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本編
先ずはギルドから
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今、私達は王都のギルドに向かっている。それは王様とお義父様のせい!修理代だとランバートさん経由で支払われた金額が金貨十枚。街での買い物には向かない金貨に困っていたら、彼がギルドを薦めてくれた。
『旅をしたいならギルドに登録して身分証を発行すれば移動がしやすい』
そう言って彼が教えてくれたのは、ギルドに登録するとお金が預けられるし他国に行っても、ギルドから引き出しが出来る事だった。世間知らずの私は、社会勉強を兼ねて先ずはギルドで登録と預け入れする事に。お城から王都の中心地へ行く定期馬車に乗って、着いたギルドは四階建ての大きなレンガ造りの建物だった。
「わー、大きいですね」
「国や街で大きさが変わる。ここのギルドは大きい方だな」
ランバートさんの後ろについて中に入ると、一斉に視線が集まる。その中には怖いくらいの殺気が混じっていて、思わず彼の背中に隠れた。
「ギルマスに面会の約束をしていたがいるか?」
「は、はい!こ、こちらからどうぞ」
ランバートさんを見て慌てて案内する従業員らしき人が、チラチラと私に物言いたげに視線を向ける。偉い人に会うのに知らない人がいたら問題になるのかな?
「彼女は俺の連れだ」
そう言って私の手を握った彼に連れられて階段を登り始めると、後ろからワッと大きな声が上がる。
『勇者様の連れって、彼女!?』
『はぁ?あの無表情、無愛想の勇者様に?そんなバカな!!』
『明日は槍でも降るんじゃねぇ?』
……えっと、なんか言いたい放題って、こういう事だろうな。チラッと彼の表情を伺うと、かなり不機嫌そう。眉間に深いシワを寄せいたから、無意識に手を伸ばしてそこに触れた。
「シワが凄いですよ」
少し驚いた様に目を見開いた彼は、立ち止まると笑いながら私の頭を撫でた。再び階段を上がった先には、重厚な扉があった。扉の前に立つと中から勝手に開いた。
「おい、勇者!彼女連れって本当か!!」
開いた扉から勢いよく飛び出してきた男性は、私の顔を見るなり動きを止めるとランバートさんの顔を見る。この人がギルドマスターなの?
「あの……ギルドマスターさん?」
「お嬢ちゃん、驚かせて悪りぃな。俺がギルマスのロンだ。マスターでもギルマスでも好きに呼んでくれ。よろしくな」
「私はイリーナです。マスター、こちらこそ、よろしくお願いします」
私が頭を下げるとマスターは、白い歯を見せてニカッと笑い握手を求めて手を差し出した。その手を握ろうと手を出したと同時にランバートさんが私を引き寄せ、マスターを動物を追い払う様に手でシッシッと払い退ける。そんな彼の姿を食い入る様に見たマスターは、大きな声で笑いながら私達を部屋に入れてくれた。
部屋のソファーを勧められ座ったけどマスターは、まだ笑っていて涙まで浮かんでいた。
「うるさい。黙れ」
「だってよ、あんたが嫉妬する様な男に見えなかったが……握手すらダメって……グッ」
ランバートさんが怒るけど話の途中でマスターは我慢出来ずに、再び吹き出して笑い始める。ランバートさんは私の隣で、腕を組んで眉間に深いシワを寄せ不機嫌を隠そうともしない。いつまでも笑っているマスターに、彼は舌打ちした。
「笑ってないで、イリーナの登録をしてくれ」
「あぁ、一般の受付じゃヤバイんだったな」
そう言ってマスターが机の上の箱から透明の丸い玉の付いた板を取り出した。
「これに手で触れるだけで良い。これは鑑定用の魔具だ。嘘はバレるし犯罪歴も全て判るしろもんだ」
嘘はともかく、犯罪歴と聞いて、そこまで?と思っだけど、マスターの説明を聞いたら納得した。ギルドの登録カードは世界共通だから、他の国で犯罪歴があってもバレるし、逆に冤罪もバレるから便利らしい。感心しながら魔具に触れると、玉が光った後、板に文字が浮かんで一枚のカードになって出てきた。カードの色が白い?あれ?ランバートさんが見せてくれたカードは白銀色だったよね。何が違うの?
「こりゃ……一階で登録しなくて良かった。お嬢ちゃん、このカードは隠しとけ」
魔具から出たカードを見ながら深いため息と共にマスターがそう言って私にそれを渡してくれた。
「え?何か問題でもあったんですか?」
ため息の理由が分からずカードを見て見ると、名前のしたに文字が大量に書かれている。えーと、ナニが書いてあるの?
魔具修理士
それは当然か。今の職業だしね。
回復魔法使い
大分、扱いに慣れたよね。
緋色の巫女の末裔
は?えーと、魔王さんが言ってた巫女の事だよね?私がその末裔!?
凖王族
……お義父様のせいだね。後で文句を言う!
特異魔力量
……無限!!!!
はぁ!?ちょっと待って!私、平凡な一般人ですよ?どうして、こうなったの!!!!
「お嬢ちゃん、カードの色が白いって事は回復魔法の使い手だって、自分で言っている様なもんだ。それを見ただけで悪い奴らから狙われるぞ」
…………そんな危険なカード要りません!
『旅をしたいならギルドに登録して身分証を発行すれば移動がしやすい』
そう言って彼が教えてくれたのは、ギルドに登録するとお金が預けられるし他国に行っても、ギルドから引き出しが出来る事だった。世間知らずの私は、社会勉強を兼ねて先ずはギルドで登録と預け入れする事に。お城から王都の中心地へ行く定期馬車に乗って、着いたギルドは四階建ての大きなレンガ造りの建物だった。
「わー、大きいですね」
「国や街で大きさが変わる。ここのギルドは大きい方だな」
ランバートさんの後ろについて中に入ると、一斉に視線が集まる。その中には怖いくらいの殺気が混じっていて、思わず彼の背中に隠れた。
「ギルマスに面会の約束をしていたがいるか?」
「は、はい!こ、こちらからどうぞ」
ランバートさんを見て慌てて案内する従業員らしき人が、チラチラと私に物言いたげに視線を向ける。偉い人に会うのに知らない人がいたら問題になるのかな?
「彼女は俺の連れだ」
そう言って私の手を握った彼に連れられて階段を登り始めると、後ろからワッと大きな声が上がる。
『勇者様の連れって、彼女!?』
『はぁ?あの無表情、無愛想の勇者様に?そんなバカな!!』
『明日は槍でも降るんじゃねぇ?』
……えっと、なんか言いたい放題って、こういう事だろうな。チラッと彼の表情を伺うと、かなり不機嫌そう。眉間に深いシワを寄せいたから、無意識に手を伸ばしてそこに触れた。
「シワが凄いですよ」
少し驚いた様に目を見開いた彼は、立ち止まると笑いながら私の頭を撫でた。再び階段を上がった先には、重厚な扉があった。扉の前に立つと中から勝手に開いた。
「おい、勇者!彼女連れって本当か!!」
開いた扉から勢いよく飛び出してきた男性は、私の顔を見るなり動きを止めるとランバートさんの顔を見る。この人がギルドマスターなの?
「あの……ギルドマスターさん?」
「お嬢ちゃん、驚かせて悪りぃな。俺がギルマスのロンだ。マスターでもギルマスでも好きに呼んでくれ。よろしくな」
「私はイリーナです。マスター、こちらこそ、よろしくお願いします」
私が頭を下げるとマスターは、白い歯を見せてニカッと笑い握手を求めて手を差し出した。その手を握ろうと手を出したと同時にランバートさんが私を引き寄せ、マスターを動物を追い払う様に手でシッシッと払い退ける。そんな彼の姿を食い入る様に見たマスターは、大きな声で笑いながら私達を部屋に入れてくれた。
部屋のソファーを勧められ座ったけどマスターは、まだ笑っていて涙まで浮かんでいた。
「うるさい。黙れ」
「だってよ、あんたが嫉妬する様な男に見えなかったが……握手すらダメって……グッ」
ランバートさんが怒るけど話の途中でマスターは我慢出来ずに、再び吹き出して笑い始める。ランバートさんは私の隣で、腕を組んで眉間に深いシワを寄せ不機嫌を隠そうともしない。いつまでも笑っているマスターに、彼は舌打ちした。
「笑ってないで、イリーナの登録をしてくれ」
「あぁ、一般の受付じゃヤバイんだったな」
そう言ってマスターが机の上の箱から透明の丸い玉の付いた板を取り出した。
「これに手で触れるだけで良い。これは鑑定用の魔具だ。嘘はバレるし犯罪歴も全て判るしろもんだ」
嘘はともかく、犯罪歴と聞いて、そこまで?と思っだけど、マスターの説明を聞いたら納得した。ギルドの登録カードは世界共通だから、他の国で犯罪歴があってもバレるし、逆に冤罪もバレるから便利らしい。感心しながら魔具に触れると、玉が光った後、板に文字が浮かんで一枚のカードになって出てきた。カードの色が白い?あれ?ランバートさんが見せてくれたカードは白銀色だったよね。何が違うの?
「こりゃ……一階で登録しなくて良かった。お嬢ちゃん、このカードは隠しとけ」
魔具から出たカードを見ながら深いため息と共にマスターがそう言って私にそれを渡してくれた。
「え?何か問題でもあったんですか?」
ため息の理由が分からずカードを見て見ると、名前のしたに文字が大量に書かれている。えーと、ナニが書いてあるの?
魔具修理士
それは当然か。今の職業だしね。
回復魔法使い
大分、扱いに慣れたよね。
緋色の巫女の末裔
は?えーと、魔王さんが言ってた巫女の事だよね?私がその末裔!?
凖王族
……お義父様のせいだね。後で文句を言う!
特異魔力量
……無限!!!!
はぁ!?ちょっと待って!私、平凡な一般人ですよ?どうして、こうなったの!!!!
「お嬢ちゃん、カードの色が白いって事は回復魔法の使い手だって、自分で言っている様なもんだ。それを見ただけで悪い奴らから狙われるぞ」
…………そんな危険なカード要りません!
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