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2001年12月・風冴ゆる頃、恋は花咲く
風冴ゆる頃、恋は花咲く
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セーラー服の少女・音澤蘭は一哉を見つけるなり引き結んだ唇をほころばせた。
容姿に恵まれている蘭だが、かわいいという言葉が甘すぎて似つかわしくないと思われがちなのは170センチの長身とプライドが高そうな切れ長の目のおかげだろう。
細面の輪郭に、高い鼻筋が貴族的だ。
しかし、一哉はこの少女が誰よりも可憐で愛らしいと信じている。
怖いものなどなさそうな堂々とした蘭の佇まいは気高き女王の風格を纏うが、気を許せば年相応の無邪気さを見せる。
端正な顔に浮かべたはにかみの笑顔は、大人びた蘭を可憐な少女へと変貌させた。
「ごめん。蘭の方が早かったね」
蘭は顔を2回ほど左右に動かし、そんなことはないと告げる。
落ち着いたアルトはよく通った声質だ。
伏し目がちな麗しい目元も魅力的だが、やけに唇へ目が行くのは蘭が元吹奏楽部員でフルートを受け持っていたからだろう。
赤みのさした唇は形良くまとまり、薄すぎない厚さのおかげか涼やかな顔立ちながらも冷たさはなかった。
「一哉ちゃん、恋人はサンタクロース歌ってた?」
「聞こえてたの?」
「うん。つむじ風のあたりから。髪乱れてるよ」
「え、マジ?」
好きな女の子に乱れ髪を指摘され、一哉は窓ガラスを鏡にして前髪を整える。
ガラスに映る一哉はつり目がちの大きな眼が特徴的で、それでいて尖った印象はない。
二枚目の整った顔立ちをしながらもがさつな手つきで乱れ髪を直す姿は普通の少年そのもの。
太めの、凛々しい眉が前髪に隠れた。
髪を整える一哉をおもしろそうに見守る蘭もまた、快活で真っ直ぐな一哉を恋い慕う。
向き直る彼の、あどけなさを残す面立ちに見え隠れする精悍さが眩しい。
眉が髪に隠れたところで踏み切りのシグナルに続き、電車が斜面を下る際に鳴らす警笛が響いた。
二人が降り立つ狭いホームには小型の券売機。
蘭は券売機のボタンを押して用紙を取り出す。
この用紙はどの駅から乗車したかを証明するもので、電車内で目的地までの切符を購入する仕組みなのだ。
商店が点在する西側に相反し、東側には古い住宅地が広がる。
フェンスで隔てた先には小規模なブドウ畑、そして信夫山を臨む。
容姿に恵まれている蘭だが、かわいいという言葉が甘すぎて似つかわしくないと思われがちなのは170センチの長身とプライドが高そうな切れ長の目のおかげだろう。
細面の輪郭に、高い鼻筋が貴族的だ。
しかし、一哉はこの少女が誰よりも可憐で愛らしいと信じている。
怖いものなどなさそうな堂々とした蘭の佇まいは気高き女王の風格を纏うが、気を許せば年相応の無邪気さを見せる。
端正な顔に浮かべたはにかみの笑顔は、大人びた蘭を可憐な少女へと変貌させた。
「ごめん。蘭の方が早かったね」
蘭は顔を2回ほど左右に動かし、そんなことはないと告げる。
落ち着いたアルトはよく通った声質だ。
伏し目がちな麗しい目元も魅力的だが、やけに唇へ目が行くのは蘭が元吹奏楽部員でフルートを受け持っていたからだろう。
赤みのさした唇は形良くまとまり、薄すぎない厚さのおかげか涼やかな顔立ちながらも冷たさはなかった。
「一哉ちゃん、恋人はサンタクロース歌ってた?」
「聞こえてたの?」
「うん。つむじ風のあたりから。髪乱れてるよ」
「え、マジ?」
好きな女の子に乱れ髪を指摘され、一哉は窓ガラスを鏡にして前髪を整える。
ガラスに映る一哉はつり目がちの大きな眼が特徴的で、それでいて尖った印象はない。
二枚目の整った顔立ちをしながらもがさつな手つきで乱れ髪を直す姿は普通の少年そのもの。
太めの、凛々しい眉が前髪に隠れた。
髪を整える一哉をおもしろそうに見守る蘭もまた、快活で真っ直ぐな一哉を恋い慕う。
向き直る彼の、あどけなさを残す面立ちに見え隠れする精悍さが眩しい。
眉が髪に隠れたところで踏み切りのシグナルに続き、電車が斜面を下る際に鳴らす警笛が響いた。
二人が降り立つ狭いホームには小型の券売機。
蘭は券売機のボタンを押して用紙を取り出す。
この用紙はどの駅から乗車したかを証明するもので、電車内で目的地までの切符を購入する仕組みなのだ。
商店が点在する西側に相反し、東側には古い住宅地が広がる。
フェンスで隔てた先には小規模なブドウ畑、そして信夫山を臨む。
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