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本編

回復したけど……

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 変な虹色の丸薬を飲んだランバートさんに、大きな変化があった。二時間程寝たら完全回復していた。様子を見に来た王様とお義父様も彼の変わりように絶句している。

「えっと……何があった教えていただけますか?」

 王様から戸惑う様な声で聞かれて、変な丸薬を全部、飲んでしまった事を伝えた。二時間で回復って事は効果はあったって事だから成功だったの?

「イリーナの魔法は凄いな」

 ベッドから飛び起きた彼が、部屋の中で身体を動かしている。何処にも異常は無いと喜んでいた。

「リナ、どんなモノが出来たんだ?」

 はい、聞かれると思ってランバートさんが寝ている間に、もう一個作ったけど……ほら!二人共、絶句しているじゃないですか!これを躊躇わずに飲む方が可笑しいから!

「どうしたら、こんな色になったんだ?」

 本当に、それね。お義父様、私が聞きたい。何度やり直してもこの色なんです。王様もこの色は抵抗がありますねって言った。そうでしょう?私も驚いたもの。なのに、この人いきなり飲んだの!
 三人で呆れた様子でランバートさんを見ているけど、本人は回復してご機嫌です。今からでも、殿下の鍛練に行きたいと言い出した。

「このバカが!目立つ事は止めろ」

「鍛練ぐらいで、師匠は大袈裟なんですよ」

 お義父様が止めても全く気にしない彼を見て王様も鍛練は中止と言った。

「相手には貴方が回復した事を報せたくありませんのでね」

 王様の計画では、明日の朝に全ての魔具の点検、補修をする事を一斉に城内に通達。王家の影が見張って、魔具の回収を事前に防ぎたいらしい。私は納得したけど、ランバートさんは不服そう。

「君にはイリーナの護衛をお願いしますよ」

 王様は私が一人で城内の点検をする事は、危険だと判断したと言った。ランバートさんにはメイクで疲れている感じを出してから、私と一緒に城内を回って貰う予定らしい。

「もし魔具に彼女が触れて何かあっては大変ですからね」

王様の言葉に納得したランバートさんは、やっと大人しくなった。その後、打ち合わせして、ランバートさんが城内を案内する名目で私と一緒に城内を回って、魔物の気配を探る。私は魔具の修理しながら、出来るだけ持ち主の注意を引き付ける様に言われた。

「ランディーに演技なんぞ無理だからな。リナに誤魔化して貰う」

 え?お義父様、何気に私の担当、重要じゃないですか?魔具を修理して、相手を引き付けて、彼の補助もする?は?

「ムリ、ムリ、ムリ」

 王様の前だけどね。素で言っちゃったよ。マジで無理って思うのですが、王様の無言の視線が怖い。目が文句言う前にヤれって言ってますね。……はい、頑張ります。

 この話の後で王様が小さな台所の使用許可もくれた。ランバートさんのご飯やおやつを好きな時に作って良いらしい。最近、食欲不振だった彼への配慮だと言っていた。材料や道具は好きに使って良いと言われ私は、早速、焼き菓子を作ることにした。三人に後ろから見られながら作るのは、緊張するんですけどね!簡単なクッキーに手作りのジャムをのせて焼く。ただ、それだけの簡単なお菓子なのにランバートさんは嬉しそうに食べ始めた。

「やっぱり、イリーナが作ると旨い!」

「ほう、確かに一味、違いますね」

 作ったのは私なのに、何故か得意気なお義父様を見て笑ってしまう。こんなに平和なのに、どうして不安が消えないんだろう。

魔具が見付からないから?……違う……別の何かが怖い。

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