悪役令嬢の兄になりました。妹を更生させたら攻略対象者に迫られています。

30

　今日は朝から死にそうなぐらい憂鬱だ。

　なぜかと言うとキルさんがいるからだ。

　リヒトさんもいるけどキルさんもいるからせっかくに癒しのリヒトさんが半減してしまう。

　それも今日はマーク様の魔法学の授業もあるのだ。

　せっかく楽しみにしていたのにその楽しみさえ楽しくなくなるのだから不思議だ。

　「リュート様はいつもどんな授業をしているんですか？」

　「俺は特別授業で個人授業を受けているよ」

　「彼は大変優秀ですからね、他の生徒より学力に差がありすぎてしまうのすよ」

　「流石です」

　この人の胡散臭い態度が嫌だ。

　何を考えているかわからない態度も嫌だ。

　嫌だと思ったら全てが嫌だと思ってしまった。

　「キルさんは、妹と王子の護衛で着ているのに俺の授業参観などして大丈夫ですか？」

　「御心配はいりません、他の者もいますので今日ぐらいは大丈夫です」

　「そうですか……」

　「御気分でもすぐれませんか？」

　「大丈夫です」

　俺は憂鬱な気持ちで学園に行き個人授業の為の教室に入った。

　「おや、今日はだいぶ顔色が悪いみたいだね」

　「そうですか……気のせいですよ」

　「……なるほど、今日は自称婚約者殿が見に来ているんだね」

　「自称ではない！」

　「婚約した覚えないから、したと聞いてないから！」

　俺は声を大にして言います！

　男の婚約者いらないから！

　あれだけのことやっていて言うのも何なんですけど俺ノーマルだから！

　「リュート君、威嚇しないの」

　「だって……」

　「わかっていますから大丈夫ですよ」

　「妹さんが言っていたよ、何度断っても勝手に婚約者だと言いふらして困るとね」

　我が妹よお前はやはり俺の救世主だ！

　俺は妹を拝みたい気持ちだった。

　「この国ではあまり騒ぎ立てないでもらいたいね」

　キルはマーク様をすごい目で睨んでいた。

　あれは平気で人を切る目だと思う。

　敵とみなせば躊躇なく切れる人間だ。

　ここにいるリヒトさんも同じ部類の人間なのにどうしてこうも違うんだろう。

　俺は考えてもわからないので、後でマーク様に聞くことにした。