雪と花の狭間に

雪ノ下 まり子

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2001年12月・風冴ゆる頃、恋は花咲く

風冴ゆる頃、恋は花咲く

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 青い蝶々のバレッタが蘭に似合いそうだったので予算内なら蘭にプレゼントしたいと値札をのぞき込んだ一哉だが、その直後に諦めた。
夏目漱石なつめそうせきが八人……」
 2~3ヶ月分のお小遣いが飛んでゆく価格帯は蘭が引きつった笑顔で陳列棚へ戻すのもうなずける。

 百貨店で昼食をとり、さらに花束を買った後に会場へと着いた。
 二人が観るのは県立吾妻あづま白嶺はくりょう高校、通称白嶺高校で芸術を専攻する生徒によるミュージカルの定期公演であった。

 演目は「くるみ割り人形」。
 終戦後に設立された白嶺高校だが80年代に芸術専攻クラスが新設されて以降、くるみ割り人形のミュージカルはクリスマスシーズンの伝統となっている。

「俺、前から思ってたんだけど芸術科って男子いるの?」
 芸術科。
    地元民は白嶺高校芸術専攻クラスをそう呼ぶ。
 芸大や音大への進学を目指す生徒が対象で、美術と音楽、そして東北地方では珍しく舞台芸術が学べるのだが芸術科の大多数に属するのは美術系の生徒であった。
 次いで音楽系が多く、音楽が盛んな地域性に加えて遠方の市町村から入学する者、果ては他県から越境入学する者が必ずいるのでそれなりの人数はいた。
 しかし、舞台芸術系はその珍しさから毎年一桁の生徒しか入ってこないので(少数ながらも毎年志願者が「必ず」出るので廃止はしないもよう)一括して芸術専攻クラスとして募集をかけていると聞いていた。

若干じゃっかん名は男子いるみたいだよ。でも舞台芸術を専攻するのは女子のみだろうね」
「男役は女子がやるのかあ」
「だから人気なんだよ。男装の麗人って昔から女性の憧れだもんね」
  パンフレットには明らかに女子とわかる生徒が王子の服装を纏っている写真が掲載されていた。
  
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