46 / 107
本編
恥ずかしい
しおりを挟む
昨日、王太子殿下が窓から入って来た事が問題になって、私が使う部屋が師匠とランバートさんが使っている部屋の廊下を挟んだ向かい側に変わった。
魔力で鍵を開けられない様に、全ての部屋の鍵に防御装置を付ける事にもなって一安心と思っていたけど、二人は時間が出来ると直ぐに私の部屋に来る様になった。ゆっくり本を読む事も出来ずに落ち着かない。
そして、今からランバートさんと一緒にダンスレッスンが待っている。
「あの……リリーさん、これやり過ぎじゃないですか?」
「そんな事ありませんよ。本番の時には、もっと飾りますから!」
いや、無理って……誰か止めて。リリーさんと一緒に来た侍女のターナさんの二人から、コルセットを着けられて髪もアップにして昨日より飾りが増えた。二人曰く、飾りを落とさない様に馴れる為にも着けましょうって……本当に?何か二人とも凄く楽しそうというか気合いが入っているような……
「これで勇者様もイチコロですよ!」
「え?」
「そうですね!勇者様もきっと、お喜びになりますよ!」
ちょっと待って下さい。二人とも、何か話が違う方向にいってませんか?私、今からダンスの練習。分かっていますか?練習ですよ。
二人に好き勝手弄られながらメイクが済んだ頃、ドアがノックされた。ターナさんが確認すると、師匠とランバートさんが来たらしい。二人に入って貰うと、着飾った私を見て何も言わない。……それはそれでツラいです。何か言って下さいよ!
「黙ってないで何か言って下さいよ。師匠のせいで、こんな大変な思いしてるのに!」
ハッとした二人が近付いてくる。ランバートさんが頬を掻きながら言った一言が衝撃的だった。
「綺麗で見惚れた」
綺麗?……誰が?……私?……え?えぇ!嬉しいやら恥ずかしいやら。
照れて私の頬が熱くなる。恥ずかしくて彼から視線を外して、師匠を見ると何故か苦虫を纏めて噛んだ様な酷い顔をしていた。
「師匠、具合でも悪いのですか?」
「……いや……そうだ、リナ。いい加減、俺の呼び方を変えろ」
急に呼び方を変えるように言い出した師匠。今更、師匠以外の呼び方って言われてもね?え?親子になったから師匠はダメ?パーティーでも師匠は不味い?そう言われても、なんて呼べば良いのよ。
「えっと……カインお義父様?」
イヤ!待って下さい。これはこれで恥ずかしい!!やっぱり別の呼び方を考えよう!
「良いなそれ。今からカインお義父様って呼ぶように」
「えぇ……恥ずかしいから、やっぱり師匠で」
「ダメだ」
熱くなる頬を両手で隠しながら粘ってみたけど、師匠は気に入ったみたいで譲らない。結局、私が折れて今からお義父様って呼ぶ事になった。呼び方が決まると、し……お義父様は上機嫌で仕事に戻った。そんなに何が嬉しいの?
「カイン様って、あんなに笑う方だったのですか?」
リリーさんからの質問に驚いて、聞き返すと普段は無表情らしい。無表情の師匠?違ったお義父様って想像つかない。まるで別人の話みたいと言って首を傾げていた私に、リリーさんが耳元で言った言葉に更に驚いて頬が熱くなった。
狼狽える私を頬笑みを浮かべて見た二人が、退室の挨拶をして部屋を出て行く。さっきの言葉のせいで、ランバートさんと二人っきりにされて困る。どうしよう。
『私達から見たら、勇者様もイリーナ様と居る時は、別人の様にお優しいですよ』
さっきの言葉が頭の中を繰り返す。恥ずかしくて困って動けない私を、ランバートが心配そうに見詰めていた。
「顔が赤いが、熱でもあるのか?」
「へ?ち、違います!違います!あ、うん、大丈夫です」
「いや、大丈夫に見えない」
そこは突っ込まないで!あわわ、えっと、えぇっと……わー言葉が浮かばないよ!
「は」
「は?」
「……恥ずかしくて……この格好が……」
私の言葉を聞いて目を丸くしたランバートが、ゆっくりと笑顔に変わる。その優しい笑顔だけで、胸がいっぱいになって苦しい。
「普段の君も綺麗だが、今日は一段と綺麗だ」
「あ、あり……がとうございます」
行こうと手を差し出されて、恐る恐る手を乗せるとエスコートされて練習用の部屋へ向かった。廊下ですれ違う人達に二度視されたり、睨まれたりして部屋に着く頃にはヘトヘトになっていた。
廊下を歩くだけでこれって……パーティーの本番って……どうなるの?
魔力で鍵を開けられない様に、全ての部屋の鍵に防御装置を付ける事にもなって一安心と思っていたけど、二人は時間が出来ると直ぐに私の部屋に来る様になった。ゆっくり本を読む事も出来ずに落ち着かない。
そして、今からランバートさんと一緒にダンスレッスンが待っている。
「あの……リリーさん、これやり過ぎじゃないですか?」
「そんな事ありませんよ。本番の時には、もっと飾りますから!」
いや、無理って……誰か止めて。リリーさんと一緒に来た侍女のターナさんの二人から、コルセットを着けられて髪もアップにして昨日より飾りが増えた。二人曰く、飾りを落とさない様に馴れる為にも着けましょうって……本当に?何か二人とも凄く楽しそうというか気合いが入っているような……
「これで勇者様もイチコロですよ!」
「え?」
「そうですね!勇者様もきっと、お喜びになりますよ!」
ちょっと待って下さい。二人とも、何か話が違う方向にいってませんか?私、今からダンスの練習。分かっていますか?練習ですよ。
二人に好き勝手弄られながらメイクが済んだ頃、ドアがノックされた。ターナさんが確認すると、師匠とランバートさんが来たらしい。二人に入って貰うと、着飾った私を見て何も言わない。……それはそれでツラいです。何か言って下さいよ!
「黙ってないで何か言って下さいよ。師匠のせいで、こんな大変な思いしてるのに!」
ハッとした二人が近付いてくる。ランバートさんが頬を掻きながら言った一言が衝撃的だった。
「綺麗で見惚れた」
綺麗?……誰が?……私?……え?えぇ!嬉しいやら恥ずかしいやら。
照れて私の頬が熱くなる。恥ずかしくて彼から視線を外して、師匠を見ると何故か苦虫を纏めて噛んだ様な酷い顔をしていた。
「師匠、具合でも悪いのですか?」
「……いや……そうだ、リナ。いい加減、俺の呼び方を変えろ」
急に呼び方を変えるように言い出した師匠。今更、師匠以外の呼び方って言われてもね?え?親子になったから師匠はダメ?パーティーでも師匠は不味い?そう言われても、なんて呼べば良いのよ。
「えっと……カインお義父様?」
イヤ!待って下さい。これはこれで恥ずかしい!!やっぱり別の呼び方を考えよう!
「良いなそれ。今からカインお義父様って呼ぶように」
「えぇ……恥ずかしいから、やっぱり師匠で」
「ダメだ」
熱くなる頬を両手で隠しながら粘ってみたけど、師匠は気に入ったみたいで譲らない。結局、私が折れて今からお義父様って呼ぶ事になった。呼び方が決まると、し……お義父様は上機嫌で仕事に戻った。そんなに何が嬉しいの?
「カイン様って、あんなに笑う方だったのですか?」
リリーさんからの質問に驚いて、聞き返すと普段は無表情らしい。無表情の師匠?違ったお義父様って想像つかない。まるで別人の話みたいと言って首を傾げていた私に、リリーさんが耳元で言った言葉に更に驚いて頬が熱くなった。
狼狽える私を頬笑みを浮かべて見た二人が、退室の挨拶をして部屋を出て行く。さっきの言葉のせいで、ランバートさんと二人っきりにされて困る。どうしよう。
『私達から見たら、勇者様もイリーナ様と居る時は、別人の様にお優しいですよ』
さっきの言葉が頭の中を繰り返す。恥ずかしくて困って動けない私を、ランバートが心配そうに見詰めていた。
「顔が赤いが、熱でもあるのか?」
「へ?ち、違います!違います!あ、うん、大丈夫です」
「いや、大丈夫に見えない」
そこは突っ込まないで!あわわ、えっと、えぇっと……わー言葉が浮かばないよ!
「は」
「は?」
「……恥ずかしくて……この格好が……」
私の言葉を聞いて目を丸くしたランバートが、ゆっくりと笑顔に変わる。その優しい笑顔だけで、胸がいっぱいになって苦しい。
「普段の君も綺麗だが、今日は一段と綺麗だ」
「あ、あり……がとうございます」
行こうと手を差し出されて、恐る恐る手を乗せるとエスコートされて練習用の部屋へ向かった。廊下ですれ違う人達に二度視されたり、睨まれたりして部屋に着く頃にはヘトヘトになっていた。
廊下を歩くだけでこれって……パーティーの本番って……どうなるの?
0
お気に入りに追加
318
あなたにおすすめの小説
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい
tea
恋愛
愛読していた小説の推しが死んだ事にショックを受けていたら、おそらくなんやかんやあって、その小説で推しを殺した悪役令嬢に転生しました。
本来悪役令嬢が恋してヒロインに横恋慕していたヒーローである王太子には興味ないので、壁として推しを殺さぬよう陰から愛でたいと思っていたのですが……。
人を傷つける事に臆病で、『壁になりたい』と引いてしまう主人公と、彼女に助けられたことで強くなり主人公と共に生きたいと願う推しのお話☆
本編ヒロイン視点は全8話でサクッと終わるハッピーエンド+番外編
第三章のイライアス編には、
『愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします』
のキャラクター、リュシアンも出てきます☆
死を願われた薄幸ハリボテ令嬢は逆行して溺愛される
葵 遥菜
恋愛
「死んでくれればいいのに」
十七歳になる年。リリアーヌ・ジェセニアは大好きだった婚約者クラウス・ベリサリオ公爵令息にそう言われて見捨てられた。そうしてたぶん一度目の人生を終えた。
だから、二度目のチャンスを与えられたと気づいた時、リリアーヌが真っ先に考えたのはクラウスのことだった。
今度こそ必ず、彼のことは好きにならない。
そして必ず病気に打ち勝つ方法を見つけ、愛し愛される存在を見つけて幸せに寿命をまっとうするのだ。二度と『死んでくれればいいのに』なんて言われない人生を歩むために。
突如として始まったやり直しの人生は、何もかもが順調だった。しかし、予定よりも早く死に向かう兆候が現れ始めてーー。
リリアーヌは死の運命から逃れることができるのか? そして愛し愛される人と結ばれることはできるのか?
そもそも、一体なぜ彼女は時を遡り、人生をやり直すことができたのだろうかーー?
わけあって薄幸のハリボテ令嬢となったリリアーヌが、逆行して幸せになるまでの物語です。
【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。
BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。
しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。
その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。
【完結】家族から虐げられていた私、実は世界で唯一精霊を操れる治癒精霊術師でした〜王都で癒しの聖女と呼ばれ、聖騎士団長様に溺愛されています〜
津ヶ谷
恋愛
「アリーセ、お前を男爵家から勘当する!」
理不尽に厳しい家系に生まれたアリーセは常に虐げられて来た。
身内からの暴力や暴言は絶えることが無かった。
そして16歳の誕生日にアリーセは男爵家を勘当された。
アリーセは思った。
「これでようやく好きな様に生きられる!」
アリーセには特別な力があった。
癒しの力が人より強かったのだ。
そして、聖騎士ダイス・エステールと出会い、なぜか溺愛されて行く。
ずっと勉強してきた医学の知識と治癒力で、世界の医療技術を革命的に進歩させる。
これは虐げられてきた令嬢が医学と治癒魔法で人々を救い、幸せになる物語。
平凡な高校生活を送る予定だったのに
空里
恋愛
高校生になり数ヵ月。一学期ももうそろそろ終わりを告げる頃。
僕、田中僚太はクラスのマドンナとも言われ始めている立花凛花に呼び出された。クラスのマドンナといわれるだけあって彼女の顔は誰が見ても美人であり加えて勉強、スポーツができ更には性格も良いと話題である。
それに対して僕はクラス屈指の陰キャポジである。
人見知りなのもあるが、何より通っていた中学校から遠い高校に来たため、たまたま同じ高校に来た一人の中学時代の友達しかいない。
そのため休み時間はその友人と話すか読書をして過ごすかという正に陰キャであった。
そんな僕にクラスのマドンナはというと、
「私と付き合ってくれませんか?」
この言葉から彼の平凡に終わると思われていた高校生活が平凡と言えなくなる。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる