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「それは何方の意見か聞いても?」
重い空気を破って最初に口を開いたのはお父様だった。ヴォルフ様は、その言葉を聞いて苦笑いした。
「家族全員です。祖父母も再教育は無駄だと判断致しました」
「再教育が無駄とは?」
お父様の疑問はもっとだわ。数回しかお会いした事のないあちらの祖父母は穏やかな性格だったと記憶している。そんな祖父母も全く話を聞かないクロード様に見切りをつけたらしい。ヴォルフ様は詳しく語ろうとはしなかったが、かなりやりあったとだけは理解できた。
話を聞いて呆然としている私に、お父様が気遣わしげな視線を寄越した。
「えっと……私の知らない話が多すぎて整理出来ません。ですから婚約の件は今すぐのご返答は致しかねます」
なんとかそう返事をするとヴォルフ様は了承して帰って行った。
クロード様とご家族の間に何があったか分からないけど、ヴォルフ様との婚約は考えなければいけない。それにしても誤解していたとはいえ、今まで話しをした事も無い人と婚約……貴族の責務ですし、結婚は仕方ないですが、せめて会話が繋がる人が良いと考えるのは私のワガママでしょうか?
「ハリエットは、どうしたい?」
ヴォルフ様を見送った後、立ったまま考え込んでいた私にお父様が気遣わしげな視線を向けていた。どうしたい……そうね……
「ヴォルフ様と親睦をはかりたいとも思いますが、クロード様が以外に候補者はいなかったのですか?」
「いや、まだ三人はいる」
「ならば他の候補者にお会いする事は可能ですか?」
今回の失敗は正式に婚約を結ぶ前に交流を持たなかった事に一因があるわ。それなら私は色々な男性の意見が聞きたいし、ヴォルフ様が勘違いに至った原因も知りたいわ。
私の考えをお父様に伝えると、大きく頷いて了承してくれた。お父様は来週から順番に会ってみれば良いと言って、日程を調整してくれると言う。
早速、来週から三人の男性と会う事になった私は、お父様の見る目のなさに大きなため息を吐いていた。
「ハリエット嬢は美しいですね」
一人目は、ウットリと私を褒めるだけで会話が終わる人。領地に興味はなく常に私の傍にいたいと言った。無職希望なんて却下だわ。
「領地の事など夫に任せて大人しくしていればいい。全て俺がやる」
二人目は、法律すら理解出来ずに男尊女卑を押し付けてくる人。大口を叩いた割には執事が持ってきた家計簿の見方すら理解していなかったのですけど正気かしら?
「クロード殿は何をやらかしたのですか?面白い事でもありましたか?」
三人目は、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべてベタベタと手を握り我が家とフォード家のスキャンダルを狙いにくる人。どこに親しくもない、しかも、候補者でしかない相手に家の内情を話す人がいるのかしら。それなのに私が何も教えてくれないと勝手に怒って帰ってしまった。
「お父様……もっとマシな方はいなかったのですか?」
「……すまない」
お母様から睨まれ私から呆れられ、お父様は大きな体を丸めて小さくなっていたい。大きな勘違いをしていたとはいえ、間違いを認め引き際を弁えていたヴォルフ様は一番マトモな男性だった。
「もう一度、ヴォルフ様と話し合ってみたいです」
お父様は弱々しく頷くと、フォード家に交流を兼ねた話し合いの希望を出していた。
重い空気を破って最初に口を開いたのはお父様だった。ヴォルフ様は、その言葉を聞いて苦笑いした。
「家族全員です。祖父母も再教育は無駄だと判断致しました」
「再教育が無駄とは?」
お父様の疑問はもっとだわ。数回しかお会いした事のないあちらの祖父母は穏やかな性格だったと記憶している。そんな祖父母も全く話を聞かないクロード様に見切りをつけたらしい。ヴォルフ様は詳しく語ろうとはしなかったが、かなりやりあったとだけは理解できた。
話を聞いて呆然としている私に、お父様が気遣わしげな視線を寄越した。
「えっと……私の知らない話が多すぎて整理出来ません。ですから婚約の件は今すぐのご返答は致しかねます」
なんとかそう返事をするとヴォルフ様は了承して帰って行った。
クロード様とご家族の間に何があったか分からないけど、ヴォルフ様との婚約は考えなければいけない。それにしても誤解していたとはいえ、今まで話しをした事も無い人と婚約……貴族の責務ですし、結婚は仕方ないですが、せめて会話が繋がる人が良いと考えるのは私のワガママでしょうか?
「ハリエットは、どうしたい?」
ヴォルフ様を見送った後、立ったまま考え込んでいた私にお父様が気遣わしげな視線を向けていた。どうしたい……そうね……
「ヴォルフ様と親睦をはかりたいとも思いますが、クロード様が以外に候補者はいなかったのですか?」
「いや、まだ三人はいる」
「ならば他の候補者にお会いする事は可能ですか?」
今回の失敗は正式に婚約を結ぶ前に交流を持たなかった事に一因があるわ。それなら私は色々な男性の意見が聞きたいし、ヴォルフ様が勘違いに至った原因も知りたいわ。
私の考えをお父様に伝えると、大きく頷いて了承してくれた。お父様は来週から順番に会ってみれば良いと言って、日程を調整してくれると言う。
早速、来週から三人の男性と会う事になった私は、お父様の見る目のなさに大きなため息を吐いていた。
「ハリエット嬢は美しいですね」
一人目は、ウットリと私を褒めるだけで会話が終わる人。領地に興味はなく常に私の傍にいたいと言った。無職希望なんて却下だわ。
「領地の事など夫に任せて大人しくしていればいい。全て俺がやる」
二人目は、法律すら理解出来ずに男尊女卑を押し付けてくる人。大口を叩いた割には執事が持ってきた家計簿の見方すら理解していなかったのですけど正気かしら?
「クロード殿は何をやらかしたのですか?面白い事でもありましたか?」
三人目は、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべてベタベタと手を握り我が家とフォード家のスキャンダルを狙いにくる人。どこに親しくもない、しかも、候補者でしかない相手に家の内情を話す人がいるのかしら。それなのに私が何も教えてくれないと勝手に怒って帰ってしまった。
「お父様……もっとマシな方はいなかったのですか?」
「……すまない」
お母様から睨まれ私から呆れられ、お父様は大きな体を丸めて小さくなっていたい。大きな勘違いをしていたとはいえ、間違いを認め引き際を弁えていたヴォルフ様は一番マトモな男性だった。
「もう一度、ヴォルフ様と話し合ってみたいです」
お父様は弱々しく頷くと、フォード家に交流を兼ねた話し合いの希望を出していた。
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