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本編
因果応報 side オーウェン
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『オーウェンさん。ありがとう!貴方のお陰で私、普通に暮らせるわ』
満面の笑顔でそう言った彼女が私の元を巣だって何年経っただろう。少女から大人の女性へと変わる瞬間を共に過ごした彼女は、自分の事より孫やその子を気にしていた。
『私、視えたの……あの娘が孫やその子供に迷惑を掛ける姿を』
幾つもある未来の一つでしかない未来視。それでも自分の命が消える寸前迄、孫やまだ見ぬその子供を心配していた友。人とエルフでは流れる時間が違う。儚く消える友との最後の約束は友の娘を止める事だった。
「こちらです」
昔を思い出していると友の娘とその夫が、城の者の案内で私が待つ部屋へとやって来た。不機嫌を隠そうともしない夫は、私の存在に気付いて身体を震わせた。
「え、エルフ様、失礼致しました。部屋を間違えた様です」
「待っていたぞ、マーラ」
自分の名を呼ばれて初めて私に気付いた娘は、青ざめた顔で後ろに一歩下がる。何も言わず震える手で口元を押さえながら頭を横に振った。
「逃げても無駄だ。友との最後の約束通りお前の魔力を消す」
小さな声で嫌だと繰り返す友の娘を見下ろしながら、その頭を鷲掴みにすると自分の魔力を流した。人にもエルフにも魔力を貯める為の器が身体の中にある。身体の中を探り器を見つけると、私の魔力を集めてそれを破壊した。私にだけ聞こえた器が割れる音。その音が響いた直後、手を放すと娘の身体から力が抜けてその場に倒れた。
「一体……何が……」
状況を理解していない夫がボソッと呟く。倒れた娘に手を差しのべる事もせず、唯黙って見ていた。
「お前も同罪だ。見捨てた娘の子が王族となった途端にすり寄るクズが」
ピクリと身体を震わせて信じられないと、言わんばかりに目を見開き私を見た。口を開けては閉じてを繰返し、言葉にならない音を出す。
「不愉快だ。黙れ」
ヒッと引きった声を上げる。馬鹿馬鹿しい、我々エルフは直接、人を殺める事はせん。その代わり……
「イリーナは今、命を狙われる程、重要な立場にある。貴様らクズと関わっている場合ではないのだ」
私の言葉が終わるのを図ったかの様に扉が開き、王が書類と書記官を連れて入室する。突然の王の登場に男は血の気の引いた顔で私と王を交互に見た。
「やぁ、マクガーレ子爵。君の書類の不備について尋ねたいのですが良いかね?」
自国の王の登場で黙るしか無い男は、震える手で差し出された書類を受け取った。
「君の娘は十八年間、行方不明だと聞いたけど、何故、経費書類に娘の為の宝飾品や衣装の購入が記載されているのですかね?」
「あ……それは……娘が何時帰って来ても良いようにと」
「この国の法律では貴族が三年以上、災害や犯罪等の非常時以外での行方不明の場合、一度、貴族名簿から削除しなければならない」
分かりやすく男の肩が揺れる。王がその事を指摘せず、自らの意思で貴族の責任を放棄した者は平民とし衣食住は領地経費から出せなくなるのだと言うと、男の顔は分かりやすく動揺した。
「マチルダ嬢は何処でしょう?イリーナを孫と呼ぶなら娘が亡くなった事も知っているのですよね」
冷や汗を拭う事も出来ず何も言えない男に、王は分かりやすいため息を吐いた。
「私も暇では無いのですよ。無言は肯定とみなします。言い訳は騎士の取調べでどうぞ」
「あ……い……嫌だ。申し訳御座いませんでした。し、知らなかったのです!」
「何年、当主をやって来たのでしょうね。ふざけた真似をするな!」
普段、穏やかな話し方の王の怒気を孕む言葉に、男は言葉を出せなくなるほど怯えた。王が手を上げると後ろで待機していた騎士が、男を牢屋へと連行して行った。
「先ずは一つか」
「一番、厄介なモノは最後になりそうですよ」
満面の笑顔でそう言った彼女が私の元を巣だって何年経っただろう。少女から大人の女性へと変わる瞬間を共に過ごした彼女は、自分の事より孫やその子を気にしていた。
『私、視えたの……あの娘が孫やその子供に迷惑を掛ける姿を』
幾つもある未来の一つでしかない未来視。それでも自分の命が消える寸前迄、孫やまだ見ぬその子供を心配していた友。人とエルフでは流れる時間が違う。儚く消える友との最後の約束は友の娘を止める事だった。
「こちらです」
昔を思い出していると友の娘とその夫が、城の者の案内で私が待つ部屋へとやって来た。不機嫌を隠そうともしない夫は、私の存在に気付いて身体を震わせた。
「え、エルフ様、失礼致しました。部屋を間違えた様です」
「待っていたぞ、マーラ」
自分の名を呼ばれて初めて私に気付いた娘は、青ざめた顔で後ろに一歩下がる。何も言わず震える手で口元を押さえながら頭を横に振った。
「逃げても無駄だ。友との最後の約束通りお前の魔力を消す」
小さな声で嫌だと繰り返す友の娘を見下ろしながら、その頭を鷲掴みにすると自分の魔力を流した。人にもエルフにも魔力を貯める為の器が身体の中にある。身体の中を探り器を見つけると、私の魔力を集めてそれを破壊した。私にだけ聞こえた器が割れる音。その音が響いた直後、手を放すと娘の身体から力が抜けてその場に倒れた。
「一体……何が……」
状況を理解していない夫がボソッと呟く。倒れた娘に手を差しのべる事もせず、唯黙って見ていた。
「お前も同罪だ。見捨てた娘の子が王族となった途端にすり寄るクズが」
ピクリと身体を震わせて信じられないと、言わんばかりに目を見開き私を見た。口を開けては閉じてを繰返し、言葉にならない音を出す。
「不愉快だ。黙れ」
ヒッと引きった声を上げる。馬鹿馬鹿しい、我々エルフは直接、人を殺める事はせん。その代わり……
「イリーナは今、命を狙われる程、重要な立場にある。貴様らクズと関わっている場合ではないのだ」
私の言葉が終わるのを図ったかの様に扉が開き、王が書類と書記官を連れて入室する。突然の王の登場に男は血の気の引いた顔で私と王を交互に見た。
「やぁ、マクガーレ子爵。君の書類の不備について尋ねたいのですが良いかね?」
自国の王の登場で黙るしか無い男は、震える手で差し出された書類を受け取った。
「君の娘は十八年間、行方不明だと聞いたけど、何故、経費書類に娘の為の宝飾品や衣装の購入が記載されているのですかね?」
「あ……それは……娘が何時帰って来ても良いようにと」
「この国の法律では貴族が三年以上、災害や犯罪等の非常時以外での行方不明の場合、一度、貴族名簿から削除しなければならない」
分かりやすく男の肩が揺れる。王がその事を指摘せず、自らの意思で貴族の責任を放棄した者は平民とし衣食住は領地経費から出せなくなるのだと言うと、男の顔は分かりやすく動揺した。
「マチルダ嬢は何処でしょう?イリーナを孫と呼ぶなら娘が亡くなった事も知っているのですよね」
冷や汗を拭う事も出来ず何も言えない男に、王は分かりやすいため息を吐いた。
「私も暇では無いのですよ。無言は肯定とみなします。言い訳は騎士の取調べでどうぞ」
「あ……い……嫌だ。申し訳御座いませんでした。し、知らなかったのです!」
「何年、当主をやって来たのでしょうね。ふざけた真似をするな!」
普段、穏やかな話し方の王の怒気を孕む言葉に、男は言葉を出せなくなるほど怯えた。王が手を上げると後ろで待機していた騎士が、男を牢屋へと連行して行った。
「先ずは一つか」
「一番、厄介なモノは最後になりそうですよ」
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