[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ

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本編

規格外なお嬢ちゃん side ロン

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「お嬢ちゃんは危ねぇから、うちに来んな。犯人捜しはこっちでやっとくから」

「え?嫌です」

 お嬢ちゃん宛の脅迫状の様な依頼書を見て、危険を避ける為に来るなと言えば嫌だと言いやがる。なんだってんだよ

「私、悪いことしてませんし、大人しくしているなんて無理です」

 シレッとそんな事を言ったお嬢ちゃんは、数日前に部屋を荒らされ薬品を撒かれたと言った。しかも……

「出ていけって書いた紙まで入っていたのかよ」

「紙を書いた犯人は捕まりましたよ。男の方がまだなので、依頼書もその人だと思います」

 脅迫を匂わす手紙が来ようが、顔洗いの桶に薬品が入れられようが気にしてねぇのかよ。気付かずに顔を洗っていたら、どうなっていたことやら。それでも平然としているなんざ、どんだけ肝の据わったお嬢ちゃんだ。

「これ、利用しませんか?」

「はぁ?どうやって」

 冷静な表情で薬品で体調を崩した事を襲われて大怪我した事にして、ギルド内に嘘の情報を流すと言い出しやがった。自分が命狙われてっかも知れねのに、何を考えてやがる。

「直接渡してない依頼書ですから、姿を隠してギルドの様子を伺っていると思います」

 へぇー、ちゃんと理由があっての意見か。思い付きじゃねぇのか。じゃあ、最後まで話を聞いてやるよ。

「相手は姿隠しと防御壁の魔具を持ってます。私達に気付かれない自信がある筈です」

「ほぉ、じゃあなんだい。ギルドの建物入口にでも居るって言うのか?」

「建物の中に入って直ぐのソファーに座って様子を見ているかもしれませんね」

 こりゃ、驚いた。この歳で、そこまで考える冷静さと良い、一度しか来ていない建物の家具の配置を覚えているってのか?勇者も驚いているじゃねぇか……こりゃ、面白い。

「ちっと聞きてぇが同じ部屋に居て他の奴らと、ぶつかったりしねぇのか?」

「しないです。姿隠しの特徴は認識阻害と回避ですから」

「認識阻害は分かるが回避ってのはなんだ?」

「それは……」

 流石、魔具修理士だ。説明も分かりやすい。へぇー、認識阻害だけだと身体に触れるとバレるから、相手には自分を障害物だと思わせて回避させするってのか。

「それでも魔具を使っていると分かっている相手には効果は薄いので分かります」

「なるほど。今、話を聞いた俺にはバレるが何も知らん従業員はバレれねぇって事だな」

「そうです。だから雨風凌ぐ為にも建物の中にいると考えて行動するべきです」

 お嬢ちゃんの意見に同意すると勇者の顔が歪む。何か言いてぇっ顔してやがる。それでも黙っているってのは何か考えがあるのか?

「ランバートさん、何か?」

「……いや……」

 おや、珍しい。勇者が言いたい事を言わないなんざ何事だよ。……お嬢ちゃんも隠し事に気付いたって顔してんな。しかし、二人で見詰め合って何やってんだ?

「嘘の情報を流した後、またイリーナの部屋に侵入する可能性がある」

 そりゃ、狙われてるのはお嬢ちゃんだから、弱ってんなら来るだろうよ。お嬢ちゃんだってそこは分かっていんだろう?

「当たり前じゃないですか。だからこそ待ち伏せも出来ます」

「っ!」

「大丈夫ですよ。コレにオーウェンさんが防御魔法を追加してくれましたから」

「「はぁ!?」」

 お嬢ちゃんが胸元から取り出したのは“身代わりの護り石”じゃねぇか。そんなレア物何処で……あー勇者が迷宮で拾ってきてたが、まさかお嬢ちゃんに渡したのか?

「それは薬品には効果がなかったじゃないか。命の危機にならないと発動しないぞ」

「オーウェンさんが追加した防御は、対物攻撃に状態異常に……」

 はぁ?貴重な装備品に何の魔法を追加してんだよ。さっきから名前が出てくる謎の男はなに者だ?

「なぁ、勇者。オーウェンってのは誰だ?」

「エルフだよ」

「はぁ!?」

 勇者の話じゃ、剣を造った魔法使いだろう?唯でさえ気難しいエルフの中でも、頑固で厄介な奴じゃねぇのかよ。

「彼女は特別らしい」

 はぁー驚いた。エルフに気に入られるわ、特別扱いされるわ………本当、規格外のお嬢ちゃんだよ。

「情報を流した後は、そっちでヤってくれ。俺は帰る」

 受け取った書類を振りながら扉に向かうと、勇者が出口まで送ると言いやがった。……あーヤダねーまだ、何かあんのかよ。

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