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本編

第七話 魔法を使った男

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『魔法と魔力について
 魔法とは、自身の魔力を具現化させ何らかの現象をおこすことです。
 呪文と呼ばれる文言を用いて、それに魔力をのせることで魔法は発動できますが何より大切なのは、想像力です!
 お二人のスキル「魔法創造」はレアスキルの一つで、二つ以上の属性を同時に発動できるスキルですので、是非、ご利用くださいね!

魔力
 魔力とは、アーテル王国に息づく命全てがその身に宿している力のことです。その強さや容量などは、個人差があります。レベルが上がることで容量は大きくなっていきます。
 ステータスでMPというのは、魔力の容量を示していて、これが0になると意識不明になり、下手をすると死に至る場合もあるのでくれぐれもお気を付けください。
 基本的にMPやHPは、ご飯を食べて、良く眠れば勝手に回復します。回復を急ぐ場合は、回復薬などを服用することで早期回復も可能です。

属性
 生まれ落ちた瞬間に精霊の祝福により与えられるものです。最低一つは必ず与えられます。
 地、水、火、風、光、闇の六つの属性があり、レベルを上げることで地ならば木、水ならば氷などの副属性が扱えるようにもなります。
 属性が後天的に増えることも、あるにはありますが精霊に気に入られるという条件ですので、寧ろ増えたら奇跡といえるでしょう。
 水=火>風>地=光>闇の順で、闇属性はあまり多くはありません。光属性は治癒が基本ですので、光属性保持者は光を含めて二つ以上の属性を持っていることが多いです。

属性魔法レベル
 属性魔法のレベルは、基本的に上限30です。
 日々、魔法を使って努力をすればレベルは上がって行きます

とっても大事なこと!
 真尋様と一路様は、ともに光の属性をお持ちです。ステータスを確認して頂ければわかると思いますが、光のところに+の表記があると思います。
 これは、精霊の祝福により与えられた光属性ではなく、神の力により分け与えられた光属性という意味をもっています。
 精霊の祝福による光の副属性は治癒ですが、お二人の光+の副属性は治癒と浄化になっています。
 これは嘗て、私がインサニアやバーサーカー化した魔獣を滅するために選び抜いた人々に与えていた力でもあります』

「……浄化の力って本当に神父みたいだねぇ」

「これを書き忘れなかったことを褒めるべきか、これについてだけでも口頭で説明をしなかったことを叱るべきか」

 真尋は、トントンと指先で「とっても大事なこと!」の部分を叩いた。
 レベル云々の辺りまでは、ティーンクトゥスのくれた知識で知っていたが、この部分だけは初めて知った。何でもないことのように書かれているが、インサニアというものは恐らく人々にとって脅威であったはずだ。それを浄化するなり滅するなりした人々は、後世に名を語り継がれるほどの功績を残しているに違いないのだ。神に選ばれるとは、尋常なことではない。聖人や聖女なんて呼ばれていてもおかしくない。

「月時雨と風花は、対インサニアないし対バーサーカー化した魔獣というのが正しい用途なんだろうな」

「やっぱり、どこかで普段用は調達しないとね」

 やることリストはだんだんと長くなっていく。後でどれを優先していくかを考えなければならない。
 次のページを捲れば、属性ごとの呪文が書かれていた。パラパラとページをめくるが延々と呪文の表記が続いていた。消費MPや、発動に必要とされるレベルなども書かれていた。

「一路、本を開いてある程度の呪文を頭に入れろ。その後、外で練習しよう」

「りょーかい。魔法使いになれるなんて、凄いなぁ。でも、呪文はこれアーテル語で書いてあるのかな? アルファベットに似てるけど少しずつ違うね」

 一路が頷いて、自分のそれを取り出して開くと、呪文の部分を指先で辿りながら言った。
 アルファベットに形状は似ているが、少しずつ一路の言う通り違っている。けれど、頭の中に無かった筈の言語をしっかりと理解し、発音も出来ることからティーンクトゥスがくれた知識はちゃんと役に立っている様だった。
 それから一時間ほどして、あらかた頭に詰め込んだ真尋は一路と共に外に出る。腕時計に視線を落とす。この腕時計はこの世界に対応するようにティーンクトゥスに改造させたのだが、時刻はまだ昼を少しすぎたくらいだ。
 爽やかな風が二人の間を遊ぶように吹き抜けていく。水と緑の匂いが濃く風に沁み込んでいて、胸いっぱいに吸い込むととても心地が良い。風が通り抜ければ湖面にさざ波が広がり、森の木々が葉を揺らす音が世界をそっと包み込む。

「……本当に綺麗な所だよねぇ」

「ああ」

 一路が湖面に反射する太陽の煌めきに目を細めた。真尋は手で庇を作って空を見上げた。青い空の遠く高い所を鳥が飛んでいる。大きいのか小さいのかここからでは分からない。
 この森がそうなのか、この世界全体がそうなのかは知る由もないが、緑の気配や自然そのものが持つ空気がとても濃い。

「ねえ、真尋くん。なんか体が軽い気がしない?」

 一路がぴょんぴょんとその場で跳ねながら言った。

「多分、あいつが作った体だから、身体能力が全体的に上がっているんじゃないか?」

 真尋も確かに自分の体が軽くなっていることを感じて、そう告げれば一路は成程ねぇ、と頷いた。もしかしたら、重力とか引力も違うのかもね、と言う言葉に真尋は「かもな」と返す。

「僕は水と光の系統を主に使って行こうと思うんだよね。地と風は隠しておこうと思う。光は別の属性と一緒に与えられることが多いものみたいだから不自然ではないと思うんだ」

 一路が言った。真尋は黙ってその先を促す。

「水は割と便利そうだし、光は治癒魔法が使える。やっぱり聖職者として、そういうのが使える方が信憑性がありそうじゃない?」

「一理あるな。俺も光はステータスに残そう。それ以外では……どうしようか悩んでいる」

「そもそも、真尋くんは幾つ残そうと思ってるの?」

「二つか三つで迷っている」

「でもある程度、目立った方が情報とかは入って来ると思うよ? 良くも悪くもね」

「そうは思ったんだが、どういう訳か俺の頭にもお前の頭にもこのステータスの平均値に関する常識が入っていない。取説を読んだところで俺達が出せるのはあくまで試算だ。安易に三つにして、もし三つの属性持ちが国で保護されるレベルの珍しさでは困る。初期段階で無駄に国や役人に目を付けられたくない。それで王都の教会に話がいっても鬱陶しいからな」

 あー、と一路が苦笑交じりに頷いた。
 二人に与えられた使命の性質上、どうやっても目立つことは避けられないだろう。ティーンクトゥスが見せてくれたあの教会の様子や千年以上も前から信仰が失われ始めていたことからそもそも神父という存在そのものが稀有だろうと推測出来る。その上、王都では教会と銘打ち、神父と名乗る者が暴利を貪っているのだ。下手をすれば、敬遠されかねない。
 だからこそ最初から無駄に目立つことだけは回避したいのだ。最終的には潰さねばならないであろう相手は随分と脂肪を蓄えているだろう古狸である。無駄に警戒されたくもないし、目の敵にもされたくない。神の加護やら常識外れのステータスがあったとしても、真尋と一路には、この国に何の地盤も伝手も無いのだ。才能や能力だけでは、権力に対してはどうにもならないのが現実だ。

「なら、二つでいこうよ」

 一路が言った。

「なら俺は光と……そうだな、風にしよう。水と風はお互いに持っているから、どちらかが使ったとしても誤魔化せる。だから暫くあの携帯食料とやらが尽きるまではここに居て、ある程度他の属性魔法に慣れておこう。いざという時、使えるように」

「賛成。ついでにスキルのレベルも上げられるものは上げておこうよ。僕、スキルは鑑定と弓術、調合を残すよ。スキルだけは多少、多くてもいいと思うんだよね」

「ああ。スキルは、努力さえすれば取れるものらしいからな。俺は剣術・体術・探索を残す」

「探索はレベル上げしていて損はなさそうだよね。ねぇ、ところで真尋くん。僕、思ったんだけど町に行ったら冒険者になるのもありだと思わない?」

「理由は?」

「生活の基盤を作る点において、冒険者は便利そうだから」

 きっぱりと言い切って、一路が笑う。

「神父だけじゃ多分、食べていけないし、安易にティーンさんからくれたお金を頼りにしていたら出所と疑われて痛くもない腹を探られるでしょ? アーテル王国には騎士なんかもいるみたいだけど、騎士は間違いなく国が関わって来るし、その他、商売を始めるのはこの世界に疎い僕らではあまりに不利だしね。軌道に乗ったとしても将来、それで食べて行くわけじゃないし。それに多分、神父と神父見習いっていう職業は、受け入れてもらうには時間が必要だと思うんだよ。信頼は一夜にしては作れないからね。だったら手っ取り早く、冒険者としての信頼を作り上げて、それに伴い、教会としての知名度も上げて行くのが一番じゃない?その都度、お金も稼げるし」

 真尋は、吊り上がる口端をそのままに、一路の淡い茶色の髪をくしゃくしゃと撫でた。

「模範解答だ。流石は俺の親友だ」

「わーい、褒められたぁ」

 一路が、嬉しそうに笑う。彼のこの素直な点は、彼の美点の一つだと思う。

「じゃあ早速、魔法の練習しようよ」

「そうだな。時間は有意義に使おう」

「真尋くん、ある程度使えそうだから先に僕の練習に付き合ってよ」

「ああ。分かった。まずは魔力を扱うことの練習をしよう」

 そう言って真尋は、右の手のひらの上に水の玉を作り出す。通称をウォーターボール。水属性魔法の初歩の初歩の魔法だ。
 真尋はそのボールを手のひらから指先、手の甲へと移動させ、再び指先へと運ぶ。そこで魔力を流し込む量を変えて、大きくしてみたり、小さくしてみたりする。
 その様子に一路が驚いたように目を瞬かせた。
 テントの中で彼が真剣に本を読み込み暗記している横で真尋はこれの練習をしていたのだが、集中していた彼は息づいて居なかったようだ。

「……ところで真尋くん、呪文は?」

「想像力だ一路」

「答えになってないけど……真尋くんだしね、うん」

「戦いにおいて、相手に掌中知られないのは有利だから。一路も呪文無しである程度使えるように練習するんだぞ」

「そっか……でも、真尋くん、呪文があるってことは多分、呪文を唱えることが普通だと思うんだ。ゲームとか漫画で無詠唱っていうとよく特別視されているから。だから普段は、ちゃんと呪文を唱えるんだよ、分かった?」

「そういうものか?」

 もう片方にファイアボールを出して操りながら首を傾げれば、一路は呆れたように笑いながら「そういうものだよ」と頷いた。

「なら、気を付けよう。ほら、一路もやってみろ。最初は呪文を唱えるといい。言葉は所謂、魔力を流すのに必要な切っ掛けなんだ」

 真尋が促せば、一路は手のひらを上にして構える。

「≪ウォーターボール≫」

 一路の手の平の上にウォーターボールが現れる。一路が慎重にそれを動かすが、手の甲に移動させようとして、足元に転がる。一路が「あっ」と反射的に声を漏らして手を伸ばすが、足元に転がったそれはすぐに形を失い、草を濡らした。

「案外、難しいかも。魔力を継続させなきゃボールとして形が崩れちゃう」

「魔力は目に見えないから、それこそあの馬鹿の言う通り、想像力が必要なんだと思う。まだ水や火は目に見える分、扱いやすいが風はなかなか難しかった。両手に同時に発現させても、両方を集中して維持するのは案外、根気がいる」

「課題は山積みだけど、頑張るしかないね」

 そう言って、一路は再びウォーターボールを手のひらの上に出して練習をする。真尋もその横で二つのボールを同時に操る練習を重ねる。
 そうして二人は暫く練習を続け、結果、一路も水と地は呪文無しでボールを出せるようになり扱いも難なくこなせるようになった。風はまだ呪文無しは安定しないが、練習をすれば数日の内には扱えるようになるだろう。真尋は、光と闇のボールを出してみたが、光は兎も角、闇は風よりもずっと扱いが難しかった。

「MPはそんなに減って無いから、もう少し大丈夫そうだね」

 ステータスを開いて確認しながら一路が言った。

「何がしたいんだ?」

 真尋が尋ねれば、一路はにこりと笑ってアイテムボックスからそれを取り出した。

「やっぱり、一度は引いてみたい」

 そう言って一路は、宝弓・風花を取り出した。

「見事だな」

 思わず真尋が零した言葉に、それに見惚れていた一路も頷いた。
 宝の弓、というだけあってそれは実に美しい。
 和弓、と一般的に呼ばれる形で一路が最も慣れ親しんでいる弓の形だ。和弓は全長だけ見れば世界最大の弓でもある。和弓は七尺八寸(約二二一センチ)あり、下から三分の一くらいの部分に矢をつがえて射る。
 飴色の弓は、繊細な草花の彫刻が施されている。世界樹がどういうものかは本当の意味では分からないが、おそらく途轍もなく貴重で厳かな力のある素材に違いなく、その美しい彫刻にも意味があるのだろう。
 一路は、離れた所に生えている木に狙いを定めたのか、そちらへと体を向ける。真尋は邪魔にならない様に数歩下がって見学することにした。

「自分の魔力が矢になるんだよね」

 そう言って一路が弓を構えた。目を閉じて精神を統一させるとゆっくりと瞼を開く。

「≪ウォーターアロー≫」

 一路が呪文を口にすると彼の右手に水の矢が現れる。それを一路は弓に番えると弦を耳の後ろまで引き、そして、木に向かって矢を放つ。
 パンッと子気味良い音がして、水の矢は木に刺さり、三秒ほど形を保った後、ぴしゃりと崩れて消えた。真尋は、木の方へと歩いて行く。一路が後にくっついて来た。

「凄いな。かなり深くまで刺さっている」

 水の矢が刺さった木の幹には、直径一センチほどの穴が開いている。その辺に生えていた草をちぎって、中に入れてみるが二十センチ以上は深く突き刺さっていたのが分かった。

「和弓は、世界的に見ても優れた弓で威力もかなりのものだからねぇ。僕にも使いこなせそうで良かったよ」

 あははは、と一路は暢気に笑いながらステータスを開き、再びMPの減り具合を確認している。やはり自覚は無い様だ。これは真尋の想像でしかないが、神が下賜したこの弓は、多分、誰にでも使える訳ではないはずだ。

「真尋くんも使ってみる? 真尋くんも出来るでしょ?」

「……お前程じゃないが、やってみるか」

 果たして使いこなせるだろうか、と真尋は首を傾げながらも弓を受け取る。真尋も時折、弓道部で弓に触れていたので基本的なことが出来る。
 ふと、ここでこれを使いこなせないとなれば、一路の自信に繋がるのではと思いながら真尋は適当な木に向けて弓を構えた。構えると分かるのは、この弓は魔力を流すための道筋が出来ているということだ。

「≪ファイアアロー≫」

 炎の矢をつがえて、弦を大きく引いた。シュッと風を切る音がして矢が勢い良く飛んでいき、矢は勢いよく幹に突き刺さった。水の矢と同じように数秒形を保った後、それはふわりと解けるように消えた。

「流石、真尋くん、上手だねぇ。でも、もうちょっと肩の力を抜いて、もう少し構えを下げると良いよ」

 自分の才能が憎い。と真尋は思いながら宝弓・風花を一路に返した。世の中のこととはやはりそう簡単には旨くいかないものだ。一路は、これ凄くなじんで使いやすいよ。と言いながら弦を引いたり、構えたりしている。

「でもやっぱり冒険者としてクエストをこなす上では使えそうにないから。町に行ったら、普段用の弓を買うよ。でもこの森に居る間は、これで練習するね」

「ああ。それがいいだろうな」

 真尋は、頷いて一路の頭をくしゃくしゃと撫でる。一路が、どうしたの?と首を傾げるのに何でもないと返して、自分のリストを開く。

「あ、真尋くんも宝刀があるんだ! 月時雨とか格好いい名前だねぇ」

 自分の弓をしまった一路が言った。

「MPの減りはどうだった?」

「ウォーター・アローは初歩の魔法だから連射しても問題ないレベルかな。あの威力だから、その辺の魔獣を倒すには十分だと思うよ。そうは行っても魔獣が如何ほどの生物かが分からないから、一概にそう言い切って良いかは分からないけどね」

 真尋は、成程、と頷く。

「だが、バーサーカー化した魔獣相手では、今の威力では厳しいんじゃないか?」

「この弓自体にも邪気を払う力はあるらしいけど、多分、光魔法系統の矢を番えないと意味がないかもね」

 一路がそう言って肩を竦めた。
 インサニアに触れた魔獣はバーサーカー化し自我を失い狂暴化する。ティーンクトゥスがそう言っていた。
 このインサニアやバーサーカー化について真尋たちは、もっと知識を深めなければならないだろう。あの取説に少しでも書いてあればいいが、と真尋は思った。
 
「なら、あいつが寄越した武器に関しては対バーサーカーに備えよう」

「賛成。ねえねえ、早く真尋くんの宝刀も見せてよ」

 一路が真尋の服の袖を引っ張る。真尋は、ああ、と頷いて宝刀・月時雨をアイテムボックスから取り出した。
 思わず、ほう、と感嘆の息が漏れる程に美しい刀だった。
 鞘は海のように鮮やかな蒼で銀色の細工で水紋が優雅に描かれている。柄は黒で鍔は月の意匠が施されていた。
 真尋は目の前に刀を構え、鞘から抜き取る。
 刀身は青白い光を放ち輝いている。刀身に浮かぶ波紋は緩やかで穏やかだ。だがこれまで真尋が見て来た日本刀がどれも霞んで見えるほど恐ろしいくらいに美しい刀だった。
 曇り一つ無い刀身に自分の顔が映り、本当に瞳の色が変わっていることに気が付いた。銀色に青が滲む瞳の色は、自分のものでは無い筈なのに、どういう訳か違和感を抱かない。身の内に宿す魔力の色だからか、それともティーンクトゥスが作った体に生まれ変わったからだろうか。

「綺麗な刀だねぇ」

 一路がため息交じりに言った。

「オリハルコンとミスリルの合金製らしいぞ。それが何かは良く知らないが」

 真尋は鞘を一路に渡して、刀を構える。
 驚くほど手に馴染む。今、この手にしたばかりだというのに、まるで何十年もこの手に有ったかのようにしっくりと馴染むのだ。そして、あの宝弓と同じように魔力を流すための構造になっているのが分かる。だが、あの弓よりもかなりの魔力を流せるようになっている。それは、これが真尋のものだからだろう。あの弓も真尋より一路の方が流せる魔力の容量は大きいのだと思う。
 真尋は、地を蹴り一番手短にあった木に向けて駆け出し、そして横に一閃する。
 軽すぎる手応えを掌が感じた次の瞬間、目の前の木がぐらりと揺れて倒れて来る。真尋はそれを後ろに飛びのくことで避けた。ドンと大きな音が響いて木が倒れた。木の上にいたらしい鳥が騒がしく鳴いて慌ててどこかに逃げていく。

「凄いけど、いきなりは止めてよ!」

 一路が驚きに悲鳴を上げるのに軽くすまないと返して、真尋は倒れた木の切り口を確認する。
 その切り口は、やすりでも掛けたかのように滑らかだ。魔力など欠片も込めていないというのにこの結果である。
 改めて刀を見る。

「これは、かなり気を付けて使わないとな……おそらく、本当に簡単にこの刀は世界を血で染めることが出来るほどの力を秘めている」

 手の中の宝刀に恐怖が湧いた。大きすぎる力が手の中にあるのが分かる。この恐怖を忘れた時、真尋は狂ってしまうのではないか、とさえ思った。生まれて初めて感じる類の恐怖だ。

「真尋くんなら使いこなせるよ」

 一路が言った。振り返れば、彼はいつも通りにこにこ笑っている。

「だって真尋くんだし」

 その言葉には信頼しかない。疑いの欠片が一つもない。
 きっと一路は、その全幅の信頼が今この瞬間、真尋の心をどれだけ救ったかなんて分かっていないのだろう。

「……一路が一緒で良かったよ」

 真尋はふっと笑いながら、そう告げて彼から鞘を受け取り、刀を鞘に戻す。

「僕も真尋くんと一緒で良かったよ。一人だったらなんて考えたくもないもん」

 心の底から安心したように笑う親友に真尋は、なら良かったと返して刀をアイテムボックスにしまった。

「そういえば、お前、鑑定とかいうスキルを持ってたな。どういうものだ?」

「鑑定は、アイテムのステータスが見られるって言うのが正しいかな。例えば……」

 一路は、辺りをきょろきょろと見回すと水際に生えていた白い花の咲いた草を手に取った。

「≪鑑定≫」

 一路がそう告げて花を見る。真尋には何も見えないが、一路には何かが見えているらしい。暫くして、一路が顔を上げる。

「これは、アイランソウ。この湖周辺にしか生えない植物で夏になるとこの白い可憐な花を咲かせるんだって。何かの薬の材料にもなるらしいから、採取しておくと役に立つかも。アイテムボックスに入れておけば、劣化しないし」

「成程。お前には調合のスキルがあるから、薬を作る時に役立つということだな」

「多分ね。調合のスキルはやってみないと分からないから、これが何の薬の役に立つかはまだ分からない。もしかしたら鑑定もある程度レベルが上がると精度も上がってもっと細かい所まで分かるのかも」

「そういうことか。それで商人に適したスキルということなんだな」

「鑑定もスキルレベルを上げておいて損はないね。ねえ、真尋くんも探索のスキルはあるよね?」

「ああ。あの取説が正しければ、探索は所謂レーダー探知機らしい。魔力をベールのように薄く広げて辺りに広げることで、その魔力に別の魔力がぶつかれはそこに何かいるということなんだろう」

 魔力のコントロールに関する項目に探索のことが少しばかり書かれていたのだ。練習にはうってつけ、というティーンクトゥスの一押しスキルらしい。

「魚群探知機みたいだね」

 一路の言葉に確かに、と頷いて返す。だが、認識的には魚群探知機で合っているのだろうと思う。もっとも精度が如何ほどのものかは使って見なければ分からないが。

「一緒に使ってみよう。その方が分かりやすい」

「そうだね。確か探索のレベルは一緒だよね」

「ああ。やるぞ……《探索》」

「《探索》!」

 真尋は、自身の魔力を薄く薄く広げていく。隣から溢れる一路の魔力を感じ取った。だがおよそ五百メートルほど広げたところで別の何かがいることに気が付いた。

「僕らの真正面」

「ああ。五百メートル先だ。こちらに向かっているな」

「数は……五かな。何だろ、人かな?」

 不安そうに緑がかった琥珀色の瞳が真尋を見上げる。

「いや……人にしては移動速度が速すぎるんじゃないか?」

「でも、魔法とかあるんだよ? ……あ! 形が分かって来たかも!」

 一路が言った。真尋が薄く延ばし続けている魔力にもその形が浮き彫りになる。どうやら今のレベルだと百メートルくらいに近付くとものの形が分かるらしい。

「……この形は、犬……森の中だから狼、か?」

「でも、核があるのを感じる。魔獣……この距離ならいけるかな? 《鑑定》!」

 一路が鑑定のスキルを発動させる。

「ゲイルウルフっていう狼の魔獣だよ。魔獣のランクはBに分類されてて、風を操る魔獣だって!」

 一路が、これだ、と言わんばかりに答えを出すと同時に森の中からそれが飛び出してきた。一路が慌てて真尋の背後に隠れる。
 獰猛な唸り声が静かだった湖畔に響き渡る。

「大きいな」

 それが真尋の率直な感想だった。

「相変わらず冷静だね!」

 一路が蒼い顔で叫ぶ。
 森から飛び出してきたのは、三十センチはあろうかという牙を持った大きな狼だった。どうやらこれがゲイルウルフと言うらしい。仔牛ほどもある狼は、濃い灰色の毛に覆われていて、鋭い爪まで持っていた。

「一路、これも魔法の練習だ。一匹で良いから倒してみろ。四匹は俺が引き受ける」

「え! 嘘! ひゃぁぁああ!」

 真尋は心を鬼にして、一路の襟首を掴んで放り投げた。都合よく一匹だけ一路を追いかけていく。

「真尋くんの鬼ぃぃぃい!」

 そう言いながら、一路は猫のようにしなやかに地面に着地して狼から距離を取るように駆けだした。大丈夫そうだな、と真尋は、自分に向かって唸り声をあげる四匹のゲイルウルフに向き直り、手を翳す。

「《アイスアロー》!」

 手のひらの上に氷の矢が現れ、それを先頭にいた一匹の額めがけて投げつける。見事に命中した矢はゲイルウルフの頭蓋を砕き、ゲイルウルフは絶命する。仲間が倒れると同時に三匹が一斉に襲い掛かって来る。真尋は、思い切り地面をけり上げた。
 真尋が立っていた場所にゲイルウルフの放った風の刃が交差しながら飛んでいった。

「お?」

 流石の真尋も驚くほど地上から優に四メートルは飛び上がることが出来た。やはり体が軽くなっているし、地球より重力が掛かっていないのかもしれない。一路を投げた時にも思ったが、真尋自身の筋力も増しているようだ。
 そんなことを考えながら足元にいた一匹の上に着地し、飛び掛かって来た一匹の顎を思いっきり蹴り上げる。キャン、と甲高い悲鳴が上がりもう一匹が怯んだところに氷の矢を放つ。踏み台にしたゲイルウルフの隣に着地し、その首筋にかかとを落とせば骨の砕ける音がしてゲイルウルフは呆気無く絶命する。

「《ウィンドカッター》」

 先ほど顎を蹴り上げたゲイルウルフが血を吐きながら飛び掛かって来る。風の刃を投げつければ、その首がスパンと跳ねられ、ごろりと落ちる。血を被るのは嫌だったので思いっきり後ろへと飛びのいた。辺りに鉄臭い臭いが充満する。

「案外、呆気ないな……一、大丈夫か?」

「真尋くんの馬鹿! 鬼! 悪魔!」

 振り返った先で一路がぷんすか怒っている。だが彼の足元には水の矢で射抜かれたらしいゲイルウルフが転がっていて、一路はそれの尻尾をむんずと掴むとずるずるとそれを引きずって此方にやって来る。真尋だけではなく一路の筋力も増しているようだ。でなければ、こんな大きなものを引きずっては来られない。

「親友をいきなりぶん投げるなんて!」

「お前なら出来ると思ったからやったまでだ」

 真尋は、そう返してゲイルウルフを見下ろす。一路がまだ何か喚いているが聞こえないふりをする。一番、手近なところにいた骨を砕いたゲイルウルフの傍にしゃがみこむ。
 ティーンクトゥスが魔獣は解体して素材を得るのも冒険者だと言っていたのを思い出す。ということはゲイルウルフも解体すれば素材を得られるのだろう。

「……ゲイルウルフの素材は、毛皮と牙と核だよ」

 どうやら再び鑑定をしたらしい一路がむすっとした顔で言った。

「成程。肉は?」

「不味くて食えないって」

「解体するか?」

「絶対に嫌だよ!」

 一路が蒼い顔で首を横に振って拒絶する。その顔には「絶対に嫌だ!」という強い意思が浮かんでいる。

「なら俺がするか」

「出来るの?」

「爺さんに猪と熊と鹿の解体は教わっているからな。出来るだろう」

 真尋はアイテムボックスからミスリル製のナイフを取り出す。素材を剥いだりするには確かに丁度良い大きさのナイフだった。間違っても服が汚れない様に水のベールを作ってエプロン代わりにしてから、ゲイルウルフを解体していく。一路は、ひゃぁぁあ、とかひぃぃぃいとか騒ぎながら耐えきれなくなったのか、腹を開いて心臓を取り出したところでテントの中に逃げ込んだ。
 一方の真尋は、魔獣と言えど、心臓やら肝臓やら地球上の生物と中身が変わらないことに感心しながら、五匹のゲイルウルフを恙なく解体していった。
 光系統の魔法である《クリーン》を使って、毛皮を綺麗にして牙と出て来た核と一緒にアイテムボックスにしまっておく。残った肉や骨も何かに使えるかもしれないとアイテムボックスにしまった。内臓だけは湖に放り投げてみた。すぐにバシャバシャと水しぶきが上がったので、落ちた時に見たあの黄色と紫の奇怪な魚は、肉食だったらしい。地球で言う所のピラニアみたいなものだろうか。

「……なんでそれをボックスにしまえるの?」

 青い顔をした一路がテントから顔だけ出している。

「何かに使えるかもしれないじゃないか。勿体ない精神は世界に誇る日本の心だ」

「何か違う気がする……」

 一路が顔をしかめる。真尋は、エプロン代わりにしていた水のベールを消して、隠蔽のスキルで血の跡や臭いを消した。

「一路、他に何かいるか?」

「んー、今の所、二キロ圏内には居ないよ」

 一路が答えるのに、そうか、と頷いて真尋もテントに戻る。中に入って、クッションの上に腰を下ろした。

「ステータスは確認してみたけど、スキルと魔法のレベルは上がってたけど全体のレベルは変わって無かった。MPの減りはまだ余裕があるし」

 一路がごろんと後ろに倒れて手足を投げ出す。

「そうか。元々のレベルが高いからなゲイルウルフじゃ経験値不足ということだろ」

 真尋は再び取扱説明書を出してパラパラとページをめくる。今さっき使った魔法は、どれもこれも初級のものだ。初級でこの威力だとするなら、中級、そして、上級はどれほどの威力になるのだろうか。それともあの馬鹿がさじ加減を間違えているせいで、真尋と一路の初級は普通の範囲外の威力なのかもしれないと思ったのだ。そうでなければ、レベル1の魔法でゲイルウルフが倒せるなら、幼い子どもだって森に入って好き勝手に出来るということになるのだ。

「…………僕、生き物を殺したの、初めてだよ」

 沈んだ声が隣から聞こえて、目だけを向けた。一路は右腕で目を覆っていたが、その腕が微かに震えているし、やっぱり顔色が悪い。

「……一瞬、殺すことを躊躇ったら死にそうになって、無我夢中で弓を構えてウォーターアローを撃ったんだ」

 一路が倒したゲイルウルフは、額を射られたことが死因だったのだろうが、その腹にも矢を受けた痕跡があったが、腹の傷は浅くて致命傷にはなっていなかった。一路の迷いや躊躇いがそこに有った。
 生き物を殺すこと、命を奪うこと、それらは平和な日本で男子高校生をやっている時には、まず体験することのない出来事だ。精々、蚊とか蠅を殺す位の話しで、大型の生物を殺す機会など普通に生きていればまず無い。
 一路は、ゲイルウルフの命の向こうにこれから奪うことになるかもしれない別の命を見てしまったのかもしれない。

「ほんの少し前まで僕らは……ただの高校生だったのにね」

「……ああ」

「やっぱり僕もティーンさんを一発くらいは殴っておけばよかったなぁ……っ」

 少しだけ滲んだ声には気付かないふりをして、真尋は一路の腹をとんとんと叩いた。
 真尋は、ゲイルウルフの命を奪うことを一切躊躇わなかった。だが、一路は真尋よりずっと優しくて、そもそも争いを好まない温厚な性格だ。だからこそ、割り切れないものがあるのだろう。
 人より随分と優れたている筈の頭は、こんな時、何の役にも立たない。親友に掛ける言葉が見つからなくて、ただあやすようにとんとんとその腹を叩いてやることしか出来ない自分がもどかしい。
 テントの入り口が開いたままだから湖で冷えた心地よい風がテントの中に入り込んでくる。どこかで鳴いている小鳥の囀りは穏やかに風に乗ってテントの中に降る。
 森はこんなにも穏やかなのにほんの少し前、血が飛び散って、命を奪ったのだ。
 暫くして、一路は眠ってしまった。緊張の糸が解けてしまったのだろう。
 涙の痕が残る頬を見つけて、真尋は魔法で濡らしたハンカチで拭ってやり、赤くなった目元を冷やす様に濡れたハンカチを充てた。空いた手を一路の額に乗せる。

「《リラックス》」

 せめて、大切な親友が嫌な夢を見ない様にと小さく唱えた呪文は、一路の穏やかな寝息にそっと包まれ消えて行った。


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