上 下
97 / 107
本編

全てを終わらす為に side ロン

しおりを挟む

「おう、今戻ったぞ」

 ギルドに戻ると中にいた連中の視線が一気に集まったじゃねぇか。たく……なんだよ。

「あの、彼女は無事だったんですか?」

「いや、一足違げぇだった」

 お嬢ちゃんの考えた通りに嘘の情報を伝える。足を怪我して一人では歩けねぇと大袈裟に言い、視線だけ入口横のソファーに向けると予想通りの違和感があるじゃねぇか。お嬢ちゃん、大正解だぜ。

「マリンはいるか?」

「はーい。何ですか?」

 部屋の置くから顔だけ出した、うちの魔具製造士にお嬢ちゃんが纏めた書類を渡した。

「お前の魔具、失敗だった。これを参考してくれ」

「え?……は?……これは誰が?」

「お嬢ちゃんは魔具修理士だ……王様の兄貴に習ったとか言ってたか」

 マリンが目を見開いて驚いているじゃねぇか。何なんだよ。

「王様のお兄さんって、カイン様ですか!!良いなぁ~」

 あ?王様の兄貴は有名なのか?マリンから見りゃあ、魔具製造修理の神様だと言い出した。マリンが褒めれば褒める程、ソファーから殺気が流れ始める。おぉ、こりゃ兄貴ってのは、相当の怨みをかってんのか?……お貴族様のドロドロは怖いねぇ。

「マリン、分かったから黙れ。お嬢ちゃんは怪我が治ったら来るから直接聞けや」

「はぁい」

 跳び跳ねる様に書類を抱えたマリンが部屋に引っ込むと受付が静かになった。

「おい、ゲーリー」

 受付の中で雑用をしていたゲーリーに声を掛けると、手を止めて顔を上げた。コイツ、また徹夜で犯人捜ししたな。

「話がある。俺の部屋に来い」

 俺の後をついて来たゲーリーが、例のソファーの前を素通りする。よく見りゃあ、他の連中もソファーに近付こうとしねぇ。お嬢ちゃんに言われなきゃ本当に気付かねぇな。ゲーリーにも教えられねぇ。コイツはすぐ顔に出る。
 ゲーリーが部屋に入ると鍵を掛け魔法で更に開かねぇ様に固定した。

「マスター?」

 怪訝な表情を浮かべるゲーリーに顎でソファーに座る様に促しゃあ渋々座る。本当に可愛げねぇガキだ。

「三年前の事件に進展があったぞ」

 この一言でゲーリーの表情が変わる。理不尽な捜査に怒りを溜めてりゃあ当然か。

「お前、犯人の特徴を忘れてねぇよな?」

「当たり前じゃないですか」

 丁寧な言葉使いは変わらねぇが苛ついた態度じゃねぇか……へこたれてねぇなら良し。

「今晩、俺と一緒に城に行くぞ」

「は?城に行くって何でだよ」

「犯人の目星がついた。しかも、今日か明日にはお嬢ちゃんを狙って動く可能性が高けぇ」

 急展開について行けねぇのか口をポカンと開けたままゲーリーが動かねぇな。どうすっかねぇ……

「お前は俺と城に行って勇者や王様達に直接、犯人の事を話せ。分かったか!!」

「はい、マスター!!」

 ギルドの仮眠室で休んで夜に備える様、言ってからゲーリーを部屋から追い出す。さて、俺は勇者に連絡と夜に備えて……


久々に俺の獲物を出すかねぇ




次からイリーナ視点に戻ります
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

平凡な高校生活を送る予定だったのに

空里
恋愛
高校生になり数ヵ月。一学期ももうそろそろ終わりを告げる頃。 僕、田中僚太はクラスのマドンナとも言われ始めている立花凛花に呼び出された。クラスのマドンナといわれるだけあって彼女の顔は誰が見ても美人であり加えて勉強、スポーツができ更には性格も良いと話題である。 それに対して僕はクラス屈指の陰キャポジである。 人見知りなのもあるが、何より通っていた中学校から遠い高校に来たため、たまたま同じ高校に来た一人の中学時代の友達しかいない。 そのため休み時間はその友人と話すか読書をして過ごすかという正に陰キャであった。 そんな僕にクラスのマドンナはというと、 「私と付き合ってくれませんか?」 この言葉から彼の平凡に終わると思われていた高校生活が平凡と言えなくなる。

公爵令嬢姉妹の対照的な日々 【完結】

あくの
恋愛
 女性が高等教育を受ける機会のないこの国においてバイユ公爵令嬢ヴィクトリアは父親と交渉する。  3年間、高等学校にいる間、男装をして過ごしそれが他の生徒にバレなければ大学にも男装で行かせてくれ、と。  それを鼻で笑われ一蹴され、鬱々としていたところに状況が変わる出来事が。婚約者の第二王子がゆるふわピンクな妹、サラに乗り換えたのだ。 毎週火曜木曜の更新で偶に金曜も更新します。

悪役令嬢はお断りです

あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。 この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。 その小説は王子と侍女との切ない恋物語。 そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。 侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。 このまま進めば断罪コースは確定。 寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。 何とかしないと。 でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。 そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。 剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が 女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。 そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。 ●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ●毎日21時更新(サクサク進みます) ●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)  (第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。

【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい

tea
恋愛
愛読していた小説の推しが死んだ事にショックを受けていたら、おそらくなんやかんやあって、その小説で推しを殺した悪役令嬢に転生しました。 本来悪役令嬢が恋してヒロインに横恋慕していたヒーローである王太子には興味ないので、壁として推しを殺さぬよう陰から愛でたいと思っていたのですが……。 人を傷つける事に臆病で、『壁になりたい』と引いてしまう主人公と、彼女に助けられたことで強くなり主人公と共に生きたいと願う推しのお話☆ 本編ヒロイン視点は全8話でサクッと終わるハッピーエンド+番外編 第三章のイライアス編には、 『愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします』 のキャラクター、リュシアンも出てきます☆

死を願われた薄幸ハリボテ令嬢は逆行して溺愛される

葵 遥菜
恋愛
「死んでくれればいいのに」  十七歳になる年。リリアーヌ・ジェセニアは大好きだった婚約者クラウス・ベリサリオ公爵令息にそう言われて見捨てられた。そうしてたぶん一度目の人生を終えた。  だから、二度目のチャンスを与えられたと気づいた時、リリアーヌが真っ先に考えたのはクラウスのことだった。  今度こそ必ず、彼のことは好きにならない。  そして必ず病気に打ち勝つ方法を見つけ、愛し愛される存在を見つけて幸せに寿命をまっとうするのだ。二度と『死んでくれればいいのに』なんて言われない人生を歩むために。  突如として始まったやり直しの人生は、何もかもが順調だった。しかし、予定よりも早く死に向かう兆候が現れ始めてーー。  リリアーヌは死の運命から逃れることができるのか? そして愛し愛される人と結ばれることはできるのか?  そもそも、一体なぜ彼女は時を遡り、人生をやり直すことができたのだろうかーー?  わけあって薄幸のハリボテ令嬢となったリリアーヌが、逆行して幸せになるまでの物語です。

処理中です...