折角ＢＬ小説の世界に転生したので満喫したいと思います

19 フェンリルside

　俺は過ちを犯してしまった。

　命の恩人で番のシンを傷つけてしまったのだ。

　頭ではシンが番だと分かっているのにあのガキの匂いに逆らえなかった。

　それだけじゃなかった。

　ガキはことあるごとにシンのせいにし、怒られるシンをニヤニヤした顔で眺めていたのだ。

　胸糞悪かった。

　自分自身が許せなかった！！！！

　シンは、デビューの時ヒートがきたのだ。

　シンの部屋の前に行くと、何人もの男が群がっていた。

　俺と同じように匂いに誘われて群がってきてしまったのだ。

　暴れたい衝動にかられたが、今はあのガキの番として行動している以上下手なことはできない。

　だが、ヒートが収まるとここを出て行ってしまったのだ。

　それなのにこのガキは今だにシンに虐められたと言いまわっていたのだ。

　流石の両親もガキのステータスを調べ始めた。

　やはり匂いを模写し、いかにも自分の匂いにさせるスキルを持っていたのだ。

　俺の声さえ聴けない奴が番なんて有り得ないんだ。

　ガキの両親はスキルを封じ込める魔道具を付けると、嘘つきなこいつを一からたたき直すことにしたようだ。

　瞬く間にこのことが広まり、誰一人こいつの言うことを信じなくなった。

　俺ももうすぐ15歳になる。

　そうすれば人型をとることが出来るから、シンを探しに行ける。

　それはシンの両親にも話してある。

　シンの両親は流石だと思った。

　何かを疑い、シンを遠くに逃がし回避したんだ。

　シンにはきちんと影まで付けるという徹底ぶりだ。

　すべてが片付き、シンがここを旅たってからゆうに一か月が過ぎていた。

　俺がここを旅たつ許可は下りていない。

　シンの両親の許可が下り次第出ていこうと準備はしてあるのだ。

　「待たせたね、ようやく処理がすんだよ。
　シンを探して連れ戻してほしい」

　「ガウ」

　俺は短く鳴いた。

　荷物を持ち獣の姿のまま、領地を後にした。