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しがない男爵家の我が家は、貴族としては下位だが領地は気候が安定し豊富な農作物の育つ土地です。ところが今年の夏。歴史的にも最大級と呼ばれる巨大な嵐に襲われ、雄大な山の裾のに広がる田畑は洪水と土砂崩れで壊滅的な被害を受けました。
領民の命を守る為、領地の騎士団で救助の指揮を取り、我が家に蓄えてあった備蓄食糧を全て放出し、仮設住宅の建設や交通網の再構築等、両親と駆けずり回ってやっと目処がたち半年振りに貴族の子供達が学ぶ学園へ登校すると一組の男女が目の前に立ちはだかり今朝の騒ぎに巻き込まれたのです。
結局、どなたかが先生に連絡して下さり一旦お開きになったのだけど、お二人は納得されなかった様子で現在、学園長室に呼び出されてしまいました。
学園長の勧めでソファーに座ると、向かいに座る彼等に睨まれてしまう。改めてお顔を拝見するけど、どちらも見覚えのない方ね。
「さて、今朝の騒ぎは何事か各々説明して貰おうか」
並べられたソファーの向かい合う私達とは別のソファーに座られた学園長が、深いため息と共に質問をした。
「私はグレーテルが虐められているので、助けたく……」
ハンソン子爵令息が学園長へ虐めを訴える横で、渦中のグレーテルさんは涙を流しながら子息の腕にしがみついていますが、それは目上の学園長の前でする態度では無いと思いますが彼等は一切、気にした様子はありません。それに学園長は王弟です。王族に対する態度ではありませんね。私がそんな事を考えているうちにハンソン令息の話がやっと終わりました。
要約すると政略的な婚約者である私が寵愛を受ける彼女を嫉妬から虐めているという事。領地が大変な時に、そんな暇あるわけないじゃない。学園長も額を押さえて深いため息を吐いていますわよ。
「ハンソン君、先ず君に尋ねたいのだが、君の横に座るその女性は誰だ?」
「彼女はグレーテル・ウォーレ男爵令嬢で、この学園の一年ではありませんか」
「私はハンソン君とアーデン君の入室の許可はしたが、彼女の許可は出していない」
「しかし、彼女は虐めの被害者です!」
「被害者であろうと王族のいる部屋に許可なく入室する事は警備上問題があるとは考えないのかね」
王族と言われてやっとハンソン令息は不味い事をしたと気付いた様で俯き視線を反らしますが、謝罪もなく隣のウォーレ令嬢に退出を促す事も致しません。その幼稚な態度に学園長は侮蔑の視線を向けていますが、これ以上は令嬢について何も言わず本題に入りました。
「では質問を変えよう。ウォーレ君、虐めを受けていたのは何時の話だ?」
「えっと……色々ありすぎて細かい日付までは……」
学園長の質問にしどろもどろになりながら答える彼女は、次第に顔色が悪くなっていく。何一つハッキリした日付を言わない彼女に痺れを切らした学園長が質問を変えました。
「細かい日付でなくて良い。1ヶ月とか一週間とか、それくらいなら分かるだろう」
「あ、はい……に、二週間くらい前に教科書を捨てられました」
「そうか。二週間前で間違い無いのだな」
「た、多分、それくらい前です」
否とも可とも取れる曖昧な答えですが、その日付のお陰で無実が証明されたので私は何も突っ込みません。黙って学園長の言葉を待っていると、何故か彼女に睨まれてしまいました。
「それならばアーデン君では無い。彼女は無実だ」
「な!何故ですか学園長。証拠もなく否定するのは可笑しいじゃありませんか!!」
……この方は叫ばないと話が出来ない方なのかしら?学園長も片手で耳を塞いで不快感を露にするけど、ハンソン令息は気付いた様子はない。私が呆れていると学園長から私が半年間、休学していた事が告げられた。
「は?……そんなバカな。私は聞いていない。婚約者が聞いていないなどあり得ないでは無いですか!」
また、叫んでるわ。本気でこの方の口を塞ぎたい気持ちを飲み込んでから、私は挙手をして学園長に発言の許可を求めた。
「アーデン君、どうしましたか?」
「学園長、すみません。そもそも私に婚約者はいないのですが、この方々は何方とお間違えなのでしょうか?」
「先にそっちを確認しましょう。待ってて下さい」
そう言って学園長が自分の机に戻ると何か書類の束を持って席に戻るとゆっくりと捲り始める。ハンソン令息が私を憎らしげに睨んでいるけど、文句を叫ぶのは不味いと理解しているのか無言で学園長の言葉を待っている。
「えーと確かにアーデン君に婚約者はいません。ハンソン君も届け出はないのでお互い婚約者はいない状態です」
学園長からハッキリと婚約者はいないと言われて安堵で肩の力が抜けたけど、ハンソン令息は逆に慌てていた。ありもしない婚約の破棄を叫んだのだから当然でしょうけど。
「学園長、それは何かの間違いでは」
「これは学園と国に正式に届けられている婚約承認一覧です。貴方は国の書類に不備があるとでも言うのですか?」
「いえ、そういう訳では……」
学園長からの厳しい言葉を受けてしどろもどろになるハンソン令息の横でウォーレ令嬢が何か思い付いた様な表情を見せた。うわ、嫌な予感がするわ。
「きっとその書類が古いわですわ!」
学園長に届く書類が古い訳ないじゃ無いですか。
領民の命を守る為、領地の騎士団で救助の指揮を取り、我が家に蓄えてあった備蓄食糧を全て放出し、仮設住宅の建設や交通網の再構築等、両親と駆けずり回ってやっと目処がたち半年振りに貴族の子供達が学ぶ学園へ登校すると一組の男女が目の前に立ちはだかり今朝の騒ぎに巻き込まれたのです。
結局、どなたかが先生に連絡して下さり一旦お開きになったのだけど、お二人は納得されなかった様子で現在、学園長室に呼び出されてしまいました。
学園長の勧めでソファーに座ると、向かいに座る彼等に睨まれてしまう。改めてお顔を拝見するけど、どちらも見覚えのない方ね。
「さて、今朝の騒ぎは何事か各々説明して貰おうか」
並べられたソファーの向かい合う私達とは別のソファーに座られた学園長が、深いため息と共に質問をした。
「私はグレーテルが虐められているので、助けたく……」
ハンソン子爵令息が学園長へ虐めを訴える横で、渦中のグレーテルさんは涙を流しながら子息の腕にしがみついていますが、それは目上の学園長の前でする態度では無いと思いますが彼等は一切、気にした様子はありません。それに学園長は王弟です。王族に対する態度ではありませんね。私がそんな事を考えているうちにハンソン令息の話がやっと終わりました。
要約すると政略的な婚約者である私が寵愛を受ける彼女を嫉妬から虐めているという事。領地が大変な時に、そんな暇あるわけないじゃない。学園長も額を押さえて深いため息を吐いていますわよ。
「ハンソン君、先ず君に尋ねたいのだが、君の横に座るその女性は誰だ?」
「彼女はグレーテル・ウォーレ男爵令嬢で、この学園の一年ではありませんか」
「私はハンソン君とアーデン君の入室の許可はしたが、彼女の許可は出していない」
「しかし、彼女は虐めの被害者です!」
「被害者であろうと王族のいる部屋に許可なく入室する事は警備上問題があるとは考えないのかね」
王族と言われてやっとハンソン令息は不味い事をしたと気付いた様で俯き視線を反らしますが、謝罪もなく隣のウォーレ令嬢に退出を促す事も致しません。その幼稚な態度に学園長は侮蔑の視線を向けていますが、これ以上は令嬢について何も言わず本題に入りました。
「では質問を変えよう。ウォーレ君、虐めを受けていたのは何時の話だ?」
「えっと……色々ありすぎて細かい日付までは……」
学園長の質問にしどろもどろになりながら答える彼女は、次第に顔色が悪くなっていく。何一つハッキリした日付を言わない彼女に痺れを切らした学園長が質問を変えました。
「細かい日付でなくて良い。1ヶ月とか一週間とか、それくらいなら分かるだろう」
「あ、はい……に、二週間くらい前に教科書を捨てられました」
「そうか。二週間前で間違い無いのだな」
「た、多分、それくらい前です」
否とも可とも取れる曖昧な答えですが、その日付のお陰で無実が証明されたので私は何も突っ込みません。黙って学園長の言葉を待っていると、何故か彼女に睨まれてしまいました。
「それならばアーデン君では無い。彼女は無実だ」
「な!何故ですか学園長。証拠もなく否定するのは可笑しいじゃありませんか!!」
……この方は叫ばないと話が出来ない方なのかしら?学園長も片手で耳を塞いで不快感を露にするけど、ハンソン令息は気付いた様子はない。私が呆れていると学園長から私が半年間、休学していた事が告げられた。
「は?……そんなバカな。私は聞いていない。婚約者が聞いていないなどあり得ないでは無いですか!」
また、叫んでるわ。本気でこの方の口を塞ぎたい気持ちを飲み込んでから、私は挙手をして学園長に発言の許可を求めた。
「アーデン君、どうしましたか?」
「学園長、すみません。そもそも私に婚約者はいないのですが、この方々は何方とお間違えなのでしょうか?」
「先にそっちを確認しましょう。待ってて下さい」
そう言って学園長が自分の机に戻ると何か書類の束を持って席に戻るとゆっくりと捲り始める。ハンソン令息が私を憎らしげに睨んでいるけど、文句を叫ぶのは不味いと理解しているのか無言で学園長の言葉を待っている。
「えーと確かにアーデン君に婚約者はいません。ハンソン君も届け出はないのでお互い婚約者はいない状態です」
学園長からハッキリと婚約者はいないと言われて安堵で肩の力が抜けたけど、ハンソン令息は逆に慌てていた。ありもしない婚約の破棄を叫んだのだから当然でしょうけど。
「学園長、それは何かの間違いでは」
「これは学園と国に正式に届けられている婚約承認一覧です。貴方は国の書類に不備があるとでも言うのですか?」
「いえ、そういう訳では……」
学園長からの厳しい言葉を受けてしどろもどろになるハンソン令息の横でウォーレ令嬢が何か思い付いた様な表情を見せた。うわ、嫌な予感がするわ。
「きっとその書類が古いわですわ!」
学園長に届く書類が古い訳ないじゃ無いですか。
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