[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します

シマ

文字の大きさ
上 下
11 / 15

エピローグ

しおりを挟む
 クロード様との婚約を破棄してから半年の交流期間を経て、私はヴォルフ様と改めて婚約した。
 正式な婚約を期にヴォルフ様は騎士団を辞めてお父様について仕事を教わっている。お父様も違った視点からの意見は刺激になると言って楽しそう。クロード様は用事があると言って一度も仕事に同行した事はなかった。お父様がヴォルフ様の本気を感じたと言ってニタニタと笑いながら私を見たので、後でお母様にヘソクリの隠し場所を教えましょう。気持ち悪い笑顔を見せた罰ですわ。



「ハリエット」

 自分の仕事が一段落して休憩がてらお茶を楽しんでいた私を呼ぶのはヴォルフ様。クロード様と婚約していた時には見せなかった優しい笑顔でこちらに向かって歩いて来ます。

「ヴォルフ様の分もお願いね」

 後ろに控えている侍女にお茶を頼むと、頭を下げると一度、厨房にお湯を貰いに向かった。私の横に座ったヴォルフ様と領地の事を話す。特産の木の実の加工品以外に、規格外の木の実で草木染めを提案された。
 厨房に行った侍女が戻り私達の前に新しいお茶が出される。温かいお茶を一口飲んで少し落ち着いてから、彼に理由を尋ねた。

「視察に同行した際に子供に悪戯されてね。熟し過ぎた木の実を投げつけられたんだ」

 笑いながらそう話し出した彼は、木の実の汁で汚れた髪を持っていた白いハンカチで拭いたらしい。木の実は黒に近い色だけど、ハンカチは鮮やかな赤紫色に染まっていた。その色の美しさ一目惚れしたと彼は言う。

「まるで君の瞳の様な美しい赤紫色だったんだよ」

 クロード様から血の様だとかお伽噺話の魔女の様だと言われ嫌だった瞳の色。それを彼は意図も簡単に大好きな色に変えてしまう。彼が懐から取り出し白いハンカチは、所々、赤紫に染まっていて今までに見たことの無い色をしていた。

「あの木の実がこんなに鮮やかな赤紫になるなんて……」

「村の人に聞いたら、一度、染まると落ちにくいから大変なんだそうだ」

「落ちにくい……逆に言えば染めやすい?」

「義父殿と相談して来月、染織の専門家に見て貰う事にしたよ」

 クロード様は結婚したらやると言って逃げていたのに、ヴォルフ様は真っ直ぐに向き合ってくれる。とても楽しそうに領地の話が出来る今の関係が、とても有りがたく貴重な時間だと思います。彼が言った様に廃棄している木の実が新しい産業になるなら、領地は更に活気づきます。明るく楽しい未来を一緒に話せる幸せを大切にしながら、彼と一生涯歩んで生きたいと切に願わずには要られない。

「ハリエット、愛してるよ」

「ヴォルフ様……私も貴方が好きです」

 何時も言われる愛の言葉に初めて私が返すと、彼は目を見開いて固まってしまいました。そんなに驚く事かしら?……初めて言ったから?

「……ありがとう」

 頬を赤く染めてはにかむ彼が可愛く見えた事は私だけの秘密です。



end
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

魅了から覚めた王太子は婚約者に婚約破棄を突きつける

基本二度寝
恋愛
聖女の力を体現させた男爵令嬢は、国への報告のため、教会の神官と共に王太子殿下と面会した。 「王太子殿下。お初にお目にかかります」 聖女の肩書を得た男爵令嬢には、対面した王太子が魅了魔法にかかっていることを瞬時に見抜いた。 「魅了だって?王族が…?ありえないよ」 男爵令嬢の言葉に取り合わない王太子の目を覚まさせようと、聖魔法で魅了魔法の解術を試みた。 聖女の魔法は正しく行使され、王太子の顔はみるみる怒りの様相に変わっていく。 王太子は婚約者の公爵令嬢を愛していた。 その愛情が、波々注いだカップをひっくり返したように急に空っぽになった。 いや、愛情が消えたというよりも、憎悪が生まれた。 「あの女…っ王族に魅了魔法を!」 「魅了は解けましたか?」 「ああ。感謝する」 王太子はすぐに行動にうつした。

その言葉はそのまま返されたもの

基本二度寝
恋愛
己の人生は既に決まっている。 親の望む令嬢を伴侶に迎え、子を成し、後継者を育てる。 ただそれだけのつまらぬ人生。 ならば、結婚までは好きに過ごしていいだろう?と、思った。 侯爵子息アリストには幼馴染がいる。 幼馴染が、出産に耐えられるほど身体が丈夫であったならアリストは彼女を伴侶にしたかった。 可愛らしく、淑やかな幼馴染が愛おしい。 それが叶うなら子がなくても、と思うのだが、父はそれを認めない。 父の選んだ伯爵令嬢が婚約者になった。 幼馴染のような愛らしさも、優しさもない。 平凡な容姿。口うるさい貴族令嬢。 うんざりだ。 幼馴染はずっと屋敷の中で育てられた為、外の事を知らない。 彼女のために、華やかな舞踏会を見せたかった。 比較的若い者があつまるような、気楽なものならば、多少の粗相も多目に見てもらえるだろう。 アリストは幼馴染のテイラーに己の色のドレスを贈り夜会に出席した。 まさか、自分のエスコートもなしにアリストの婚約者が参加しているとは露ほどにも思わず…。

愛していたのは昨日まで

豆狸
恋愛
婚約破棄された侯爵令嬢は聖術師に頼んで魅了の可能性を確認したのだが── 「彼らは魅了されていませんでした」 「嘘でしょう?」 「本当です。魅了されていたのは……」 「嘘でしょう?」 なろう様でも公開中です。

処理中です...