称号は神を土下座させた男。

春志乃

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本編

第五話 生まれ変わった男

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「私ね、神様には感謝しているのよ」

 白いカーテンが風に膨らんで、点滴の細い微かに管が揺れる。

「……あら、その顔は腑に落ちていない顔ね。…………ええ、そうね。……ふふっ、まあ、あまり丈夫な体では無いわね。確かに神様を恨むこともあるわ。だって発作は苦しいんだもの…………もう、そんな顔をしないで、真尋さん」

 伸びて来た白く細い指先が、頬をそっと撫でて行く。その手を捕まえて、ぎゅうと握りしめた。
 その指先は冷たいけれど、握りしめればちゃんとぬくもりを感じられることに安堵する。

「そうね、神様は確かに少し意地悪な方かもしれないけど……でも、貴方を私にくれたわ。凄いことだと思わない? ……ふふっ、ええ、私は真尋さんのものよ、こんなこと言ってるとまた一くんにバカップルって笑われちゃうわ」

 軽やかな笑い声が心地よく耳を撫ぜる。綻ぶ花のような笑顔は、いつだってこの胸を騒がしくする。彼女が生まれた時からずっと一緒に居るのに、彼女の笑顔はいつでも何度でもこの胸を騒がせるのだ。

「…………きっとね、私はどこに居ても、どれだけ時が経っても、真尋さんが好きよ。自分でも呆れちゃうくらいに貴方を愛しているの。…………不安にさせてごめんなさい。でも、これは後ろ向きな言葉でも、悲観している訳でも遺言でも無いの……苦しくて、辛くて、このまま死んじゃうんじゃないかっていう時、私はいつも貴方を想うの。私を好きだと言ってくれる貴方を、私を愛していると笑ってくれる真尋さんを思い浮かべると、貴方に抱き締められているような気持ちになって、頑張ろうって思えるの。生きることを諦めないでいようって……そんな風に想える心をくれたことに感謝しているのよ。だから、」

 彼女は、笑う。
 花が咲き綻ぶ笑顔は世界を鮮やかに彩ってくれる。

「大丈夫よ」

 胸の奥に鼓動を感じる。息を吸えば体中に酸素が巡る。世界が急に色々なもので溢れ出した様な気さえする。

「貴方の想うままに生きて、それが私の大好きな真尋さんだもの」








「嗚呼、真尋様! お目覚めですね! 気分は如何ですか?」

 ゆっくりと目を開けば、長い前髪の隙間から覗く銀色の瞳が心配そうにこちらを覗き込んでいた。真尋はそれにゆっくりと手を伸ばす。

「近い」
 
 ぐっと力を込めてその頭を鷲掴みにして引っぺがす。

「あだだだ!」

 騒がしい悲鳴に眉を寄せながら、真尋は体を起こした。当たり前だが全裸のままだった。寝起きはそれなりに良い方だが、深く眠る習慣があまりないため流石にいつもより体が重く、頭がぼーっとする。それに少し違和感がある。自分の体だと認識しているのだが、どこか何か、今までにはないものがあるような違和感がある。
 ぐしゃぐしゃと髪を掻きながら、もう片方の手を「痛かった」とぼやきながら頭を擦るティーンクトゥスに突き出した。

「返せ」

 それだけ言えば、ティーンクトゥスは一瞬、呆けた様な顔をした後慌てて、どこからともなくそれを取り出して真尋の手の上に乗せた。冷たい感触を握りしめるように手を戻してそっと開けば、楕円形の銀色のロケットが転がっている。中を開けば、変わらず雪乃が微笑んでいた。このロケットは、雪乃とお揃いだ。縦に五センチ、横三センチほどの楕円形で、中に写真と指輪が入る様になっている。写真の反対側の上蓋を開けば、シンプルな銀の指輪がきちんと収まっていた。そのことに安心して蓋を閉じ、首に掛ける。
 魂を移す前に「失くしたら殺す」と前置きしてティーンクトゥスに預けていたものだ。

「その方は、真尋様の恋人ですか?」

「恋人って言うか嫁だねえ……」

 ふあ、と欠伸交じりの声が躊躇いがちなティーンクトゥスの問いに答えた。顔を向ければ、一路が眠そうに目を擦って体を起こしていた。どうやら彼も目覚めたようだ。彼を見て、ふと自分たちがまだ宙に浮いたままだというのに気付いた。透明なベッドのようなものだろうか。
 ティーンクトゥスが、「おはようございます」と声を掛ければ、一路は「おはよう」と答えてこちらを振り返る。

「一路、具合はどうだ?」

「んー、頭はぼーっとしてるけど、平気」

「お着替えはどうしましょう? 一応、お二人の着ていらした服は洗濯しておきましたが、別の服もご用意してありますよ」

 ティーンクトゥスが言った。

「……日本での大事な服だから持っていきたいんだけど、駄目かな?」

 一路がティーンクトゥスを見上げて言った。

「勿論、大丈夫です。では、先にこちらをお渡ししますね」

 はい、と手渡されたのは幅が一センチほどの蔦の装飾が施されたくすんだ銀色の指輪だった。繊細な蔦の装飾はとても綺麗で、中央には青い石がはめ込まれていた。
 ティーンクトゥスは一路にも同じものを渡すが、一路の指輪の石は緑色だった。

「お好きな指にはめて下さい。これは、アイテムボックスと言われるものです」

「アイテムボックス?」

 耳慣れない言葉に真尋は指先でその指輪を弄びながら首を傾げた。

「異空間収納のことです。この指輪は鍵だと思って頂ければ……ただ、私お手製なので、少々、普通とは違いますのであまり人前で使ったりばらしたりするのはお勧めできません。使い方は至って簡単で、中に入っているものを想像すれば出てきます。中身の確認や整理をしたいときは《リスト・オープン》と唱えれば、リストが出てきますので、中身の整理などにもお役立てください! 私が気合入れて作ったので無限に何でも収納できますよ!」

「中身が混ざったりはしないのか?」

「自動で振り分けられますので、大丈夫です。中に入れたものは時間が止まりますので、生ものも対応しています。あ、流石に生きてるものは入れられませんので、ご注意くださいね」

 ティーンクトゥスの説明を聞きながら、真尋は右手の中指に指輪を嵌めた。不思議とフィットする。一路は右手の小指につけることにしたようだ。

「中にそれぞれお二人の制服や身に着けていたものが入っていますので後で確認してくださいね。とりあえず、服をどうぞ」

 ティーンクトゥスがやはりどこからともなく取り出した服を受け取り、真尋は立ち上がる。シーツが足元に落ちたが気にせずに透明なベッドの上に服を広げていく。黒のトラウザーズに深い紺に近い蒼色のチュニック、トランクスに似た形の綿製のパンツだ。靴下もあった。

「真尋くん、全裸でも堂々としてるのは流石だけど、少しは羞恥心を持ったほうが良いと僕は思うよ」

 一路の呆れた様な声が聞こえたが、真尋は「男しかいないだろう」と返してそれらを検分してから身に着けて行く。少しごわごわするが着ている内に生地も柔らかくなるだろう。ズボンの長さは踝程度、チュニックは袖の長さを紐で調整できるようになっていて首元は鎖骨が見える位のスクエアネックだった。長さは膝より長かったが、ティーンクトゥスが「これをどうぞ」と渡してくれた細い革の紐を腰辺りで結んで丈の長さを調整すれば太ももの半分にかかる長さになった。
 一路の服も種類は同じだったが、一路のズボンは生成り色でチュニックは柔らかな水色だった。

「これ、女の子用?」

 一路が水色のチュニックを目の前に広げて首を傾げる。真尋は、渡されたブーツを履きながらその疑問に答える。

「昔のヨーロッパでは、庶民は男も女も基本的にはこれだった。違いは長さだ。男は腰か膝上、女は踝まである。腰のあたりを革紐で結ぶんだ」

「相変わらず物知りだねぇ」

 感心したように言って一路もチュニックを頭から被り、革紐を結んだ。

「何か異国って感じだね」

「ああ。そうだな」

 一路がくるくるとその場で回った。水色のチュニックの裾がひらひらと揺れる。色の所為か服のデザインのせいか余計幼く見えるというのは、親友の為に黙っていようと思った。

「お二人ともよくお似合いです」

 ティーンクトゥスがパチパチと拍手をする音が響く。お気楽能天気な神様だな、と真尋はため息を一つ零して、足元に落ちていたシーツを透明なベッドの上に放り投げた。着替えを終えた一路が隣にやって来て、真尋を見上げて来る。彼に視線を返して、真尋はぱちりと目を瞬かせた。
 一路の瞳の色が変わっていた。

「真尋くんの目、綺麗な色!」

 一路が言った。伸びて来た指先が真尋の目元に触れた。真尋も同じように一路の目元に触れる。元々、色素の薄い彼の瞳は明るい琥珀色だったが、今はそれに淡く優しい緑が混じっている。明らかに以前の彼の瞳とは異なる色彩を放っている。

「銀色に深い蒼が混じった綺麗な色だよ」

「一路も琥珀に緑が混じった色になっている。これが魔力とやらの色なのか?」

 ティーンクトゥスを振り返って問えば、彼は、はい、と頷いた。

「魔力の強さ弱さに関わらず瞳には、自身の魔力の色が出ます。親子などは似た色を持っていますが、同じ色は一つとしてありません。ですので、ありとあらゆる色があります」

「髪の色は?」

「それも様々ですね、人族やエルフ族はそこまで色のバリエーションはありませんが、妖精族は実にカラフルですよ、彼らは植物と人の遺伝子を併せ持った種族ですので」

 ティーンクトゥスがぽやぽやと左右に微かに揺れて笑いながら告げる。二人は、それを聞きながらお互いを見る。瞳の色以外には特に変わった様子は無い。身長差も髪の色もいつも通りだ。

「それで、ですね……体を作らせていただいた際に、暦や時間のことや貨幣のこと、アーテル語のこと、魔法とスキルの基礎知識については知識としてすでに入れておいたのですが……本当はもっとあれこれお教えしたいし、ステータスに関する説明などもしたいのですが、その」

「はっきりと言え。回りくどいのは好かん」

 視線を右往左往させながらティーンクトゥスが妙に落ち着きなくそわそわしている。
 真尋は腕を組んで、透明のベッドに寄り掛かりながらティーンクトゥスをじとりと睨む。ティーンクトゥスは、ひゃあと何とも情けない悲鳴を上げて縮こまった。一路は、ティーンクトゥスと真尋を交互に見て、心配そうにはしているが前科がある為かティーンクトゥスを庇う気は無いようだった。

「何を、隠している?」

「ああ、だから、その、ですね……っ」

「報告、連絡、相談は全て要点を踏まえ簡潔にしろ!」

「は、はぃい!」

 真尋の一喝にティーンクトゥスがびしっと背筋を正す。

「時間が無いのです! ついでに言えば力も無いのです!!」

「簡潔すぎない!?」

 一路のツッコミが入る。真尋が目だけで説明を促せばティーンクトゥスは、あわあわしながら口を開く。

「そのっ、真尋様と一路様の魂は私が考えていたより力があったようでして、体に馴染むのに想像以上に時間がかかってしまったんです! 私の作った体ですから私の力の及ぶところに居るとその相性の良さから人ならざる精霊とかそれこそ神に近い存在になってしまうのです!」

「つまり、ここに長居せず、さっさと行った方が良いということか?」

「その通りなのですが、それだけではなくてですね……っ! 本当は私の力で送り届けようと思っていたのです、お二人の魂を体に移した時にまた力が戻りまして、窓を一つ開くことが出来ましたので……ですが、先に言った通り、お二人の体に魂を馴染ませるのに時間がかかり過ぎて、私の力を使って時間を短縮したんです! そうしましたら、その、窓を一つ開けることしかできなくなってしまいまして! ですが、私の力が回復するのを待って居たら、お二人は精霊か何かになってしまうんです!」

「それって送り届けて貰えないってこと?」

 一路が不安そうに問うと、その目に涙を浮かべていたティーンクトゥスはがくりとその場に崩れ落ちた。すると彼の隣に一メートル四方の穴が突然開いた。入り込んできた風が、悪戯にシーツをさらって三人の髪を揺らした。覗き見れば、眼下に森が広がっている。どうやらここは上空の様だ。スカイダイビングだとしても上級者が挑むレベルの高度だろう。

「ここから大至急、飛び降りて頂くしか手段がないんですうぅ! すみませぇぇぇえん!!」

 二度目の土下座である。一度目に真尋の指導が入っているだけあって、どこに出しても恥ずかしくない素晴らしい土下座だ。

「いやいやいや! 無理でしょ!? え、無理だよね!! せっかく、体作ってもらったのにあっという間にミンチになっちゃうよ!?」

 一路が頭を抱えながら叫んだ。真尋は、穴を覗き込みながら、ふむ、と顎を撫でる。ここから見る限り、アーテル王国は自然が豊かなのは間違いない様だ。丁度、真下辺りには湖があって深い蒼の湖面が煌めいていた。
 頭の中には確かに今までになかった魔法に関する知識がある。極々、基礎的なものらしいそれは魔力の扱い方から始まる。真尋は、顎を撫でていた手を自分の腹に当てる。起きた時からあった違和感はこれか、と違和感の正体に当たりをつけた。

「ミンチになんてまさか! 私の加護がありますのですごく丈夫な体ですよ!」

「丈夫だろうが岩だろうが、この高さから落ちたら死ぬよ!? せめてパラシュートとかないの?」

「ぱらしゅーと?」

「あ、それは無いんだね!!」

 一路とティーンクトゥスのやり取りを聞きながら、真尋は辺りを見回す。これといって使えそうなものは何もない。先ほどまであったシーツもどこかに飛んで行ってしまっているし、あったとしてもあのシーツでは心許ないだろう。

「真尋様は全属性、一路様は、地、水、風、光の属性をお持ちですのでそれを使って頂ければ!」

「その使い方がよく分からないんですけどね! 基礎知識はあってもいきなり実技は無理だよ!」

「お教えする時間も無いなんてすみませぇぇえん!」

 真尋は、穴の下を見下ろしたまま口を開く。

「おい、本当に落ちても平気なのか」

「はい! その辺は絶対の自信があります! 多少、大地がひび割れるかもしれませんがお二人の体は無傷で着地できるはずです!」

 ティーンクトゥスが輝くような笑顔を浮かべて宣言する。
 それはそれで問題があるのではないだろうか、と流石の真尋ですら思った。思っただけで口にはしなかったが。

「では行くか。時間も無いしな」

「ええ!? 正気!?」

 一路が顔を青くして叫んだ。

「どのみち行かなければならないんだ。ティーン、ロープはあるか? 先端に錘のついた」

「ロープ……ええっと、あ! これなんてどうでしょう! 世界樹に巻き付いていた根性のある蔦で作られたロープです! 持ち主の思うがままに伸縮自在! オリハルコン製のナイフでくらいしか切れない丈夫さですよ! この先端の錘は少し特別な鉱石です!」

 聞きなれない植物名が出てきた気がするが、今はいいか、とティーンクトゥスが差し出すロープを受け取った。少し細い様な気がするが、長さも充分有った。先端に括り付けれられた拳大の錘も問題なさそうだ。それを肩にかけて真尋は、ぐっと伸びをした。軽く柔軟体操をして、よし、と顔を上げる。一路は遠い目をして虚空を見つめていた。

「いくぞ、一路」

「……拒否権が欲しい」

 恨めし気に睨まれても真尋は気にしない。ティーンクトゥスが立ち上がる。

「アイテムボックスに入るだけの愛情は詰め込んだので! まずはアイテムボックスの中身を確認してくださいね! ああ、それと魔獣にはくれぐれも気を付けて、無論、盗賊なんかもいますから気を付けてくださいね! 旨い話には裏がありますからね! あと変な人にはついていっちゃだめですよ! それと幾ら丈夫だとはいっても無理は禁物ですからね、ええと他には……」

 独り暮らしを始める息子を前にしたお母さんのようなことを言うティーンクトゥスに真尋は「最たる変な人はお前だけどな」と思ったが、やはり懸命にも口にしなかった。
 だが、その銀色の瞳は心の底から真尋と一路の身を案じて、これからのことを心配してくれていて、彼が自分たちに伸ばしそうになる手を胸の前で握りしめることで抑えている彼の弱さと優しさに、絆されてしまうのだからティーンクトゥスの忠告は強ち間違いでは無いかもしれない。
 真尋と一路は、ぎゅうとティーンクトゥスを抱き締めた。ボロボロの布の下の彼の体は細く頼りない。次に会うことがあればもっと太っていればいい。

「ま、真尋様? 一路様?」

 戸惑ったような声が耳元でする。一路がくすくすと笑った。

「ティーンさんも、あんまり無理しちゃだめだよ。ちゃんとご飯食べて、良く眠って、適度な運動して、健康第一で居てね」

 少し背伸びをしてティーンクトゥスを抱き締める一路が柔らかに笑って、彼の頭を撫でた。彼の手の下で、ティーンクトゥスは、驚いたような顔をした後、くしゃりと笑う。不器用で不恰好で実に神様らしくない、人間臭い笑顔だ。
 真尋は、一路ごとティーンクトゥスを抱き締める腕に力を込めた。

「ここが寂しくないように、たくさんの声が聞こえて、光が溢れる世界になるように俺は祈り、願おう」

「……ならば、私は、風を吹かせましょう」

 ティーンクトゥスの細い腕が背中に回される。

「貴方の背を押す風を、貴方の願いを誰かに届ける風を、貴方の涙を拭う風を、私の愛する子供たちに等しく与えましょう」

 初めて聞いた時の暗く低い声はもう思い出せない。言葉を紡ぐ彼の声は、柔らかく溢れんばかりの愛情に満ちている。
 とんと背中を叩かれて、もう一度だけ抱き締める腕に力を込めてから体を離す。一路がぐすっと隠れるように鼻を啜ったのには気付かないふりをする。

「さあ、行ってください。もう本当に時間がありません」

 そう言ってティーンクトゥスは優しく笑う。細められた銀色の瞳は少しだけ寂しそうだった。
 真尋と一路は彼から離れて穴の縁に立つ。爽やかな冷たい風が髪を揺らして、遊ぶように服の裾をはためかせた。

「行ってきますね、ティーンさん…………でも、本当に飛ぶの、これ」

「迷うと躊躇いが出るぞ。飛べ」

「でも、やっぱりこれは無理じゃっ、へっ!?」

「い、一路様ぁぁああ!?」

 どん、とその背中を突き飛ばした。ティーンクトゥスが慌てて這いつくばる様にして穴を覗き込む。一路の悲鳴が元気良く響く。

「それでは俺も行く。ティーンクトゥス、寂しかったら会いに来い。お前は俺の下僕だからな、俺は一度配下に入れた下僕は大事にする男だ」

 ティーンクトゥスの髪を撫でて、呆けたような銀色の瞳に、にやりと笑って返す。

「では、行って来る」

「い、行ってらっしゃいませ!」

 その声を背に真尋は、躊躇うことなく飛び降りた。
 神を土下座させた男、水無月真尋は、今日、神の手によって生まれ変わり、そして、この日、アーテル王国という故郷から遥か遠く次元さえも隔てて離れた地に文字通り生まれ落ちたのだった。


――――――――――――――――――

ここまで読んで下さってありがとうございました!
お気に入り登録、とても嬉しく思います♪

漸くアーテル王国に降り立つ二人ですが果たして、無事に着地できるのか??

また次のお話も楽しんで頂ければ幸いです!!
これからもどうぞお付き合い、よろしくお願いいたしますm(__)m
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