[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します

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 ヴォルフ様の言葉の衝撃が強すぎて、私は直ぐには動けなかった。無言の私にヴォルフ様は納得していないと感じたのか、勘違いに至った理由を続ける。

 クロード様は家族の前では私がいかに尽くしてくれるか語って『俺は愛されている』と言っていたらしいです。私とのお茶会やパーティーへの出席の後には必ずと言って良いほど言うから、ヴォルフ様は二人の仲を邪魔してはいけないと考えて無言で距離を取っていたなんて……

「貴方達兄弟の目は節穴ですか？」

 話を聞いて最初に出てきた言葉この一言だった。何をどう捉えたら私がクロード様を愛していると勘違いするのよ！
 私の言葉を聞いて今度はヴォルフ様が動かなくなった。恐らく私が言い返すなんて考えていなかったのかもしれないわ。でも、そんな気持ち悪い勘違いは完全に打ち消してしまいたいわ。

「しかし、お茶会等をキャンセルしても夜会で失敗してもハリエット嬢は全てをフォローしておられて……」

「婚約者としての義務感と次期当主としての責任であって恋愛感情等一切御座いません。気持ち悪いから止めて下さい」

 自分で体を抱き締める様に手を回して体を擦る。気持ち悪る過ぎて鳥肌になっている気がしますわ。

「ハリエット、そこまで言わなくても」

「お父様！こんな気持ち悪い勘違いなんて冗談じゃありませんわ！私は最初からクロード様は嫌だと言っていたじゃないですか!!」

 興奮してしまい思わず大きな声になっている私に二人の視線が痛い。淑女としてはあり得ない行動だとしても絶対に誤解されたくないわ！

「大体、考えれば分かる事じゃありませんか！お茶会をセッティングしては潰し夜会に行けば失態を繰り返し反省しない処か、領民を見下すあの態度！あれでは貴族の責務を理解なんてしておりません！」

「領民を見下すとは、弟は何をしたのでしょうか？」

 興奮してお父様にも報告していなかった事をポロッと話してしまった私は、二人の視線を受けて諦めて全てを話した。それはクロード様が珍しくお茶会の為に我が家へ訪れた時の事だった。


『お嬢様、今年は豊作でしたので、こちらをお持ち致しました』

 そう言って村の代表者が持って来てくれた木の実。生では食べられないその木の実は、加工して砂糖漬けにすることで毒と苦味が抜けて美味しく安全に食べられる様になる。その木の実の加工と販売は我が領地の特産であるにも関わらずクロード様知らなかった。
 玄関口で話していた私達の前に遅れてやって来たクロード様は、私と話す領民を見て顔をしかめた。

『毒の木の実を持って来るとは無知なのか？薄汚い平民はさっさと出ていけ！』

 そう叫ぶと領民を脚で蹴り飛ばした。私が慌てて駆け寄ると、領民は腹を抑えて踞り痛みで顔が歪んでいた。それなのにクロード様は唾を吐き気が反れたと言ってそのまま帰って行ったのだ。


「弟がここまで愚かだったとは……破門は確定していますが、野放しにして良いのか……」

"破門"

 その言葉にお父様の肩が揺れた。我が国で家族から破門を言われると、親戚全てを敵に回したと同じとされ親戚の何処の家にも受け入れて貰えない。勿論、身内から完全に切られた人間を他家が受け入れるはずもない。事実上の貴族からの追放処分に当たるほと重たい処分を決定してと聞いて、私とお父様は声が出なかった。