もう一人のオレがみんな美少女で家に住みついてますが何か

第六話 押しかけメイドは離さない 2

　この約半年の間で合計六人増えたことになるが、それが何れもすべて『もう一人の俺』で、それも奈津美さんに任せきっている。

　結果的とは謂っても、特に経済的な負担が増えてはコストバランスを圧迫させているか、そうでないとしても頭が上がらない。

　もはや胃への負担は中間管理職のそれに匹敵して、開放的な反面は心理的な迫撃を受けても、どうしたって放置すべきでは無い。

　また、奴らの家庭事情は呑み込んでもらったが、またしても増えては奈津美さんへの経済的な負担、俺には精神的な疲れが生じる。

　ただし、これは厭というよりは峰輿宅が更に花咲いて、夕食時には何だかフワフワしているから、何故か妙な感覚がある。

　そして、『長身メイド気取りの件』が本日の議題だが、爽やかな大人の芳香を撒き散らして、ハイスペックな『御奉仕』を尽くす。

　コーヒーは冴えていて食事は仕込みから全て手作りで、まさに文句の付け所がないから、その件を推して奈津美さんに交渉だ。

　ヤロウの自宅に住まわせるはクライシスか、今日はまだしも明日からは流石に、奈津美さんの保護下に参入して戴く。

　たとえ勝手でも俺の胃は持ち堪えるか、家事が得意で在宅作業なら『家事を担当する』が可能で、仕事帰りの奈津美さんが休める。

　そんなメリットと引き換えに、最高品質な奈津美さんの手料理が今後現れないリスクも、当然にして必然的に現介する。

　それでもこのメイド君の職人顔負けな食は、奈津美さんの手料理に負けていないし、大手企業に就くなら休めた方がいいか。

　頭の中はグルグルして藪の中へと突入して、一番肝心なコンテンツ製作が捗らないまま、遂に『例のアポ』に拠る出廷時間か。

　峰輿宅のリビングに行くと萌香と真胡都が、何時もなら飛びついては絡み尽くすところ、寸前でピタリとそれが止まって硬直。

　そうだったと謂うように二人でハッとしたが、事前に奈津美さんから話は通してあったのか、それ程でもない容子でメイドを見る。

　只今調理中の奈津美さん以外は一同揃って、頭の先から足の先へと一度目線が下がって、そこから逆に頭の先をじっくりと観る。

　THE・メイドといった格好で新キャラが湧いて、それが現代ではカッフェ以外では、滅多にお目に掛かれないから珍事だろう。

　食卓に皿が並ぶと同時に、何時の間にか広間に様式のテーブルが待っていて、椅子のカバーに腰が載るとより小洒落て観えた。