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本編 2
第三十七話 見破る男
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おかしい。どうしてだ。
エドワードは、村役場の前で村の娘たちに囲まれているカイトを見ながら首を傾げた。
イチロが置いて行かれた腹いせにエドワードを村の娘たちに売ったので、ここに戻ってから連日、追いかけ回されていたのはエドワードだったのに、いつの間にか追いかけまわされているのはカイトになっている。カイトはイチロと違ってずいぶんと女慣れしている様子で、適度にあしらてっていて、卒がない。
ちなみにイチロは既に娘たちにとって眼中にない。彼が今回連れて来た恋人のティナ――妖精族のとびきりの美少女に勝ち目はないと、娘たちは嘆いていた。
当初はエルフ族の里で仕事をこなしていたカイトだったが、毒性のある魔獣の血で汚された土地を綺麗にするには、光属性の浄化の力が有効だと発見されてこちらに来るようになった。
浄化と言ってもインサニアを綺麗にするのとは違い、クリーンという清浄魔法で土に付着している血を消すという地道な作業だ。まず汚染された土を掘り起こして取り除き、それにクリーンをかけて戻すのだ。
エルフ族の里のほうは、もう問題はない。世界樹は未だぐっすりと眠っているそうだが、精霊樹は時折、起きたりもしていると報告が上がり始めている。魔獣や魔物に異変もなく、里の中はいたって穏やかな空気が流れている。
「カイト様、ずっとここにいてくれたらいいのに」
「ごめんね。俺は神父の仕事があるからさ」
カイトは困ったように眉を下げて告げる。
顔が良いので、娘たちがうっとりしている。エドワードに対しては、ガツガツとした婚活以外のなにものでもなかったのに、この差は何なんだ。
もしもここに彼の相棒が居たら「お前が馬の話しかしないからだよ」と言ってくれたかもしれないが、彼の相棒は今日も遠く離れたブランレトゥで自分の主を監視しながら書類仕事を片付けているだろう。
「ああ、エディ。そろそろ報告会議の時間かな、迎えに来てくれたんだね、ありがとう」
別にそんなことはないのだが、抜け出す口実だというのは分かるのでエドワードは「はい」と頷く。カイトは、引き留める娘たちにウィンクを一つ返して、こちらにやって来た。
そのまま歩き出したカイトに並んで、エドワードも歩き出す。
「もう、見てないで助けてよ」
「いやぁ、悪い悪い」
「誠意が伝わって来ないなぁ」
じとりと睨まれるが、エドワードは笑って受け流した。
カイトはイチロより歩くのが早い、イチロの速度に慣れ切っているので、油断すると置いて行かれる。
「今朝の手紙に書いてあったんだけど、昨日の朝、グラウに発ったらしいよ。とはいってもポチが運ぶから移動も一瞬だろうけれど」
「そうなのか? なら良かった。本当に一時はどうなるかと思ったけどな」
どうやらエドワードの相棒は、ブランレトゥではなく、グラウで書類仕事をしているようだ。書類仕事からは、どうやっても逃れられない。騎士は案外、地味な事務作業も多いのだ。
「全くだよ。あいつは昔から無茶ばかりするんだよ。フォローに回る俺と一路のことも考えてほしいよ」
カイトがやれやれと肩をすくめる。
「でも本当なら、もうとっくに教会は開院してたのにな」
そうなのだ。開院予定日であった風の月の一日はとっくに過ぎていて、本来であれば今頃はティーンクトゥス教会が開かれて、忙しくしていたはずだ。
神父である真尋がベッドから起き上がれないので、早い段階で延期が決定されて、開院は未定になってしまった。手紙でのやり取りでの決定であるが、こればかりはしょうがないとイチロもカイトも苦笑していた。
「俺はこちらに来たばかりだし、イチロはまだ見習いだしね。急いでも良いことはないよ」
「それはまあ、そうだな」
「それに何だか知らないけど、農業をやりたいらしくてね」
「は? 誰が」
エドワードはカイトの突拍子もない言葉に首をかしげる。カイトは「真尋に決まってるでしょ」とあっけらかんと告げる。
ますます訳が分からない。
正真正銘貴族籍であるエドワードよりも、大貴族のような風格を持つのがマヒロだ。
今回のあれこれで長らく留守を預かるプリシラとクレアが「貴族って、たかだか二カ月の生活費がこんなにかかるの? 何にかかっているのかしら。何か、私たちの知らないような特別な支払いがあるのかしら?」と不安そうに真尋から預かった生活費をエドワードのところに持ってきたことがある。
残念ながらエドワードの実家であるオウレット男爵家は、由緒が取り柄の質素な暮らしをしている一族なので、マヒロが二人にぽんと渡した金額はエドワードの実家の年間の生活費より少し多かったほどだ。嘘だ。つまらない見栄を張ってしまった。大分多かった。
結局、サヴィラに相談したところ「父様は馬鹿だから」と呆れたように言って、緊急事態用の予備費を加味して少し多めに取り分け、残りはマヒロに返してくれた。
――そんなマヒロが農業?
「いや、確かに屋敷の庭の一部で家庭菜園はしてるけど、あのオーバーオールと麦わら帽子が世界一似合わないマヒロさんが農業??」
「エディ、さっきから思考が全部、口から漏れてるよ。まあ、真尋って庶民的な格好が笑えるほど似合わないけどさ」
「だって、あの俺より貴族らしいって評判のマヒロさんが……農業??」
「もともとがあいつも俺たちもお坊ちゃんだからねえ。一路は真尋を見過ぎて自覚がないけど、うちだってかなりのもんだよ」
けらけらと笑いながらカイトが言った。
エドワードは、やっぱり、と納得する。
「真尋たちの故郷の料理は、総称を和食って言うんだけど真尋は、とにかくこれが好きなんだよ。とくに雪乃が作るやつね。エディも飲んだでしょ、スープ。ほら味噌汁」
「ワショク。確かに、ミソシィルは深みがあってすごく美味しかった」
ユキノが作ってくれた玉ネギとじゃがいもの入ったミソシィルは、深いコクと複雑な旨味が凝縮されていて、初めての体験だった。
「あれは大豆って呼ばれる豆から作った調味料で出来ているんだ。それにこの国の主食はパンとかパスタだけど、真尋たちの主食はお米だからね。その米っていう作物を育てたいらしいよ」
「へぇ……でも教会の運営は?」
「真尋の食への執念はすごいからなぁ。とはいえ、あいつはそれも含めて色々と考えているみたいだよ」
そう言ってカイトは笑った。
「農業っていうのは、人手があればあるほどいい。それに大きな農場を作れば、雇用が増えるだろう? 将来的に貧民街の人たちを採用できないかなって考えているみたい」
「なるほど……神父って経営までするんだな」
「真尋の家は大きな商売をしていたからね、真尋に任せれば大体の商売は成功すると思うよ」
「確かに得意そうだ。カイトとイチロもそういう得意なのか?」
エドワードの問いにカイトは、まさか、と笑って肩をすくめた。
「一路は、人事とか事務とか、裏方が得意なんだよね。真尋がそういうふうに育てたからさ。まあ、もともと弟は人の懐にはいるのが上手いし、人の感情の機微に敏感だから人を支えるのが上手いんだよ」
「あー、分かるかも。真尋さんの仕事を完璧に手伝えるのってイチロだけだし、なんかこう、すごい気が利くというか、気が付くんだよな。こっちが必要としていることやものに。それを先んじて用意してくれているから、仕事をするのがすごく楽なんだ」
「さすが俺の弟!」
カイトがご機嫌に言った。
「じゃあ、カイトはなにが得意なんだ?」
「俺? 俺は法律。故郷には弁護士っていう仕事があって、法律の専門家みたいなもんなんだけど、それを目指してたんだ。だから、こっちでも色々と法の勉強をして、法律関連のことは俺が引き受けるつもりだよ」
「へ、へえ……なんか、すごいな」
エドワードの感想にカイトは「でしょ?」と茶目っ気たっぷりに笑った。
そして、カイトのイチロ自慢を聞きながら歩いていれば、あっという間に騎士団の詰所につく。シケット村の詰所は、二階建ての一軒家で、常駐している騎士はたったの二名。しかも夫婦で(平和な村なので、普段はそれで事足りるのだ)、二回が住居スペースになっているので家族でここに住んでいる。今回の事件で、他から派遣されてきた騎士は、空き家を借りたり、テントを張ったりして生活している。冒険者も同じくだ。
「あ、イチロ、アゼル」
丁度、イチロとアゼルが中から出て来た。こちらに気付いた二人が足を止める。
だが、誰が口を開くより早く、僅かに眉を寄せたカイトがイチロに歩み寄り、上体をかがめて弟の顔を覗き込んだ。イチロが驚いてのけぞる。
「な、なに?」
イチロが兄の奇行に疑問の声を上げるが、カイトは答えず、じぃっとイチロを見つめたまま何故かアゼルに問いを投げた。
「アゼル、この後の一路の仕事は?」
「えっと、また畑で浄化作業です」
アゼルが目をぱちくりさせながら答える。
ふーん、と返事をして、カイトは緑の混じる青い瞳を剣呑に細めた。なぜかイチロの目が泳いでいる。
「お前、熱があるだろ」
「「え」」
エドワードとアゼルの声が重なる。
カイトの手がイチロの額に触れて、カイトはますます眉を寄せながら体を起こした。
「だ、大丈夫だよ。微熱だと思うし……」
「一路」
反抗するイチロをカイトが腕を組んで見下ろす。イチロは、目をそらしたままだ。
今、ポチがブランレトゥに馬車ごと帰っているので、エドワードたちはアゼルの実家や村長宅に世話になっている。イチロとティナはアゼルの家で、海斗とエドワードは村長宅で世話になっているため、今日にいたっては前日の取り決め通り、朝から別々の仕事をしていたので、今初めて会ったのだが、熱があるなんて気づかなかった。普段通りに見えたのだ。
「できれば、お兄ちゃんは、具合の悪い弟を怒りたくない。……自分が何をすべきか分かるね?」
「…………帰って、休む」
「Yes! その通り。良い子だね」
ぽんぽんとカイトがイチロの頭を撫でれば、気が抜けたのかイチロが倒れそうになり、カイトはそれを見越していたのだろう、難なく受け止めて横抱きに抱え上げた。
エドワードだって、イチロの護衛騎士だ。一緒に行動していれば見抜けたかもしれないが、さすがに一瞬で見抜いたのは兄弟だからこそだろうか。
「アゼル、治癒術師を呼んで来て。俺はこの困った弟を君の家に送り届けて来るから」
「は、はい!」
アゼルが慌てて駆け出す。
イチロは、よほど辛いのを我慢していたのか、カイトの腕の中でぐったりとしていて、呼吸も荒い。だらりとおちていた腕をイチロの腹の上に乗せるために手首に触れれば、驚くほど熱い。
「エディ、ティナを呼んで来てもらえるかな? 彼女が薬草を管理しているはずだから」
「分かった」
「頼むよ」
そう告げて、カイトはイチロを抱えたままアゼルの家へと歩き出した。
エドワードもすぐに踵を返し、村長宅の事務所にいるだろうティナを呼びに行くため、走り出したのだった。
触れた額は、じわりと熱い。
ティナは、氷水にタオルを浸してしぼる。イチロの額に張り付く髪を指でそっとはらってタオルを乗せた。
イチロとティナが借りているアゼルの実家(大家族なので家が大きい)の一室で、ティナはイチロの看病をしていた。
今朝、どことなく元気がないように見えて声をかけたのだが「大丈夫」と笑う彼に流されてしまった。こんなことなら、強引にでもベッドに押し込んでしまえばよかったと、後悔が浮かぶ。
コンコンとノックの音がして「どうぞ」と返事をすれば、エドワードが顔を出した。
「ティナ、夕食持って来たぜ」
「え? もうそんな時間ですか? ありがとうございます」
エドワードが差し出すトレーを受け取り、ベッドの横のテーブルに置く。今日はシチューとパンのようだ。
「俺は先にもらった。これからさっとシャワーを済ませて来るから、そうしたら看病、交代するな」
「ありがとうございます。……ところでカイトさんは?」
イチロの兄の姿がないことに首をかしげると、エドワードが苦笑を零す。
「まだ仕事中。イチロの分の土の洗浄をしてくれているんだ。アゼルが付き合ってくれてるよ。俺はイチロの護衛騎士だからって、先に帰されたんだよ」
「そうなんですね……」
イチロとカイトは、魔獣の毒の混じった地によって汚染された土を連日、綺麗にしている。騎士と農夫が土を掘り返し、それを二人が綺麗にして、再び騎士と農夫たちが戻すという地道な作業だ。
「イチロはどうだ?」
「治癒術師の先生が言うには、風邪だそうです。でも、疲労がたまっているみたいで、少し魔力に乱れがあるからと解熱薬と安定薬を飲むように指示を頂きました。幸いイチロさんの手持ちにイチロさんが煎じたそのお薬があったので」
ティナの話を聞きながら、エドワードはベッドに腰かけようとして、シャワーがまだなのを思い出したのか、立ったままイチロを見下ろす。
運ばれてからどんどん熱が上がり、今が一番高いかも知れない。
「そっか。まあ……無理すんなよとは言ったんだけどなぁ。やっぱりそばを離れるんじゃなかったな」
エドワードがため息交じりに言った。
エドワードはイチロの護衛騎士だが、イチロはこちらに来たばかりの兄を気遣って、信頼するエドワードにカイトの傍にいて、補佐するようにとお願いしていたのだ。
もどかしそうに、がしがしとボルドーの髪を掻くと、エドワードは踵を返す。
「とりあえず、俺、シャワー浴びてくるな。頼む」
「はい」
ティナの返事に手を振って、エドワードは出て行った。
また静かになった部屋で、ティナはエドワードが運んでくれた夕食のトレーを膝に乗せて食べた。ミルクをたっぷりと使ったシチューはとても美味しい。
それから、ティナが食べ終えて少しして戻って来たエドワードと交替し、夕食の後片付けをしてティナもシャワーを浴びて寝間着のワンピースに着替えた。
アゼルの家の人たちは、温厚で賑やかで、とても優しい。イチロのこともとても心配してくれて、いつでも食べられるようにと、イチロ用にスープを用意してくれていた。それにお礼を言って部屋に戻り、エドワードと共にイチロの看病をする。
ティナが部屋に戻ってすぐにイチロが起きた。食欲はあまりない様子だったが、なんとかスープを飲んでもらい、解熱薬と安定薬を飲ませる。苦いらしく、顔をしかめたイチロは、しかし、喋るのも辛いようで横になると再び眠りこんでしまった。
それからティナは、イチロの汗をぬぐったり、時折、目を覚ますイチロに水を飲ませたりと看病を続けた。
ちなみにロボ一家は村の外で野外生活を楽しんでいる。
カイトとアゼルが帰って来たのは、家の中が静まり返った真夜中だった。
ティナは、傍らで報告書を読んでいたエドワードにイチロを任せ、ショールを羽織って迎えに出る。
「おかえりなさい……わぁ、ど、どうしたんです?」
カイトとアゼルは全身泥だらけだった。
「通り雨に降られちゃってね」
「とりあえず、クリーンを……」
クリーンをかければ、綺麗になるはずだと口にすれば、アゼルが慌てて首を横に振った。
「だ、だめっすよ。カイト様、魔力切れ寸前で、治癒術師に止められて帰って来たんすから……」
「え? な、なんでまた……」
カイトもイチロ同様に魔力量の桁は人並外れている。それがどうして魔力切れ寸前なんてことになるのだろうか。
「カイト様、イチロ様の分も土の洗浄を……それも三日分」
アゼルの言葉にティナは開いた口が塞がらなかった。
確かに神父二人に対して、農夫や騎士はたくさんいるので、土自体はどんどん掘り起こされている。だが、それにしたって一日の量だってかなりのはずなのに、それを三日分。おそらく、今日のカイト自身の分もあったはずだから、四日分は片付けてきたということだ。
「なんでそんな無茶を……」
「三日分、さきにやっとけばイチロが休めるでしょ? それよりさ、アゼル。これくらいなら大丈夫だから、クリーンかけようよ」
「だめっすよ! 治癒術師さんにだめって言われ、あ!! もう!!」
アゼルの言葉を彼に無視して、カイトは自分とアゼルを綺麗にしてしまった。アゼルが睨むがカイトはどこ吹く風だ。ステータスを開いて「うん、問題ない」と言って、ステータスを閉じる。
「ティナ、そうは言っても先にシャワーをもらうよ。夕飯、準備してもらってもいいかな」
「は、はい。着替えは……」
「自分で持ってるから大丈夫。タオルだけ貸してほしいな」
「それは俺が準備します」
「thank you」
異国の言葉でそう告げて、カイトはシャワールームへ歩き出し、アゼルが追いかけていく。ティナはその背を呆然と見つめていたが、はっと我に返って慌ててキッチンへと急いだのだった。
魔力の消費が激しかったからだろう。
カイトはシチューもパンも四回もおかわりして、綺麗に食べてしまった。アゼルもたくさん食べたので寸胴の鍋はすっからかんだ。
後片付けはアゼルが引き受けてくれたので、ティナはカイトともにイチロの下へ行く。歩きながら、診断結果やその後の様子などをティナはカイトに伝えた。
「ああ、おかえり」
中へ入れば看病をしてくれていたエドワードが顔を上げた。
「ただいま。どうだい?」
「熱は少し下がった気がしないでもないが、まだまだ高いな。さっき、一回起きて、水飲んで寝た」
「そう」
カイトは、小さく返事をしてベッド横の椅子に腰かけた。ティナも反対側へ回って、ベッドに腰かける。触れた首筋は変わらず熱くて、勝手に眉が下がってしまう。
「やせ我慢なんかするから……」
呆れたような言葉とは裏腹に弟を見つめる眼差しには、心配が色濃く浮かんでいる。
大きな手が、イチロの額の上のタオルに充てられた。パキパキと音を立てて半分だけタオルが凍る。
「カイトさん、魔法は……!」
ティナは慌ててその手を掴んで止める。
「さっき、ご飯を食べて回復したから大丈夫だよ」
ティナの手を抜け出した大きな手は、あやすようにティナの頭を撫でて離れて行く。
事情を知らないエドワードが、訝しむように首をかしげている。
「さて、エディもティナもあとは俺がみてるから、もう寝な。明日も仕事があるんでしょ」
「ダメに決まってます。カイトさんが休んで下さい。魔力切れ寸前なんですから……」
「魔力切れ!? なんでまた……」
ティナの言葉にエドワードが驚きの声を上げた。
カイトは「もう大丈夫だよ」と誤魔化そうとしているが、ティナはエドワードを味方につけるため、カイトの無茶を話してしまう。エドワードは呆れたような視線をカイトに向ける。
「カイトが一番、寝ないとだめじゃないか」
「そうです。倒れたらどうするんですか?」
「でも……」
「分かった、分かった。俺も一緒に行くよ。ティナに残ってもらえばいい」
ティナは、うんうん、と頷く。そもそもここはイチロとティナが借りている部屋だ。
「私はイチロさんが元気になるまではお休みをもらっていますし、出来るお仕事はここでしますから大丈夫です。クイリーンさんも明日にはこちらに来てくれるそうですので」
カイトとエドワードがこちらに来た代わりに、クイリーンがエルフ族の里に行っているのだ。だがイチロが倒れてしまったので、シャテンを飛ばして連絡したところ、明日、こちらに戻って来てくれることになったのだ。
遠いので連絡はしていないが、ギルドマスターのアンナがここにいたとしてもティナに休みをくれただろう。彼(彼女?)は、家族や恋人の看病をするためなら、いつだってこころよく休みをくれるのだ。
「じゃあ、もう少しだけ傍にいさせて? 心配なんだ」
こちらの様子をうかがうような上目遣いは、イチロにそっくりでティナは「うっ」とたじろぐ。一見、色と大きさが全然違うのだが、ふとした仕草や表情が、兄弟なのだと実感するほどよく似ている。
「ね、お願い、ティナ」
ティナは恋人の上目遣いに弱い自覚がある。いつもそれで押し切られてしまうのだが、どうやらその兄の上目遣いにも弱いようだ。似ているのがいけない。
「ちょ、ちょっとだけですよ……? 本当に、ちょっとだけです」
「やった。ありがとう、ティナ」
笑った顔もよく似ている。ティナは、負けてしまったことをちょっと反省しながら、ベッドに座り直した。
アゼルの家は大きいが、一部屋一部屋はそれほど広くない。むしろ狭い。そう感じてしまうのは普段暮らしている屋敷が広すぎるからだろう。
ここは、部屋の大半を占めるシングルサイズのベッドが一つと、二人掛けのソファが壁際に置かれていて、チェストが一つあるだけだ。もとはアゼルの兄弟の部屋だったが、結婚して家を出て近所で暮らしているらしい。
そこに背が高くて体格のいいエドワードとカイトがいると部屋の中がぎゅうっとしていると感じる。
ちなみにこの二人は、他に部屋がなかったので階段下の物置にテントを張って寝ている。最初は「神父様と騎士様をそんなところで寝かせるなんて」と顔を蒼くしていたアゼルとその両親だが、カイトが持参したそのテントは、なかなかに広くて快適だったので、むしろ子どもたちが、そこで寝たい、遊びたい、と騒ぎだしたほどだった。面倒見のいいカイトは、楽しそうに子どもとテントの中を探検していたが。ちなみにリビング、ダイニング、シャワールームにトイレ、キッチン、そして寝室が二つもあったらしい。
「……この子はさぁ、真尋ぐらい大雑把に生きればいいのに、それができないからあんまり悩み過ぎると小さい頃からこうして熱を出すんだよ」
カイトがぽつりと言った。
「成長してないなぁ」
「そんなこと言うと怒るぞ。身長伸び悩んでいるから」
エドワードが言った。カイトは、くすくすと笑って「それは困る」と肩を竦めた。
それからぽつぽつと会話を交わしていたのだが、気づいた時にはカイトは椅子に座ったまま眠ってしまっていた。
「寝ちゃいましたね……」
「なぁ。だから部屋で寝ろって言ったのに……」
エドワードが苦笑を零しながら立ちあがる。
「おい、カイト。部屋のベッドで寝ろよ。ここじゃ疲れがとれないぞ」
エドワードが声をかけ、肩を強請る。すると青に緑の混じる瞳が、うっすらと覗いて、そしてカイトはゆらりと立ち上がる。
起きてくれた、とほっとしたのも束の間。カイトは、なんとそのままイチロの隣に潜り込んで、眠ってしまった。
「ええー……嘘だろ……」
「寝ちゃってますねぇ……本格的に」
ティナはカイトの頬をつついてみるが、起きる気配はない。大丈夫だなんだと言っていたが、限界まで魔力を使ったのだから、想像以上に疲労がたまっていたのだろう。なかなかに頑固なところも、兄弟で似ているようだ。
「これ、俺一人で抱えれられるか? イチロと違って、でかいんだよなぁ……寝てる人間て重いし」
エドワードが頭を掻きながら言った。
「……このままここで寝てもらってもいいかもしれませんよ。イチロさんもお兄さんじゃ別に気にしないでしょうし……」
「でも、ティナの寝るとこが……」
「私は小さいのでそこのソファで十分ですよ」
ティナは壁際のソファを振り返る。エドワードやカイトでは盛大にはみ出してしまうかもしれないが、ティナが使う分には十分だ。
「アゼルさん、まだ起きているでしょうか? 毛布をお借りしたいんですが……」
「だったらテントの中にユキノさんが使ってたっていう部屋があるから、そこを使えばいいんじゃないか? ちゃんと魔力登録制の鍵もあるから」
「でも……」
ティナはぐっすり眠るカイトと、いまだ熱が引かないイチロに視線を向ける。
「カイトがくっついてるから大丈夫だよ。ティナが倒れたら、イチロが一番、後悔するし、落ち込むぜ? それは嫌だろ?」
その言葉はもっともで、ティナは、こくん、と頷く。
「それでよし。……でも俺も心配だしな……こうするか」
そう言って、エドワードはこちらにやって来ると壁際のソファを消した。多分、アイテムボックスに入れたのだ。そして、ベッドを自分の力と風の魔法を補助に使って壁にくっつける。窓際の籠で寝ていたピオンとプリムが、眠たそうに顔を出した。
エドワードは一度、部屋を出て行ったがすぐに戻って来た。そして、ベッドを動かしてできたスペースに手をかざすと、ぽんとテントが転がった。
「俺たちもここで寝れば良し。気になったら気軽に見れるしな」
「ありがとうございます。これなら安心ですね」
「ドアを開けておけば問題ないし、ピオン、プリム、なんか異変があったら教えてくれな」
眠そうな顔をしながらピオンとプリムが寝床から出て来て、イチロの傍で丸くなった。ティナは、そんな優しい二匹の頭を撫でてから、エドワードと共にテントの中へ入る。
馬車の中と同じく、中に入れば広々とした空間が広がっている。ここはリビングだろうか。暖炉に加えて、座り心地のよさそうなソファセットが置いてあった。
「部屋は廊下に出て左のドアな。右の部屋は俺とカイトで使ってるんだ。鍵は魔力を登録すれば使えるからな。俺の今後のためにも絶対に鍵かけて寝てくれ」
「は、はい」
あまりに真剣にエドワードが言うので、少し気圧されながらも頷く。
ティナは知らないが、リックに酔うとキス魔になると暴露されたエドワードは、イチロからそちら関係で少々信用を失っているのである。
ティナはエドワードに、おやすみなさい、と告げて、部屋へと向かう。宿屋でするように魔力を登録して、鍵を作動させ中へと入る。
「……素敵なお部屋」
こんな時でもちょっと見とれてしまうほど、調度品も壁紙も素敵な部屋だった。ベッドも大きくて、天蓋付きだ。
そのベッドへと腰かけて、ふう、と息を吐く。
「私はちゃんと元気でいないと……」
そうしないとエドワードの言う通り、イチロが落ち込んでしまう。ティナの恋人は、とびきり優しい人なのだ。
自分に気合を入れ直し、ティナはふかふかのベッドへと潜り込んだのだった。
ーーーーーーー
ここまで読んで下さって、ありがとうございます。
いつも閲覧、お気に入り登録、コメント、励みになっております♪
新年あけまして、おめでとうございます!!
今年は本作を含め、他の作品も更新できるよう頑張ります!!
次回の更新は、7日(土)、8日(日)を予定しておりますが、
土曜日か日曜日、一方だけになるか、
もしかしたら更新のお休みを頂くかもしれません。
次のお話も楽しんで頂けますと幸いです。
エドワードは、村役場の前で村の娘たちに囲まれているカイトを見ながら首を傾げた。
イチロが置いて行かれた腹いせにエドワードを村の娘たちに売ったので、ここに戻ってから連日、追いかけ回されていたのはエドワードだったのに、いつの間にか追いかけまわされているのはカイトになっている。カイトはイチロと違ってずいぶんと女慣れしている様子で、適度にあしらてっていて、卒がない。
ちなみにイチロは既に娘たちにとって眼中にない。彼が今回連れて来た恋人のティナ――妖精族のとびきりの美少女に勝ち目はないと、娘たちは嘆いていた。
当初はエルフ族の里で仕事をこなしていたカイトだったが、毒性のある魔獣の血で汚された土地を綺麗にするには、光属性の浄化の力が有効だと発見されてこちらに来るようになった。
浄化と言ってもインサニアを綺麗にするのとは違い、クリーンという清浄魔法で土に付着している血を消すという地道な作業だ。まず汚染された土を掘り起こして取り除き、それにクリーンをかけて戻すのだ。
エルフ族の里のほうは、もう問題はない。世界樹は未だぐっすりと眠っているそうだが、精霊樹は時折、起きたりもしていると報告が上がり始めている。魔獣や魔物に異変もなく、里の中はいたって穏やかな空気が流れている。
「カイト様、ずっとここにいてくれたらいいのに」
「ごめんね。俺は神父の仕事があるからさ」
カイトは困ったように眉を下げて告げる。
顔が良いので、娘たちがうっとりしている。エドワードに対しては、ガツガツとした婚活以外のなにものでもなかったのに、この差は何なんだ。
もしもここに彼の相棒が居たら「お前が馬の話しかしないからだよ」と言ってくれたかもしれないが、彼の相棒は今日も遠く離れたブランレトゥで自分の主を監視しながら書類仕事を片付けているだろう。
「ああ、エディ。そろそろ報告会議の時間かな、迎えに来てくれたんだね、ありがとう」
別にそんなことはないのだが、抜け出す口実だというのは分かるのでエドワードは「はい」と頷く。カイトは、引き留める娘たちにウィンクを一つ返して、こちらにやって来た。
そのまま歩き出したカイトに並んで、エドワードも歩き出す。
「もう、見てないで助けてよ」
「いやぁ、悪い悪い」
「誠意が伝わって来ないなぁ」
じとりと睨まれるが、エドワードは笑って受け流した。
カイトはイチロより歩くのが早い、イチロの速度に慣れ切っているので、油断すると置いて行かれる。
「今朝の手紙に書いてあったんだけど、昨日の朝、グラウに発ったらしいよ。とはいってもポチが運ぶから移動も一瞬だろうけれど」
「そうなのか? なら良かった。本当に一時はどうなるかと思ったけどな」
どうやらエドワードの相棒は、ブランレトゥではなく、グラウで書類仕事をしているようだ。書類仕事からは、どうやっても逃れられない。騎士は案外、地味な事務作業も多いのだ。
「全くだよ。あいつは昔から無茶ばかりするんだよ。フォローに回る俺と一路のことも考えてほしいよ」
カイトがやれやれと肩をすくめる。
「でも本当なら、もうとっくに教会は開院してたのにな」
そうなのだ。開院予定日であった風の月の一日はとっくに過ぎていて、本来であれば今頃はティーンクトゥス教会が開かれて、忙しくしていたはずだ。
神父である真尋がベッドから起き上がれないので、早い段階で延期が決定されて、開院は未定になってしまった。手紙でのやり取りでの決定であるが、こればかりはしょうがないとイチロもカイトも苦笑していた。
「俺はこちらに来たばかりだし、イチロはまだ見習いだしね。急いでも良いことはないよ」
「それはまあ、そうだな」
「それに何だか知らないけど、農業をやりたいらしくてね」
「は? 誰が」
エドワードはカイトの突拍子もない言葉に首をかしげる。カイトは「真尋に決まってるでしょ」とあっけらかんと告げる。
ますます訳が分からない。
正真正銘貴族籍であるエドワードよりも、大貴族のような風格を持つのがマヒロだ。
今回のあれこれで長らく留守を預かるプリシラとクレアが「貴族って、たかだか二カ月の生活費がこんなにかかるの? 何にかかっているのかしら。何か、私たちの知らないような特別な支払いがあるのかしら?」と不安そうに真尋から預かった生活費をエドワードのところに持ってきたことがある。
残念ながらエドワードの実家であるオウレット男爵家は、由緒が取り柄の質素な暮らしをしている一族なので、マヒロが二人にぽんと渡した金額はエドワードの実家の年間の生活費より少し多かったほどだ。嘘だ。つまらない見栄を張ってしまった。大分多かった。
結局、サヴィラに相談したところ「父様は馬鹿だから」と呆れたように言って、緊急事態用の予備費を加味して少し多めに取り分け、残りはマヒロに返してくれた。
――そんなマヒロが農業?
「いや、確かに屋敷の庭の一部で家庭菜園はしてるけど、あのオーバーオールと麦わら帽子が世界一似合わないマヒロさんが農業??」
「エディ、さっきから思考が全部、口から漏れてるよ。まあ、真尋って庶民的な格好が笑えるほど似合わないけどさ」
「だって、あの俺より貴族らしいって評判のマヒロさんが……農業??」
「もともとがあいつも俺たちもお坊ちゃんだからねえ。一路は真尋を見過ぎて自覚がないけど、うちだってかなりのもんだよ」
けらけらと笑いながらカイトが言った。
エドワードは、やっぱり、と納得する。
「真尋たちの故郷の料理は、総称を和食って言うんだけど真尋は、とにかくこれが好きなんだよ。とくに雪乃が作るやつね。エディも飲んだでしょ、スープ。ほら味噌汁」
「ワショク。確かに、ミソシィルは深みがあってすごく美味しかった」
ユキノが作ってくれた玉ネギとじゃがいもの入ったミソシィルは、深いコクと複雑な旨味が凝縮されていて、初めての体験だった。
「あれは大豆って呼ばれる豆から作った調味料で出来ているんだ。それにこの国の主食はパンとかパスタだけど、真尋たちの主食はお米だからね。その米っていう作物を育てたいらしいよ」
「へぇ……でも教会の運営は?」
「真尋の食への執念はすごいからなぁ。とはいえ、あいつはそれも含めて色々と考えているみたいだよ」
そう言ってカイトは笑った。
「農業っていうのは、人手があればあるほどいい。それに大きな農場を作れば、雇用が増えるだろう? 将来的に貧民街の人たちを採用できないかなって考えているみたい」
「なるほど……神父って経営までするんだな」
「真尋の家は大きな商売をしていたからね、真尋に任せれば大体の商売は成功すると思うよ」
「確かに得意そうだ。カイトとイチロもそういう得意なのか?」
エドワードの問いにカイトは、まさか、と笑って肩をすくめた。
「一路は、人事とか事務とか、裏方が得意なんだよね。真尋がそういうふうに育てたからさ。まあ、もともと弟は人の懐にはいるのが上手いし、人の感情の機微に敏感だから人を支えるのが上手いんだよ」
「あー、分かるかも。真尋さんの仕事を完璧に手伝えるのってイチロだけだし、なんかこう、すごい気が利くというか、気が付くんだよな。こっちが必要としていることやものに。それを先んじて用意してくれているから、仕事をするのがすごく楽なんだ」
「さすが俺の弟!」
カイトがご機嫌に言った。
「じゃあ、カイトはなにが得意なんだ?」
「俺? 俺は法律。故郷には弁護士っていう仕事があって、法律の専門家みたいなもんなんだけど、それを目指してたんだ。だから、こっちでも色々と法の勉強をして、法律関連のことは俺が引き受けるつもりだよ」
「へ、へえ……なんか、すごいな」
エドワードの感想にカイトは「でしょ?」と茶目っ気たっぷりに笑った。
そして、カイトのイチロ自慢を聞きながら歩いていれば、あっという間に騎士団の詰所につく。シケット村の詰所は、二階建ての一軒家で、常駐している騎士はたったの二名。しかも夫婦で(平和な村なので、普段はそれで事足りるのだ)、二回が住居スペースになっているので家族でここに住んでいる。今回の事件で、他から派遣されてきた騎士は、空き家を借りたり、テントを張ったりして生活している。冒険者も同じくだ。
「あ、イチロ、アゼル」
丁度、イチロとアゼルが中から出て来た。こちらに気付いた二人が足を止める。
だが、誰が口を開くより早く、僅かに眉を寄せたカイトがイチロに歩み寄り、上体をかがめて弟の顔を覗き込んだ。イチロが驚いてのけぞる。
「な、なに?」
イチロが兄の奇行に疑問の声を上げるが、カイトは答えず、じぃっとイチロを見つめたまま何故かアゼルに問いを投げた。
「アゼル、この後の一路の仕事は?」
「えっと、また畑で浄化作業です」
アゼルが目をぱちくりさせながら答える。
ふーん、と返事をして、カイトは緑の混じる青い瞳を剣呑に細めた。なぜかイチロの目が泳いでいる。
「お前、熱があるだろ」
「「え」」
エドワードとアゼルの声が重なる。
カイトの手がイチロの額に触れて、カイトはますます眉を寄せながら体を起こした。
「だ、大丈夫だよ。微熱だと思うし……」
「一路」
反抗するイチロをカイトが腕を組んで見下ろす。イチロは、目をそらしたままだ。
今、ポチがブランレトゥに馬車ごと帰っているので、エドワードたちはアゼルの実家や村長宅に世話になっている。イチロとティナはアゼルの家で、海斗とエドワードは村長宅で世話になっているため、今日にいたっては前日の取り決め通り、朝から別々の仕事をしていたので、今初めて会ったのだが、熱があるなんて気づかなかった。普段通りに見えたのだ。
「できれば、お兄ちゃんは、具合の悪い弟を怒りたくない。……自分が何をすべきか分かるね?」
「…………帰って、休む」
「Yes! その通り。良い子だね」
ぽんぽんとカイトがイチロの頭を撫でれば、気が抜けたのかイチロが倒れそうになり、カイトはそれを見越していたのだろう、難なく受け止めて横抱きに抱え上げた。
エドワードだって、イチロの護衛騎士だ。一緒に行動していれば見抜けたかもしれないが、さすがに一瞬で見抜いたのは兄弟だからこそだろうか。
「アゼル、治癒術師を呼んで来て。俺はこの困った弟を君の家に送り届けて来るから」
「は、はい!」
アゼルが慌てて駆け出す。
イチロは、よほど辛いのを我慢していたのか、カイトの腕の中でぐったりとしていて、呼吸も荒い。だらりとおちていた腕をイチロの腹の上に乗せるために手首に触れれば、驚くほど熱い。
「エディ、ティナを呼んで来てもらえるかな? 彼女が薬草を管理しているはずだから」
「分かった」
「頼むよ」
そう告げて、カイトはイチロを抱えたままアゼルの家へと歩き出した。
エドワードもすぐに踵を返し、村長宅の事務所にいるだろうティナを呼びに行くため、走り出したのだった。
触れた額は、じわりと熱い。
ティナは、氷水にタオルを浸してしぼる。イチロの額に張り付く髪を指でそっとはらってタオルを乗せた。
イチロとティナが借りているアゼルの実家(大家族なので家が大きい)の一室で、ティナはイチロの看病をしていた。
今朝、どことなく元気がないように見えて声をかけたのだが「大丈夫」と笑う彼に流されてしまった。こんなことなら、強引にでもベッドに押し込んでしまえばよかったと、後悔が浮かぶ。
コンコンとノックの音がして「どうぞ」と返事をすれば、エドワードが顔を出した。
「ティナ、夕食持って来たぜ」
「え? もうそんな時間ですか? ありがとうございます」
エドワードが差し出すトレーを受け取り、ベッドの横のテーブルに置く。今日はシチューとパンのようだ。
「俺は先にもらった。これからさっとシャワーを済ませて来るから、そうしたら看病、交代するな」
「ありがとうございます。……ところでカイトさんは?」
イチロの兄の姿がないことに首をかしげると、エドワードが苦笑を零す。
「まだ仕事中。イチロの分の土の洗浄をしてくれているんだ。アゼルが付き合ってくれてるよ。俺はイチロの護衛騎士だからって、先に帰されたんだよ」
「そうなんですね……」
イチロとカイトは、魔獣の毒の混じった地によって汚染された土を連日、綺麗にしている。騎士と農夫が土を掘り返し、それを二人が綺麗にして、再び騎士と農夫たちが戻すという地道な作業だ。
「イチロはどうだ?」
「治癒術師の先生が言うには、風邪だそうです。でも、疲労がたまっているみたいで、少し魔力に乱れがあるからと解熱薬と安定薬を飲むように指示を頂きました。幸いイチロさんの手持ちにイチロさんが煎じたそのお薬があったので」
ティナの話を聞きながら、エドワードはベッドに腰かけようとして、シャワーがまだなのを思い出したのか、立ったままイチロを見下ろす。
運ばれてからどんどん熱が上がり、今が一番高いかも知れない。
「そっか。まあ……無理すんなよとは言ったんだけどなぁ。やっぱりそばを離れるんじゃなかったな」
エドワードがため息交じりに言った。
エドワードはイチロの護衛騎士だが、イチロはこちらに来たばかりの兄を気遣って、信頼するエドワードにカイトの傍にいて、補佐するようにとお願いしていたのだ。
もどかしそうに、がしがしとボルドーの髪を掻くと、エドワードは踵を返す。
「とりあえず、俺、シャワー浴びてくるな。頼む」
「はい」
ティナの返事に手を振って、エドワードは出て行った。
また静かになった部屋で、ティナはエドワードが運んでくれた夕食のトレーを膝に乗せて食べた。ミルクをたっぷりと使ったシチューはとても美味しい。
それから、ティナが食べ終えて少しして戻って来たエドワードと交替し、夕食の後片付けをしてティナもシャワーを浴びて寝間着のワンピースに着替えた。
アゼルの家の人たちは、温厚で賑やかで、とても優しい。イチロのこともとても心配してくれて、いつでも食べられるようにと、イチロ用にスープを用意してくれていた。それにお礼を言って部屋に戻り、エドワードと共にイチロの看病をする。
ティナが部屋に戻ってすぐにイチロが起きた。食欲はあまりない様子だったが、なんとかスープを飲んでもらい、解熱薬と安定薬を飲ませる。苦いらしく、顔をしかめたイチロは、しかし、喋るのも辛いようで横になると再び眠りこんでしまった。
それからティナは、イチロの汗をぬぐったり、時折、目を覚ますイチロに水を飲ませたりと看病を続けた。
ちなみにロボ一家は村の外で野外生活を楽しんでいる。
カイトとアゼルが帰って来たのは、家の中が静まり返った真夜中だった。
ティナは、傍らで報告書を読んでいたエドワードにイチロを任せ、ショールを羽織って迎えに出る。
「おかえりなさい……わぁ、ど、どうしたんです?」
カイトとアゼルは全身泥だらけだった。
「通り雨に降られちゃってね」
「とりあえず、クリーンを……」
クリーンをかければ、綺麗になるはずだと口にすれば、アゼルが慌てて首を横に振った。
「だ、だめっすよ。カイト様、魔力切れ寸前で、治癒術師に止められて帰って来たんすから……」
「え? な、なんでまた……」
カイトもイチロ同様に魔力量の桁は人並外れている。それがどうして魔力切れ寸前なんてことになるのだろうか。
「カイト様、イチロ様の分も土の洗浄を……それも三日分」
アゼルの言葉にティナは開いた口が塞がらなかった。
確かに神父二人に対して、農夫や騎士はたくさんいるので、土自体はどんどん掘り起こされている。だが、それにしたって一日の量だってかなりのはずなのに、それを三日分。おそらく、今日のカイト自身の分もあったはずだから、四日分は片付けてきたということだ。
「なんでそんな無茶を……」
「三日分、さきにやっとけばイチロが休めるでしょ? それよりさ、アゼル。これくらいなら大丈夫だから、クリーンかけようよ」
「だめっすよ! 治癒術師さんにだめって言われ、あ!! もう!!」
アゼルの言葉を彼に無視して、カイトは自分とアゼルを綺麗にしてしまった。アゼルが睨むがカイトはどこ吹く風だ。ステータスを開いて「うん、問題ない」と言って、ステータスを閉じる。
「ティナ、そうは言っても先にシャワーをもらうよ。夕飯、準備してもらってもいいかな」
「は、はい。着替えは……」
「自分で持ってるから大丈夫。タオルだけ貸してほしいな」
「それは俺が準備します」
「thank you」
異国の言葉でそう告げて、カイトはシャワールームへ歩き出し、アゼルが追いかけていく。ティナはその背を呆然と見つめていたが、はっと我に返って慌ててキッチンへと急いだのだった。
魔力の消費が激しかったからだろう。
カイトはシチューもパンも四回もおかわりして、綺麗に食べてしまった。アゼルもたくさん食べたので寸胴の鍋はすっからかんだ。
後片付けはアゼルが引き受けてくれたので、ティナはカイトともにイチロの下へ行く。歩きながら、診断結果やその後の様子などをティナはカイトに伝えた。
「ああ、おかえり」
中へ入れば看病をしてくれていたエドワードが顔を上げた。
「ただいま。どうだい?」
「熱は少し下がった気がしないでもないが、まだまだ高いな。さっき、一回起きて、水飲んで寝た」
「そう」
カイトは、小さく返事をしてベッド横の椅子に腰かけた。ティナも反対側へ回って、ベッドに腰かける。触れた首筋は変わらず熱くて、勝手に眉が下がってしまう。
「やせ我慢なんかするから……」
呆れたような言葉とは裏腹に弟を見つめる眼差しには、心配が色濃く浮かんでいる。
大きな手が、イチロの額の上のタオルに充てられた。パキパキと音を立てて半分だけタオルが凍る。
「カイトさん、魔法は……!」
ティナは慌ててその手を掴んで止める。
「さっき、ご飯を食べて回復したから大丈夫だよ」
ティナの手を抜け出した大きな手は、あやすようにティナの頭を撫でて離れて行く。
事情を知らないエドワードが、訝しむように首をかしげている。
「さて、エディもティナもあとは俺がみてるから、もう寝な。明日も仕事があるんでしょ」
「ダメに決まってます。カイトさんが休んで下さい。魔力切れ寸前なんですから……」
「魔力切れ!? なんでまた……」
ティナの言葉にエドワードが驚きの声を上げた。
カイトは「もう大丈夫だよ」と誤魔化そうとしているが、ティナはエドワードを味方につけるため、カイトの無茶を話してしまう。エドワードは呆れたような視線をカイトに向ける。
「カイトが一番、寝ないとだめじゃないか」
「そうです。倒れたらどうするんですか?」
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「分かった、分かった。俺も一緒に行くよ。ティナに残ってもらえばいい」
ティナは、うんうん、と頷く。そもそもここはイチロとティナが借りている部屋だ。
「私はイチロさんが元気になるまではお休みをもらっていますし、出来るお仕事はここでしますから大丈夫です。クイリーンさんも明日にはこちらに来てくれるそうですので」
カイトとエドワードがこちらに来た代わりに、クイリーンがエルフ族の里に行っているのだ。だがイチロが倒れてしまったので、シャテンを飛ばして連絡したところ、明日、こちらに戻って来てくれることになったのだ。
遠いので連絡はしていないが、ギルドマスターのアンナがここにいたとしてもティナに休みをくれただろう。彼(彼女?)は、家族や恋人の看病をするためなら、いつだってこころよく休みをくれるのだ。
「じゃあ、もう少しだけ傍にいさせて? 心配なんだ」
こちらの様子をうかがうような上目遣いは、イチロにそっくりでティナは「うっ」とたじろぐ。一見、色と大きさが全然違うのだが、ふとした仕草や表情が、兄弟なのだと実感するほどよく似ている。
「ね、お願い、ティナ」
ティナは恋人の上目遣いに弱い自覚がある。いつもそれで押し切られてしまうのだが、どうやらその兄の上目遣いにも弱いようだ。似ているのがいけない。
「ちょ、ちょっとだけですよ……? 本当に、ちょっとだけです」
「やった。ありがとう、ティナ」
笑った顔もよく似ている。ティナは、負けてしまったことをちょっと反省しながら、ベッドに座り直した。
アゼルの家は大きいが、一部屋一部屋はそれほど広くない。むしろ狭い。そう感じてしまうのは普段暮らしている屋敷が広すぎるからだろう。
ここは、部屋の大半を占めるシングルサイズのベッドが一つと、二人掛けのソファが壁際に置かれていて、チェストが一つあるだけだ。もとはアゼルの兄弟の部屋だったが、結婚して家を出て近所で暮らしているらしい。
そこに背が高くて体格のいいエドワードとカイトがいると部屋の中がぎゅうっとしていると感じる。
ちなみにこの二人は、他に部屋がなかったので階段下の物置にテントを張って寝ている。最初は「神父様と騎士様をそんなところで寝かせるなんて」と顔を蒼くしていたアゼルとその両親だが、カイトが持参したそのテントは、なかなかに広くて快適だったので、むしろ子どもたちが、そこで寝たい、遊びたい、と騒ぎだしたほどだった。面倒見のいいカイトは、楽しそうに子どもとテントの中を探検していたが。ちなみにリビング、ダイニング、シャワールームにトイレ、キッチン、そして寝室が二つもあったらしい。
「……この子はさぁ、真尋ぐらい大雑把に生きればいいのに、それができないからあんまり悩み過ぎると小さい頃からこうして熱を出すんだよ」
カイトがぽつりと言った。
「成長してないなぁ」
「そんなこと言うと怒るぞ。身長伸び悩んでいるから」
エドワードが言った。カイトは、くすくすと笑って「それは困る」と肩を竦めた。
それからぽつぽつと会話を交わしていたのだが、気づいた時にはカイトは椅子に座ったまま眠ってしまっていた。
「寝ちゃいましたね……」
「なぁ。だから部屋で寝ろって言ったのに……」
エドワードが苦笑を零しながら立ちあがる。
「おい、カイト。部屋のベッドで寝ろよ。ここじゃ疲れがとれないぞ」
エドワードが声をかけ、肩を強請る。すると青に緑の混じる瞳が、うっすらと覗いて、そしてカイトはゆらりと立ち上がる。
起きてくれた、とほっとしたのも束の間。カイトは、なんとそのままイチロの隣に潜り込んで、眠ってしまった。
「ええー……嘘だろ……」
「寝ちゃってますねぇ……本格的に」
ティナはカイトの頬をつついてみるが、起きる気配はない。大丈夫だなんだと言っていたが、限界まで魔力を使ったのだから、想像以上に疲労がたまっていたのだろう。なかなかに頑固なところも、兄弟で似ているようだ。
「これ、俺一人で抱えれられるか? イチロと違って、でかいんだよなぁ……寝てる人間て重いし」
エドワードが頭を掻きながら言った。
「……このままここで寝てもらってもいいかもしれませんよ。イチロさんもお兄さんじゃ別に気にしないでしょうし……」
「でも、ティナの寝るとこが……」
「私は小さいのでそこのソファで十分ですよ」
ティナは壁際のソファを振り返る。エドワードやカイトでは盛大にはみ出してしまうかもしれないが、ティナが使う分には十分だ。
「アゼルさん、まだ起きているでしょうか? 毛布をお借りしたいんですが……」
「だったらテントの中にユキノさんが使ってたっていう部屋があるから、そこを使えばいいんじゃないか? ちゃんと魔力登録制の鍵もあるから」
「でも……」
ティナはぐっすり眠るカイトと、いまだ熱が引かないイチロに視線を向ける。
「カイトがくっついてるから大丈夫だよ。ティナが倒れたら、イチロが一番、後悔するし、落ち込むぜ? それは嫌だろ?」
その言葉はもっともで、ティナは、こくん、と頷く。
「それでよし。……でも俺も心配だしな……こうするか」
そう言って、エドワードはこちらにやって来ると壁際のソファを消した。多分、アイテムボックスに入れたのだ。そして、ベッドを自分の力と風の魔法を補助に使って壁にくっつける。窓際の籠で寝ていたピオンとプリムが、眠たそうに顔を出した。
エドワードは一度、部屋を出て行ったがすぐに戻って来た。そして、ベッドを動かしてできたスペースに手をかざすと、ぽんとテントが転がった。
「俺たちもここで寝れば良し。気になったら気軽に見れるしな」
「ありがとうございます。これなら安心ですね」
「ドアを開けておけば問題ないし、ピオン、プリム、なんか異変があったら教えてくれな」
眠そうな顔をしながらピオンとプリムが寝床から出て来て、イチロの傍で丸くなった。ティナは、そんな優しい二匹の頭を撫でてから、エドワードと共にテントの中へ入る。
馬車の中と同じく、中に入れば広々とした空間が広がっている。ここはリビングだろうか。暖炉に加えて、座り心地のよさそうなソファセットが置いてあった。
「部屋は廊下に出て左のドアな。右の部屋は俺とカイトで使ってるんだ。鍵は魔力を登録すれば使えるからな。俺の今後のためにも絶対に鍵かけて寝てくれ」
「は、はい」
あまりに真剣にエドワードが言うので、少し気圧されながらも頷く。
ティナは知らないが、リックに酔うとキス魔になると暴露されたエドワードは、イチロからそちら関係で少々信用を失っているのである。
ティナはエドワードに、おやすみなさい、と告げて、部屋へと向かう。宿屋でするように魔力を登録して、鍵を作動させ中へと入る。
「……素敵なお部屋」
こんな時でもちょっと見とれてしまうほど、調度品も壁紙も素敵な部屋だった。ベッドも大きくて、天蓋付きだ。
そのベッドへと腰かけて、ふう、と息を吐く。
「私はちゃんと元気でいないと……」
そうしないとエドワードの言う通り、イチロが落ち込んでしまう。ティナの恋人は、とびきり優しい人なのだ。
自分に気合を入れ直し、ティナはふかふかのベッドへと潜り込んだのだった。
ーーーーーーー
ここまで読んで下さって、ありがとうございます。
いつも閲覧、お気に入り登録、コメント、励みになっております♪
新年あけまして、おめでとうございます!!
今年は本作を含め、他の作品も更新できるよう頑張ります!!
次回の更新は、7日(土)、8日(日)を予定しておりますが、
土曜日か日曜日、一方だけになるか、
もしかしたら更新のお休みを頂くかもしれません。
次のお話も楽しんで頂けますと幸いです。
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