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本編
あの時の言葉は
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ランバートさんに部屋まで送ってもらった私は、リリーさんと髪飾りを外して着替えた。
「勇者様、ずっと笑顔でしたね」
「ランバートさん、いつも笑顔ですよ。あと子犬みたいな時もありますよ」
「え?子犬……ですか……想像出来ませんね」
驚きの表情で私を見る彼女に笑いが漏れる。前の町であった出来事を話すと、また想像出来ないと言っていた。
「では、お茶をおいれ致します」
彼女が紅茶をいれた後、部屋を出て行く。一人、椅子に座ってお茶を飲みながら、フッと王妃様の庭で微かに聞こえた言葉を思い出した。
『俺と一緒じゃ、ダメか?』
そう聞こえた気がして驚いてランバートさんの顔を見たけど、その後、彼は違う事を言った。聞き間違いだったのかなぁ?……結局、王太子殿下が来たから何も確認出来なかったけど……少しは期待しても……良いですか?
その日の夕食は全員が揃って食べると連絡が来て、案内された部屋はホールと言ってもいい程、広い部屋だった。しかも、私の席はお義父様とランバートさんの間。え?向かい側に王太子殿下がいますが……顔が変わってませんか?回復魔法はどうしたの?傷痕が残らない?
肩を落として向かい側に座る王太子の姿に、私が二人の顔を交互に見るとランバートさんが苦笑いしていた。
「ランバートさん……一体、何事ですか?」
「王様から話があるから待ってて。それと殿下は師匠の稽古のせいだよ」
「え?でも……後で行ったんですよね?」
王妃の庭から戻る時、自分も行くって言った彼が何も知らない筈は無いと思うけど笑顔で何も言わない。王様からの話と関係しているのかなぁ?オーウェンさんも着たけど殿下をチラッと見ただけで、いないかのように私達にしか話し掛けない。本当に、どうなってるの?
頭の中が疑問符だらけになった時、王様と王妃様が到着して夕食を開始した。和やかな雰囲気の中で、王様が私に警備態勢を謝罪した。急な謝罪に驚いていると、私が使用していた部屋だけが、外からの侵入感知機能が作動しなくなっていたらしい。今の部屋は全て確認してあるが、犯人が分からないなから滞在中は定期的に点検をする事になったと言った。今度は……誰が?
「イリーナ、不安か?」
ランバートさんに話し掛けられて、顔を上げると彼が心配だという表情で私を見ていた。また……迷惑を……
「迷惑なんて思わないで、不安や恐怖を感じたら素直に、そう言ってくれ」
「え?」
驚いていると、眉を下げて少し困った様な表情をした。
「俺は鈍いから気付かずに、手遅れになるなんて事したくない」
「ランディーの言う通りだ。リナ、こう言う時は素直に、ありがとうだろう?」
困惑する私に二人が苦笑いをしている。言うと嫌がるだろうけど、二人はそっくりだよね。
「……ありがとうございます」
嬉しくて自然と笑顔に変わる。お母さん、私、今まで何を見てたんだろうね。こんなに心配している人がいるのに気付かないなんて……本当に鈍感だね。
「さて、それとは別なのですが……」
そう言って王様が話し始めた。え?殿下の再教育?師匠とランバートさんが稽古を毎日する?怪我を治すかどうかは私が決める?……どうして、そんな話しになったんですか!?
「イリーナには、回復魔法がある」
そう言って続きを話し始めたのはオーウェンさんだった。祖母は今、魔法が使えない。回復魔法は貴重な魔法だが、心が綺麗で正しい者にしか使えない。祖母は欲深い人だったから、お母さんを産んだ辺りから使えなくなったらしい。
「魔法の練習相手がいるだろう」
オーウェンさん、一国の後継者を練習に使うのは、どうなんですか?エルフには関係無いと?そうでした。エルフは国を持たないから執着が無いんでした。
「お前は料理をする時、何を考えて作る?」
オーウェンさんに問われて改めて考える。料理をする時は……元気になって欲しい、美味しく食べて欲しいかな?
「その想いが魔法発動の切っ掛けになる筈だ」
「はい、やってみます」
今、やってみた方が良いと言われて、魔具を修理する時みたいに手の中に魔力を集めて……形が無いと魔力が外に流れる……形、魔力を纏める形……あ!丸薬!
頭の中で丸い玉を思い浮かべると、手の中の魔力が小さく集まる感覚が伝わる。魔力の流れが止まってから目を開けると、白い丸薬が出来ていた。
「出来た……?」
全員の視線が私の手の中の白い丸薬に集まる。オーウェンさんも目を見開いて驚いていた。オーウェンさんの鑑定の結果、回復効果は料理より大きいけど完全回復ではないらしい。それでも殿下に飲ませたら顔が元通りに治った。
「おや、おや。一回で成功するとは流石、兄上の娘です……これで舞台は整いましたね」
……王様、舞台が整ったって何の話ですか!!
「勇者様、ずっと笑顔でしたね」
「ランバートさん、いつも笑顔ですよ。あと子犬みたいな時もありますよ」
「え?子犬……ですか……想像出来ませんね」
驚きの表情で私を見る彼女に笑いが漏れる。前の町であった出来事を話すと、また想像出来ないと言っていた。
「では、お茶をおいれ致します」
彼女が紅茶をいれた後、部屋を出て行く。一人、椅子に座ってお茶を飲みながら、フッと王妃様の庭で微かに聞こえた言葉を思い出した。
『俺と一緒じゃ、ダメか?』
そう聞こえた気がして驚いてランバートさんの顔を見たけど、その後、彼は違う事を言った。聞き間違いだったのかなぁ?……結局、王太子殿下が来たから何も確認出来なかったけど……少しは期待しても……良いですか?
その日の夕食は全員が揃って食べると連絡が来て、案内された部屋はホールと言ってもいい程、広い部屋だった。しかも、私の席はお義父様とランバートさんの間。え?向かい側に王太子殿下がいますが……顔が変わってませんか?回復魔法はどうしたの?傷痕が残らない?
肩を落として向かい側に座る王太子の姿に、私が二人の顔を交互に見るとランバートさんが苦笑いしていた。
「ランバートさん……一体、何事ですか?」
「王様から話があるから待ってて。それと殿下は師匠の稽古のせいだよ」
「え?でも……後で行ったんですよね?」
王妃の庭から戻る時、自分も行くって言った彼が何も知らない筈は無いと思うけど笑顔で何も言わない。王様からの話と関係しているのかなぁ?オーウェンさんも着たけど殿下をチラッと見ただけで、いないかのように私達にしか話し掛けない。本当に、どうなってるの?
頭の中が疑問符だらけになった時、王様と王妃様が到着して夕食を開始した。和やかな雰囲気の中で、王様が私に警備態勢を謝罪した。急な謝罪に驚いていると、私が使用していた部屋だけが、外からの侵入感知機能が作動しなくなっていたらしい。今の部屋は全て確認してあるが、犯人が分からないなから滞在中は定期的に点検をする事になったと言った。今度は……誰が?
「イリーナ、不安か?」
ランバートさんに話し掛けられて、顔を上げると彼が心配だという表情で私を見ていた。また……迷惑を……
「迷惑なんて思わないで、不安や恐怖を感じたら素直に、そう言ってくれ」
「え?」
驚いていると、眉を下げて少し困った様な表情をした。
「俺は鈍いから気付かずに、手遅れになるなんて事したくない」
「ランディーの言う通りだ。リナ、こう言う時は素直に、ありがとうだろう?」
困惑する私に二人が苦笑いをしている。言うと嫌がるだろうけど、二人はそっくりだよね。
「……ありがとうございます」
嬉しくて自然と笑顔に変わる。お母さん、私、今まで何を見てたんだろうね。こんなに心配している人がいるのに気付かないなんて……本当に鈍感だね。
「さて、それとは別なのですが……」
そう言って王様が話し始めた。え?殿下の再教育?師匠とランバートさんが稽古を毎日する?怪我を治すかどうかは私が決める?……どうして、そんな話しになったんですか!?
「イリーナには、回復魔法がある」
そう言って続きを話し始めたのはオーウェンさんだった。祖母は今、魔法が使えない。回復魔法は貴重な魔法だが、心が綺麗で正しい者にしか使えない。祖母は欲深い人だったから、お母さんを産んだ辺りから使えなくなったらしい。
「魔法の練習相手がいるだろう」
オーウェンさん、一国の後継者を練習に使うのは、どうなんですか?エルフには関係無いと?そうでした。エルフは国を持たないから執着が無いんでした。
「お前は料理をする時、何を考えて作る?」
オーウェンさんに問われて改めて考える。料理をする時は……元気になって欲しい、美味しく食べて欲しいかな?
「その想いが魔法発動の切っ掛けになる筈だ」
「はい、やってみます」
今、やってみた方が良いと言われて、魔具を修理する時みたいに手の中に魔力を集めて……形が無いと魔力が外に流れる……形、魔力を纏める形……あ!丸薬!
頭の中で丸い玉を思い浮かべると、手の中の魔力が小さく集まる感覚が伝わる。魔力の流れが止まってから目を開けると、白い丸薬が出来ていた。
「出来た……?」
全員の視線が私の手の中の白い丸薬に集まる。オーウェンさんも目を見開いて驚いていた。オーウェンさんの鑑定の結果、回復効果は料理より大きいけど完全回復ではないらしい。それでも殿下に飲ませたら顔が元通りに治った。
「おや、おや。一回で成功するとは流石、兄上の娘です……これで舞台は整いましたね」
……王様、舞台が整ったって何の話ですか!!
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