[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ

文字の大きさ
上 下
7 / 107
本編

買い物に行きました

しおりを挟む
 朝食の片付けまで済ませた私は、食材の確認をしていた。野菜や肉、出来たら魚も欲しいかな?あとお菓子も作るならドライフルーツとか牛乳、バターに卵。う~ん、種類が増えると量も増える。二人で持てるか自信無いなあ。配達を頼もうかなぁ。

「そろそろ買い物行こうか」

 声が聞こえて振り返ると、白のシャツに黒のスラックスに着替えた勇者様がいた。着替えたけど、腰に剣を差したままで私の隣に立った。

「勇者様。量が多いから配達にしませんか?」

 手元の買い物メモを見せながらそう言うと、勇者様が顎に手を添えて少し考える素振りを見せた。だから多いって言ったよね?

「俺、一人で持てるから大丈夫。籠が三つくらいある?」

「え?ありますよ」

「良し行こう。あぁ、流石に外で勇者様は止めてくれないか?」

 勇者様の困った様な顔を見て頷いてしまったけど、名前で呼ぶのかぁ。……間違えそうだから呼ばない様にしよう。


 勇者様と二人の買い物は順調に進んで最後のお肉屋に着いたんだけど、勇者様ヨダレたれそうだね。

「……口元」

「あっ!」

 私の指摘で慌てて口元を手で拭う。ヘラッと笑って誤魔化す勇者様にため息が出た。

「何か食べたいご飯はありましたか?」

「ステーキにローストビーフに……」

 指折りしながら肉料理の名前を上げる勇者様に、私はもう一度ため息を吐いた。

「お肉以外も食べて下さい」

「……はい、すみませんでした」

 謝る勇者様に呆れながらも、ステーキならすぐに出きるから夕食用に買う。他のお肉も何種類か買って、籠に入れたんだけど……お肉が溢れてる。そして、その肉を嬉しそうに見てる勇者様がいる。

「今まで、どんな食生活してたんですか」

 帰り道、勇者様に聞けば旅をしていると偏りやすいらしい。

「宿屋や食堂があれば良いが、国境辺りでは野営もよくあるからな」

 そう言って教えてくれたのは、野営の時の食事事情。アイテムボックスの保存食や途中で狩りをして丸焼きなんて事もあったとか。空間魔法だから食材は腐らないよね?狩りをするって、野菜は?それに丸焼きって、下処理してから焼いてる?

「気になったけど、下処理とか香辛料とかは?」

「うん?下処理ってなんだ?」

 わー、皮剥いで焼くだけって事?師匠と同レベルだわ。野菜の素焼きとか肉の素焼きとか味がしないヤツ。

「……その残念なモノを見る視線は何?」

「いえ、戦闘も料理も師匠と同じだなぁと」

「料理も師匠と同じ!?……え?そんなに酷いって事か?何が悪い?」

 料理しないのか、単に知識が無いのか分からないけど、二人にはご飯を作らないで欲しい。私、お腹壊したくないです。何処から説明する?

「う~ん、一言で言えば……全部?」

「えぇ!?そ、そうなのか?」

 私の一言に驚きを隠せない勇者様に、頷いて肯定すると肩を落として明らかに落ち込んでる。気付いて無かったの?それともバカ舌なの?天然なの?

「そうですね……百聞は一見に如かずです。お昼は一緒に作りますか?」

「お願いします」

 勇者様なのに腰の低い彼から頭を下げられて、私が慌てるとニヤリと笑っていた。ちょっと意地悪ですね!

「あ!蝋燭女が男といるぞ!」

 私と勇者様を指差して、大きな声で冷やかすのは近所の同級生のマークとその友人達。何故か、学生時代から絡まれていたけど人を巻き込むのは止めて欲しい。面倒臭い。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ツンな令嬢は婚約破棄され、幸せを掴む

さこの
恋愛
伯爵令嬢アイリーンは素直になれない性格だった。 姉は優しく美しく、周りから愛され、アイリーンはそんな姉を見て羨ましくも思いながらも愛されている姿を見て卑屈になる。 アイリーンには婚約者がいる。同じく伯爵家の嫡男フランク・アダムス フランクは幼馴染で両親から言われるがままに婚約をした。 アイリーンはフランクに憧れていたが、素直になれない性格ゆえに、自分の気持ちを抑えていた。 そんなある日、友達の子爵令嬢エイプリル・デュエムにフランクを取られてしまう エイプリルは美しい少女だった。 素直になれないアイリーンは自分を嫌い、家を出ようとする。 それを敏感に察知した兄に、叔母様の家に行くようにと言われる、自然豊かな辺境の地へと行くアイリーン…

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと

淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。 第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品) ※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。 原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。 よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。 王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。 どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。 家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。 1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。 2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる) 3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。 4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。 5.お父様と弟の問題を解決する。 それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc. リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。 ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう? たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。 これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。 【注意点】 恋愛要素は弱め。 設定はかなりゆるめに作っています。 1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。 2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜

清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。 クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。 (過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…) そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。 移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。 また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。 「俺は君を愛する資格を得たい」 (皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?) これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

夫に用無しと捨てられたので薬師になって幸せになります。

光子
恋愛
この世界には、魔力病という、まだ治療法の見つかっていない未知の病が存在する。私の両親も、義理の母親も、その病によって亡くなった。 最後まで私の幸せを祈って死んで行った家族のために、私は絶対、幸せになってみせる。 たとえ、離婚した元夫であるクレオパス子爵が、市民に落ち、幸せに暮らしている私を連れ戻そうとしていても、私は、あんな地獄になんか戻らない。 地獄に連れ戻されそうになった私を救ってくれた、同じ薬師であるフォルク様と一緒に、私はいつか必ず、魔力病を治す薬を作ってみせる。 天国から見守っているお義母様達に、いつか立派な薬師になった姿を見てもらうの。そうしたら、きっと、私のことを褒めてくれるよね。自慢の娘だって、思ってくれるよね―――― 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

処理中です...