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その後の彼ら② side クロード
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「確認をお願い致します」
自分が掃除した場所を上位の神官に確認して貰う。これで汚れが見付かれば掃除は最初からやり直しとなる緊張する時間だ。
「問題ありません。掃除はこれで終わりだ」
「ありがとうございました」
神官の言葉に頭を下げ許可を貰って食堂に行くと相変わらず質素な食事を渡された。ここに入って初めて知ったが、神官は階級に関係なく同じ食事をしている。外にいた時は適当に話を聞いて慰めているだけなんだと思っていた。適当に炊き出しして貧しい人の人気を集める姑息な人達だと。
だけど、現実は違う。
上位の神官を含めた全員で掃除をして聖書を読んで、その後で人の悩みを聞いて答える。炊き出しも栄養を考えバランス良く作られ、食事を受取りに来た人に勉強を教えどん底から抜け出す手伝いをしていた。
自分は何て片寄ったモノを見ていたのだろう。
そう気付いた時、もしかしたら両親は大丈夫と言っていたが、ハリエットは俺を嫌っていたのかもしれないと初めて考えた。それは神殿に入って半年が過ぎ頃の出来事だった。
「クロードさん、お疲れ様」
「やぁ、ダーシー。お疲れ様」
ここに来てから更に一年が過ぎた頃、顔見知りが出来て食事をしながら雑談をする相手が出来た。ダーシーは下級の神官だが貴族出身で礼儀作法も完璧だが、顔に傷跡が残っている人だった。何時だったか小さな頃に怪我をして残った傷跡が原因で家を追い出され、同じ悩みを持つ人の助けになりたいとから入ったと言っていた。彼は貴族が関わる行事をよく担当する。顔は布で隠しているし、礼儀作法に問題が無いかららしい。彼の話を聞いていると今度、結婚式を担当すると言った。
「結婚式では布をはずすのだろう?」
「あぁ、今日はその事で御本人達と対面で話をしたのだが、気さくな人達で私の傷跡何て無いかのように話してくれてね。最後には頭まで下げてくれたんだ」
傷跡が原因で担当を断られた事がある彼は、嬉しいと顔に書いてある。珍しいその貴族の名前を聞いた。
「タリス伯爵様のお嬢様と婿殿だよ。二人で領地に新しい産業を起こした所で、大変なんだそうだ」
「タリス伯爵様……ハリエット様か?」
「そうだよ。知り合いかい?」
「あぁ、昔、かなり迷惑を掛けた方だ。幸せそうだったかい?」
「あぁ、とても幸せそうだったよ」
「良かった」
その一言と同時に涙が溢れた。自分がもっと早く間違いに気付いていたら、今頃、幸せそうなハリエットの隣にいたのは自分だったはずなのに。何処で間違ってしまったんだろう。
「どうしたんだいクロード。具合でも悪いのかい?」
急に泣き出した俺をダーシーが心配そうに気遣いながら背中を擦ってくれる。背中から伝わる温もりが余計に涙を溢れさせた。
すまない、ハリエット。俺は君をどれだけ傷つけたんだろう。今更、謝っても時間は戻らないし何も変わらない。ただ、外の世界から切り離された神殿の中で、君の幸せを祈る事を許して欲しい。
「君はハリエット様が好きだったのかい?」
「……好き……分からない……でも、今更、そんな事関係無いだろう」
「それは違うよ。自分の気持ちは失くならない。思うだけなら自由だ」
「思うだけなら自由……辛いのにか?」
「……時間が掛かるかもしれない。でも、いつか良かったと思える日が来るよ。僕の様にね」
慰めなのか本音なのか分からない彼の言葉に俺は黙って頷いた。
ハリエット、どうか君だけは幸せでありますように
自分が掃除した場所を上位の神官に確認して貰う。これで汚れが見付かれば掃除は最初からやり直しとなる緊張する時間だ。
「問題ありません。掃除はこれで終わりだ」
「ありがとうございました」
神官の言葉に頭を下げ許可を貰って食堂に行くと相変わらず質素な食事を渡された。ここに入って初めて知ったが、神官は階級に関係なく同じ食事をしている。外にいた時は適当に話を聞いて慰めているだけなんだと思っていた。適当に炊き出しして貧しい人の人気を集める姑息な人達だと。
だけど、現実は違う。
上位の神官を含めた全員で掃除をして聖書を読んで、その後で人の悩みを聞いて答える。炊き出しも栄養を考えバランス良く作られ、食事を受取りに来た人に勉強を教えどん底から抜け出す手伝いをしていた。
自分は何て片寄ったモノを見ていたのだろう。
そう気付いた時、もしかしたら両親は大丈夫と言っていたが、ハリエットは俺を嫌っていたのかもしれないと初めて考えた。それは神殿に入って半年が過ぎ頃の出来事だった。
「クロードさん、お疲れ様」
「やぁ、ダーシー。お疲れ様」
ここに来てから更に一年が過ぎた頃、顔見知りが出来て食事をしながら雑談をする相手が出来た。ダーシーは下級の神官だが貴族出身で礼儀作法も完璧だが、顔に傷跡が残っている人だった。何時だったか小さな頃に怪我をして残った傷跡が原因で家を追い出され、同じ悩みを持つ人の助けになりたいとから入ったと言っていた。彼は貴族が関わる行事をよく担当する。顔は布で隠しているし、礼儀作法に問題が無いかららしい。彼の話を聞いていると今度、結婚式を担当すると言った。
「結婚式では布をはずすのだろう?」
「あぁ、今日はその事で御本人達と対面で話をしたのだが、気さくな人達で私の傷跡何て無いかのように話してくれてね。最後には頭まで下げてくれたんだ」
傷跡が原因で担当を断られた事がある彼は、嬉しいと顔に書いてある。珍しいその貴族の名前を聞いた。
「タリス伯爵様のお嬢様と婿殿だよ。二人で領地に新しい産業を起こした所で、大変なんだそうだ」
「タリス伯爵様……ハリエット様か?」
「そうだよ。知り合いかい?」
「あぁ、昔、かなり迷惑を掛けた方だ。幸せそうだったかい?」
「あぁ、とても幸せそうだったよ」
「良かった」
その一言と同時に涙が溢れた。自分がもっと早く間違いに気付いていたら、今頃、幸せそうなハリエットの隣にいたのは自分だったはずなのに。何処で間違ってしまったんだろう。
「どうしたんだいクロード。具合でも悪いのかい?」
急に泣き出した俺をダーシーが心配そうに気遣いながら背中を擦ってくれる。背中から伝わる温もりが余計に涙を溢れさせた。
すまない、ハリエット。俺は君をどれだけ傷つけたんだろう。今更、謝っても時間は戻らないし何も変わらない。ただ、外の世界から切り離された神殿の中で、君の幸せを祈る事を許して欲しい。
「君はハリエット様が好きだったのかい?」
「……好き……分からない……でも、今更、そんな事関係無いだろう」
「それは違うよ。自分の気持ちは失くならない。思うだけなら自由だ」
「思うだけなら自由……辛いのにか?」
「……時間が掛かるかもしれない。でも、いつか良かったと思える日が来るよ。僕の様にね」
慰めなのか本音なのか分からない彼の言葉に俺は黙って頷いた。
ハリエット、どうか君だけは幸せでありますように
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