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エピローグ
私を巻き込まないで下さい!!
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ランバートさんと二人で旅に出て三度目の春がきた。久しぶりに王都へ戻った私達。お義父様達に会いに行く前に見せたい所があると言った彼の案内で庭付きの一軒家に着いた。その一軒家は、街の中心から少し外れた場所にあり静かな所だった。誰の家だろう……知り合いでもいるの?でも、窓に板が打ち付けてあるから誰も住んでない感じだけど……
「リナ」
改めて名前を呼ぶ彼は何処か落ち着かない感じだった。
「……ここで一緒に暮らさないか?」
「え?」
そう言った彼が驚いている私の手の上に小さな箱を乗せた。箱と彼の顔を交互に見ると頬を赤くしていた。
「俺と結婚して下さい」
「よ……よろしくお願い致します」
驚いて変な言葉使いになった私の指に箱から出した指輪を着けてくれた。いつの間に準備してたの?……私、知らなかったよ。
「……泣くなよ」
「だって……嬉しい……」
そうかと小さい声と共に彼は私を抱き締めてくれた。その温もりに更に涙が溢れてきてなかなか涙が止まらなかった。
「もう……大丈夫」
やっと涙は止まったけど、泣きすぎて恥ずかしい。そっと腕で彼を押し返したけど、離してくれなかった。ちょっと待って!!本当に恥ずかしいから離してぇぇ!
「赤い顔も可愛いな」
「は……恥ずかしいから見ないでよ」
頭の上からクスクスと笑い声が聞こえる。楽しげな彼に私がむくれていると、修理しないと住めないかもなんて言っていた。そうだね、暫く、誰も住んで無さそうだもんね。
「今日は、師匠に……」
彼が言葉を途中で切るとジッと遠くを見詰めた。
「どうしたの?」
「いや……誰か来る」
人が来るだけでこんなに警戒しないはず。彼の態度に違和感を感じていると、大きな怒鳴り声だけが聞こえた。
『こっちに行ったのは確かだ!!探せ!勇者を倒して名を上げるぞ!!』
『『はい!』』
聞こえたのは男性の複数の男性の声。勇者を倒すって言ってると言う事は、ここに来るよね?
そう思って彼の顔に視線を向けると、片手で顔を覆って深いため息を吐いた。
「後をつけられていなかった筈なんだが……」
「街で見掛けて追い掛けてきたとか?」
彼と一緒にいると嫌でも事件に巻き込まれる。以前も自称最強を名乗る格闘家に決闘を申し込まれて大騒ぎになった。それと同じ事が王都でも起きるとは思って無かった私達は二人揃って肩を落とした。ここにも居たかぁ……
「面倒だな」
確かに見付かると面倒だよね。また、戦えとか奇襲だとか言って襲われるのは……うん?なんで私を横抱きで持ち上げるのかなぁ?なんで自分の足に強化魔法を掛けるのかなぁ……
「跳ぶぞ」
「はぁ!?」
「大丈夫。人は避けるから」
大丈夫を繰り返しながら、トンと軽く跳び上がると木々を越えて二つ先の道に移動した。
「うーん、追い付かれると煩いから、このまま師匠の所まで行くか」
え?お義父様の所に?王都の中心を通る?……このままで?………はぁ!?揺れるし、そんな目立つ事はムリ!
「ムリムリムリムリ」
「大丈夫、大丈夫」
「言い方かる!?」
私が驚いているとランバートさんは笑いながら、私の身体が落ちない様に抱え直すと再び跳び上がった。普通に歩けば絶対に見ることの無い住宅街の屋根を見下ろし、街の人達の注目を浴びながら、そのまま進んでお城の門の前にたどり着いた。……やっぱり揺れた……目が回る……気持ち悪い……
「もう追い掛けて来ないだろう」
満足気な笑顔でそう言った彼は、やっと私を地面に下ろす。追い掛けて来ない?……そりゃね。歩けば一時間は掛かる距離を十五分で移動したものね……でもさぁ……元を辿れば……
「リナ、どうした?具合が悪いのか?」
お城に着いてから黙り込んだ私を心配して、ランバートさんが顔を覗き込んだり額に触れて熱を測る。……そうじゃない……そうじゃない
「私を巻き込まないで下さい!!」
「え?」
「もう、知らない!」
「リナ、待って!」
慌てふためく彼が騒ぎを起こすなって、お義父様から怒られるまであと五分。
end
「リナ」
改めて名前を呼ぶ彼は何処か落ち着かない感じだった。
「……ここで一緒に暮らさないか?」
「え?」
そう言った彼が驚いている私の手の上に小さな箱を乗せた。箱と彼の顔を交互に見ると頬を赤くしていた。
「俺と結婚して下さい」
「よ……よろしくお願い致します」
驚いて変な言葉使いになった私の指に箱から出した指輪を着けてくれた。いつの間に準備してたの?……私、知らなかったよ。
「……泣くなよ」
「だって……嬉しい……」
そうかと小さい声と共に彼は私を抱き締めてくれた。その温もりに更に涙が溢れてきてなかなか涙が止まらなかった。
「もう……大丈夫」
やっと涙は止まったけど、泣きすぎて恥ずかしい。そっと腕で彼を押し返したけど、離してくれなかった。ちょっと待って!!本当に恥ずかしいから離してぇぇ!
「赤い顔も可愛いな」
「は……恥ずかしいから見ないでよ」
頭の上からクスクスと笑い声が聞こえる。楽しげな彼に私がむくれていると、修理しないと住めないかもなんて言っていた。そうだね、暫く、誰も住んで無さそうだもんね。
「今日は、師匠に……」
彼が言葉を途中で切るとジッと遠くを見詰めた。
「どうしたの?」
「いや……誰か来る」
人が来るだけでこんなに警戒しないはず。彼の態度に違和感を感じていると、大きな怒鳴り声だけが聞こえた。
『こっちに行ったのは確かだ!!探せ!勇者を倒して名を上げるぞ!!』
『『はい!』』
聞こえたのは男性の複数の男性の声。勇者を倒すって言ってると言う事は、ここに来るよね?
そう思って彼の顔に視線を向けると、片手で顔を覆って深いため息を吐いた。
「後をつけられていなかった筈なんだが……」
「街で見掛けて追い掛けてきたとか?」
彼と一緒にいると嫌でも事件に巻き込まれる。以前も自称最強を名乗る格闘家に決闘を申し込まれて大騒ぎになった。それと同じ事が王都でも起きるとは思って無かった私達は二人揃って肩を落とした。ここにも居たかぁ……
「面倒だな」
確かに見付かると面倒だよね。また、戦えとか奇襲だとか言って襲われるのは……うん?なんで私を横抱きで持ち上げるのかなぁ?なんで自分の足に強化魔法を掛けるのかなぁ……
「跳ぶぞ」
「はぁ!?」
「大丈夫。人は避けるから」
大丈夫を繰り返しながら、トンと軽く跳び上がると木々を越えて二つ先の道に移動した。
「うーん、追い付かれると煩いから、このまま師匠の所まで行くか」
え?お義父様の所に?王都の中心を通る?……このままで?………はぁ!?揺れるし、そんな目立つ事はムリ!
「ムリムリムリムリ」
「大丈夫、大丈夫」
「言い方かる!?」
私が驚いているとランバートさんは笑いながら、私の身体が落ちない様に抱え直すと再び跳び上がった。普通に歩けば絶対に見ることの無い住宅街の屋根を見下ろし、街の人達の注目を浴びながら、そのまま進んでお城の門の前にたどり着いた。……やっぱり揺れた……目が回る……気持ち悪い……
「もう追い掛けて来ないだろう」
満足気な笑顔でそう言った彼は、やっと私を地面に下ろす。追い掛けて来ない?……そりゃね。歩けば一時間は掛かる距離を十五分で移動したものね……でもさぁ……元を辿れば……
「リナ、どうした?具合が悪いのか?」
お城に着いてから黙り込んだ私を心配して、ランバートさんが顔を覗き込んだり額に触れて熱を測る。……そうじゃない……そうじゃない
「私を巻き込まないで下さい!!」
「え?」
「もう、知らない!」
「リナ、待って!」
慌てふためく彼が騒ぎを起こすなって、お義父様から怒られるまであと五分。
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