嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい

りまり

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   思わぬ形で兄の本音が聞けてよかった。

   好かれてないとは思ったけど、あそこまで嫌われているとは思わなかった。

   そうだよね。

   こんな僕が好かれるわけないよね。

 醜い僕が少しでも好かれているなんてどうして思ったのかわからないけど……

 そういえば八歳の誕生日にお兄さまと同い年の王子様と婚約したんだ。

 僕が寝込んでいる間も婚約者様は来てくれたみたいだけど、弟と楽しそうに話して帰っていったと従者は言っていた。

 「とてもお似合いのお二人でしたよ」

 「そうか……いつもありがとう」

 「これも私の仕事ですので……」

 「うん、でもお礼が言いたかったんだ」

 僕はベットに横になると目を閉じた。

 一目惚れだった。

 お兄さまがお屋敷に友達だと連れてきてくれた時たまたまお見かけしたのだ。

 お兄さま以上にきれいな方がいるとは思わなかったから、つい見とれてしまった。

 礼儀正しく僕に嫌な顔をせずに挨拶してくれたから余計に嬉しくなってしまったんだ。

 僕が馬鹿な夢を見てしまっただけ、考えてみればあの子の方が彼とお似合いだ。

 それなのに、僕なんかの婚約者になったせいで肩身の狭い思いまでさせてしまった。

 学園に入ってからではなくすでに嫌われていたなら、彼もお兄さまと同じだと考えればしっくりくる。

 大好きな彼にこれ以上嫌われるのは嫌だから、お父さまに頼めば喜んで婚約を解消し弟の婚約者として届けてくれる。

 婚約をしてからすでに数か月たっていながら発表がされていないのはそういうことだ。

 あの頃の僕は彼と婚約できたこに舞い上がってしまってそんなことまで気が回らなかった。

 僕さえいなければ公爵家は完璧なんだ。

 僕は全は急げとばかりに従者にその旨を伝えると、お父さまに会うことなく話は進み数日のうちに僕から弟に婚約者が変わった。

 その日から僕の生活はさらに悪化したのだ。

 
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