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本編
兄弟子が勇者様!?
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師匠との再会の挨拶が済んだのか、呆然と見ていた私に向かって勇者様が頭を下げた。
「騒がしくて、すみません」
「あ、いえ、お気になさらずに」
なんだか勇者様に頭を下げられて居心地が悪い。師匠の話だと今話題の数百年ぶりに魔王を倒した勇者様らしい。噂通り真っ青な鎧を着て、長剣を腰に挿している。
取り敢えず店のカウンターにお茶を出すと、勇者様がお礼を言った。見た目は少し怖いけど、優しい人みたいだ。
「初めまして、俺はランバートです」
「は、初めましてイリーナです。勇者様」
緊張してどもる私を、師匠が面白そうに見てる。くそ、楽しそうだね!勇者様はニコニコしながら、勇者様じゃなくて名前で呼んでくれって言う。そんな事を言われても、恐れ多いしファンを敵には回したくないから無理。
「いや、でも世界中で有名な勇者様を名前では……」
「いや兄弟子になるし……じゃあ、ランディーと呼んでくれ」
「いや、尚更、無理ですから」
私が拒否すると残念そうに眉を下げた。そんな捨てられた子犬みたいな眼で見ないでよ!待て!話を聞いて?ニックネームで呼ぶって更に難易度上がってますから。
焦る私を二人は楽しそうに見ていてムカついた。師匠の足、踏んじゃうよ。和やかに話をしていたけど、勇者様が急に真剣な表情に変わった。
「しかし、師匠。急に人を呼び出して、何かあったのですか?」
「いや、うん……あったちゃ、あったな」
師匠がハッキリ言わないから勇者様が困ってる。私に聞かれたくない話しでもあるのかな?まあ、二人で積もる話しもあるだろうし、私は配達に行こうかな。確か、三軒隣のマーサさんと冒険ギルドのギルマスの約束は今日だったよね?
「師匠、配達に行ってくるから二人は、ゆっくりしてて下さい」
「は?今日の配達は無かっただろう」
師匠の言葉を聞いて、首を傾げた私の前に伝票を突き出された。よく見ると配達希望に明日の日付が書いてあった。ウソ!間違えて明日の分まで終わらせちゃった……て事は……
「師匠、ごめん。全部終わらせちゃった……私、寝るかも」
「またやったのか!この馬鹿が!」
師匠が鬼の様な赤い顔で怒ってる。修行しても限界が分からない私は、魔力切れを起こさない様に仕事量を調整していた。それなのに間違って二日先まで仕事した私の魔力は多分残り僅かだと思う。決めてたのに、やっちゃった。一時間くらいはまだ、動けるかな?動けるうちに片付けて部屋に戻ろう。
「えーと、勇者様。お見苦しい所をお見せしてすみません。魔力切れになるので失礼します」
「魔力切れ?一体、何をしたんだ?」
えー、説明しないと駄目?そんな時間が勿体無いけど、勇者様を無視する訳にもいかないか。
「仕事、やり過ぎて……魔力切れに……な……」
説明をしている途中で呂律が回らなくなってきた。目が霞んで頭がグルグル回る。あーヤバい……一時間どころか……今、来た。
「もう……むり」
自分の身体を支えてられなくなって、ゆっくりと傾いていく。何かに掴まる物……
「おい!」
勇者様が何か言ってるけど無理、動けない。あれ?床にぶつかると思ったけど……痛くない……?温かいけど……なに?勇者様が掴んでる?
「え?彼女……俺が触ってもなんともない?」
勇者様に触ると……何かにあるのかな?
聞きたいけど私の目の前は真っ暗になって、そのまま意識は溶けて消えた。
「騒がしくて、すみません」
「あ、いえ、お気になさらずに」
なんだか勇者様に頭を下げられて居心地が悪い。師匠の話だと今話題の数百年ぶりに魔王を倒した勇者様らしい。噂通り真っ青な鎧を着て、長剣を腰に挿している。
取り敢えず店のカウンターにお茶を出すと、勇者様がお礼を言った。見た目は少し怖いけど、優しい人みたいだ。
「初めまして、俺はランバートです」
「は、初めましてイリーナです。勇者様」
緊張してどもる私を、師匠が面白そうに見てる。くそ、楽しそうだね!勇者様はニコニコしながら、勇者様じゃなくて名前で呼んでくれって言う。そんな事を言われても、恐れ多いしファンを敵には回したくないから無理。
「いや、でも世界中で有名な勇者様を名前では……」
「いや兄弟子になるし……じゃあ、ランディーと呼んでくれ」
「いや、尚更、無理ですから」
私が拒否すると残念そうに眉を下げた。そんな捨てられた子犬みたいな眼で見ないでよ!待て!話を聞いて?ニックネームで呼ぶって更に難易度上がってますから。
焦る私を二人は楽しそうに見ていてムカついた。師匠の足、踏んじゃうよ。和やかに話をしていたけど、勇者様が急に真剣な表情に変わった。
「しかし、師匠。急に人を呼び出して、何かあったのですか?」
「いや、うん……あったちゃ、あったな」
師匠がハッキリ言わないから勇者様が困ってる。私に聞かれたくない話しでもあるのかな?まあ、二人で積もる話しもあるだろうし、私は配達に行こうかな。確か、三軒隣のマーサさんと冒険ギルドのギルマスの約束は今日だったよね?
「師匠、配達に行ってくるから二人は、ゆっくりしてて下さい」
「は?今日の配達は無かっただろう」
師匠の言葉を聞いて、首を傾げた私の前に伝票を突き出された。よく見ると配達希望に明日の日付が書いてあった。ウソ!間違えて明日の分まで終わらせちゃった……て事は……
「師匠、ごめん。全部終わらせちゃった……私、寝るかも」
「またやったのか!この馬鹿が!」
師匠が鬼の様な赤い顔で怒ってる。修行しても限界が分からない私は、魔力切れを起こさない様に仕事量を調整していた。それなのに間違って二日先まで仕事した私の魔力は多分残り僅かだと思う。決めてたのに、やっちゃった。一時間くらいはまだ、動けるかな?動けるうちに片付けて部屋に戻ろう。
「えーと、勇者様。お見苦しい所をお見せしてすみません。魔力切れになるので失礼します」
「魔力切れ?一体、何をしたんだ?」
えー、説明しないと駄目?そんな時間が勿体無いけど、勇者様を無視する訳にもいかないか。
「仕事、やり過ぎて……魔力切れに……な……」
説明をしている途中で呂律が回らなくなってきた。目が霞んで頭がグルグル回る。あーヤバい……一時間どころか……今、来た。
「もう……むり」
自分の身体を支えてられなくなって、ゆっくりと傾いていく。何かに掴まる物……
「おい!」
勇者様が何か言ってるけど無理、動けない。あれ?床にぶつかると思ったけど……痛くない……?温かいけど……なに?勇者様が掴んでる?
「え?彼女……俺が触ってもなんともない?」
勇者様に触ると……何かにあるのかな?
聞きたいけど私の目の前は真っ暗になって、そのまま意識は溶けて消えた。
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