もう一人のオレがみんな美少女で家に住みついてますが何か

第七話 城江秀一ともう一人の俺達 5

　昼間からあんな事になっては流石に飛びつかれなかったが、それでも和食慣れしていたせいか、純粋に料理が美味かった。

　フランスパンの切り身も口の中がめくれない様に、千切ったりスープに少しつけたりして、いつ仕込んだのか非常に旨い。

　バターや卵はどれだけ使ったのか、贅沢にも旨味が活かされた料理を用意するのに、どれだけの経費や予算がかかっただろうか。

　また、それによって残業が増えたりして、奈津美さんを酷使する様な事態にならないか、様々な懸念が浮かんでは消える。

「それで……？　さっきのは？」

　まさか配信用の動画を撮影しないで、1日中絡まっていたのかは不明だが、ある程度食べたあたりで遂に事情聴取が始まったのか。

　家事はある程度で済むだろうと高を括っていた、そんな実瑠と優花はまるでプロの様な紫英流の、『メイド指導』を受けた。

　別にプロを目指していた訳ではなく、動画配信者として活動しているだけだから、ややこしい状況を想定していなかったのだろう。

　むしろ配信動画の企画として挑戦してみたら、思いの外に継続困難と判断した裏実瑠は、俺のところに避難しては連れ出した。

　俺も調子にノッて仕舞ったが、紫英流のメイド過ぎる忠義が違うベクトルへと爆走して、手が負えなくなって仕舞った。

　俺が緊急事態で勝手に峰輿宅に上がった件は頭を下げて、改めて紫英流の処遇の件が、今回の議題として挙げられた。

　紫英流はメイドの本分に忠実すぎるから、家事や掃除などのコツやポイントをレクチャーして、それを動画にすればイイ。

　そうすれば、ただ楽しいスパチャも役立ち情報を、テロップで要点を提示しながら、充実した動画コンテンツとなる。

　そうして稼げれば共同作業でもあって、稼働価値も獲得出来て更にその分も当たれば、あらゆる価値が備わるならそれもアリだ。

　他にも紫英流個人で調理関係または掃除関係の情報を、『有用なコンテンツ』として、紹介すれば、稼働ステーションも増加する。

　利益率についてもメイドの業務を軽量化して、その分を副業として時間や労力を活用すれば、あとはSEO対策を講じればイイ。

　また、共同で撮影すればコラボレーション企画として、新感覚なコンテンツも用意出来るが、主に個別で毎日更新して効率化。

　この辺りを意識して序盤は出来るだけ情報収集、堅実なソースで勉強しながら試行錯誤して、ある程度分かってきたら更に強化。

　俺もまだまだ未熟だがあとはインターネットも活用して、堅実に挑戦してみても、それ自体は悪いことではないのではないか。

　そもそもネットビジネスを否定して仕舞っては、世にある全ての企業を否定する様なもので、そんな企業への就業も否定する。

　第一にして、個人情報の塊である履歴書や各種講座も、悪徳企業しか無いならどう悪用されるか、わかったものではなくなる。

　確かに全て善良かは不明にしても、法や制度で抑えられて下手なことが出来なくなって来て、この議論は少々極端でもある。

　まだまだ奈津美さんに頼るべき段階にしても、雇用に縛られて他者を恨むくらいなら、いっその事行政府が配当金を出せばいい。

　国債や経済支援などでまだまだ余裕は無くも、技術等の進捗次第に拠っては、雇用から開放される事もあるか分からない。

　しかし、昼の事故イベントから奈津美さんの帰宅まで、その間ずっと絡まっていたのなら、本日の更新や家事はどうするのか。

　そして、最終的に何かの矛先が俺に向いて、「私の分は？」と妖しげにも少し重く、奈津美さんは食後の予約をするのだった。