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本編

突然の訪問者

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 翌日の薄暗い明け方、私は違和感を感じて目を覚ました。何だか落ちつかなくて、取り敢えず着替えたけど、時間が早すぎてする事がない。ベッドに座って視線を動かした時、部屋の壁がグニャリと歪んだ。え?壁が曲がった?目が疲れてる?
 驚いているうちに壁に黒い渦が出来て、その中から現れたのは黒い長い髪の長身の男性だった。あ!この人、剣を触った時に視たドラゴンと一緒にいたエルフの人だ。その横にいるのは……

「ランバートさん!?」

「う……イリーナ、ごめん……転移した」

 具合が悪そうに真っ青な顔の彼を、エルフの人が呆れた顔で見ている。え?転移したって何?ごめんって何が?

「お前が特異魔力の娘か?」

 驚き過ぎてベッドに座ったまま動けない私の目の前に、エルフの人が立つと急に話し掛けられた。頷いて肯定した途端、エルフの人が笑顔になった。エルフって美形だって聞いてたけど、笑うと迫力があるなぁ。

「お前……マルガリータと言う名に覚えはないか?」

「マルガリータ……曾祖母そうそぼの名前が確か同じです」

『娘ノ血縁ノ者カ?』

 声の主を探してキョロキョロすると、ランバートさんが腰に差している剣を外して私の目の前に出した。

『ソナタノちからデ、友に会エタ。感謝スル』

「もしかして……海のドラゴンさん?えっと……ありがとうございます」

 剣が話す異常事態に混乱している私を余所に、エルフの人が修理している魔具を見せる様に言ったので、預かっていた箱ごと渡す。大きく頷いて受け取ったエルフは、修理の済んでいるフレームを手に取ると何処からか透明な板を取り出した。

「修理の腕が良い。鱗を嵌めるだけで大丈夫だ。机を借りるぞ」

「はぁ、どうぞ」

 唖然としている私に、ランバートさんが状況を説明してくれる。私の魔力で魔石で眠っていたドラゴンが目を覚ましたらしい。ランバートさんの魔力を吸収して話せる様になったドラゴンさん。しかも、魔具の製作者がエルフのオーウェンさんで、私に興味を持って会いたいと言い出したらしい。

「ど……どうして、こうなったの」

「ごめん」

 最早、勇者様の威厳なしのランバートさん。光りながら話す剣を横に置いたオーウェンさんは、魔具に鱗を嵌めてからフーと息を吐いた。

「小僧、これで魔具は大丈夫だ。ついでに強化もしたから、踏んだぐらいでは壊れん」

「ありがとうございます!」

 ランバートさんが頭を下げると、フッと彼は小さく笑った。言葉は少し乱暴だけど、彼はランバートさんを気に入っている様に見える。

「娘よ、名は、なんだ?」

「イリーナです」

 そうかと言うと彼は、曾祖母との話を教えてくれた。

 曾祖母の家系は、オレンジ色の髪や瞳の女性が高い魔力を持っていた。曾祖母はオレンジ色の瞳の魔眼の持ち主。しかし、魔眼が強すぎて、感情が高ぶると回りのモノを燃やした。いくら感情を抑えても漏れる魔力に家族すら怯えて、いつしか回りには誰も居なくなった。
 誰からかエルフの森の話を聞いた曾祖母は、無断で森に入ればエルフの怒りで魔眼が使えなくなるかもしれないと考えて森に来たらしい。
 森の中をさ迷う曾祖母と、偶然会ったオーウェンさん。彼に気付いた曾祖母が、目を抑えて踞ったらしい。その時、オーウェンさんは魔眼が発動した事に気付いて落ち着くまで見守っていた。


『娘、その眼に何が見えた?』

『蒼い鎧を着た蒼い瞳の青年が……貴方の剣で……魔王を倒しす姿が視えたわ』

 落ち着いた曾祖母に視たものを聞くと、ランバートさんの戦う姿だったらしい。その内容に興味を持った彼は、曾祖母を家に連れて帰り暫く一緒に暮らして魔眼の制御を教えた。最後の仕上げに渡したモノが今回の魔具。ドラゴンの鱗が魔眼の力を吸収する仕組みの眼鏡だった。

「お前は、マルガリータの能力も受け継いでいるようだ」

「え?ひいお祖母ちゃんの能力って……魔眼の事ですか?」

 確かに私の瞳はオレンジだけど、今まで何もなかったけどなぁ?

「いや、別の能力……物の記憶を読み取り力を与える能力だ」

 は?待って。物の記憶って何?剣を触った時に視たあれ?でも、あれはドラゴンさんの記憶でしょう?


 混乱して考えが纏まらない。私は魔具の材料を頼んだ筈なのに、何で曾祖母の事や別の能力って、訳の分からない話を聞く事になってるの?

どうして、こうなったのよ……

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