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 父と兄に話してから一週間たった時、城から使者が来た。

 監視対象が城に向かっていると言うではないか、私は一応それなりの恰好をしていたのでそのまま城に向かったのだが、なぜか足止めされていた。

 「どうしたのです?」

 「申し訳ございません」

 「出入りの商人が今日に限って細かい注文をされたと、商品が少数なんですが数がすごいので申し訳ございません」

 「それなら仕方ないわね」

 どうやらこれも足止めの一環なんでしょう。

 彼女が何に加工してきたかわかりませんが、城の薬術師たちは間に合ってでしょうか?

 一応惚れ薬には解毒薬があることはあるけど、錬金術師と一緒にやらなければ完成しない薬なんだが、間に合えば事前に飲んでおけば薬は効かないし、飲んだ後でも大丈夫だと書いてあった。

 「もしよろしければ歩いてであれば入れます」

 「そうね。
 そうさせてもらうわ」

 私は馬車から出るとそのまま城の中に入り、父の執務室に向かった。

 「早かったな」

 ノックをして入るとすでに兄もそこにいた。

 「すぐにきましたからね」

 「薬は一応完成したのだが、自信がないらしい」

 「大丈夫です。
 私のほうも薬を作ってきてますので、それが効かなければこちらを試してみてください」

 私は父の手に薬を渡すと、兄と一緒に騎士の恰好をすると王子の部屋に向かった。

 「それにしても違和感ないよな」

 「一応騎士団にも所属してますからね」

 「そうだな、引きこもっている間にいつの間にか騎士団の試験も合格していたとは知らなかったよ」

 「ただ引きこもっていてもつまらないですからね」

 雑談をしている間に王子の部屋に着くとノックをして護衛騎士と交代した。

 「……あれが来たのか」

 「きましたよ。
 いい加減あきらめて下さい」

 「わかった。
 でも嫌だからな!
 薬の力で気持ちを左右されるのはいやだ」

 「ならなぜここまでこじれているんですか?」

 「あんな女好きではない!
 俺が好きなのはほかにいるんだ」

 俺様王子の恋の相手はさておき、廊下を歩く足音が聞こえた。

 「来たみたいです」

 「わかっていると思いますが、効いたふりをしてください」

 「わかった」

 ここから王子による下手な演技が始まった。

 本当に下手なんですよ。

 声は上ずっているし、挙動不審だし大丈夫かな。

 なんて思ったけど相手も王子に恋する乙女です。

 まったく気づきません。

 バカだわ。

 私はこの茶番を覚めた目で見ていた。


 
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