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本編
そして、これから
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元侯爵が捕まって半年が過ぎ、解析や解体作業も全て終わった。その間に長い様で短い裁判も結審し彼らの刑が確定した。
先ず元侯爵。最初は死刑も視野に話合いが進んでいたけど、オーウェンさんが言った一言で状況が一変した。
「簡単に死なせては償いにはならん」
そう、魔具暴発で後遺症を残した人や家が壊れた人等、被害者への慰謝料と支援金を稼ぐ為にどうするのか。そんな話から本人に稼いで貰う事になって、魔力が多い人しか入れない山奥で魔石の採掘する事になった。そこは良質な魔石が採れるが魔物も多いらしいので命懸けの作業だ。
そして、侯爵家の息子と娘もそれぞれの刑が決まって昨日、ひっそりと旅立った。
娘は父親に言われるがままランバートさんを誘惑しようとしたらしい。勇者の彼と結婚出来れば一生、贅沢な暮らしが出来ると考えていたが実際には近付く事すら出来なかった。彼の殺気を浴びて失神してしまったとか、彼女は一生を神に捧げ質素倹約の生活が始まっている。
息子は事件の犯人が父親だと気付いていたが隠蔽する為に、賄賂や誘拐をしていた。隠蔽の理由は侯爵家の名に、これ以上のキズをつけたくなかったのと、お金が欲しかったから。自分の保身とお金の為に行った犯罪行為は悪質となり、重大犯罪者のみが収容されている孤島に送られた。残りの人生を孤島で採掘して過ごす事になった。
そして、私は……
「リナ、準備は済んだか?」
「うん、今行くよ」
扉の外から声を掛けてきたのはランバートさん。そう、私は今日、念願だった旅に出発する。先ずは両親のお墓参りに行きたいと思っていて彼も承諾してくれた。
「ディー、これは何?」
彼の手には小さな皮袋が握られていて首を傾げる。袋と彼の顔を交互に見ると、空いている手で口元を押さえて視線を反らした。
「……?」
「その……呼び方が嬉しい」
改めて言われると恥ずかしいから止めて!だって自分で言ったじゃん!愛称で呼んでって、ずっと言うからお義父様とは違う呼び方で呼ぶ事になったのにぃぃ!
「ごめん、ごめん。そんなに拗ねないでくれよ」
「……で、それナニ?」
「あぁ、オーウェン殿からリナに渡してくれって」
オーウェンさんは、事件の後始末が終わると森に帰って行った。何時でも遊びに来いなんて言ったのに、いつの間に来たの?
『友は素直じゃないならのう』
「ドラゴンさん?」
『見送りは寂しいのじゃよ』
ドラゴンさんは奥さんだったドラゴンの魔石と融合した後、意識を取り戻すとスラスラと話せる様になっていた。奥さんの記憶と混ざったおかげらしい。
「ふーん」
ランバートさんから袋を受け取り中身を確認すると、色とりどりの丸薬と小さな紙切れが二枚。
『困った時に使え。次、会える時を楽しみにしている』
一枚には短い手紙が書いてあり、もう一枚には丸薬の効能が書いてあった。傷薬、胃腸薬、解毒に…………体力回復が何故、一番多いの?歩くから?
「何が基準?」
「どうした?」
「いやー、中身は丸薬なんだけど……意味が分かんない」
彼も横から覗き込んで首を傾げた。初めての長旅で疲れるからかなぁ?まぁ、良いや。
オーウェンさんの丸薬をポーチに入れると立ち上がり荷物を背中に背負った。
彼と二人で入口に向かうと、お義父様と王妃様が見送りに来てくれていた。王様は王太子と外交に行っていて不在で、お義父様は代役も兼ねてお城に残る事になった。
「リナ、ランディー。身体に気をつけろよ」
「何時でも遊びにきてね」
「はい!行ってきます」
二人に別れを告げて私達は世界を見る旅に出た。先ずは私の産まれ故郷に行って、次はランバートさんの家族に会いに行く。
さぁ、どんな旅になるかなぁ?楽しみ!
先ず元侯爵。最初は死刑も視野に話合いが進んでいたけど、オーウェンさんが言った一言で状況が一変した。
「簡単に死なせては償いにはならん」
そう、魔具暴発で後遺症を残した人や家が壊れた人等、被害者への慰謝料と支援金を稼ぐ為にどうするのか。そんな話から本人に稼いで貰う事になって、魔力が多い人しか入れない山奥で魔石の採掘する事になった。そこは良質な魔石が採れるが魔物も多いらしいので命懸けの作業だ。
そして、侯爵家の息子と娘もそれぞれの刑が決まって昨日、ひっそりと旅立った。
娘は父親に言われるがままランバートさんを誘惑しようとしたらしい。勇者の彼と結婚出来れば一生、贅沢な暮らしが出来ると考えていたが実際には近付く事すら出来なかった。彼の殺気を浴びて失神してしまったとか、彼女は一生を神に捧げ質素倹約の生活が始まっている。
息子は事件の犯人が父親だと気付いていたが隠蔽する為に、賄賂や誘拐をしていた。隠蔽の理由は侯爵家の名に、これ以上のキズをつけたくなかったのと、お金が欲しかったから。自分の保身とお金の為に行った犯罪行為は悪質となり、重大犯罪者のみが収容されている孤島に送られた。残りの人生を孤島で採掘して過ごす事になった。
そして、私は……
「リナ、準備は済んだか?」
「うん、今行くよ」
扉の外から声を掛けてきたのはランバートさん。そう、私は今日、念願だった旅に出発する。先ずは両親のお墓参りに行きたいと思っていて彼も承諾してくれた。
「ディー、これは何?」
彼の手には小さな皮袋が握られていて首を傾げる。袋と彼の顔を交互に見ると、空いている手で口元を押さえて視線を反らした。
「……?」
「その……呼び方が嬉しい」
改めて言われると恥ずかしいから止めて!だって自分で言ったじゃん!愛称で呼んでって、ずっと言うからお義父様とは違う呼び方で呼ぶ事になったのにぃぃ!
「ごめん、ごめん。そんなに拗ねないでくれよ」
「……で、それナニ?」
「あぁ、オーウェン殿からリナに渡してくれって」
オーウェンさんは、事件の後始末が終わると森に帰って行った。何時でも遊びに来いなんて言ったのに、いつの間に来たの?
『友は素直じゃないならのう』
「ドラゴンさん?」
『見送りは寂しいのじゃよ』
ドラゴンさんは奥さんだったドラゴンの魔石と融合した後、意識を取り戻すとスラスラと話せる様になっていた。奥さんの記憶と混ざったおかげらしい。
「ふーん」
ランバートさんから袋を受け取り中身を確認すると、色とりどりの丸薬と小さな紙切れが二枚。
『困った時に使え。次、会える時を楽しみにしている』
一枚には短い手紙が書いてあり、もう一枚には丸薬の効能が書いてあった。傷薬、胃腸薬、解毒に…………体力回復が何故、一番多いの?歩くから?
「何が基準?」
「どうした?」
「いやー、中身は丸薬なんだけど……意味が分かんない」
彼も横から覗き込んで首を傾げた。初めての長旅で疲れるからかなぁ?まぁ、良いや。
オーウェンさんの丸薬をポーチに入れると立ち上がり荷物を背中に背負った。
彼と二人で入口に向かうと、お義父様と王妃様が見送りに来てくれていた。王様は王太子と外交に行っていて不在で、お義父様は代役も兼ねてお城に残る事になった。
「リナ、ランディー。身体に気をつけろよ」
「何時でも遊びにきてね」
「はい!行ってきます」
二人に別れを告げて私達は世界を見る旅に出た。先ずは私の産まれ故郷に行って、次はランバートさんの家族に会いに行く。
さぁ、どんな旅になるかなぁ?楽しみ!
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