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本編
力の差
しおりを挟む「よう、イーサン」
「……カイン……」
元侯爵がお義父様の名前を言った時、廊下が歪んでその場に居た全員が別の場所に座らせて転移した。え?ここ……騎士団の演習場……でも、結界が二重になってる。
私の側に来たランバートが手を差し出したから、その手を掴んで立ち上がる。マスターと少年も急に場所が変わって驚いている。全員を転移させたオーウェンさんは、珍しくフードで顔を隠してお義父様の横に立って居た。
「イーサン、お前が魔法が使えないのは怪我のせいじゃない。魔力量に頼りすぎて基礎座学を疎かにしたツケだ」
「!?」
お義父様が言った事が納得出来ないのか、元侯爵は表情を変えてお義父様を睨み付けた。そんな姿を見てお義父様は鼻で笑っている。
「さぁ、決着をつけようじゃないか……どちらが上なのか」
お義父様の言葉を聞いた元侯爵の表情が変わった。怒りと焦りの色が浮かぶ眼でこちらを睨み付けた。
「クッ……多勢に無勢か?一人じゃ何も出来ない腰抜けが!」
「安心しろ一人で相手してやる」
一歩前に出たお義父様を誰も止めない。私の側には盾になるような位置でランバートさんが立った。
「手を出すなよ」
ランバートさんにそう言われてマスターと私が黙って頷くと彼も頷き、演習場の中央で向き合う二人に視線を向けた。全員が見守る中、二人の因縁に決着をつける戦いが始まった。
「さぁ、かかって来いよ」
「調子に乗るな糞がぁぁ!!!!」
お義父様の挑発に乗せられた元侯爵がお義父様に向かって真っ直ぐに走って行く。当然、お義父様は身体を横にずらして避けると足を掛けて転ばせた。
「こんなのに引っ掛かるか?単細胞。魔法が使えないお前に合わせてやってんだぞ」
「煩い!」
転んで砂だらけになりながらも元侯爵は何度もお義父様に向かって殴ろうとしたけど一度も当たらなかった。え?お義父様、手抜きしてるのに……この人、弱くない?
「どうした?腰に着けたへっぽこ魔具でも使ったらどうだ?」
「馬鹿にするな!」
挑発に乗せられて無限収納から新たな魔具を5個も取り出した元侯爵。さっきマスターの魔法を破壊する時にも、その数に驚いたけどまだ持っている事に驚いた。このお金は何処から?マガユダから貰ってから金貨だけじゃないはず。
「魔具を作る金はどうした?それは不正の大事な証拠になるな」
「何の証拠だ。不安を煽る作戦か?」
元侯爵がお義父様の言葉を鼻で笑い飛ばすと、取り出した魔具を一斉発射しようとしたが全て動かなかった。
「なっ!?」
「お前の魔力は俺とほぼ同量。大きな違いは知識と……」
そう言いながらお義父様は指で何かを弾き飛ばして、元侯爵の魔具を弾き飛ばしてマスターが魔具を拾い集めて大きな袋に纏めて入れる。
「そして、経験……お前はあの時から成長していない」
暫く睨み合っていた二人だったけど、お義父様が地面を蹴って前に出ると元侯爵の前で身体を低くした。いきなり視界から消えて狼狽えた元侯爵の一瞬の隙をついて、お義父様の拳が相手のお腹にめり込んだ。
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