悪役令嬢の兄になりました。妹を更生させたら攻略対象者に迫られています。

19

　魔法の補修は、楽しいばかりではなかった。

　かなり絞られてしまった。

　魔法を使い薬草を煎じると言うもので、できたのだが力の入り具合にむらがありなかなか均等にはできなかった。

　「リーシェは明日から力を均等にできるようにすることから始めましょう」

　「うっ……もっと魔法の勉強がしたいのに……」

　「ダメです」

　「先生のケチ」

　「ケチではありません」

　先生は俺の頭を撫でながら抱き上げて部屋を出た。

　いつものことだが、ここの先生たちは俺にはどういう訳かやたらと過保護になっている。

　俺を迎えに来た馬車に乗せるといつもはそのままドアを閉めるのに今日は乗り込んできた。

　「今日は王妃様に呼ばれてますのでお城まで一緒です」

　「そうなんですね」

　俺を抱き上げ膝の上に乗せられてびっくりしてしまった。

　「ルーチェ君はなぜ隣国に入学したんだい？」

　「はっきり言えば逃げるためです」

　「逃げる？」

　「以前妹に連れられてお城にお泊りに行ったんです、朝目を覚ますと王様のベットに寝ていて体中に虫に刺されたような跡があったんです。
　このままこの国にいたら王様に食べられちゃうんじゃないかと思い逃げました」

　「……それは確かに逃げるな……」

　「妹には悪いと思います。
　でもあの王様怖いです」

　「ならここにいればいい、ルーチェ君の妹も今回訪問したのは学力が追い付いたら留学の許可をもらうためだ」

　「そうなんですか？」

　「まだまだ足りないがあと三年もすれば入ってくる。
　そうすれば城から通えるよう王妃様が準備してるよ」

　「妹と通えるようになるならの楽しみです」

　俺は先生ににっこりと笑って見せると、俺の笑顔を見た先生は一瞬硬直したかと思うと顔を手で覆って何やらぶつぶつ言いだしたではないか！

　先生の顔を覗き込むと真っ赤な顔をしていた。

　これは見てはいけないものなのだと思い、俺は素知らぬふりをして外を眺めた。