もう一人のオレがみんな美少女で家に住みついてますが何か

第十三話 春風まとう萌桜 1

「春かぁ～、そろそろお花見行きたい……。」

　ぶっきらに云い放つ裏実瑠に同調して、静かに賛同する陰キャの優花は雨天を気にするが、それならと雷同に一体化し出す。

『今度の日曜日に行きましょうか。』

　奈津美さんは花見決行を打診したと見えて、先日の通りなら新商品開発で忙しい筈でも、俺達に合わせた対応が冴える。

　「満開な桜が観たいですね。」と、耳許で俺に献身と甘い顔を向ける紫英流は、主人とする俺を第一にしながらも一同を忘れない。

　さて、ロケーションをどうするかだが、近場にするか遠出をするかも論点として挙がると、遠出ならアレがまたご活躍になるか。

　あの紅いプリウス通称『紅プリ』は、以前に優花の迎え等で何度か同乗したが、併せて『粋った奈津美さん』も観れるだろう。

　電車もいいが特急か新幹線かジャンボジェット機か、指定席でも取れればいいが、経費は奈津美さんが持つだろうから軽くない。

　後で真胡都も来るとしたら自前ではらいそうだが、何とまだ前職リアルメイドの財産から、全て紫英流が提供するらしい。

　タダ働きに近くとも紫英流に取って、奈津美さんの対応力や快適な生活環境の提供は、頭が上がらないがくらいに有り難い。

　そのあたりは峰輿宅居候勢に俺も揃って、兎にも角にも感謝しか無い事も何時も通りに、その事も紫英流は意識したと見える。

　流れ流れて結局は遠出プランで落ち着くが、十日ほど連休を取って仕舞って、二拍三日で露天温泉桜満開付きで手を打つ。

　移動手段は特急自由席で露天温泉付きホテル泊と、様々なコストが掛かりそうだが、大手化粧品会社の商品開発主任ならイケるか。

　この様な大盤振る舞いすらも実行可能な、奈津美さんと紫英流の経済力があって、今回の旅行プランを採用して戴ける。

　移動や宿泊等のコストや手続きは紫英流が担当して、支払いもやるらしいから、何処までも頭が上がらないままに花見に期待した。