するかのようにサヴィラが言葉を吐き出す。だが、その先を続けようとしてサヴィラは、言葉を詰まらせた。
サヴィラは握った両の拳をその目に押し付けた。噛み締められた唇が痛々しい。
「……ミアが、俺のとこに来た、あの日に…………ノアは……ノアは、もう……手遅れだと、思ったんだ……っ」
震える声が囁くように言葉を紡ぎ出す。
「……何人も、何人も……俺は、俺より小さな、子どもが……死ぬのを見た……っ。ノアを見た時に分かったんだ。どれほど手を尽くしても……もう、助からないって……だったら、ミアの傍に居させてやりたかったんだ、最期までミアと一緒に……いて、それで……」
「ノアの母親と同じ墓に入れてやろうと思ったのか?」
マヒロの声はどこまでも穏やかに凪いでいた。
サヴィラがはっとしたように拳の隙間からマヒロを見上げる。リックも訳が分からず、答えを求めてマヒロを見つめる。
「……命を削って、稼いだ金だとオルガの残した愛だと、あの時、サヴィラは言っただろう。……それにミアの家の隣に住む老婆が言っていた。オルガは、ミアとノアを確かに愛していたと……けれど、突然、居なくなったとも」
それはきっと市場通りで、マヒロ達がサヴィラとミアを見つけた時の話なのだろう。
サヴィラは紫紺の瞳を見開いて、呆然とマヒロを見つめていた。
「それにネネが教えてくれたんだ……サヴィラが墓地で墓守をしていると」
サヴィラの紫紺の瞳がまた押し付けられた拳の向こうに隠された。
噛み締められた唇が震えながら開かれる。
「…………不治の、病だって……オルガは、言ってた……っ」
囁くような声で告げられた事実にリックは息を飲む。
ネネは知っていたのか、とマヒロが問えば、サヴィラは首を横に振った。
「病気のことは、俺しか知らなかった。オルガは、いつも仕事に行く時、俺とネネの所に二人を預けて行ったから……ミアとノアにはずっと……ずっと、隠して、治療院に行けばいいのに……無理して客を取った金を貯め込んでいたんだ……っ。治らない病に金をかけるより、ミアとノアが……大人になるために、一日でも長く生きるためにって……っ」
サヴィラの鱗の浮いた頬に透明な滴が零れて落ちていく。
「オルガは……ぎりぎりまでミアとノアと一緒にいた、けど……死期が近づいた時、二人を置いて……姿を消したんだ。次に会った時は、墓場だった……オルガは、どこかの路地裏で独りで死んでたんだって。葬儀屋が回収して、火葬場に運ばれてきたんだ。だから、骨を俺が引き取って……墓を作った」
ぐっと体に力を込めてサヴィラが起き上がる。
サヴィラは背中を丸めて、膝の上で毛布をきつく握りしめていた。
「大人なんて、嫌いだ。大嫌いだ……っ。自分の都合だけで俺達を虐げて、捨てるんだ。でもオルガは……オルガは、違うんだ。本当に……ミアとノアを愛していたんだよ、心から大切に想って居て、捨てた訳じゃないんだよ、神父さまっ」
「ああ」
マヒロの手がきつく握りしめられたサヴィラの手の上に重ねられた。まだ幼い少年の手は真尋の手に覆い隠されてしまう。
「オルガは……ミアとノアを……俺に託したんだ。守ってくれって、困っていたら、手を貸してやって欲しいって……」
「だから、度々、様子を見に行っていたんだな」
サヴィラはこくりと頷いた。
マヒロの手の下から抜け出した幼い手がマヒロのシャツを握りしめた。
「神父さま、ミアにはノアしかいないんだ……っ」
顔を上げたサヴィラの紫紺の瞳は、縋るようにマヒロを見上げる。
「俺の、俺の命をノアにあげてもいいから……ノアを助けてくれよ……っ。ノアの命は、俺のと違ってちゃんと母親に愛されて、家族に大事にされていた大切な命なんだ……っ!」
ぼたぼたと零れる涙がサヴィラの頬を濡らす。
リックは泣きそうになるのを堪えようと唇を噛み締めた。
「神さまは、なんだって出来るんだろ……? だったら、ノアの命を助けて……っ」
「神様は、人の命を奪うことも与えることも出来ない。見守ることしか出来ない」
マヒロは紫紺の瞳を真っ直ぐに見据えて言った。
「けれど、孤独だけは誰にも与えない」
マヒロは包む様にサヴィラを抱き締めた。サヴィラが身を強張らせたのが、見ているだけでも伝わって来た。
「無力な神父で、すまない……っ」
囁くように告げられた言葉には、マヒロがマヒロ自身に向けた後悔や焦燥や怒りが浮かんでいた。
サヴィラは、目を見開いて固まった後、おずおずと自分とマヒロの間でマヒロのシャツを握りしめた。そしてマヒロの肩に顔を埋めるようにしてその細い背を震わせる。
リックは、そっと顔を伏せて足元に落ちていたシーツと毛布を拾い上げ、音もなく部屋を後にする。ドアを閉める寸前、サヴィラの押し殺した嗚咽が聞こえて来て、唇を噛んだ。
「本当に」
突然、聞こえた声にびくりと肩を揺らす。
ドアの横の柱にナルキーサスが寄り掛かって、向かいの窓の向こうと遠く、見つめていた。
「ままならんものだな」
薄い唇の端が自嘲が浮かぶ。
「……消えゆく命を前にすると、いつも自分の無力さが際立って嫌になる」
暗い廊下にナルキーサスの声が静かに落ちて消えていく。
「……ノアは、どうしても……助かりませんか?」
黄色の瞳だけがこちらに向けられた。
「すみません、馬鹿なことを言いました。ナルキーサス殿もアルトゥロ殿も尽力してくださっているのは分かっているのに」
「きっと、治癒術師は……神様の次に人々の願いや祈りを聞く仕事だと思うのだ」
ナルキーサスは寄り掛かっていた柱から体を離す。
「あの小さなレディと約束したんだ。出来る限りのことはするとな」
そう言ってナルキーサスは、小さく笑うとまた隣の部屋へと歩き出す。
「サヴィラが落ち着いたら、また顔を出すとしよう。君はどうするんだい?」
「私は、ここで待機を命じられておりますので夜通し屋敷の警護に当たります」
「私が見た所、その必要はないと思うぞ」
ドアを開けてナルキーサスが言った。その言葉の意味が分からずリックは首を傾げる。ナルキーサスは首を捻ってこちらを振り返るとおもちゃを見つけた猫のように笑う。
「この屋敷も敷地もマヒロ神父殿がかなり複雑な守護魔法を掛けている。私が文献でしか見たことも無い様な古い魔法も混じっている。実に興味深いものだよ」
予想外の言葉にリックは目を瞬かせる。
「で、ですが……」
「それよりも可能であれば、その貧民街の緊急クエストの結果報告書を私にも読ませて欲しいんだが?」
「はい、団長にもナルキーサス殿にお目通しいただくよう、言付かっておりますので……どうぞ」
リックは腰のポーチ型のアイテムボックスから報告書を取り出してナルキーサスに渡した。ナルキーサスは、それをぱらぱらと捲って目を通すと、借りるよ、と告げて中へと入って行く。
「無意味な夜通しの警護などせず、体を休めて明日に備えるべきだ。おやすみ、リック三級騎士」
「は、はい」
ナルキーサスはウィンクを一つ寄越して、ドアの向こうに消えた。
静まり返った廊下で、リックはどうしたものか、と苦笑を浮かべながらがしがしと髪を掻いた。
ゆっくりと揺蕩う意識の中で蹄の音が聞こえた気がして目を開ける。広いリビングは、まだ薄暗く健やかな寝息がたくさん聞こえてくる。
ティナは、腕の中で眠っていた羊の獣人族の女の子のコニーを起こさない様に気を付けながら、そっと体を起こす。寝る時はきちんと並んでいた筈だが、子どもたちの寝相は想像よりも活発だったようだ。布団から随分と遠い所に居る子もいるし、隣の子の足がお腹の上に載って苦しいのか、眉間に皺を寄せている子もいた。ひときわ大きな小山はサンドロでサンドロの上でアビーが丸くなって眠っている。ローサの脇にはシェリルとヒースが居て、ローサにぴったりとくっついている。ティナは、ふふっと小さく笑って床に転がっているクレミーを布団に戻そうと立ち上がる。
「起きたのかい?」
囁くような声に振り返れば、窓際のソファにソニアが居た。その腕には、アナが抱えられている。
「おはようございます。ソニアさん、眠らなかったんですか?」
「ううん、寝てたよ。でも、アナがぐずりだしちゃってね、ミルクをやっておしめを替えてやったところなんだ」
そう言ってソニアは優しい笑みをアナに向ける。アナの小さな手がソニアの鼻を掴んで、ソニアが鼻息を掛ければ、アナはきゃっきゃっと可愛らしく笑った。ティナはそれに笑みを零しながら、ルイスの上に乗っていたヒースの足をどかして、布団からはみ出ていたクレミーを布団の上に戻して布団を掛けてやる。
「……こんな可愛い子を何で捨てちまったんだろうねぇ」
ソニアがアナを見つめながらぽつりと呟いた。
アナは、ある日、サヴィラがゴミ捨て場から拾って来たのだとネネが教えてくれた。ここに居る子供たちは、皆、サヴィラがどこからか連れて来た子供なのだと。
アナは、まだ生後一年も経って居ない。ソニアが言うには、八か月か九か月くらだいろうとのことだ。ネネは近所に住んでいた牛の獣人族の女性を頼ってミルクを貰ったり、離乳食の作り方を教えて貰ったりしていたらしい。牛の獣人族は、授乳期になると兎に角沢山、乳が出るので乳母に選ばれることも多い。
「アナは可愛いねぇ、あんたはお姉ちゃんたちに大事に大事にされていたんだねぇ」
ソニアの穏やかな声にアナはまたソニアに手を伸ばす。ソニアが人差し指をその小さな小さな手に握らせた。ティナは、アナに手を握られて初めて知ったのだが、ティナの指すら握り切れない様な小さな赤ん坊の握力は思っていたよりもずっと強いのだ。
「ん? 誰か帰って来たね、蹄の音がする」
ソニアがぴんと大きな三角の耳を立てて窓の方に顔を向けた。
ティナは、窓へ近づき、カーテンから外を覗く。門が開いて馬が一頭、薄明るい庭に入って来た。馬の背には小柄な人影があった。馬の横を走る白銀の狼を見つけて、ティナは顔を輝かせる。
「イチロさんとロビンです。私、迎えに行ってきます」
ティナは、ソニアの据わるソファの背もたれに掛けてあった薄手のショールを手に駆け出した。ソファの片隅に置かれた巣から出て来たピオンがひょいとティナの肩に飛び乗って来る。
ソニアが「青春ねぇ」と笑う声は急ぐティナの耳には届かなかった。
初夏の朝は、ぐんと冷え込む。肌寒さに首を竦めながらも広い廊下を駆け抜け、階段を駆け下りる。丁度、リックが玄関の扉を開けて、イチロを迎え入れた所だった。
「イチロさん、おかえりなさ、きゃっ」
一歩手前で躓いて、ぐらりと体が前に倒れる。咄嗟に胸の中にいる薄紅のブレットを抱き締めるように庇って衝撃に身構えるが、ふわりと温かなものに抱き留められて目を瞬かせる。
「ふふっ、ただいま、ティナちゃん」
上から降って来た笑い声に顔を上げれば、イチロの顔がすぐ近くに有って、慌てて離れる。
「す、すみませっ」
「大丈夫だよ。怪我は無い?」
彼の肩に移ったピオンを撫でながら問われて、ティナは、はい、とか細い声で返事をした。リックがくすくすと控えめだが笑って居て、ますます頬が熱くなる。
「イチロさん、コハクを馬小屋に入れて来ますね」
「ありがとうございます」
リックは、いいえ、と笑うと外へと出て行った。
「あ、あの、イチロさん」
ローブを脱ぐイチロに声を掛ける。
イチロは腕にローブを引っ掛けたまま首を傾げた。
「怪我、とかは……」
「大丈夫だよ。僕もロビンも怪我は無い。冒険者も第二小隊の人達も怪我は無いよ。ただ、アンデットが出たからその毒に中って倒れてしまった人たちがいるけど、治癒術師さんたちがちゃんと治療に当たってくれているから大丈夫」
その言葉にティナは、ほっと胸を撫で下ろす。
イチロは、ローブを脱いでどこかに、多分、アイテムボックスにしまうと深い蒼の神父服の上着のボタンも外して脱いで腕に掛けた。ワイシャツ姿になったイチロは、何だか大分疲れているようで、その横顔に覇気がない。
「真尋くんに報告に戻ったんだけど、この時間帯、彼がいつも眠ってる時間なんだよねぇ……起きてるかも知れないけど、ドアを開けたら確実に起きちゃうだろうからなぁ」
「そうなんですか?」
「そうなんですよ」
イチロは困ったように笑って髪を掻き上げた。
「真尋くんって気配に敏感だからね。僕ですら寝顔なんて滅多に見られないんだよ。必ず僕より遅く寝て、早く起きるから」
そういえば、プリシラがそんなことを言って居たような気がする。ティナは、どちらかというとイチロの為にこの屋敷の掃除に精を出していたので、あまり自信はないが。
「……なら、少しお茶でも飲んで休みませんか? イチロさん、なんだか疲れているように見えます」
イチロが驚いたような顔をして自分の顔に片手を当てた。どうやら疲れていると言う自覚が無いようだ。
ロビンが、イチロに擦り寄れば、イチロはふっと表情を崩してロビンの大きな頭を撫でた。
「そうだね、なら一杯、貰おうかな」
「とびきり美味しいの入れますね」
ティナは思わず笑みを零して、こっちです、と歩き出す。イチロがロビンと一緒にあとからついて来る。ピオンは既にいつものお気に入りの場所であるロビンの頭の上に移動していた。
ミルクパンでポヴァンのミルクを温めて、そこに直接茶葉を入れる。沸騰させないように火加減に気を付けながら、三分ほど煮れば、ロイヤルミルクティーの完成だ。
ティナはそれを用意していたカップに注いで、蜂蜜をたっぷりと入れる。イチロは、びっくりするほど甘いものが好きなのだ。ティナは自分のものにも蜂蜜をいれてくるくるとかき混ぜる。使ったティースプーンとミルクパンを流しにおいて、棚からクッキーの瓶を取り出す。
イチロとマヒロの買った屋敷は、家具は無いが調理器具や食器だけは、売られもせず、捨てられもせずに残っていた。夜逃げしたと言うからギリギリまでここに居るために残したのかもしれない。
厨房はとても広くて、石窯まである。今日は子供たちのためにピザを焼くつもりだとサンドロが張り切っていた。
きっと、こんなに広い厨房だから大勢の料理人がここで働いていたのだろう。大広間ではパーティーだって催されていたかもしれない。
ティナはソーサーにカップを乗せて、お茶うけにクッキーを数枚お皿の上に用意し、イチロの元に運ぶ。勿論、ロビン用のクッキーも用意した。
イチロが居るのは、厨房の隣にある使用人の休憩室だ。ここも家具はそのまま残されていた。ほどほどに広い部屋で南側の大きな窓からは垣根で仕切られた家庭菜園のスペースに出ることが出来るようになっている。家庭菜園は枯れ果てているし、垣根も伸び放題だが手入れをすれば使えるとルーカスが言っていた。家庭菜園の奥には、プーレを飼う鳥小屋やポヴァンを飼っていたのであろう大きな小屋もある。多分、家の主は毎朝、搾りたてのミルクと産みたての卵を食べていたのだろう。なかなか贅沢な話だ。
アーチ形の入り口にはドアが無い。だから、厨房を出ればイチロの姿がすぐに見えた。
昨夜は月が出ていたのに、今はうっすらとまた雲が空を覆って、太陽の光を遮っている。それでも部屋の中は、淡く青白い早朝独特の色に包まれていてその中でイチロは椅子に腰かけて、ぼんやりとテーブルの上に視線を落としている。やっぱりいつもの彼に比べると少し様子がおかしい。
「イチロさん、ミルクティーお好きでしたよね? 甘めにしておきましたから、どうぞ」
ティナはいつも通りを心掛けて、にこにこと笑いながらイチロの前にティーカップを置いた。
静かな屋敷の中は、カップが立てる小さな音すらやけに大きく聞こえる。
「ん、美味しい。凄く優しい味がするね」
「ちょっと贅沢にミルクだけで煮出して、蜂蜜を垂らしたんです」
「成程ね、それは贅沢だ」
ふっと笑ってイチロはまたカップに口を着ける。
ぷつりと会話が途切れて部屋の中は沈黙に覆われる。ロビンは、一路の足元で大人しくしているし、ピオンもロビンの頭の上にちょこんと座って様子を窺っている。
マヒロは、とてもとても美しい人だとティナだって思う。正直、初めて見た時は、人形が喋っているのか本気で思ったほどだ。マヒロは、ちょっと怖いくらいに美しい。
でもイチロだって、整った顔をしていると思う。白い肌に落ちる薄茶の髪も男性にしては大きな目もすっと通った鼻筋もいつもにこにこと笑って居る唇も素敵だし、何よりも琥珀に緑の混じる、まるで森を思わせる様な綺麗な色の瞳がティナは好きだった。その目は、木漏れ日を落とす穏やかな森のようにいつも優しくて、イチロが笑っているとティナも嬉しくなる。
でも今は、その目に何か暗い影が落ちている。
「……イ、イチロさん」
長い睫毛が揺れて、琥珀に緑の混じる森色の瞳がこちらを振り返る。
「あの……その……何か、ありましたか? えっと、げ、元気が無いように思えるんです、けど……」
言ってから、言わなければ良かったと後悔してしどろもどろになる。
「う、あ、あのすみません、やっぱり何でも」
「僕の故郷はね、とても平和な所なんだ」
発言を取り消そうとしたティナの言葉を遮るようにイチロが言った。
「死はとても遠い所にあって、あんな血まみれの怪我を診ることも、壊死した足を見ることも普通に生きていれば、まず遭遇しないほど、平和だったんだ」
イチロは南の窓の方へと顔を向けて居て、その表情は分からない。
「僕のおじいちゃんは異国の人だったから、僕には故郷が二つあるの。料理は不味いことで評判だったけど、紅茶は美味しいところ。僕のおじいちゃんが凄く上手に紅茶を淹れるんだよ。僕も教えてもらったけど、なかなか上手には出来くてね」
ふふっと柔らかな笑い声が落ちた。
「もう一つは、お父さんの仕事の関係で引っ越した場所。真尋くんに出逢った場所。僕の大事なものが全部有った場所」
「大事な、もの?」
「そう、大事なもの」
振り返ったイチロが、ふっと笑った。でもそれは自嘲めいて辛そうなものだった。まるで彼に似合わない笑みにティナは目を瞬かせる。その拍子に落ちた花びらがテーブルの上にひらりと落ちた。
「僕はそれら全部を捨ててしまったけれどね」
イチロは頬杖をついて、クッキーに手を伸ばした。
零された言葉の衝撃にティナは、何も言えなくてじっとイチロを見つめることしか出来ない。イチロは、ジャムをたっぷり乗せて焼いたクッキーを齧って、美味しいね、といつもの調子で言った。
「神様のことはこれでも愛しているんだよ。僕と真尋くんが、確かに存在することの証明でもあるから。でも……僕は、真尋くんみたいに神様の全てを受け入れられた訳じゃないんだ。恨んでもいるし、憎んでもいる。こんなんだから僕はきっと、まだ見習いなんだろうね」
残りのひとかけを口の中に放り込んで、イチロはくすりと笑った。
いつもの彼の朗らかな笑みからはかけ離れた乾き切って固い笑みだった。
「嫌な話を聞かせちゃったね、ごめん。……僕、シャワーでも浴びてくるよ」
カタンと椅子が鳴って、イチロが立ち上がった。ロビンが顔を上げてピオンが立ち上がる。ティナは、咄嗟に横を通り過ぎようとしたイチロの腕を抱き締めた。イチロが足を止める。
「……何が、あったんですか? いつものイチロさんらしくないけど、でも……すごく辛そうです」
顔を見る勇気は無くて、ティナはイチロの腕を抱き締めたまま言った。
「今のイチロさんは、すごくすごく辛そうです、哀しそうです……っ」
勢いだけで吐き出した言葉に返事は無い。でも、このまま腕を離したらもう二度と、イチロが笑ってくれない様な馬鹿みたいな不安が有ってティナは、ぎゅうぎゅうとイチロの腕を抱き締めた。すると苦しかったのか、薄紅色のブレットが顔を出してティナの肩に乗った。でも、ティナにはそれに構う余裕すらない。
「…………たんだ」
囁くような小さな声だった。
ティナは、ゆっくりと顔を上げる。イチロはどこか遠くを見つめたまま唇を動かした。
「初めて、人に向けて弓を引いたんだ」
無理矢理に感情を押し込めたかのような声だった。
「貧民街に人型のアンデットが出たんだ。僕は、それに向けて矢を放った。無我夢中だったし、アンデットはほんとに人とは思えない色と姿をしていたから……でも、光の矢がアンデットの毒を打ち消したのかよく分からないけれど、彼は……ただの死体に戻った。僕が……僕が、矢で射抜いたものは……人だったんだよ……っ」
イチロが力なく床に座り込んで、彼の腕を抱き締めていたティナもつられるように椅子から降りて床に座り込んだ。
「……僕、は……あれを人だと判断しなかったんだ……っ」
震える声が囁くように言葉を吐き出した。
床の上で握りしめられた手は力を入れ過ぎて筋が浮かび上がっている。
「僕は、怖いんだ……っ。次は、生きた人間に向かって矢を放ってしまうかもしれない。いつか……いつか誰かの命を奪ってしまうかもしれない……。それに僕は、人の死を恐ろしいと感じるばかりで、悲しむことも憐れむことも、神父としてその魂を神の御許へと導くことも出来なかった……っ」
イチロは右手で前髪をくしゃりと握りしめた。その手が震えている。噛み締められた唇が白くなっている。
「……イチロさん」
ティナは腕を抱き締めるのを止めて、その下、床の上で握りしめられていた左手を両手で包み込んだ。この国の男性にしては小柄なイチロだが、その手は骨ばって大きな男性の手だった。
乱れた前髪の隙間から森色の瞳がティナを振り返る。ティナはその目を真っ直ぐに見つめ返す。
「きっと、そのアンデットになってしまった方は、イチロさんのおかげで苦しみから解放されたはずです」
唇だけが「なぜ」と言葉を形どった。
「だって……アンデットは死して尚、続く苦しみの象徴です。人として死ぬことも出来ず、人からも魔獣からも忌み嫌われて、崩れて行く体を引きずって、百年近くは生きながらえるんです。自分が誰かも分からずに、何をしているのかも分からず……彷徨い続ける位なら、ただの死体に戻った方が幸せの筈です。人として死を迎えられるんですから」
イチロの手を包み込む手に力を込める。
森色の瞳がじわりと滲んで、透明なそれがぽたりと落ちて床の上ではじけて消える。
「……それにイチロさんは、大丈夫です。貴方は、心優しい神父様で人を救う人だから。貴方の放つ矢は、必ず誰かを救う矢になる筈です……絶対に人の命を奪う矢になんかなりません。だって貴方はそれを望まないから。だから、大丈夫。怖くて当たり前じゃないですか。死を恐れない人なんていません。どんなに強い冒険者の方だって死を恐れます。それに……イチロさんは前に言って居たじゃないですか、イチロさんの愛する神様は、とてもとても優しい方だって……っ」
視界が歪んで頬にあたたかなものが流れて落ちて行くのを感じる。
イチロの手を宝物みたいに抱き締める。
「だから神様だって、イチロさんの弱い心を赦してくれます。もし、赦してくれないって言うなら私が、私が神様に直訴してあげますから……っ、だから、大丈夫なんですっ」
伸びて来た大きな手が頬を撫でて、指の腹が優しく涙を拭っていく。
「……なんで、ティナちゃんまで泣くの?」
ちょこっとだけ困ったような、可笑しそうに笑う涙交じりの声がする。
「ど、どうせ泣くなら、二人で泣いた方がすっきりするに、きまっ、決まってるからですぅ……っ」
ぽろぽろと零れる涙に比例して、花びらがひらひらと溢れ出す。
「イチロさんは、優しいから、怖くなるんです……っ。だから、だから……大丈夫です……っ、大丈夫なんですっ!」
大丈夫なんです、とそればかりを繰り返した。
本当はもっと伝えたいことが有ったはずなのに涙が邪魔して、言葉にならなくて、それでも胸に溢れる想いを伝えたくて仕方がないのに、涙ばかりが次から次へと溢れてそれしか言葉が出て来ないのだ。
「イチロさんは、だ、大丈夫なんですぅ……っ」
「ねえ、ティナちゃん。抱き締めるよ」
抱き締めていた手がするりと逃げていく。それを咄嗟に追いかけようとすれば、それより早く力強い腕の中に閉じ込められる。抱き締められているのだと気づいたのは三秒後だった。驚き過ぎてあれだけ溢れていた涙が止まる。
「……僕は、君が思ってくれているような優しい人間じゃないけどさ……でも、君がそう言ってくれるなら優しくなれる気がする。強くなれる気がする。大丈夫だって……そう思えるから、僕がまた哀しい時、辛い時……こうやって一緒に泣いてくれる?」
鼻先が触れ合う様な近さにイチロの顔が有った。
きっといつもだったらティナは羞恥でそれどころでは無かっただろうけれど、琥珀に緑の混じる優しい瞳が不安に揺れているのを見つけてティナは、その濡れた頬に手を伸ばして、彼がしてくれたようにその頬を拭った。
「一緒に泣いた後、一緒に笑ってだってあげます」
どうかどうか彼の心の苦しみや悲しみが解けて消えて行きますようにと想いを込めて、ティナは微笑んだ。
長い淡い茶色の睫毛が揺れて、ぽたりと涙が一滴だけ彼の頬を伝って落ちて行った。それがとても綺麗で、指で掬う様に追いかけたら、ぐっとイチロの顔が近づいて来て、柔らかなそれが瞼に触れた。瞼にキスが落とされたのだと気づいた瞬間、ティナは真っ赤になって固まる。ぶわわっと花びらが溢れ出した。
イチロは、くすくすと可笑しそうに笑った。でもそんな彼の耳が赤くなっているのにティナは、どうしてか気付いてしまった。
「もう少しだけ、抱き締めさせて。ティナちゃん、花のいい匂いがして落ち着くんだ」
まるでその事実を隠す様にイチロは、ティナの了承も得ずに勝手にティナを抱き締める。
思っていたよりもずっと力強くて、温かい腕の中でティナは幸せでどうにかなりそうだと思いながらもおずおずとイチロの背に腕を回した。
「ん? マヒロ? それにナルキーサス殿にリックまで……」
朝飯の仕度をしようとしていたサンドロは首を傾げながら、厨房の向こうにある使用人の休憩室の前に立つ三つの背に声を掛けた。マヒロの足にはミアが抱き着いている。丁度、厨房に入っていたソニアとローサも不思議そうに首を傾げた。
振り返ったナルキーサスが、にたりと笑って、おいでおいでと手招きするのに親子三人、首を傾げつつ、近づいて行き中を覗き込んで思わず吹き出しそうになる。
「若いとはいいものだな」
ナルキーサスがしみじみと言った。見た目こそ二十代のナルキーサスだがエルフ族の血を引く彼女は一体、今、幾つなのだろう。
「あたしたちにもあんな時代があったもんよねぇ」
ソニアが昔を懐かしむ様にくすくすと笑う。
皆が見つめる先、休憩室の床で何故かイチロとティナがくっついて眠っているのだ。イチロの背にはロビンが寄り添い、二人の間には白と薄紅のブレットが丸くなっている。
イチロがティナを抱き締めるようにして眠っていて、ティナはイチロにぴたりとくっついて眠っている。何となく二人の目元が赤く腫れぼったいということは、泣いていたのかもしれない。
「……なにか泣いたらしいが、解決はしたようだな」
マグカップで紅茶を飲みながらドア枠に寄り掛かるマヒロが言った。
「まあ、これだけ幸せそうな寝顔ですから」
リックが苦笑交じりに告げる。ミアは不思議そうに首を傾げながら二人を見ていた。
「にしてもまあ、すごい花びらだ」
ナルキーサスが言った。二人の周りはティナの落とした花びらだらけだ。普通は消える筈の花びらは、二人を包む様に散らばっている。
「妖精族の落とす花びらは、普通はすぐに消えるが……あんまりにも強い感情の元に落ちるとこうして暫く残っている。そして、こんな風に花を落とすということは」
ナルキーサスが上体を屈めて、足元に落ちていた芍薬に似たティナの髪色と同じ花を拾い上げた。
「妖精族が本気で相手を想い、果ての無い幸福を感じた時、こうして最も美しい花を落とすのだ」
ナルキーサスの手の中で咲くその花は、確かに文句のつけようもないくらい、感嘆するほど美しい花だった。ナルキーサスは、真尋の脚にしがみついていたミアの手にその花を渡した。ミアの小さな手に余る大輪の花だ。
「神父さま、きれい」
ミアがマヒロのズボンをちょいと引っ張って行った。マヒロは、そうだな、と微笑むとマグカップをリックに渡してミアを抱き上げた。ミアは大切そうに花を両手で抱える。
「あとで、ノアに見せてもいい?」
「構わんが……それまで残っているのか?」
「これだけ綺麗なら、二、三日は残るよ。見せてやるといい」
ナルキーサスの言葉にマヒロは、良かったな、とミアの頬を撫でた。ミアがこくりと頷く。
「……で、どうするんだい? これ」
「イチロさんは、報告に戻ったとおっしゃられていましたが」
ソニアが苦笑交じりに言って、リックが困惑気味にマヒロを振り返る。
ローサは、ニヤニヤしながら親友を見ていて起こす気は無いようだ。
「……放っておいてやれと言いたいところだが、今日も忙しいし、報告も聞きたいんだがなぁ」
流石のマヒロも親友のあまりに健やかな眠りを邪魔するのは、気が引けるようだった。
そんなこんなで大人たちが、どうしたものかと言っている間に、イチロとティナが目を覚まして羞恥に悶えたのは言うまでもない話である。
――――――――――――――――
ここまで読んで下さって、ありがとうございました!
感想、お気に入り登録、いつもいつも本当に感謝しておりますっ!
シリアスに始まって、ニヤニヤで終わった今回のお話ですが、次回はまた気を引き締めつつ頑張りたいと思います。
次のお話も楽しんで頂ければ幸いです。
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