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本編
危うい存在 side ランバート
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世間では勇者だの最強の戦士だと騒がれている俺だが、幼い頃から悩まされている事が一つだけあった。
それは自分から溢れる魔力で、人や物に触れるだけでダメージを与えてしまう事。人によって違いはあるが、僅かな痺れを感じる程度の人から、気絶する人まで千差万別。触っただけでドアや家具を壊した事もあった。
人伝いに話を聞いたカイン師匠が、教育と修行をしてくれたお陰で物を壊す事は無くなったが、今でも人にダメージを与えてしまう。そんな俺が触っても変化が無い。彼女は一体、何者なんだ?
「師匠、この子は?」
「はぁ……そいつを寝かせてから話す。ここの二階が部屋だ」
ここに住んでる?家族は……
「家族は死んだ。その理由も込みで厄介な事になってる」
疑問は口にする前に師匠が答えた。その言葉が重くのし掛かる。人を死に追いやる程の理由は、厄介な事の一言では片付くはず無かった。
師匠に頼まれて彼女を二階に運び、ドアを開けて入ったその部屋は本以外ほぼ無かった。これが若い女の子の部屋か?まるで宿屋の様な生活感の無い部屋に見えて違和感しかない。彼女をベッドに寝かして布団を掛け一階の店へ戻ると、俺を見た師匠は大きなため息を吐いた。
「師匠」
「ああ、分かってる。リナとの出会いは偶然だった……」
そして、師匠から語られた彼女の過去は壮絶と言える。7年前に彼女を狙った人身売買の組織からの襲撃と両親の死。その上、親族からの引き取り拒否され、師匠と暮らし出すまでの話を聞いて俺は何も言えなくなる。
「当時、取り逃がした連中に見付かった。ここには住めなくなるかもな」
「呼び出の理由は、連中が厄介な相手なのですか?」
「それだけじゃない……リナは魔法が使えない特異魔力だ」
その魔力は珍しく世界でも数人程度だと聞いた事がある。世界中を旅していても詳しい話は聞いた事も無いし、その力の持ち主に会った事も無い。その存在自体、一般的には知られていない。
「特異魔力には魔石を甦らせる力がある」
「魔石が甦る!?そんな事が……使い捨ての魔石が甦る……巨万の富が手に入ると言う事ですか」
『魔石は使い捨て』が常識の世界で、貴重な大きな魔石やレア装備の魔石を甦らせれば、幾ら稼げるだろうか?狙いは魔力か金か……悪い奴らの手に落ちれば、世界が混沌とする危うい存在になるな。
「ああ……今夜は新月だ。奴らが動き出すだろう。リナを護ってくれ」
「……その相手とは?」
「マガユダ帝国……国が相手だ。私だけでは危険だ」
戦闘狂が治める国の名前だな。あの国は闇組織と手を組んで、自国だけでなく他国からも奴隷を集めているとの噂がある。今、世界中で一番大きな話題の国であり、全ての国が要注意としているそんな所から狙われれば、安息の日など無いに等しいだろう。
「よく七年も隠れてましたね」
「最悪、ナダルの世話になるかもな。だが今は……」
そこで言葉を切った師匠が、天井を見上げる。その場所は彼女が眠る部屋だ。
「可愛い娘の為にも、目の前のクズどもを捕まえるのが先だ」
その言葉に黙って頷き返すと、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた師匠が、店の回りに一瞬で強力な結界を張った。
「さて、遊びの時間は終わりだ」
「その顔では、どちらが悪者か分かりませんよ」
俺の言葉を鼻で笑った師匠は、今夜の予定を話し始めた。騎士団への根回しは分かるが、最後の一言に頭が痛い。
「普通に考えて俺が、彼女の部屋の中で護るって問題ありでしょう。せめてドアの前ですよ」
「お前は、ここの騎士団に面識がないし、奴らが何処からくるか分からんから仕方ないだろう?」
……師匠に丸め込まれた気もするが仕方ない、今夜は彼女の部屋の中で護るか。渋々、俺が了承すると師匠は店の入口に休業の看板を掛けてから騎士団に向かった。
……しまった!俺が触っても、彼女が平気な理由を聞いていなかった。仕方ないな……クズを片付けてから、ゆっくり聞くか。
それは自分から溢れる魔力で、人や物に触れるだけでダメージを与えてしまう事。人によって違いはあるが、僅かな痺れを感じる程度の人から、気絶する人まで千差万別。触っただけでドアや家具を壊した事もあった。
人伝いに話を聞いたカイン師匠が、教育と修行をしてくれたお陰で物を壊す事は無くなったが、今でも人にダメージを与えてしまう。そんな俺が触っても変化が無い。彼女は一体、何者なんだ?
「師匠、この子は?」
「はぁ……そいつを寝かせてから話す。ここの二階が部屋だ」
ここに住んでる?家族は……
「家族は死んだ。その理由も込みで厄介な事になってる」
疑問は口にする前に師匠が答えた。その言葉が重くのし掛かる。人を死に追いやる程の理由は、厄介な事の一言では片付くはず無かった。
師匠に頼まれて彼女を二階に運び、ドアを開けて入ったその部屋は本以外ほぼ無かった。これが若い女の子の部屋か?まるで宿屋の様な生活感の無い部屋に見えて違和感しかない。彼女をベッドに寝かして布団を掛け一階の店へ戻ると、俺を見た師匠は大きなため息を吐いた。
「師匠」
「ああ、分かってる。リナとの出会いは偶然だった……」
そして、師匠から語られた彼女の過去は壮絶と言える。7年前に彼女を狙った人身売買の組織からの襲撃と両親の死。その上、親族からの引き取り拒否され、師匠と暮らし出すまでの話を聞いて俺は何も言えなくなる。
「当時、取り逃がした連中に見付かった。ここには住めなくなるかもな」
「呼び出の理由は、連中が厄介な相手なのですか?」
「それだけじゃない……リナは魔法が使えない特異魔力だ」
その魔力は珍しく世界でも数人程度だと聞いた事がある。世界中を旅していても詳しい話は聞いた事も無いし、その力の持ち主に会った事も無い。その存在自体、一般的には知られていない。
「特異魔力には魔石を甦らせる力がある」
「魔石が甦る!?そんな事が……使い捨ての魔石が甦る……巨万の富が手に入ると言う事ですか」
『魔石は使い捨て』が常識の世界で、貴重な大きな魔石やレア装備の魔石を甦らせれば、幾ら稼げるだろうか?狙いは魔力か金か……悪い奴らの手に落ちれば、世界が混沌とする危うい存在になるな。
「ああ……今夜は新月だ。奴らが動き出すだろう。リナを護ってくれ」
「……その相手とは?」
「マガユダ帝国……国が相手だ。私だけでは危険だ」
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「よく七年も隠れてましたね」
「最悪、ナダルの世話になるかもな。だが今は……」
そこで言葉を切った師匠が、天井を見上げる。その場所は彼女が眠る部屋だ。
「可愛い娘の為にも、目の前のクズどもを捕まえるのが先だ」
その言葉に黙って頷き返すと、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた師匠が、店の回りに一瞬で強力な結界を張った。
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「その顔では、どちらが悪者か分かりませんよ」
俺の言葉を鼻で笑った師匠は、今夜の予定を話し始めた。騎士団への根回しは分かるが、最後の一言に頭が痛い。
「普通に考えて俺が、彼女の部屋の中で護るって問題ありでしょう。せめてドアの前ですよ」
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……師匠に丸め込まれた気もするが仕方ない、今夜は彼女の部屋の中で護るか。渋々、俺が了承すると師匠は店の入口に休業の看板を掛けてから騎士団に向かった。
……しまった!俺が触っても、彼女が平気な理由を聞いていなかった。仕方ないな……クズを片付けてから、ゆっくり聞くか。
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