称号は神を土下座させた男。

春志乃

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第三十五.五話 罠に落ちる

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「それにしてもやっぱり美人は怒ると怖いですね」

 丸い片眼鏡を直しながらレベリオが言った。
 どうぞ、と出された紅茶を受け取りながら、ウィルフレッドはそうだな、と苦笑交じりに頷いて返す。

「私、挨拶をする暇も無くて……」

「マヒロ神父殿は、基本的に冷静なお方だがイチロ神父曰く、気が短いらしいし……まあリヨンズがろくでもないことを言ったんだろう」

「でしょうね。あの人は仕事よりもそういうことの方が得意ですから。……そういえば、ガストン騎士とジェンヌ騎士が戻ったと言う報告が有りませんね。もう夜半過ぎだと言うのに」

 レベリオが懐から懐中時計を取り出して首を傾げる。
 ウィルフレッドも窓の方へと顔を向けた。外はもう真っ暗だ。月が出ない夜の町は真っ暗で雨の音がやけに鮮明になる。

「……でも、どうやってここに入って来たんだろうなあ。一応、ここも守護魔法と侵入拒否魔法が掛けてあるんだが」

「その理論をすっ飛ばすほど強い力を神父殿がお持ちということですよ。それよりも、休憩は終わりです。さっさと書類に戻って下さい」

「……あと五分」

「そのお願いはまた今度聞いてあげますからね」

 レベリオがにっこりと笑って、ウィルフレッドの前に書類を置いた。この事務官は優男然とした顔をしているくせに全然、優しくない。見た目こそ弟のアルトゥロとよく似ているが、アルトゥロの方が優しいというか、ウィルフレッドに甘い。
 だが逆らって勝てたためしがないので、ウィルフレッドは渋々、羽ペンを手に書類に目を通す。アルゲンテウス領の各地に散らばる師団から届いた報告書や許可証にサインをして許可したり、拒否したりするのがウィルフレッドの主な仕事だ。上に行けば行くほど書類は増える。
 雨の音と羽ペンのカリカリという音が静かな団長室に響く。
 それから三十分ほど経った時のことだった。

「団長! ウィルフレッド団長!!」

 分厚いドアの向こうから聞こえて来た騒々しい声に書類と睨み合いをしていたウィルフレッドは顔を上げた。素知らぬ顔で新たな書類をウィルフレッドのデスクに積み上げていたレベリオが訝しむ様に首を傾げた。
 町は寝静まっているが、騎士団から灯りが落とされることは無い。しかし、昼間よりは格段と静かで雨の音が覆う世界で自分を呼ぶその声はやけに大きく聞こえた。
 入室の許可も無くドアが開け放たれてウィルフレッドは、眉を寄せた。
 部屋に転がり込む様な勢いで飛び込んで来たのは二十代半ばの騎士だ。確か第一大隊第三中隊第一小隊の所属のアーロン二級騎士だ。この間、エドワードと殴り合いの喧嘩をした騎士である。

「アーロン二級騎士、もう一度、五級からやり直しますか?」

 レベリオが片眼鏡の向こうの目を細めて小首を傾げた。冷たい笑みに普段なら凍り付くであろう騎士は、しかし、それどころではありません、と首を横に振った。

「たった今、第二大隊の騎士が帰還しました!」

「第二の騎士が?」

 ウィルフレッドは、思わず立ち上がる。
 クラージュ騎士団は、全部で十の師団で構成され、師団は大隊、大隊は中隊、中隊は小隊で構成されている。師団によって人数が異なるので数はバラバラであるが、ブランレトゥを護る第一師団は、四の大隊で構成されている。第一はブランレトゥの守護、及び治安維持、第三は街道・運河・ダンジョンの監視、第四は災害派遣及び近隣の村の守護及び治安維持。そして、第二大隊は近衛――領主家及びその城、屋敷の護衛だ。
 第二大隊は、構成人数が他の三つの大隊に比べれば少ないがその分、二級以上の腕利きの騎士たちが集められている。今は、社交期となり領主であり王都へ上ったウィルフレッドの兄でもあるジークフリート・カルロ・フォン・アルゲンテウス辺境伯とその家族の護衛に三分の二が同行し、三分の一が空の城と屋敷の護衛に当たっている。現在、辺境伯は妻と子らと共にこのブランレトゥへの帰路を辿っている筈であり、第二大隊も護衛をしながらこちらへと向かっている筈だ。三日前に届いた書簡では、予定通りに帰還する旨が書かれていた。

「帰還、ということは同行した騎士か? 領主帰還の先ぶれではないということか?」

 ウィルフレッドは、レベリオが差し出した剣を腰に佩きながら問う。

「はい。緊急の報せだと思われます、戻ったのは第二大隊第一中隊第二小隊所属のシェーマス一級騎士です! 酷い怪我を負って居て、至急、団長を呼べと!」

「分かった。リオ」

「同行します」

 ウィルフレッドは、紺色のマントを翻し、此方です、と走り出したアーロンに続いて廊下を駆け抜け、階段を駆け下り、門へと向かう。
 門の前には、人だかりが出来ていて、各々が手に持つ松明や火球の灯りでそこだけ昼間のように明るかった。ウィルフレッドに気付いた騎士たちが道を開け、ウィルフレッドは人だかりの中央へと出る。
 血まみれで横たわる騎士の傍には応急処置を施す衛生騎士が居た。ここまで乗って来たのか、傍には興奮冷めやらぬ様子の馬が居てこちらも矢を受けたのか尻の方が血まみれで騎士たちが暴れ出そうとする馬を必死に抑えている。
 ウィルフレッドは、一目散に血まみれで横たわる騎士の傍に駆け寄り、膝をつく。衛生騎士が治癒術師が到着するまでの間の応急処置をしている。

「だ、だんちょ……」

 血の気を失った顔がウィルフレッドを見上げる。藍色の双眸は、虚ろで精気が失われている。
酷い怪我だった。ここまで戻って来られたのが不思議な程の酷い怪我だ。肩の傷が深く、腹には酷い火傷の痕が有り、焼けた制服が血の滲む傷口に張り付いていた。それに間違いでなければ右の膝から下が変な方向を向いている。

「治癒術師はまだか!?」

「すぐに来ます!」

 そんな怒号が飛び交っている。

「シェーマス、何が有った?」

 シェーマスがその唇を震わせるが周りの声が五月蠅くて聞き取れない。

「静かにしろ!! レベリオ!! ヴェールを張れ!!」

 ウィルフレッドの一喝に辺りは一気に静まり返り、レベリオがウィルフレッドとシェーマス、そして応急処置に当たっていた衛生騎士を喧騒から切り離す様に水のヴェールで包み込んだ。ウィルフレッドは、シェーマスを抱き起し、その口元に耳を寄せる。
 最初は空気を吐く音と掠れた音しか聞こえなかったが、最期の気力を振り絞ったのか声がはっきりとした言葉を紡ぎ始める。

「魔の、森……北の休息地で……敵、襲、現在……砦、にて……籠城中」

「相手は?」

「七十前後と思われます。様子がおかしく……」

「退け!!」

 ハスキーな声がシェーマスの言葉を遮るように響き渡り、石畳の上を歩くヒールの音がやけに響く。白衣の裾を翻し、水のヴェールを潜るようにして現れたのは、魔導院院長でありレベリオの妻でもあるナルキーサス・コシュマールだった。その後ろから彼の弟のアルトゥロもやって来る。二人が中に入るとヴェールが閉じる。

「キース、今日は神父殿の屋敷に泊まる筈なのでは?」

「神父殿とリヨンズをぶちのめす方法について話し合って、それに関する魔道具を開発中に呼び出しを受けて一度戻った。私の担当していた患者の容体が急変したんだ。その処置を終えて丁度、今、屋敷に戻る途中だった」

 ナルキーサスは、夫の問いに淡々と答える。
 ナルキーサスは、アルトゥロが持って来た鞄から手袋を取り出し、薬や何かの器具を並べて行く。その間、応急処置に当たっていた衛生騎士が怪我の状態や部位を報告していく。報告を終えるとナルキーサスに外に出ているように言われて、レベリオが空けた穴から衛生騎士たちが出て行く。

「左肩の裂傷、腹部の火傷、右足の膝の骨は粉々で筋まで切れている……よくもまあ、これだけ取り揃えたものだ」

「キース、先に話を」

「お待ちください。少し回復させなければこの騎士は死にます。話が途中で途切れる方が厄介でしょう? 五分下さい」

 ナルキーサスの言葉にウィルフレッドは、分かった、と頷いた。
 ナルキーサスが、ありがとうございますと答えた。アルトゥロが呪文を唱えて、光の玉で肩の傷口を照らす。ナルキーサスはウィルフレッドが抱えたままの騎士の肩に顔を近づけ、そこで眉を寄せて首を傾げた。

「アルト」

 ちょいと指で呼ばれたアルトゥロが肩の傷を覗き込んで同じように首を傾げて目を瞬かせた。その間にナルキーサスは、腹や足の怪我を診て、やはり首を傾げた。シェーマスが不安そうに顔を動かす。

「どうかしたんですか? キース」

 レベリオが妻に問う。

「血が止まっているのは兎も角……傷が治り始めて」

「は?」

 ウィルフレッドは間抜けな声を漏らす。

「そういえば……団長の顔を見たら何だか力が湧いて、痛みが遠のき始めたんです」

 シェーマスが言った。やけに言葉がはっきりし始めている。
 確かにまだ顔色は悪いが先ほどまでの死人みたいな顔色では無い。それに目に精気が戻っている。

「団長殿は、知らぬ間に治癒魔法を会得したのですか?」

「そうなの? ウィル」

「まさか。俺に光の属性は無い。幼馴染なんだから知っているだろう?」

 ナルキーサスの問いにウィルフレッドは首を横に振った。
 その間にもシェーマスの傷がゆっくりと治癒していく。

「あ、そういえば団長、神父殿に貰った石はどこに?」

 レベリオがはっとしたようにウィルフレッドを振り返り、ウィルフレッドは、それだ!と声を漏らして左手でシェーマスを抱え起こしたまま、右手を上着の内側にある胸ポケットに突っ込んでそれを取り出した。透明な石の中で優しく美しい金の光が揺らめいている。

「それは例の神父殿の力が込められた魔石か」

「ああ、マヒロ神父殿に貰った魔石だ。神父殿の魔力に光属性を付加したものが込められている。リックを救った石だ。レベリオ、覗き見も盗聴も防いでいるな」

 レベリオが、はい、と頷いた。
 ウィルフレッドはその魔石をシェーマスに握らせた。とんでもない治癒魔法をほいほいと迂闊に見せる訳にはいかない。ヴェールの中には、ウィルフレッドとシェーマスの他にレベリオ、ナルキーサス、アルトゥロしかいない。このメンツなら、既に神父殿に一度は度肝を抜かれているので問題ない筈だ。

「……何だかとても、優しいぬくもりを感じます……」

 シェーマスが目元を綻ばせる。
 するとそれまでゆっくりと進んでいた治癒の速度が一気に上がり、見る間に傷口が塞がり、腹の皮膚が再生し、足が正常な方向を向いた。
 ナルキーサスとアルトゥロがぽかんと口を開けたまま固まっている。
 ウィルフレッドは心の中で「だってマヒロだしな」と何十回と唱えていた。大事なのは、シェーマスが生き延びることと、その口からもっと詳しく話を聞くことだ。瀕死の重傷が無傷になるくらい、なんてことはない。だってマヒロだから。そう、だってマヒロだから。騎士団の団長室の窓からひょっこり現れたりしちゃうマヒロだからな。

「団長、凄いです。痛みが全て去りました」

 シェーマスがウィルフレッドの腕から起き上がった。レベリオとアルトゥロが息を飲んで、ナルキーサスが「おやまあ」と声を漏らした。
 ナルキーサスの黄色の双眸が獲物を見つけた肉食魔獣みたいに輝いている。それからそっと視線を外して、シェーマスの手から魔石を抜き取る。恐ろしいことにあれだけの怪我を治しておきながら魔石の中にはまだ魔力が残っていた。
 ナルキーサスの手が寄越せと言わんばかりに伸びて来る。それに気づかなかったふりをしてウィルフレッドは、自分の腕に寄り掛かったままかろうじて起き上がっているシェーマスに声を掛ける。

「あー、あれだ。後で神に感謝しておけよ。それよりシェーマス、何が有った?」

 その言葉にシェーマスが、はっと我に返りウィルフレッドを見上げる。

「敵襲です。魔の森の北の休息地にて襲撃に遭い、現在は魔の森監視の第七師団の砦にて籠城中。敵の規模は七十弱。既に少なくとも三名の騎士が犠牲になっています。メイヤール副団長が一刻も早く団長にお伝えしろと」

「ここから馬を走らせて二日……兄上や義姉上は?」

「私が伝令の為に向こうから抜け出した時は領主様御一家は、傷一つありませんでした。領主様が先頭に立って指揮を執っておられます。メイヤール副団長が治癒魔法で負傷した騎士の手当てをして下さっていますが、副団長と衛生騎士だけでは追いつきません。すぐに救援を」

「分かった。おい、シェーマスを治療院に。アルト、後は頼むぞ」

「ま、待ってください……まだ一番大事なことが……」

 シェーマスに腕を掴まれてウィルフレッドは上げかけた腰を下ろす。

「敵の規模は七十弱です。数ならば我々が圧勝しています。おそらく、紫色に変色した皮膚や目が赤黒く光っていること、異常な素早さに足や腕を落としても死なない所を鑑みるにアンデットだと思われるんですが……おかしいんです」

 ひそひそとシェーマスが囁くように告げる。

「どういうことだ?」

「見た限りは人のアンデットです。ですが黒いローブを着た女と思われるリーダーに率いられた軍勢で、アンデットの数を大幅に上回る生きた人間の塊である砦に攻撃を仕掛け続けているんです。アンデットに統率という言葉は無い筈ですし、炎を嫌がる筈なのに……あいつらは、砦の周りの堀の水だけを嫌がるんです」

「水を? 別にアンデットは川の中にだっているくらいに炎以外は平気な筈だが?」

「それが良く分からないのですが、堀の水は嫌うのに、水魔法は平気なのです」

「……確か、あそこの堀の水は魔の森の湖と地下で繋がっている筈ですが。それが関係しているのでしょうか?」

 レベリオが首を傾げる。ナルキーサスやアルトゥロもお手上げだと言わんばかりに首を傾げている。

「敵の頭は?」

「それがまた異様で」

 シェーマスが表情に怯えを滲ませた。

「真っ黒なローブのフードを被った女、だと思われます。体格からそう判断していますが、真偽の程は不明です。先頭に立ち指示は出しているようなのですが、その指示も未熟というか優れた指揮官ではありません。ただ女は異様な雰囲気を醸し出していて、まるでそこに居るのに居ない様な、非常に曖昧な存在なんです。あれは魔物か魔獣の類かも知れません」

 ウィルフレッドの脳裏にダビドを殺したフードの男の存在が浮かび上がった。
 あれが一人だけとは限らないと言うことだろうか。だとすれば、今回の騒動の裏にもあのクルィークに巣食う得体の知れない存在が関与しているかも知れないということだ。

「リオ、すぐに神父殿の屋敷へ行け。神父殿に事のあらましを告げ、光の魔石を貰って来てほしい。兄上の分だけで良い。金は後で払うと言っておいてくれ」

「……分かりました」

 レベリオが頷いた。

「私が先に戻って、伝えておこう。どうせ今夜は向こうで過ごす予定だったしな」

「シェーマス、お前はとりあえず……死んだふりをしておけ」

「はい?」

「内部で少々、怪しい動きがある。今の顔色なら死んでいてもおかしくはないから……死んどけ」

 ウィルフレッドの言葉にシェーマスは、神妙な顔で頷いた。

「残念ながら我が治療院も万全とは言えん。そうだ、神父殿の屋敷に運ぼう。あそこなら、この国で一番安全だ」

「だが、そこまで迷惑を」

「閣下、もう迷惑という言葉では片付けられない程神父殿には世話になっている。それに神父殿は、人の命を軽んじるような男では無い」

アルトゥロが鞄の中から担架を取り出した。二本の長い棒に布を張っただけの簡易式のものだ。ウィルフレッドがシェーマスを抱えあげてそこに乗せる。ナルキーサスが彼の上に白い布を掛けてシェーマスを頭の先から足の先まで覆い隠した。白い布に彼の制服を汚していた赤い血が滲むように浮かび上がった。

「ナルキーサス、アルト。シェーマスを頼む。それと治癒術師を五名、貸してくれ」

「分かりました。出立は?」

「二時間後だ」

「了解です」

 ナルキーサスが立ち上がると同時に水のベールがはらりと解けた。
 白い布が掛けられた体の意味を知る騎士たちは、息を飲んで表情を曇らせた。

「団長、これは一体、何事でしょうか?」

 嫌味たらしい声が聞こえてウィルフレッドは顔を顰めそうになるのをぐっとこらえて振り返る。
 案の定、錆色の髪を雨に濡らしたリヨンズが数名の部下を連れてこちらにやって来た。彼の背後にはアーロンが居た。彼がわざわざ呼んで来てくれたのだろう。濃い灰色の瞳がウィルフレッドの向こう、担架の上で白い布で覆われたシェーマスを一瞥する。

「近衛のシェーマス一級騎士が帰還したと報告を受けたのですが」

「残念ながらあと一歩のところで治療が間に合わなかった」

 ウィルフレッドの言葉に集まっていた騎士たちが悲痛の表情を浮かべて顔を俯けたり、拳を握りしめたりする中、リヨンズだけは表情をぴくりとも変えずに、そうですか、と淡々と告げた。エドワードに殴られたのだろう頬には嫌味のように湿布が貼られている。

「だが領主様が敵襲に遭い、第七師団の砦にて籠城中という報せをシェーマスはその命と引き換えに遺してくれた」

 周囲が驚愕に静まり返り、辺りを包む空気が一気に緊張感を孕んだ。細く降る雨が松明や火の玉の灯りに照らされて、チラチラと輝いている。
 ウィルフレッドは予断なく辺りを見回す。騎士たちは皆、真剣な表情を浮かべているように見えるが、その腹の底に何を溜めているのかまでは分からない。目の前の濃い灰色の瞳を僅かな愉悦に染める男のように。

「ダグラス第一大隊長! フェリブール第五中隊長!」

「はっ!」

 すらりと背の高い男と巌のような出で立ちの男が前に出て来る。

「第五中隊を連れ、加勢に向かう! ダグラスには指揮を任せる! 一時間後に出立!」

「はっ! トーリス! 緊急招集を掛けろ!」

 ダグラスは頷くが早いかそう声を張り上げ、フェリブールはその巨体を颯爽と翻し、その場を去っていく。その背に第五中隊に所属する騎士たちが急いで続く。

「本部内に居る各小隊長以上の者は直ちに第一会議室に集合せよ!!」

 野太い返事が聞こえ、騎士たちが散っていく。それぞれがそれぞれの役目を果たしに駆けて行く背をリヨンズが目で追う。

「ラウラス第一副大隊長!」

「はっ!」

 すすっと前に出て来たのは、ハシバミ色の髪の男だ。今年四十を数えるがエルフの血を引く彼は、まだ二十になったばかりの青年に見える。

「来い。大事な話がある」

「はっ!」

「リヨンズ第三中隊長、各詰所と東西の支部にいる小隊長以上の者たちを呼び戻してくれ」

「はい。仰せのままに」

 リヨンズは形ばかりの騎士の礼を取り、部下を引き連れて去っていく。急ぐ気配のない足取りはいつものことだがウィルフレッドは、あの男の濃い灰色の瞳に宿っていた不穏な感情に眉を寄せた。
 だが、今優先すべきは領主一家の救出だ。クラージュ騎士団の剣は領主に捧げられたものではないが、このアルゲンテウスに暮らす民に領主もまた含まれることには違い無く、外交上、なにより領地の安寧の為には領主に死んでもらっては困る。まだ跡継ぎであるレオン様は、幼過ぎる。
 行くぞ、と声を掛けてウィルフレッドは一度、団長室へ戻ろうと踵を返した。レベリオとラウラスが付いて来る。ナルキーサスとアルトゥロが神妙な面持ちで宙に浮かせたシェーマスの担架と共に治療院へと去っていく。
 確かにナルキーサスの言う通り、マヒロの元に置いておくのが最も安全と言えるだろう。

「ラス」

「はい」

 年齢はいくらか彼の方が上だが、ウィルフレッドとラウラスは同期に当たる。ウィルフレッドが心から信頼を置く人物の一人でもあった。彼は美を誇るエルフ族らしく、はっとするほど美人だ。

「リヨンズから目を離すな」

 ウィルフレッドが唸るように告げた言葉にラウラスは、首肯する。

「勿論。それに捜査の方も進めている。だが……」

 言葉を濁した友にウィルフレッドは首を傾げる。

「……まだあの糞を打ち落とすには足りない」

 綺麗な顔に似合わずラウラスは口が悪い。ちなみに足癖も悪い。
 ラウラスを筆頭に数名の信頼が置ける部下にウィルフレッドは一年ほど前からリヨンズを探らせていた。元々、この男にはいろいろな疑いがあり、横領の線から最初はあたらせたのだがそこから芋づる式に色々と出て来て、こんがらがっているのである。リヨンズは、それなりに用意周到な男だったようで、決定的な証拠が今の所はまだ見つかっていないのだ。果たしてリヨンズは、ここまで出来た男だったろうかと首を傾げたくなるほどだ。

「だが、俺とダグラス大隊長が不在になることで、お前が今からここのトップになる。あいつはそういった隙を逃さん男だ。気を付けろよ」

「分かっている。それよりシェーマスは本当に死んだのか? お前が抱えあげた直後から元気になったように見えたんだが……」

 より一層声を潜めたラウラスにウィルフレッドは辺りを見回す。人の気配は無いが油断は出来ない。団長室ならばナルキーサスに防音の魔法を掛けて貰っているので話が漏れる心配はないから、そちらにすべきだろうと結論付ける。

「それは団長室で話してやる。あと一人……いざという時お前の力になってくれるだろうえげつない程の美人の件と……その美人の奇行から胃の腑を護るための呪文もな」

 は?と首を傾げたラウラスにウィルフレッドは遠い目をしながら、曖昧に笑って返した。








「あー、くっそ」

 漏らした声が石造りの牢の中で反響する。エドワードは苛立たし気にボルドーの髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
 ここは騎士団本部の地下牢だ。そこにリックを除く第二小隊騎士全員が押し込められている。向かいの牢には、第二中隊第五小隊の騎士たちが同じように押し込まれていた。
 この地下牢は、大地下牢と呼ばれ地下三階に位置しているために外の音が一つも聞こえない。懐中時計が無かったら何時かも分からなかっただろう。
 事の発端は、ほんの数時間前のことだった。








 エドワードは、リックの除籍撤回の申し立てをするために騎士団に入ろうとしたのだが、門番に拒まれて入れて貰えなかったのだが、出先から戻ったガストンとジェンヌに運良く会えたのだ。ただ何故かそのまま備品庫に連行され、カロリーナに拳骨と説教を喰らった。その後、備品庫を出た直後、第二小隊が緊急招集を掛けられ、カロリーナに屋敷に帰れと言われたのだが、こっそりとついて行ったのだ。
 会議室に入れば第二小隊の二十名の仲間がそこに揃っていた。叩き起こされた面々も居たのかまだ身支度が整っていないのも何人かいた。慌ててスカーフをしめたり、ジャケットに袖を通したり、シャツのボタンをかけたりしている。

「何で貴様がここに居るのだ!」

 入った直後にカロリーナに見つかって容赦なく拳骨が落とされた。我が小隊長の愛は痛い。

「だって気になるじゃないですか!!」

「確かにお前は仲間だが今は身分上、一般町民だろうが!!」

「騎士じゃなくなっても俺は一応、貴族籍です!」

「そういうことじゃないわ、この馬鹿が!!」

「まあまあ、カロリーナ小隊長、こいつは俺のマントの中にでも隠しておきますから、ね?」

 ガストンが再びエドワードに拳骨を落とそうとするカロリーナを宥めてくれる。カロリーナは、もう知らんからな、とため息を零して振り上げたこぶしを降ろしてくれた。それに「ありがとうございます!」と返したら調子に乗るなと怒られた。

「カロリーナ小隊長、何事ですか?」

 カロリーナの事務官であるハリエットも呼び出されたらしく、此方に駆け寄って来て不安そうに首を傾げる。
 仲間たちがカロリーナの周りに集まる。エドワードは、言われた通り、ガストンのマントの下に隠れておく。仲間たちにマントの上から頭を小突かれたが。これも愛だ。

「分からん。ダグラス第一大隊長からの呼び出しらしいが……」

 誰も招集された理由は知らないらしく、しかし、整列するように声を掛けてカロリーナが中心に出ようとした時、会議室のドアが開いた。
 皆の視線が一斉にそちらに向けられた。

「リヨンズ中隊長」

 目を見開いたカロリーナがその名を呼んだ。
 現れたのは、錆色の髪に濃い灰色の瞳の男だった。エドワードが殴った頬に白い湿布が貼られている。いつも通り、後ろに部下を数人連れている。その中にエドワードの天敵のアーロンがいた。ニヤニヤと卑しい笑みを浮かべている。エドワードはガストンの脇から様子を窺いながら無意識の内に腰の剣の柄に手を伸ばしていた。

「私の周りを色々と嗅ぎ回っているようだね、これだから女は不躾でいけない」

 カロリーナが、ハリエットをエドワードの方に押しやった。守れということらしい。ガストンのマントの下にハリエット共に隠れれば、周りの仲間たちもガストンの両脇を固める。
 事務官は、騎士の中からその事務能力を見出され登用される者とハリエットのように事務能力だけで登用される者がいる。この空間で最も非力なのはハリエットで間違いないだろう。グリースマウスにも負けるかもしれない。

「私達に召集を掛けたのは、第一大隊長だったのでは?」

 カロリーナが冷静に問う。
 リヨンズは、濃い灰色の目を酷く愉快そうに細める。彼に染み着いた甘ったるい葉巻の香りがここまで漂ってくるような気がしてエドワードは顔を顰めた。
 しかし、リヨンズの背後から影のように現れた男に場の空気が一変する。
 現れたのは全身黒ずくめの若い男だった。青白い怜悧な美貌。癖一つない真っ直ぐな長い黒髪がその背で揺れている。

「……これを、移せばいいのか?」

 淡々とした感情の見当たらない声がリヨンズに向けられた。

「ザラーム……っ。リヨンズ、貴様、やはりクルィークと繋がっていたのか!」

 カロリーナが剣を抜いた。それに倣う様に騎士たちが一斉に抜刀し、剣を構える。エドワードもハリエットを庇ったまま剣に手を掛け前方を鋭くにらむ。胸ポケットの中にマヒロの温かな魔力の存在を確かめる。

「おやおや、何故、ここに騎士では無い筈の馬鹿がいるのかな?」

 ガストンのマントがずれて、リヨンズと目が合ってしまった。カロリーナが「この馬鹿」と呻いた。

「ふっ、まあいい。目障りなものは処理するに限るからな」

 リヨンズは肩を揺らして楽しそうに笑った。

「……お前たちが、エイブ殿の正体に辿り着いてしまったのがいけなかった。そして、この方の名を知ったこともな、あの愚かな騎士も正義を翳して踏み込んでこなければ死なずに済んだのに」

 嘲笑うかのように吐き出された言葉に部屋の中が一気に殺気で溢れ返った。

「マイクを、殺したのも、お前か?」

 カロリーナが怒りで震える声で問いかけた。
 リヨンズは、濃い灰色の瞳を細めて口角を吊り上げた。

「あの男は、知り過ぎた。このお方の秘密も我々の秘密も。だから……遺骸一つ残さず消えて貰った」

「貴様ぁ!!」

「待て! ジム!」

 剣を振り上げたのはジェンヌだった。傍に居たガストンが咄嗟にジェンヌを羽交い絞めにする。

「放せ!! あいつが! あいつがマイクを殺したんだ!! 私が殺してやる!!」

 ジェンヌが怒り狂ったように叫ぶ。

「ははっ、何だ? もしかして恋人だったのか? それはそれは失礼をした。だが、安心すると良い。直に会いに行けるさ。皆、仲良くな」

 リヨンズの言葉にカロリーナが振り返る。エドワードは咄嗟に詠唱に入るが、それが完成するより早くザラームが静かに囁いた。

「《ウンブラ・ホル》」

 聞いたことも無い呪文が完成した瞬間、足元に在ったはずの床が消えた。エドワードは瞬時に背に庇っていたハリエットに向き直り、彼女を抱き締めた。ぐわん、という浮遊感に襲われて歯を食いしばった。
 ドサドサドサと重い音がそこかしこで聞こえ、エドワードも受け身を取る間もなくしこたま背中を石畳の上に打ち付けた。

「いってぇ」

「え、エドワードさんっ!」

 腕の中からハリエットの焦った声が聞こえる。ということは彼女は無事なのだろうとエドワードは目を開ける。仲間たちが強かに打ち付けた腰や背中の痛みに呻きながらも体を起こしていた。誰かが呪文を唱えて火の玉を浮かべた。そうすれば、じめじめとした陰鬱な石の壁や黒い鉄格子が光の中に浮かび上がった。

「……地下牢だ」

 カロリーナが唸る様に言った。

「それも……地下三階の大地下牢ですね。ジム、退いてくれ」

「あ、ご、ごめん!」

 ジェンヌの尻の下敷きになっていたガストンの言葉に仲間たちは、嘘だろ、と天を仰いだ。
 大地下牢は、戦争時、捕虜をとりあえず入れておくための地下牢で現在は、殆ど使われていない。というかここ二百年、使ったことがない。故に埃っぽいし、ジメジメしているし黴臭い。

「……これだけの人数が一気に不在になれば、誰かどうか気付くよな?」

 誰かが言った。

「残念ながら誰も気づかないだろうな」

 リヨンズの声が聞こえて顔を上げる。リヨンズが鉄格子の向こうで酷く愉しそうな笑みを浮かべて立って居た。その後ろにはザラームが立って居る。闇の濃い地下牢でその男は背後の闇に呑まれて消えてしまいそうだ。

「今夜か明日の朝には、団長殿は街を出られるだろうな。軍勢の一つも引き連れて」

「……どういう意味だ?」

 カロリーナが訝しむ様に目を細めた。

「領主様の命が危機にさらされているということだ。自我を失い、人としての痛みも喪った死体の化け物に襲われている最中だ」

「リヨンズ、お前の目的は何だ?」

 濃い灰色の瞳に愉悦を宿すリヨンズは、ザラームに何かを告げてこちらに背を向けた。

「安心すると良い」

 ずぶずぶとリヨンズとザラームが足元の闇の中に沈んでいく。

「あの世に逝くのは、何も君達だけじゃあない。このブランレトゥの町と共に君たちは、闇に消えるのだ。あの忌々しい神父もすぐに君たちの下に行くよ。ああ、そうだ。この方が一つ、置き土産をくれるそうだから、絶望が育っていくのを眺めながら醜く憐れな死を迎えると良い」

 そう告げて、リヨンズは闇の中へと消えて行った。彼らを飲み込んだ闇は、他の闇より深く濃い。そして、その闇が徐々に浮かび上がって小さな黒い霧の塊になった。エドワードには見覚えが有った。
 あれは、間違いなく貧民街でエドワードと子供を襲い、リックを飲み込んだものだ。

「何? あれ?」

 ジェンヌが呟く。

「下がれ! あれに近付くな!」

 カロリーナの一声に騎士たちは地下牢の奥へと一斉に引き下がる。ハリエットは腰が抜けたのかエドワードにしがみついたまま動けそうにない。

「ハリエット事務官、後で責任を訴えるなよ」

「へっ、きゃあ」

 エドワードは、ハリエットを肩に担ぎ上げて、片手に剣を構えて後退する。ハリエットは、一瞬、暴れそうになったがすぐに冷静さを取り戻したのかエドワードのマントをしがみつくように握りしめて大人しくしている。
 黒い霧は、だんだんと大きくなりながら格子をすり抜けて、こちらへと近寄って来る。

「小隊長! あれがリックを襲った奴です! 現物です!!」

「ああ! そうだとも!! そしてあれがインサニアだ!!《ファイア・アロー》!」

 カロリーナが放った火の矢は霧をすり抜けることもなく中へと取り込まれた。
 カロリーナの言葉に騎士たちに驚愕と動揺が広がる。

「小隊長、あれに魔法は効きません!! ウィルフレッド団長の魔法も利きませんでした!!」

「下がれ! とりあえず下がれ!! ではどうするんだ!! ここに神父殿はどちらも居ないんだぞ!?」

 魔法を放とうとしていた騎士たちが壁にへばりつくようにして最大限下がる。エドワードは、混乱する頭を必死に働かせ、石の存在を思い出して剣を隣に居た騎士に任せて、胸ポケットに手を突っ込んでそれを取り出す。金色の優しい光が魔石の中で輝いている。確か、リックはこの魔石によって守られたのだ。

「神父様! マヒロ様! あとで何でも言うこと聞くので助けて下さい!!」

 そう叫びながらエドワードは、その魔石を黒い霧に向かって投げつけた。吸い込まれるように石は闇の中に消える。数秒、地下牢に沈黙が流れた。カロリーナがエドワードに何か言おうと口を開いた瞬間、異変は起こる。
 黒い霧が中心に向かって吸い込まれるようにして小さくなり始めたのだ。まるでそれはもがき苦しんでいるかのようだった。エドワードは肩に担いでいたハリエットを片腕で抱えなおす。ハリエットは不安そうにエドワードの肩口を握りしめて、分厚い眼鏡越しに黒い霧を見つめていた。
 黒い霧は、ぶるぶると震えだし、綻びが出来始め中から金の光が溢れ出す。そして、それは唐突に霧散した。黒い霧は儚く散る花のようにはらはらと落ち、跡形も無く消え去った。金色の光を発していた魔石は、役目を終えるとその光を失い、こつん、と音を立てて石の床の上に転がった。

「き、消えたの?」

 ジェンヌが言った。
 カロリーナの指示で火の使い手たちが次々に火の玉を出して牢屋内を照らすが、そこにはもう黒い霧はどこにも見当たらなかった。カロリーナが転がっていた魔石を拾い上げる。エドワードは差し出されたそれを摘み上げた。

「空っぽだ」

 指でつまんだ魔石を火の玉に透かして見れば、その中にはもうあの柔らかな金の光は見当たらなかった。

「……リヨンズは、浅墓で愚かで傲慢で糞みたいなところがあるからな、というか糞だからな。あの黒い霧が我々を殺したと信じて疑わんだろう。ここに神父殿は居ないしな」

 カロリーナが苛立たし気に言った。

「領主様が襲われて団長が動いたとなれば騒ぎになる。我々の姿が見えないことを疑問に思う者は居ても追及するほど暇な者はいないだろう」

「居たとしても、リヨンズが「第二小隊には秘密裏に動いて貰っている」とか言ってしまえば、それで解決です」

 ジェンヌがため息交じりに告げた言葉に仲間たちは、はぁぁ、とため息を零す。

「あ、あの、皆で叫んでみてはどうでしょう?」

 エドワードの左腕に抱えられたままのハリエットが言った。

「残念ながら、ここは地下三階。現在は大きな捕り物も無いから地下二階も使われていないし、地下一階も確か……この間捕まえた盗賊達を一昨日、楽しい鉱山生活に送り出したばかりで空っぽだ。つまり地下には誰も居ない。地下への入り口に見張りが立って居るだろうが、ここでどれだけ騒いでも声は届かんだろうなぁ」

 カロリーナが遠くを見つめて言った。

「……え、ええとなら、その牢をぶっ飛ばすとか」

「これは大昔にこの地で採れたっていう特殊な鉱石で作られていて、魔法は効かねぇんだよな。剣も刃毀れするか、折れる。これも一応、文化財に指定されてるからお前ら覚えておけよ」

 ガストンが言った。

「基本的に地下牢は魔法が効かない様になってるのよ。物理攻撃もほぼ無効。そうしなければ、逃げられちゃうからね」

 ジェンヌが子供をあやす様にハリエットの髪を撫でた。ハリエットは万策が尽きたと言わんばかりに小さな肩を落とした。

「……我々と同じようにリヨンズを探っていた小隊が居る。あいつらが気付いてくれれば、もしくは……」

 カロリーナがどうにか希望を見出そうと告げる。
だが、次の瞬間、前方からどすどすどすんと大きな音がして、騎士たちは咄嗟に剣を構える。ハリエットがエドワードの頭にしがみついて来て前が見えないが側頭部に柔らかいものが当たっている。小柄な割にあるな、と不躾なことを考えながらも、エドワードはハリエットに声を掛けて腕の目隠しを外す。

「フィリップ!」

 声を上げたのは、カロリーナだった。照らされた先、向かいの牢に落ちて来たのは第二中隊の第五小隊の二十二名だった。此方に気付いた小隊長のフィリップがぽかんと口を開けて固まっている。彼もまた獣人でカロリーナと同じ獅子だ。ただカロリーナとは同期だからか、同じ獅子だからか、あまり仲が宜しくない。

「カロリーナ! 何でてめぇがここに!? 死んだんじゃねぇのか!?……ってかここはどこだ!」

「知るかボケ! なぜお前まで捕まってるんだ! この役立たず!」

「ああ? 先に捕まった奴が何言ってやがんだ! このクソアマ!」

「お前はいつもそうやって大事な時に役に立たん!!」

「てめぇだってほいほい騙されてんじゃねぇか!! ぶっ殺すぞ!!」

「私が先にお前を殺す!!」

「フィリップ小隊長もカロリーナ小隊長も今は喧嘩している場合じゃないでしょうが!」

 周りの騎士たちが慌ててそれぞれの上官を宥めに入り、エドワードたちはため息を零すのだった。







 そうして、今に至る訳だ。あれから十数時間が経ち、そろそろ外では夜が明ける頃だ。領主様は大丈夫だろうか。
 あの後、第二中隊の第五小隊も自分たちと同じように第一大隊隊長名義で緊急招集を掛けられ、ザラームによって地下牢に文字通り、落とされたことが分かった。ただリヨンズは、第二小隊のことを彼らには「死んだ」と告げたらしい。落ちた先で「憐れな同志の悲惨な遺骸を目にするだろう」とも言っていたようだ。つまりリヨンズはやはり完全に自分達があの黒い霧に飲み込まれて死んだと思っているし、第五小隊も同じくして死んだと思っているのだ。まさか神父のくれた魔石で黒い霧、インサニアが消え去ったとは露ほども思って居ないのだろう。
 お互いそっぽを向いたままカロリーナとフィリップが現状報告をしあって、それぞれの隊では物資の確認をした。とは言ってもポケットやアイテムボックスの中身を確認しただけだ。第二小隊の物資は、口休めのお菓子や煙草、報告書、恋人の姿絵、押収した子供向けの悪戯玩具、蛇の抜け殻、ロープ、ランプ、テント、回復薬、エロ本、蝋燭。武器はそれぞれ持っているがここでは何の役にも立たない。ちなみにエロ本は、カロリーナに燃やされた上、所持していた騎士は失ったエロ本の代わりに拳骨をその頭に与えられた。テントは、エドワードのアイテムボックスから出て来たものだ。

「エドワード……貴様、先月の実地訓練の後、テントを返し忘れたな」

 カロリーナに睨まれて、エドワードはそろりと視線を外した。

「ま、まあ、カロリーナ小隊長、エドワードさんのお蔭でお手洗いが確保された訳ですし……」

 ハリエットが困り顔でカロリーナを宥めれば、カロリーナは渋々ながらも頷いてくれた。騎士団のテントの中には、簡易トイレとシャワーが有るのだ。高級品じゃないので狭いが、あるだけましだ。シャワーがあるということは、水の確保が出来た訳でもある。それに何より、トイレがあるということは幸いだ。幾ら暗いとは言え、牢の隅で用を足すのは女性には耐えがたいだろう。第五小隊が「うちにもテントはないのか!」と向かいで騒いでいるが、エドワードのようなうっかりさんは居なかったらしい。絶望の声が上がった。
 テントの中は、男性騎士が二人眠れるだけのスペースがあるので、カロリーナとジェンヌ、ハリエットなら中で眠れるだろう。ちなみに第五小隊には女性は居ない。女性騎士は元の数が圧倒的に少ないのだ。

「マヒロさんにさえ、連絡が付けばなぁ」

 エドワードが零した言葉にカロリーナが頷く。
 残念ながら騎士団の中では、誰が敵で誰が味方なのか分からない。分かっているのは、この中に居る四十数名だけが味方だということだ。あれからここに人が送られてこないことを考えれば、自分達以上に目障りな存在は居なかったか、或は、これ以上消すと不自然に思われるとでも思ったかのどちらかだ。リヨンズは基本的に浅墓で思慮に欠ける。上に立つには不向きな人間なのだ。

「……でも、そんなに信用しても良いのか? だってその噂の神父さんが裏でリヨンズやクルィークと繋がってたらどーすんだよ」

 そう言ったのは、フィリップだった。厳つい見た目に反して彼は、非常に慎重派だ。

「無いな、それは無い」

 カロリーナがきっぱりと言い切った。エドワードやガストン、ジェンヌもうんうんと頷く。

「そもそもあの方が裏でリヨンズやクルィークと繋がっているのならもう我々に勝ち目はない」

「そ、そんなに凄い方なんですか?」

 別の騎士が言った。

「一目見れば分かるさ。それよりここからどうにかして脱出しなければ……リヨンズの馬鹿がクルィークと共に町を壊そうとしているのは間違いないんだからな」

「でも出口が……魔法を使用するにも魔力は無限ではありませんし……」

「……あ」

 エドワードは、ふとそれの存在を思い出した。

「どうした、馬鹿者」

 カロリーナが振り返る。
 エドワードはジャケットのポケットからそれを取り出す。

「紙の、小鳥さん?」

 ハリエットが不思議そうに首を傾げた。

「これ、一番近くに存在するマヒロという人に届く様になっている伝言用魔道具なんですが、この町にマヒロなんて珍しい名前の人は、マヒロ神父殿しかいませんよね?」

「いないとは思うが、ドアも閉まって居るし、ここからでは」

「これ、紙だからちょっとした隙間さえあれば勝手に形を変えて出て行くんです。マヒロさんが試作品の機能を試したいからと俺にくれたんです。俺がちょっとだけ魔力を注げば、起動して伝言機能が動き出してマヒロさんに向かって飛んでいくはずです!」

「……そうだな。ここで皆で仲良くアンデットになるよりは建設的だ。その小鳥に全てを託そう」

 カロリーナが頷いた。
 エドワードは頭の中で伝えるべきことを整理してから、小鳥へと魔力を注ぎ起動させたのだった。







「……広いですね」

 馬上でレベリオは思わずつぶやいた。
 目の前には鉄門が聳え立ち、侵入を拒んでいる。広大な庭には人の気配はないが、奥の屋敷にはぽつぽつと部屋に灯りが灯っている。

「キースが伝えてくれている筈ですが……」

 そう零した時、ギギッと音を立てて鉄門がゆっくりと開いた。レベリオが中へ入れば、ガチャンと音をたてて閉まる。一体、どういう仕掛けだろうと首を傾げつつ、レベリオは屋敷へと馬の足を向けさせた。

「レベリオ筆頭事務官、お待ちしていました」

「おや、リック。久しぶりですね、元気そうで何よりです」

 玄関の前で迎えてくれたのは、リックだった。手には、ランタンを持っていて柔い光に照らされるその顔には、柔らかな表情が浮かんでいる。

「馬はここで私が見ていますので、中へどうぞ。入ってすぐ左の応接間にて、マヒロさんがお待ちです」

「そうですか、分かりました。キースは?」

「ナルキーサス殿は、子どもの患者の方に居ますので、お会いしたければ呼びますが」

「いえ、大丈夫ですよ。ありがとうございます、それでは」

 レベリオは、リックに会釈をしてエントランスへと入る。最低限の蝋燭の灯りが照らす広いエントランスを横切り、応接間へと向かう。薄く開いたドアから中を見れば、そこに彼が居た。
 蝋燭が照らすその横顔の美しさにレベリオは、ぞくりとしたものが背筋を駆け抜けたのを感じた。
 神父は、殺風景な応接間に置かれた二脚の椅子の内の一つに座り、その長い足を組んで蝋燭の灯りを頼りに本を読んでいた。レベリオが来たのだと気づくと青年は顔を上げた。
 銀に蒼の混じる双眸がレベリオを捉えた。吸い込まれそうなほど強い光を宿した眼差しにレベリオは気付かれない様に唾を飲んだ。団長室での邂逅はほんの刹那的なもので、こうして改めて会うとなると緊張する。
 十八歳で成人したばかりの青年だと聞いていた。そうなればレベリオは、彼よりも大分年上になるが、青年はその年齢には到底そぐわない不思議な雰囲気を湛えている。威圧感がある訳では無い。だが、自然と傅きたくなるような何かを青年は持っている。

「初めまして、私は神父の真尋と申します」

「こちらこそ、私は騎士団にてウィルフレッド団長の筆頭事務官を務めさせて頂いております、レベリオ・コシュマールと申します」

 片眼鏡を指で直し、レベリオは頭を下げた。マヒロは、ご丁寧に、と言って品のある礼を返してくれた。どうぞ、とマヒロの真正面の椅子に座るように促されてレベリオは腰を下ろす。マヒロも先ほどまで座っていた椅子に腰を下ろし、読んでいた本を傍らに置いた。分厚い本の表紙には「術式紋の分解と構成」というタイトルが踊っている
 ウィルフレッドや弟のアルトゥロの言う通り、彼は随分と優秀な頭脳を持っているようだ。

「それで、私に頼みたいこととは?」

 マヒロが首を傾げた。黒い髪が、さらりと揺れる。
 レベリオは、失礼、と断ってから、呪文を唱えるが水のヴェールは発動しない。十八番とも言える魔法が発動しなかったのは初めてだ。

「ああ、すみません。この部屋は私と一路以外の人間は魔法が使えない様になっているんです。それに覗き見や盗聴の心配は一切ないのでご安心を」

 レベリオは早速「だってマヒロだから」という呪文を唱えて、失礼しました、と口にして、咳払いを一つした。
 レベリオは、実は、という言葉を皮切りにシェーマスの帰還が齎した情報をマヒロに伝えた。マヒロは感情が一切読み取れない無表情だったが、敵の頭と思われる黒いローブの女の部分だけは微かに形の良い眉を動かした。

「……つまり、領主様の危機だと」

「はい。様子の可笑しいアンデットが領主様を襲っているというのです。その筆頭に黒いローブの女が……それで団長閣下より、マヒロ様に領主様の分の魔石を頂けないかと……出来れば、これにも魔力を分けて頂けると有難いとのことです」

 レベリオは、ウィルフレッドから預かった魔石を二つ取り出した。一つはリックが持っていた物、もう一つはウィルフレッドのものだ。マヒロは、テーブルの上に置かれたそれに手を伸ばして摘み上げた。
 透明な石の中で金色の光が淡く揺れている。

「半分になっていますね」

「シェーマスの命を救った分です」

 マヒロは、その返しに、そうですかと頷くと二つの魔石を手のひらの上に乗せて握り込んだ。次に開かれた時、そこには美しく優しい金に輝く光をたっぷりと閉じ込めた魔石が転がっていた。どうぞ、と差し出されたそれをレベリオは、慌てて受け取る。持った瞬間に分かるのは、まるで焚火に手を翳すかのように温かいということだ。それにこれほどの濃密な魔力をレベリオは、初めて目にした。
 真面目で誠実な若い騎士は、この光に囚われてしまったのか、と納得すらした。

「閣下がどのように考えておいではかは、分かりませんが……領主様を襲ったのは、もしかしたらクルィークの手の者かも知れません。そう考えたのなら、私を頼るのは不思議なことではありません」

 そう言いながら、マヒロはもう一つ、どこからともなく同じように光の力が込められた魔石を取り出して机の上を滑らせた。

「領主様の分です」

「お、お体は大丈夫ですか? こんなに魔力を……」

「朝飯を食べれば戻りますのでご心配なく」

 ウィルフレッドが頭を抱える訳だ、とレベリオはある種、感心しながらも有難く領主の分の魔石を受け取った。

「クルィークの手の者なら、話は早いんです。あの得体の知れんザラームとかいう男が使う力は、私や一路神父の光の力を嫌います。そこで、」

 マヒロはそこで言葉を切って、どこからともなくワインボトル程のガラス瓶を取り出した。暗闇の中で本当に薄っすらと淡く金の光を帯びた水が中に入っている。

「これは?」

「聖水です。俺の光の治癒の魔力を付加してあります」

 レベリオは言葉に詰まって沈黙する形になってしまったが、マヒロはまったく気にした様子もなくマイペースにもう一瓶、同じものを取り出した。
 聖水なんて王都の教会が目玉も飛び出るような法外な値段で売っているインチキ商品しか目にしたことは無いが、明らかにこれは違う。考えるよりも先に「本物」だと瓶から溢れる魔力によってひしひしと伝わって来る。

「飲めば多少の擦り傷切り傷は治るでしょうし、死にかけが重傷くらいには回復すると思います。序でに魔力回復も見込めます。ティースプーン一杯が基本です。死にそうな人には、三杯です」

 大雑把な説明をしながらマヒロは更にもう一本取り出して、レベリオの方に押し出した。

「確認ですが、弓の名手と言われる様な方は、向こう、或は、救援部隊にはいますか?」

「居ます。領主様の腕前は王国でも三本の指に入るほどです」

「そうですか。なら、これも」

 そう言って、マヒロは、何の変哲もない細長い木箱をテーブルの上に乗せた。

「これは?」

「ナルキーサス殿から話を聞いてすぐに、一路神父を叩き起こして作ってもらった矢です」

「矢?」

「イチロ神父も故郷では名の知れた弓の名手なのです。これをその得体の知れない敵の頭に向けて射れば、例え、当たらずとも事態は好転すると思います。使い方は普通の矢と同じですのでご安心ください」

 マヒロは、淡々と告げて淡く微笑んだ。
 レベリオは、こんなにも美しく、完璧な微笑みを見たことが無かった。完璧すぎると恐れを感じるのだということも初めて知った。暫し、その微笑みに囚われていたレベリオだったが、蝋燭の炎が揺らいだ瞬間に我を取り戻して慌てて立ち上がる。出発まで時間が無いことを思い出したのだ。
 レベリオは、マヒロから託された聖水とその矢の入った木箱を慎重にアイテムボックスの中にしまい、魔石は胸ポケットにしまった。

「大変、申し訳ないのですが……もう行かなくてはなりません」

「気になさらず」

 マヒロも立ち上がって、燭台を手にしているところを見るとレベリオを見送ってくれるらしい。
 エントランスから外へ出れば、リックが振り返る。

「……あ、シェーマスは、どうしていますか?」

 レベリオはリックから手綱を受け取りながら、マヒロを振り返る。

「ぐっすりと眠っていますよ」

「そう、ですか……神父殿には色々とお世話になりっぱなしですが、どうか引き続き、宜しくお願い致します」

「皆様のご武運と領主様の無事をお祈りしています。クラージュ騎士団に祝福の風が吹きますように」

 不思議な形のロザリオを掲げてマヒロが祈りを呉れた。雨を孕んだ風が優しくそよいだような気がして、それだけで身が引き締まったような想いがした。レベリオは背筋を正し、騎士の礼を取る。

「マヒロ神父殿、本当にありがとうございました。このお礼は後日必ず」

「……ええ、きっと私の望むものが得られるであろうと信じています」

 そう意味深に言って、年若い神父は悪戯をする子どものように切れ長の双眸を僅かに細めた。団長は、とんでも無いところに借りを作ってしまったものだ、と思いながらもレベリオは、愛想笑いを返して馬に跨った。

「ああ、そうだ。レベリオ殿」

「はい」

「どこかでエドワードを見ませんでしたか? 夕方、リックと治療院で別れたきり戻っていないんです」

「エドワード騎士は除籍されてしまったので、騎士団内には入れない筈ですが」

「そうですか。引き留めてしまってすみません、お気をつけて」

「いえ、それでは行ってまいります」

 レベリオはマヒロに頭を下げて顔を上げて、馬の腹を蹴り大きな屋敷を後にしたのだった。








「それで? 人を叩き起しておいて恩は売れたの?」

 エントランスの真正面、階段の手すりに肘を付いて一路が欠伸交じりに問いかけて来る。真尋は、燭台を手に階段へと向かい、彼を見上げる。

「え、イチロさん、いつからそこに?」

「ずっといたよ」

 リックが驚いたように真尋を振り返る。真尋は、くくっと笑って青年の頭を撫でた。
一路は真尋が隠蔽を掛けてずっと階段に居たのだ。レベリオが気付くかどうか試したが、レベリオは最後まで気付かなかった。結果としては上々だ。

「それは最終的な結果を見て見ないと分からんが……恩は兎も角、あの騎士を救えたのは幸いだ」

 真尋の言葉に一路は、そうだね、と優しく笑ってくれた。真尋は止まっていた足を動かし、階段をゆったりと登って行く。

「エディは本当にどこに行ったんでしょう?」

「明日も探しに行こう。ミアの次は今度はエドワード探しだ」

 リックが「すみません」と申し訳なさそうに眉を下げた。真尋は気にするな、と青年の肩を叩く。

「ところで真尋くん、昨夜は寝たの? 夜中になんかしてたでしょ」

「……寝た、少し」

「なら、今日はせめて日の出までは寝なよ。そうしないと僕はエドワードさんを捜索に行く君を無理矢理ベッドに縛り付けて、子どもたちを上に乗せて逃亡を阻止しなきゃならなくなるよ」

 琥珀に緑の混じる瞳が剣呑にこちらを見下ろすのに、真尋は暫し抵抗したがこうなると彼は譲らない。それにその言葉は、真尋の身を案じてくれているからこそだ。真尋は、早々に自身の負けを認めて、分かった、と頷いたのだった。




――――――――――
ここまで読んで下さって、ありがとうございました!
いつも感想、閲覧、お気に入り登録に励まされて、元気を頂いております!本当にありがとございます!

ハラハラドキドキな展開になっていく予定です(予定)

次のお話も楽しんで頂ければ幸いです。
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