上 下
64 / 107
本編

お城を回るよ

しおりを挟む
「失礼します!魔具の点検、修理に来ました」

「あぁ、待っていたよ。早速、頼むよ」

 そう挨拶して入室する私の後ろに、ランバートさんがついてくる。王様が連絡した翌日から、早速、城内を一部屋づつ回っていた。
 騎士団の点検は、休憩時間に継続的にしているから今のところ苦情や問題は起きてない。文官や貴族のお偉いさんも自分で持って行く必要が無いし、目の前で点検修理するから安心なんだとか。

「すみません、自分は椅子で休ませて貰えませんか?」

 ランバートさんが、この部屋の貴族に声を掛けて椅子を借りる。私が今からやる事の説明をしている時に、ランバートさんは椅子に座って密かに魔具を調べていた。

「勇者様は、どうされた?」

 椅子に座って目を閉じる彼は、メイクで隈を作っているから疲れている様に見える。

「寝不足だそうです。私も詳しくは教えて頂いておりませんので、申し訳ありません」

 理由を聞かれても曖昧に笑って誤魔化して、はっきりした理由は言わない。寝不足としか言っていないのに、二日過ぎた頃には『勇者様は体調が悪い』と城内で噂になっている。噂が回るのは早いよね。

「部品の交換、完了しました。ご確認下さい」

 魔具の確認が終わると、ランバートさんが目を開ける私を見て首を横に振った。ここにも無かったんですね~。次に行きましょう。

 こうして一部屋づつ回っていても、魔具は全く見付からない。近くにある気配はするらしいけど、認識妨害されているのか場所が特定出来ないでいた。



 そんな日々が続いたある日。中庭を通って隣の棟に移動しようとした時、ランバートさんが急に立ち止まると、地面に膝をついた。

「え?どうしたんですか?」

「……ココに何かある……下がって」

 彼の静かな声に私は黙って後ろに下がった。彼は地面に触れたかと思うと、目を閉じて地面の中に魔力を流し始めた。陽炎の様に彼の回りの空気が揺らぎ、中庭から低い音が微かに聞こえ始める。

ギ……ギギ……ギギ

 軋む様な音が続いた後、地面の一部が盛り上がり黒い塊が出てきた。直接触らない様に回りの土を落とすと、黒い小箱の様なモノが出てきた。

「今は作動していない……コレだろうな」

『奴ノ魔力ハ感ジナイゾ』

「繋がっていないからか?師匠にも見て貰うか」

 お義父様から預かっていた遮断機能がついた箱に、彼が持っている魔具を入れるとスッと肩の力が抜けた気がした。無意識に力が入っていたんだろうな……肩が痛いや。それにしても……この穴深いよね?

「こんなに深い穴をどうやって見付からない様に掘ったんでしょう?」

 フッと頭に浮かんだ疑問を口にすると、ランバートさんが上を見上げてもう一度地面を見る。

「……穴を作ったのは俺だ」

 はい?俺って、ランバートさんが?何故に?
 頭の中が疑問符だらけの私に教えてくれたのは、集まった闇を払った時、時間短縮で窓から飛び降りた話だった。

「宰相様の部屋の窓から飛び降りた?」

「あぁ、この上の階から降りた」

 彼が示す部屋はお城の上部、四階の窓だった。身体強化の魔法を使ったから問題ない?……天然でしたね。普通、窓から飛び降りたりしないですから!

「この先に医務室があるんだ」

 医務室とか関係ないでしょう!え?前に声を掛けてきた貴族の変な女性が公爵令嬢だった?私が闇に取り込まれた時、彼女も倒れて医務室で闇に囲まれていた?

「あの人が掛けた呪詛だったんじゃ……」

「無意識に使った反動だろうな。力を消したから二度と使えないはずだ」

 笑顔で安心だと言うけど、力を消すって何ですか?私は聞いた事が無いですよ。魔力同士をぶつけて相殺すると消えるんですか。かなり強引な気がするよ。


ランバートさんって……怒ったら容赦無いですね……





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

平凡な高校生活を送る予定だったのに

空里
恋愛
高校生になり数ヵ月。一学期ももうそろそろ終わりを告げる頃。 僕、田中僚太はクラスのマドンナとも言われ始めている立花凛花に呼び出された。クラスのマドンナといわれるだけあって彼女の顔は誰が見ても美人であり加えて勉強、スポーツができ更には性格も良いと話題である。 それに対して僕はクラス屈指の陰キャポジである。 人見知りなのもあるが、何より通っていた中学校から遠い高校に来たため、たまたま同じ高校に来た一人の中学時代の友達しかいない。 そのため休み時間はその友人と話すか読書をして過ごすかという正に陰キャであった。 そんな僕にクラスのマドンナはというと、 「私と付き合ってくれませんか?」 この言葉から彼の平凡に終わると思われていた高校生活が平凡と言えなくなる。

公爵令嬢姉妹の対照的な日々 【完結】

あくの
恋愛
 女性が高等教育を受ける機会のないこの国においてバイユ公爵令嬢ヴィクトリアは父親と交渉する。  3年間、高等学校にいる間、男装をして過ごしそれが他の生徒にバレなければ大学にも男装で行かせてくれ、と。  それを鼻で笑われ一蹴され、鬱々としていたところに状況が変わる出来事が。婚約者の第二王子がゆるふわピンクな妹、サラに乗り換えたのだ。 毎週火曜木曜の更新で偶に金曜も更新します。

悪役令嬢はお断りです

あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。 この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。 その小説は王子と侍女との切ない恋物語。 そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。 侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。 このまま進めば断罪コースは確定。 寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。 何とかしないと。 でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。 そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。 剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が 女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。 そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。 ●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ●毎日21時更新(サクサク進みます) ●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)  (第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい

tea
恋愛
愛読していた小説の推しが死んだ事にショックを受けていたら、おそらくなんやかんやあって、その小説で推しを殺した悪役令嬢に転生しました。 本来悪役令嬢が恋してヒロインに横恋慕していたヒーローである王太子には興味ないので、壁として推しを殺さぬよう陰から愛でたいと思っていたのですが……。 人を傷つける事に臆病で、『壁になりたい』と引いてしまう主人公と、彼女に助けられたことで強くなり主人公と共に生きたいと願う推しのお話☆ 本編ヒロイン視点は全8話でサクッと終わるハッピーエンド+番外編 第三章のイライアス編には、 『愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします』 のキャラクター、リュシアンも出てきます☆

死を願われた薄幸ハリボテ令嬢は逆行して溺愛される

葵 遥菜
恋愛
「死んでくれればいいのに」  十七歳になる年。リリアーヌ・ジェセニアは大好きだった婚約者クラウス・ベリサリオ公爵令息にそう言われて見捨てられた。そうしてたぶん一度目の人生を終えた。  だから、二度目のチャンスを与えられたと気づいた時、リリアーヌが真っ先に考えたのはクラウスのことだった。  今度こそ必ず、彼のことは好きにならない。  そして必ず病気に打ち勝つ方法を見つけ、愛し愛される存在を見つけて幸せに寿命をまっとうするのだ。二度と『死んでくれればいいのに』なんて言われない人生を歩むために。  突如として始まったやり直しの人生は、何もかもが順調だった。しかし、予定よりも早く死に向かう兆候が現れ始めてーー。  リリアーヌは死の運命から逃れることができるのか? そして愛し愛される人と結ばれることはできるのか?  そもそも、一体なぜ彼女は時を遡り、人生をやり直すことができたのだろうかーー?  わけあって薄幸のハリボテ令嬢となったリリアーヌが、逆行して幸せになるまでの物語です。

処理中です...