称号は神を土下座させた男。

春志乃

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本編 2

第三十六話 寄り添う女

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 よろける真尋を充とリックが両脇で支えて馬車へと向かい、その後をカルテ片手にナルキーサスがついて行く。
 帰還してからほとんど寝たきりだったので、歩くのも一苦労の様子だ。どちらかに抱えてもらえばいいのにと雪乃は言ったのだが、夫はそれを断固拒否した。無駄に見栄っ張りでプライドが高いんだから、と雪乃はあきれるしかない。
 いつも雪乃を運んでくれるタマの魔法も検討したのだが、ドラゴンの魔力で魔力循環不順症を起こしていたので、何がどう影響するか分からずそれは危ないかも知れないということで見送られた。あまりに未知のことすぎて、ナルキーサスをもってしても慎重にならざるを得ないようだ。
 なんとか馬車にたどり着いた夫を横目に、雪乃は先に馬車へと乗り込む。
珍しく眉を分かりやすく寄せている夫を案じながら、雪乃はリビングのドアを開け、充とリックが真尋をソファへと座らせた。

「……大分、筋力が落ちている」

 ソファに座り、息を吐き出したあと悔しそうに真尋が言った。

「しょうがないわ。寝たきりだったんだもの、温泉で傷を癒しながら、ゆっくりリハビリしましょうね」

「ユキノの言う通りだ。まあ、魔力の乱れはほとんどなかったから、少しずつ体を動かしていこう」

 真尋の後をカルテにペンを走らせながらナルキーサスが言った。

「いいか、少しずつだ。私の指示に従ってもらうから、勝手なことはするんじゃないぞ」

彼女は真尋の傍に浮かんでいた何かの数値を映す、いくつかのリストを消しながら釘を刺すのも忘れない。
 ナルキーサスが危惧する通り、この人はせっかちだからすぐに無茶をしようとするのだ。

「リックさん、この人をお願いしますね。私は子どもたちの様子を見て来ます」

「はい。お任せください、奥様」

「頼りにしていますね。それと、私のことは真尋さんと同じように名前で呼んで下さいな」

 そうお願いするとリックが困ったように眉を下げて、ソファに座る真尋をちらりと見た。すると真尋がバツの悪そうな顔をする。

「名前で呼んだくらいでは流石に妬かん」

「……では、ユキノさん、と」

 リックが少し照れくさそうに言った。
 彼はとてもまじめで誠実な人だ。信念がしっかりしていて、真尋が気に入っているだけはあって、騎士としてもとても優秀なのが分かる。色々あって半ば強引に護衛騎士を付けられたと言っていたが、真尋が素直に従ったのは単純にリックを気に入っていたからだろう。でなければ、領主様に言われたとしても、この人は嫌だと思ったら絶対に傍には置かない。

「ふふっ、ありがとうございます。さ、充さん、キース先生、行きましょう」

 リックと真尋に見送られて、雪乃は外へと戻る。
 あまり人気のない夜明け前に移動しようということで、外はまだ暗い。

「あらあら、ふふっ」

 エントランスのポーチにはサヴィラが立っていたが、その隣にふわふわとタマの魔法でシャボン玉の中にミアと真智と真咲がそれぞれ入って浮かんでいて、すよすよと眠っている。

「昨夜、興奮して眠るのが遅かったから」

 苦笑交じりにサヴィラが言った。サヴィラの頭の上には、タマがちょこんと乗っている。サヴィラの後ろにはテディがいて、じっとタマを見つめている。

「サヴィラは自分で起きられて偉いわね」

「もうそこまで子どもじゃないよ」

 苦笑交じりに告げるサヴィラに「それもそうね」と笑う。

「サヴィ、そのまま馬車に乗せちゃってちょうだい。真尋さんはリビングにいるけど、子どもたちはベッドの上に。タマちゃんもお願いね」

 サヴィラとタマが頷いて、タマが先頭で次いで子どもたち、最後にサヴィラが乗り込んだ。
 大きなテディは大丈夫かしら、とみているとドア枠がぐにゃんと歪んでテディは難なく乗り込んでいき、そして、何事もなかったかのようにドア枠は元通りになった。魔法みたいだわ、と感動してしまう。

「さ、私はもうひと仕事してくるよ」

 そう言ってナルキーサスは屋敷の中に入って行く。彼女は、アマーリアとその子どもたちに隠蔽の魔法をかけて姿を見えなくして、馬車に乗せる任務があるのだ。今回、アマーリアとレオンハルト、シルヴィア、侍女のリリーと護衛のアイリスが共に行くことになっている。
 ダフネはこちらに残ることを渋ったらしいが、リックにグラウへの同行権を掛けた手合わせで惨敗したため、こちらに残ることが決定している。あの温厚そうなリックがあんなに敵意を持つなんて、雪乃の夫は一体、何をしでかしたのだろう、と悩ましい。

「ジョシュアさん、プリシラさん、ジョンくん、おはようございます」

「おはよう、ユキノ」

「おはよう、ユキノお姉ちゃん」

 次いでやって来たのは、ジョシュア一家だ。

「ユキノさん、おはよう。でも本当にいいの? うちの子まで」

 プリシラが心配そうに言う。

「もちろんですわ。ジョンくんはとてもいい子だもの」

「僕、ちゃんといい子にするよ。お父さんとお母さんとリースにお土産買って来るね! お手紙も書くよ!」

 ジョンが嬉しそうに言った。
 さすがにリースはまだ幼過ぎて、両親のところにすぐに帰れる同じ屋敷内で真尋たちの部屋に一泊するのはともかく、両親から遠く離れた町でお泊りは出来ないので、今回はお留守番だ。

「さ、ジョンくん、馬車へ乗って。入ってすぐのリビングで真尋さんが暇を持て余しているだろうから、相手をしてあげて」

「うん、わかった!」

 そう告げて、ジョンは彼の荷物が入っているのであろうリュックを背負い直して、元気よく馬車の中へと向かう。ジョシュアとプリシラが「いい子にするんだぞ」「気を付けてね」と声を掛ければ、ステップの途中で振り返ったジョンは、にこにこしながら手を振って馬車へと乗り込んだ。

「プリシラさんもこの機会にゆっくり休んで英気を養ってね」

「ふふっ、ありがとう。そうさせてもらうわ」

「俺たちとレイとクレアとルーカスだけになるからな。静かすぎて驚くかもな」

 ジョシュアが冗談交じりに言った。プリシラが「そうね」と頷く。
 それからプリシラはまだリースが部屋で寝ているため、先に屋敷の中へと戻っていく。それと入れ違いで、庭のほうからルーカスとクレアがやってきた。

「おはよう、ユキノさん」

「おはようございます。朝早いのに、ありがとうございます」

「朝早いのには慣れているわ」

「そうそう。夏は日の出とともに仕事するのもザラだしな」

 クレアとルーカス朗らかに答える。

「神父さんは? もう馬車の中か?」

「ええ。なんとか自力で……負ぶって貰えばいいと言ったんですけど、言うこと聞かなくて」

 雪乃の言葉にルーカスとクレアは顔を見合わせて苦笑を零した。
そんな会話をしている内にナルキーサスが戻って来た。彼女は両手に重そうな鞄をぶら下げていて、すぐに充が手伝いにいく。

「これを頼むよ。治療に使用する器具は繊細なんだ」

 ナルキーサスのこの言葉は、アマーリアたちをつれてきたという合図だ。

「かしこまりました」

 ナルキーサスから預かった荷物を充が馬車の中に運び入れていく。
 雪乃には見えないが、充の後をついてナルキーサスによって隠蔽魔法で姿を隠されたアマーリアたちが馬車へと乗り込んでいるはずだ。

「ナルキーサス先生、マヒロはどれくらいでよくなるんだ」

 ルーカスが問う。

「そうさなぁ。……やはり普通の怪我に比べれば、格段に治りが遅い。とはいえ少しずつよくなっているのは確かだ。帰ってくるころには、折れた腕以外は元気になっているはずだよ。腕はしばらく使いづらいだろうな」

「いつ頃帰って来るんだ?」

 今度はジョシュアが尋ねる。

「収穫祭の半ばを予定しているんです。子どもたちが楽しみにしているから」

 雪乃の言葉にジョシュアは頷く。

「この町や周辺の町村の子どもにとって秋の収穫祭と春の感謝祭は、外せないお祭りだからな。俺も子どもの頃は、祭りが待ち遠しくて仕方なかったよ。毎年、ジョンも楽しみにしているんだ」

「確かに、この時期になると治療院で子どもがぐずると親は揃って『収穫祭に行けなくていいの? 頑張りなさい!』というんだよ。すると子どもたちは祭りに絶対に行きたいから、素直に診せてくれるんだ」

「まあ、可愛らしい」

「治療院じゃなくたって、この時期の家庭内での常套句さ」

 ジョシュアがカラカラと笑った。ルーカスとクレアも「どこも一緒ね」と笑っている。
 日本で言うところの「良い子にしていないとサンタさん来ないよ!」と同じ効果があるのだろう。異世界とはいえ、似たようなことは色々とあるのね、と雪乃は感慨深くなる。

「雪乃様、荷物は全て積み込みました」

 充のこの言葉も合図だ。無事にアマーリアたちが乗り込んだことにほっとしながら、ジョシュアを見上げる。

「では、行ってきます。留守を頼みますね」

「ああ、ジョンをよろしくな。マヒロが一日でも早くよくなるよう祈ってるよ」

「オレたちも同じく祈っているよ」

「ユキノさんもあまり無理しないでね」

「ありがとうございます」

 雪乃はお礼を言って、充に手を貸してもらい馬車へと乗り込む。次いでナルキーサス、最後に充が乗り込んで馬車のドアを閉め、鍵をかけた。

「きゅい!」

 タマがふわりと雪乃の肩に着地する。不思議と重さを感じないのだが、ドラゴンとはそういうものなのだろうか。

「ギャウギャーウ」

 外からポチの声が聞こえ、ドアの窓の向こうの景色が一気に変わる。屋敷を見下ろし、そして、まだ眠りの中にあるブランレトゥの町を見下ろした。

「まあ、すごいわぁ、ねえ、タマちゃん」

「きゅーい」

 タマは興奮した様子で窓の外を覗き込んでいる。
 大きさを自在に変えられるタマだが、まだ最大の大きさは卵から生まれた時のサイズらしく、これ以上は大きくなれないらしい。その点、ポチは成熟した大人らしいので、本来の大きさはかなりのものだそうだ。

「とはいえ、朝、グラウの門が開くまでは町の外で待機だ。あの問題児をベッドに寝かせないとな」

「リビングにベッドをご用意してあります」

 充が言った。

「気が利くな。私はよくあの体で三階から自力で降りて来て馬車に乗ったものだと呆れていたんだが、リビングなら玄関からも近いし、丁度いい」

「ごめんなさい、言っても聞かないものだから……昔から見栄っ張りなのよね」

「イチロも似たようなことを言っていたよ」

 くすくすと笑うナルキーサスとともにリビングに行けば、真尋はリビングに置かれたベッドにクッションを背凭れにいつものように座っていた。ベッドのふちにはジョンとレオンハルトが腰かけて、足をぷらぷらさせている。
 暖炉の前をテディが陣取っているが、他に人の姿はない。

「あら、アマーリア様は?」

「二階の部屋へ。シルヴィア様がまだ夢の中でして」

 雪乃の問いにリックが答えてくれた。
 なるほど、と頷いて雪乃は夫のもとへいく。少し無理をしたからだろう、どことなく怠そうな顔をしている。

「素直に負ぶってもらえばよかったのに」

「……絶対にいやだ」

 顔をしかめた夫に溜め息を零す。昔からひとりでなんでもこなしてしまう人だから、人に頼るのが苦手なのだ。

「ジョンとレオンは眠くないのか?」

「うん。僕、昨夜は早く寝たから」

「俺もだ!」

どうやらこの二人は興奮に負けなかったようだ。確かにクマもないし、顔色もよく溌剌として元気そうだ。

「ああ、もう着いたようだな」

 ナルキーサスが窓の外に顔を向けて言った。

「え? もう?」

「さっき出発したばかりだぞ?」

 ジョンとレオンハルトが驚いたように窓を振り返れば、確かに景色は止まっていて地上に降り立っている。子どもたちがベッドから降りて興味深そうに窓の外を覗き込む。

「ポチの速度は二日でエルフ族の里を往復できるからな。グラウなら本当にすぐさ」

 真尋が言った。

「お兄ちゃん、ポチ、飛んでっちゃったよ」

「すごい……おおきい」

 ジョンが驚きに振り返りレオンハルトは口をあんぐり開けて窓の外を見ていた。

「ああ、ポチはエルフ族の里での仕事が残っているからな。里に戻ったんだ」

 へぇ、と子どもたちが頷いて、ドラゴンの姿を探すように窓を覗き込む。その姿はなんとも微笑ましい。

「では私は、馬を馬車に繋げてきます」

「お手伝いします」

 リックの言葉に充が名乗りを上げて、二人は連れ立って馬車を降りて行く。タマがその背に着いて行った。
なんでも馬車に乗ったドアと反対側のドアからは馬小屋に入れるようになっているらしい。今回は真尋とリックとサヴィラの愛馬をつれて来ている。

「僕も手伝うよ」

「俺も!」

 そう言うが早いか子どもたちが行ってしまう。ジョンはともかく、レオンハルトは困ると雪乃が焦ると、ナルキーサスが立ち上がった。

「全く、父親に似てじっとしているのが苦手な息子だ。私が見ているよ」

 苦笑を零しながらナルキーサスが小さな二つの背を追いかけて行った。
 リビングに雪乃と真尋、そして、テディだけになると真尋は深々と息を吐いてクッションに沈んだ。

「痛むの?」

 雪乃はベッドに腰かけながら問う。

「しつこくな……。だがそれ以上に、体が鉛のようだ。飯も粥と点滴だけだから、エネルギーが足りん」

 ポケットからハンカチを取り出して、夫の額に滲む汗をぬぐう。熱はないようだが、辛いのだろう。目を閉じてじっとしている。代われるなら代わってあげたいが、真尋は断固拒否するだろう。
 雪乃は治癒魔法を使える光属性を持っているが、それを魔法として他者に使うことはできない。雪乃の光属性は、雪乃自身の中をめぐって、体調を整え続けてくれている。そうすることもまた雪乃が丈夫になるために必要なことなのだとティーンクトゥスが言っていた。

「……髪、伸びたわね。伸ばしているの?」

 少しでも真尋の気が紛れればと話をふる。頬にかかっていた髪を耳にかけてあげる。

「ああ。魔道具に髪を魔力の依り代として使うこともできるから、長い方が便利なんだ」

「難しいことは分からないけれど、あとでみつあみにしちゃおうかしら」

 真尋の髪は真っすぐで艶がある。

「ミアとお揃いにしてくれ」

「あらあら」

 真面目にそう申し出る夫に雪乃はくすくすと笑う。
 ミアの髪は綺麗な砂色で、夫が丁寧に手入れをしていたようで子ども特有の細い髪は絹糸のように綺麗だ。サヴィラの髪は淡い金色で、月の光を閉じ込めたかのような美しさがある。双子の髪は色も髪質も真尋にそっくりだ。

「グラウのお家は、どんなお家かしら」

「二階建て、地下一階の家だ。……少し、イギリスの家に似ている」

「そう……」

 春になったら家族で引っ越して済む予定だった、古い歴史を刻んだイギリスの家。
 真尋と一路が亡くなったのは二月の寒い日で、結局、あの家に住むことはなかった。それでも、新居に移るのは楽しみで気が早いし、荷物になると分かっていても必要な小物はちょこちょこと買っていて、それは水無月家の物置にしまわれたままになってしまった。家は半年住んでから買い取ることになっていたので、一路のおじい様の所有のままになっているのが唯一幸運だった。
 布団の上に投げ出されている手に、雪乃はそっと自分の手を重ねる。

「今度は楽しく暮らせるわ」

「もちろん」

「私ね……お義母様がくれたティーセットと小物入れは持ってきたの」

 銀に蒼の混じる眼差しが雪乃を捉える。

「今度こそ一緒にとっておきの紅茶を飲みましょうね」

「……ああ」

 もう片方の手を伸ばして、真尋の頬に触れた。

「私はここにいるから、少し寝なさいな」

「……」

 彼の眼差しがほんの一瞬だけ不安そうに揺れた気がして、雪乃は柔く微笑んでその頬を撫でた。母親が我が子にするように、慈しむように撫でる。
 そうすれば、大分無理をして馬車に乗り込んだのだろう夫は、ゆっくりと目を閉じて、そう待たずして寝息を立て始めた。
 雪乃はベッドにより深く腰かけ直して、真尋の手を自分の膝に乗せた。
 雪乃より一回り大きな手の薬指に光る指輪を撫でる。あやすように緩く握って、もう片方の手で撫でる。

「あなたがそうであるように、私だってあなたがいないと生きていけないのよ」

 囁くように告げて目を伏せる。
 ティーンクトゥスに此方への転移を提示された時、雪乃の寿命は残り一年だった。だが、それは真尋が死んでしまったからなのだと神様は教えてくれた。真尋が生きていれば、驚いたことにあと十数年は寿命が残っていたそうだ。
 涙の零し方を忘れてしまうほど、雪乃は真尋を喪ってしまったことにショックを受けていたのだ。

「大丈夫よ……大丈夫。これからはずっと一緒よ。ね、真尋さん」

 そう囁いて、雪乃はリック達が戻って来ても、朝陽が昇るまでずっと真尋の傍にいたのだった。






 グラウで真尋が購入した家は、確かにイギリスの家に似ていた。
 外観はこの町らしい漆喰の白い壁と赤い屋根なのだが、間取りや家の中の雰囲気が似ているのだ。
 雪乃は、持ってきた調味料や食材をキッチンで整理する。寂しがり屋の夫は、リビングに置かれたベッドの上にいて、子どもたちが誰かどうか相手にしてくれているはずだ。
 充は忙しなく家の中を行ったり来たりしていて、ナルキーサスは一階の玄関近くの部屋に簡易の治療室の準備をしている。アマーリアも自分の荷物の荷解きを二階でしていて、リックはサヴィラと一緒に家の裏庭にある馬小屋へ、馬たちを移動させているはずだ。
 一階にはキッチンの隣に部屋がある。そこは暖炉のある居心地の良さそうな部屋でダブルサイズのベッドが置いてあるので、雪乃と真尋が使う予定だ。
 雪乃は手際よく、リックの実家で買った食パンをスライスしていく。お昼はサンドウィッチを作っておいて、各自のタイミングで食べてもらう予定だ。

「ママ、おてつだいしにきたのよ!」

 振り返れば、ミアが駆け寄って来た。もう既にエプロンを身に着けていて、家から持参した踏み台に登って、シンクで手を洗い始めた。

「でも、ミア、パパは?」

「パパは今ね、カロリーナたいちょーさんとおはなししてるの」

「あら、もう着いたの?」

 グラウでの護衛を任された第二小隊は、昨日、ブランレトゥを出発していた。わけあって、ポチでの移動は雪乃たちだけだ。ここから近いところに大きな空き家を借りられたので、そこで暮らしつつ、こちらの警護をする段取りになっているそうだ。

「うん。みっちゃんがね、つれてきたのよ。ママ、なにすればいい?」

「じゃあ、卵の殻をむいて潰してね。そこのテーブルでするといいわ」

「はーい」

 雪乃はキッチンに置かれているテーブルに茹でた卵を入れたボウルとマッシャーを置く。ミアは椅子に座ると、せっせと殻を手際よく剥き始めた。雪乃がブランレトゥに来る前からミアを始め、子どもたちは食事作りを手伝っていたそうだ。そのため、子どもたちは、とても上手に手伝ってくれる。

「ママ、ミアはねえ、おやさいのサンドウィッチがいいの」

「ふふっ、いいわよ。特別に今朝作ったニンジンのラぺをたくさんいれてあげるわね」

「やったぁ! ミア、おてつだいがんばるね」

 娘の可愛らしさに目を細めつつ、雪乃はお湯を沸かしてお茶の仕度をする。
 しまったばかりの来客用のティーセットを取りだしてミアを振り返る。

「お客様は何人かしら?」

「えっとね、たいちょーさんとね、ガストンおじさんとね、ジェンヌお姉さん!」

「三人ね。ありがとう。ミア、ママ、挨拶だけしてくるから、コンロには近づいちゃだめよ」

「はーい」

 魔石を入れて使えるようにしたコンロの火が消えていることを確認して、雪乃はトレーにカップを三人分乗せてリビングに行く。
 ミアの言っていた通りの三人がいて、カロリーナはベッド近くの椅子に座っていたが、二人はその後ろに立っていた。ベッドの向こう側には充とリック、アイリスが立っている。

「こんにちは。ごめんなさい、気づかなくて……お茶をどうぞ」

「ありがとうございます」

 三人がお礼を言って受け取り、充が小さな丸テーブルを二つ、カロリーナの横とガストンとジェンヌの間に用意してくれた。

「リックさんとアイリスさんのお茶も持ってきますね」

「いえ、奥様、お気遣いなく」

 アイリスが首を横に振り、リックも頷く。

「そう? なら、お言葉に甘えますね。ミアがキッチンにひとりだから、戻らせてもらいます。何かあったら呼んで下さいね」

 そう告げて雪乃は、会釈をしてキッチンへ戻る。
 ミアは黙々と卵の殻を剥いていて、雪乃に気付くと「おかえり、ママ」と顔をほころばせた。そんな可愛い娘の頭を撫でて「ただいま」と返して、雪乃も作業に戻る。
 たっぷりのレタスに分厚く切って焼いたベーコンと輪切りにしたトマト、クリームチーズをのせてバターを丁寧に塗ったパンで挟む。他にハムサンドやプーレのハーブソテーのサンド、ミアのための野菜サンドも忘れずに作る。

「ママ、卵つぶしたよ」

「じゃあ、味付けをしましょうか」

「ミアね、ママのタマゴサンドだいすき」

「嬉しいわ、たくさん食べてね」

「うん」

 ミアが潰してくれたゆで卵に自家製マヨネーズをたっぷりと入れて、黒コショウと塩で味を調える。シンプルなおいしさは、真尋や双子たちにも好評だ。
 こちらでの生活が落ち着いたら、真尋の容態次第ではあるが粥以外の固形物を少しずつ試していく予定をナルキーサスと共に立てている。真尋は随分とそれが開始されるのを心待ちにしている。

「ママ、パパ、はやく元気になるといいね」

 ミアがボウルの中身をかき混ぜる雪乃の手元をみながらポツリと呟いた。

「ええ。そうね。でも大丈夫よ。ナルキーサス先生がいるんだもの。それに温泉もあるから、ゆっくりかもしれないけどよくなるわ」

 手を止めて、ミアの頭を撫でる。可愛い娘は、すりすりと雪乃の手に甘えて、にぱっと笑った。








「では、各日四名ずつ、警備に当たらせてもらう。それで裏庭の馬車のほうを、警備に当たる者の待機所として使わせてもらうということでいいだろうか」

「ああ。頼む」

 カロリーナの確認の言葉にマヒロが頷く。

「アイリス殿も外出の際は、必ず奥様にペンダントの着用して頂くのを忘れないように」

「はい、必ず」

 アイリスがしかと頷いた。
 ガストンは、上司の後ろでそれを眺めながら、ちらりとリックの隣に立つ執事の青年を見る。
 ある日突然現れた謎置き神父殿の――謎多き家族。こちら側としては警戒以外の選択肢がないのに、それが得体のしれない強さを持っている上、未知のドラゴンまで連れているのだから頭が痛かった。
 神父殿の妻は美しい人だった。弟たちは神父殿にそっくりで、見習い殿の兄だというもう一人の神父は好青年を具現化したような人だった。
 ただひとり、この執事の青年だけはつかみどころがないままだ。

「だが、いいのだろうか。警備担当者の分だけとはいえ、食事まで世話になってしまって」

「雪乃がいいと言うんだから、いいんだ」

「……本当によく食べるぞ」

「知っている。リックもエディもよく食べるからな」

 体が資本の騎士たちは、当たり前のようによく食べる。
 マヒロの妻のユキノは料理上手で、とくに彼らの郷土料理だというワショクは深みのある美味しさだ。
カロリーナとジェンヌは、あの日食べたハンバーグのことを時折思い出しては、また食べたいとぼやいていたので、今回の申し出に口では遠慮しつつ、嬉しそうなのが隠せていない。

「あとでどういった食事が良いか、雪乃に伝えておいてくれ。肉が良いとか魚がいいとか」

「なにはともあれ肉だ」

「ふっ、そうか」

 即答したカロリーナと深く頷いたガストンとジェンヌにマヒロが微かに笑った。
 これはガストンの気のせいではないと思うが、最愛の妻と再会してから、マヒロはぐんと雰囲気や表情が柔らかくなった。

「お兄ちゃん! 温泉あったよー!」

「温泉、三つもあったぞ!!」

「あ、お客さん……小隊長さんだ!」

 賑やかな声に顔を向ければ、探検の成果を報告にきたらしい双子とレオンハルトがリビングに顔を出す。
 こんにちは、と挨拶をしてくれたので、ガストンたちも挨拶を返す。

「お客さんが来てるの知らなくて、ごめんなさい」

「また後で来るね」

「お話し中は邪魔しない約束なんだぞ!」

「構いませんよ。そうだ。今から私たちに家を案内してくれますか? 警備をする上で間取りを知っておきたい。ミツルやリックは忙しそうだし」

 カロリーナがそうお願いすると「うん、いいよ!」と元気な返事が揃って返って来た。騎士からのお願いに三人は見るからに浮足立っていて、可愛らしい。

「というわけで、神父殿。レオンハルト様と弟君たちをお借りするぞ」

「ああ。ちぃ、咲、レオン、頼むぞ。そういえば、ジョンは?」

「ジョンはね、キッチンに行ったよ」

「そうか。気を付けて遊べよ」

「はーい!」

「では、神父殿、一旦、失礼する。ジェンヌ、一緒に来てくれ。ガストンは、待機」

「え?」

 カロリーナは困惑するガストンを置いて、ジェンヌとともに、それぞれ双子に手を引かれながらさっさと行ってしまった。
 残されたガストンは、なんとなくリックを振り返るが、リックも首をかしげている。

「もしかしたら既にアマーリア様が温泉に入っているのかもしれんからな、温泉をとても楽しみにしている様子だったし」

 マヒロの言葉に、なるほど、と頷く。

「でしたら私も護衛に戻ります。失礼いたします」

 そう告げてアイリスも部屋を出て行った。
 不意にミツルが顔を上げる。

「真尋様、サヴィラ坊ちゃまが呼んでいるので、行ってまいります」

「分かった。頼むぞ」

「はい。では、失礼いたします」

 ミツルは丁寧に会釈をして、リビングを出て行った。ガストンには聞こえなかったが、彼にはサヴィラの呼ぶ声が聞こえたようだ。
 赤茶のふさふさのしっぽに獣人族だからなと納得する。彼らは人族の何倍も聴覚や嗅覚が優れている。

「ガストン、マヒロさんの相手を頼みますね。私、馬小屋の掃除が途中なんです」

 そう言って、リックはマヒロに「行ってきます」と告げると、さっさと行ってしまった。ガストンはまだ返事もしていないというのに。
 二人きりになってしまったリビングで、座ったらどうだ、と言われてカロリーナが座っていた椅子に腰を下ろす。
 ベッドの上のマヒロは、相も変わらず包帯まみれで、まだ顔半分を覆う包帯すら外れていない。ガストンも経験があるが、魔獣につけられた魔法傷は、強力な魔獣であればあるほど治りにくいのだ。
 心なしかマヒロは痩せたような気もして、なんだか落ち着かない。

「ケイティと子どもは元気か」

 おもむろにマヒロが尋ねて来る。

「は、はい。おかげさまで……それに神父殿の進言で、ほとんどの者が家族や恋人を連れてやってきています。私もケイティたちとともに来ました」

「そうか。収穫祭になれば、お前たちは家族と過ごす暇もないだろう? 過ごせるときに過ごさないとだめだからな」

 ガストンは、はい、と素直に頷く。
 今回、第二小隊は同行するにあたって、家族や恋人同伴で来ている。今回確保した空き家というのが元々は宿屋で、部屋がたくさんあるのもあり、マヒロがそう進言したらしい。
 リックとエドワードが抜けた分に加えて補填され、第二小隊は二十六名と事務官一人で構成されている。四名ずつ仕事をすれば、残りは暇ではないが時間に余裕ができる。領主家のごたごたで連日、神父殿の屋敷の警護にあたっていたので家にはほとんど帰れていなかった。その上、収穫祭が始まればより一層帰れなくなる。(祭りと言うのは浮かれて馬鹿をやらかす愚か者が大量発生する催しでもあるのだ)
 それを聞いたマヒロが、今回、家族や恋人を同行させ、お互いの時間を大事にするようにとウィルフレッドに提案したそうだ。
 なんとそのおかげで実際に離縁を免れたのが、一人いる。あまりにも帰って来ない夫に家事と育児に疲れ切った奥さんが匙を投げようとしていたのだ。やつは教会の方角に土下座してお礼を言いながら泣いていた。世知辛いことに多忙を極める騎士の離縁率はなかなかに高いのだ。遠方の師団に応援として派遣され、帰って来たら家の中が空っぽだったとか、奥さんが妊娠していた(もちろん計算が合わない)だとか、話題には事欠かない。

「もし、ケイティが良いと言ってくれたら、ダニエルをつれて来てくれ。久しぶりに名づけ子に会いたい」

「もちろんです、むしろ、是非」

 ガストンはマヒロの申し出に力強く頷く。
 ガストンと妻のケイティの間に第一子となるダニエルが産まれたのは、今年の晩夏のことだ。
 その際、ガストンは昨日から妻が産気づいているにも関わらず、男の自分にできることもないからと仕事をしていたためマヒロにしこたま怒られた。マヒロがあっという間に根回しをして、ガストンは早々に帰宅することになった。
 だが、ケイティも我が子も大丈夫だと思っていた自分を殴りたくなったのは、そうやって渋々帰ることになった時だ。
 ケイティの出血が酷く、母子共に危険だとケイティの母、ガストンにとっては義母が知らせに来てくれたのだ。ガストンは、情けないことに冷静さを失い、どうしていいか分からなかった。そこへ駆けつけてくれたのがマヒロで、ガストンと義母を彼の馬車に乗せてくれともにガストン宅へ。そして、メイドが呼んでくれていた治癒術師の指示のもと、ケイティに治癒魔法を施し、母子の命を救ってくれたのだ。
 ガストンとケイティは、マヒロに感謝し、彼に息子の名づけ親になってほしいと頼んだのだ。何故かその時、イチロ見習い神父殿に「え? この人に頼むの正気?」と言われたが。先日、伝説種のドラゴンに「ポチ」と名付けたマヒロに、どうしてあの時、イチロがガストンの正気を疑ったのかは、今ではなんとなく分かっているつもりだ。
 マヒロは、少し悩んでいたが最終的には快く引き受けてくれ、息子は彼に「ダニエル」という素晴らしい名をもらった。
すくすくと育ち、むっちりもっちりしている息子は、ガストンにそっくりだとケイティはいつも幸せそうに笑って言う。

「まだ首は据わらんか」

「まだまだですね。仕事が忙しくて家を空けていることが多いので、会うたびに大きくなっていて驚きます」

「子どもの成長は早いからな。……目に焼き付けておけ。あっという間に大きくなってしまうから。俺だっていつまでサヴィラを抱っこできるかと今から寂しい。小柄だから無理矢理抱っこする時もあるが、恥ずかしがって逃げるんだ」

 親馬鹿な神父殿らしい、とガストンはくすくすと笑う。
 彼はガストンよりずっと年下だが、多忙な両親に代わって弟たちを育てていた分、ガストンよりもずっと育児に詳しかった。それに今は二人の子持ちだ。とはいえ、弟とは言っても、彼らのそれは親子のようで、四人の子持ちと言ったほうがいいかも知れない。

「仕事も大事だ。仕事をして、金を貰わなければ生活は出来ないから。だが、家族は金で養うことはできても、得ることはできない。一緒に過ごせなくても、僅かな時間に必ず子どもの様子を尋ねるんだぞ。知ろうとする努力を怠るな。その目で見ることは敵わなくても、知っていることは大事だからな」

「はい」

 ガストンはやはり素直に頷く。
 妊娠中、ケイティはつわりも軽くて元気に見えた。だから出産だって、他の母親たちがそうしているように、当たり前のようにできるとガストンは慢心していたのだ。
 一つの命を育み、産むことが、そんなに簡単なわけもないのに。
 つわりが軽くても、お腹の中にもう一つ命があって、それを護らなければいけないのだから、元気に見えても大変なことも辛いこともあったに違いないのだとガストンは、産まれてから気づかされたのだ。
 忙しい夫を気遣って、ケイティは心配をかけないように元気な姿を見せてくれていただけなのだ、と。
 そういう優しいところに惚れて一緒になったのに忘れていたのだ。

「全く、彼らもガストンくらい素直に改心してくれればいいんだがな……はぁ」

 マヒロの言う彼らは、広い意味でガストンの上司たちで、なんとも言えない。
 ガストンだって、まさか家出した領主夫人のために屋敷の警護をする日が来るなんて、考えたこともなかったのだ。

「あら、ガストンさんが相手をして下さっているのね」

 軽やかな声に振り返れば、ユキノがやって来た。

「ミアは?」

「ジョンくんと玉子サンドを作ってくれているわ。サヴィラも来てくれたから、様子を見に来たの」

 そう言いながら、ユキノはガストンが座るほうとは反対のマヒロの左側へと移動して、ベッドに腰かけた。

「ガストンさんに無茶は言っていない?」

「君の中の俺はどうなってるんだ」

「あら、胸に手を当てて聞いたみたらどうかしら」

 くすくすと笑うユキノに、マヒロがバツの悪そうな顔をする。
 噂通り、あの神父殿が尻に敷かれているようで感心してしまう。

「そういえば、ユキノには言ってなかったかもな。縁あって、ガストンの息子は俺が名付けたんだ」

「まあ、そうなんです?」

 ユキノがガストンを振り返る。

「はい。ダニエル、と名付けて頂きました。妻は難産で、一時危うかったのですが神父殿が助けて下さり、母子ともになんとか無事だったんです。それで神父殿に是非、と名付けを頼んだ次第で」

「名づけ以来、会っていないから、ここにいる間に会いたいと頼んだんだ」

「そうなのですね。……赤ちゃん、きっと可愛らしいのでしょうね」

「それは、まあ、その……とても」

 ガストンは照れながらも肯定すれば、夫妻は顔を見合わせて穏やかに笑い合った。
 ずっと年下のはずの二人は、しかし、まるで何十年も連れ添った熟年の夫婦のような安心感があった。
 寄り添う二人の左手に輝く指輪にガストンは、はっとする。

「そうでした、神父殿、折り入って頼みが……」

「なんだ?」

「神父殿が全快してからで構わないのですが……ええと、ごほん、あのですね、あの……結婚指輪、について教えて欲しくて。私もケイティに……」

 だんだん恥ずかしくなってきて、ガストンは俯く。

「くくっ、構わんさ。相談くらいいくらでも。魔術学を禁止されているし、子どもたちとも遊べんし、暇をしているんだ」

「あ、ありがとうございます!」

 声が上ずってしまったが、目標を達成できたことにほっとする。
 ブランレトゥでじわじわと流行り始めているその結婚指輪の存在をガストンだって知っているのだ。なにせジョシュアは首から下げた結婚指輪をことあるごとに自慢しているし。

「できれば妻には内緒で作りたいのですが……彼女の指輪のサイズが分からなくて」

 指輪という装飾品は金持ちや魔術師でもなければ、一般人はつける機会はないのでガストンは妻の指のサイズを知らない。自分は作る時に測ればいいが、できれば、ケイティにはこっそり用意して驚かせたいのだ。

「簡単さ。こんな太いリボンではだめだが、やや太めの紐を用意するんだ。それでケイティが寝ている間に、その紐をこうして指の付け根の一番太い部分に巻くんだ」

 マヒロが自分の髪を緩く結わえていたリボンを解いて、ユキノの左手の薬指に、指輪の上から巻く。マヒロは片手なので、ユキノがそれを補助する。

「そうしたら、この重なっている部分に印をつけるんだ。どのみち、長くつけるものだからサイズの微調整は必要で、プレゼントした後に職人に直してもらうんだ。だから、プレゼントした時に嵌まればいい」

「なるほど……!」

 ガストンは早速手帳を取り出して、メモを取る。
 手帳に書き留めるのはもはや騎士としての習慣ではあるが、大事なことだ。それに妻は、仕事で使っているこの手帳を絶対に見ないようにしてくれている。

「うまくいくことを祈ってるよ」

「はい、頑張ります」

 そう答えたガストンに、夫妻はやはり穏やかに笑うのだった。
 結局、それからカロリーナたちが戻って来るまで、ガストンはマヒロに指輪のデザインについて相談に乗ってもらったり(参考として、ジョシュアの指輪や彼の家の庭師が妻のために作った指輪の話も聞けた)、妻目線でのアドバイスをユキノにもらったりして、有意義な時間を過ごしたのだった。


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今年は称号~を二年ぶりに更新することができました。それも待っていて下さった皆様のおかげです。
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明日の、新年一回目の更新も楽しんで頂ければ幸いです。

令和四年 十二月三十一日
        春志乃
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