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第十五話 霧坂実瑠のスイッチトライアル 3
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その翌々日に呼び出された俺は駅前で、実瑠が来るのをボトル缶のブラックコーヒーをやりながら、十五分程静かに待っていた。
本日は休日の日曜で駅前にスーツはいなかったが、また優花とセットだろうと愚信していた俺には、何時もと違うと気が着く。
意外にも『独り』で参上した実瑠は、厳密には表裏一体の『二人』だと分かっているが、優花とは離れて別行動だろうか。
表と見えた実瑠は実に自然な変化で、裏の実瑠によれば優花には黙って来たらしく、何処かソワソワしながら百貨店に入った。
早速見えた化粧品ゾーンには大手ブランドの、奈津美さんの務める会社のブースが広がっていて、場違いな俺も実瑠を追って突入。
開発主任の奈津美さんが開発した商品を、明快かつ悠甘に見せてはどの色がいいか、全く分からない俺に聞くから適当に流した。
若干マジィかと思ったが「どれでも似合いそうだ」と、覚えぬ内に俺が添えると、裏実瑠は何色かのルージュを択んで購入。
エスカレーター前のベンチは丁度わかり易かったから、そこで待つと謂って直ぐにブースを出て、実瑠を待ちながら想像する。
今は裏で違和感が薄いと謂える状況でも、本来は顔等の変化が極端に薄い実瑠だから、あの顔にルージュはどうなるのか。
悪い意味ではなく裏でのイメージで合うなら、顔自体は全く同じだから絶対的で、それも奈津美さんの企画だから期待値も高い。
時は早くも既に昼前になっていて、裏実瑠が食べたいと云った物で済ませようとしたあたりで、探しに来た優花が追いつく。
少々御立腹と在るのか「ズルい」とむくれて、目線を俺達から斜め下にずらして、華奢に構えるか更に続けながら目許に艶か。
「実瑠ちゃんばっかりおにーさんと……」
要は優花に黙って俺とのショッピングが、やや気になったのだろうと愚測すると、謎に二つ持っていた同ケースの一つを差し出す。
「流石にマズイかもだったから……。
ハイッ。」
なんと無意味に思えた同じ物は優花対策にして、サプライズ的な要素としても機能すると、表の実瑠に指定されたと謂う。
奈津美さんのブランド商品は値が張ると、知っている優花は断ろうとも唖し黙って、謂わずとも分かる二人はフニフニと済ませる。
思考と反射の融合に未来を懸けた実瑠は、昼をどうするか提示する俺に優花の意見に従うと謂うから、和食党の優花に合わせた。
エスカレーターで最上階に着いた俺達は、定食屋を探して歩き廻ってみてあの店かと、向かうあたりで俺は自分の予算を気にする。
それを悟った優花は「もしもの時は払いますから」と、それに対抗する裏実瑠もフワフワと、仕舞いには「ねっ。」て表が刺す。
優花も実瑠も俺がハブやバイパス的に機能して、今の峰輿に引き取られた立場として、俺と奈津美さんに頭が上がらないらしい。
俺も奈津美さんに対して他人事ではないから、いざと言う時はそれを受ける権利はあるだろうと、独りで呑み下して仕舞った。
本日は休日の日曜で駅前にスーツはいなかったが、また優花とセットだろうと愚信していた俺には、何時もと違うと気が着く。
意外にも『独り』で参上した実瑠は、厳密には表裏一体の『二人』だと分かっているが、優花とは離れて別行動だろうか。
表と見えた実瑠は実に自然な変化で、裏の実瑠によれば優花には黙って来たらしく、何処かソワソワしながら百貨店に入った。
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開発主任の奈津美さんが開発した商品を、明快かつ悠甘に見せてはどの色がいいか、全く分からない俺に聞くから適当に流した。
若干マジィかと思ったが「どれでも似合いそうだ」と、覚えぬ内に俺が添えると、裏実瑠は何色かのルージュを択んで購入。
エスカレーター前のベンチは丁度わかり易かったから、そこで待つと謂って直ぐにブースを出て、実瑠を待ちながら想像する。
今は裏で違和感が薄いと謂える状況でも、本来は顔等の変化が極端に薄い実瑠だから、あの顔にルージュはどうなるのか。
悪い意味ではなく裏でのイメージで合うなら、顔自体は全く同じだから絶対的で、それも奈津美さんの企画だから期待値も高い。
時は早くも既に昼前になっていて、裏実瑠が食べたいと云った物で済ませようとしたあたりで、探しに来た優花が追いつく。
少々御立腹と在るのか「ズルい」とむくれて、目線を俺達から斜め下にずらして、華奢に構えるか更に続けながら目許に艶か。
「実瑠ちゃんばっかりおにーさんと……」
要は優花に黙って俺とのショッピングが、やや気になったのだろうと愚測すると、謎に二つ持っていた同ケースの一つを差し出す。
「流石にマズイかもだったから……。
ハイッ。」
なんと無意味に思えた同じ物は優花対策にして、サプライズ的な要素としても機能すると、表の実瑠に指定されたと謂う。
奈津美さんのブランド商品は値が張ると、知っている優花は断ろうとも唖し黙って、謂わずとも分かる二人はフニフニと済ませる。
思考と反射の融合に未来を懸けた実瑠は、昼をどうするか提示する俺に優花の意見に従うと謂うから、和食党の優花に合わせた。
エスカレーターで最上階に着いた俺達は、定食屋を探して歩き廻ってみてあの店かと、向かうあたりで俺は自分の予算を気にする。
それを悟った優花は「もしもの時は払いますから」と、それに対抗する裏実瑠もフワフワと、仕舞いには「ねっ。」て表が刺す。
優花も実瑠も俺がハブやバイパス的に機能して、今の峰輿に引き取られた立場として、俺と奈津美さんに頭が上がらないらしい。
俺も奈津美さんに対して他人事ではないから、いざと言う時はそれを受ける権利はあるだろうと、独りで呑み下して仕舞った。
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