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今日は王弟殿下と約束の日。陛下に婚約のお断りをしてから初めて顔を合わせる日でもある。前回と違ってドレスが勝手に届く事もなく、私は動きやすい綿のワンピースを選んだ。ちょっとお店でランチして帰るだけだし、これで大丈夫でしょう。まぁ、これで子供の相手をしなくて済むと喜んでいらっしゃるかもしれませんね。
メイドから迎えが来たと連絡があり玄関に向かうと、向日葵の花束を持った王弟殿下が待っていた。お礼を言って受け取った花束をメイドに預けて馬車に乗る。今回も同伴者無しにドアが閉まり、思わず殿下を睨んでしまった。
「すまないね。内密の話がしたくて」
「……」
私が無言で話の続きを促すと、コリン殿下が来月、ガーランド辺境伯の元に赴くと知らされた。陛下が煮え切らない態度の殿下に一からやり直しさせると決めたとか。王妃様が止めない様に、出発直前まで極秘扱いになるらしい。
「ガーランド辺境伯の領地と言えば夏は蒸し暑いと聞きますが、暑さの苦手なコリン殿下は大丈夫でしょうか?」
「陛下が心身共に鍛えなおすには苦手な環境に身を置いた方が良いと判断した」
確かに陛下の言う事に一理有りますが、甘やかす王妃様にまで秘密とは何でしょうね。我が子を崖から突き落とす様な厳しさですね。
「それと私も迷惑掛けたね。用でもない限り自宅に押し掛けたりしないと誓う」
「そうですか。私は振り回されないのなら何でも良いので」
「あぁ、それでも君を思う心を赦して欲しい」
「は?今更、何を仰っているのでしょうか」
まだ、子供騙しの様な事を言って私を振り回すのかと思って、再び殿下を睨むと誤魔化しの笑顔は消えて真剣な表情で見詰めていた。
「信じられないのも無理はない。最初の婚約の前に私も打診していたんだ」
衝撃の事実に唖然としている私の前で、殿下は陛下と二人で婿入りする準備をしていたと話す。昨日、陛下も言っていたが伯爵家に王家が婿入りとは釣り合わないと反対意見があり潰すのに躍起になっている間に決まってしまったと。陛下も一度、決まった婚約を無理矢理破棄させては双方に良くないと、承認するしかなかった。
「陛下からも聞きました。ですが、何故、破棄が認められなかったのですか?」
「この話はコリンも知らないのだが、君は隣国に狙われていた。婚約相手がそれなりの地位だったから、相手も手出し出来なかったんだ」
陛下の影を動かすにも準備と理由がいる。隣国に狙われていても決定的な証拠がないうちは、護衛出来なかったらしい。
「一年前ぐらいだったかな。隣国の第三王子の誘拐計画を掴んでやっと直接、護衛を付けられた。大臣達もまさか他国で犯罪を犯すとは考えていなくてね。時間が掛かってすまなかった」
「私……知りません」
「君に伝えると一人で動く気がして私が止めた。私は何を言われても良い。陛下やご両親を責めないでくれ」
「はい……ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
俯きながら謝罪すると殿下の大きな手が私の頭に触れてすぐに離れた。
「すまない。触られるのも嫌だったね。それに事の発端は陛下やローランド先生だから君は何も気にする必要ないよ」
「……」
気にしなくて良いと言われても素直に頷く事は出来なくて、私は店に到着するまで俯いたまま何も話す事が出来なかった。
メイドから迎えが来たと連絡があり玄関に向かうと、向日葵の花束を持った王弟殿下が待っていた。お礼を言って受け取った花束をメイドに預けて馬車に乗る。今回も同伴者無しにドアが閉まり、思わず殿下を睨んでしまった。
「すまないね。内密の話がしたくて」
「……」
私が無言で話の続きを促すと、コリン殿下が来月、ガーランド辺境伯の元に赴くと知らされた。陛下が煮え切らない態度の殿下に一からやり直しさせると決めたとか。王妃様が止めない様に、出発直前まで極秘扱いになるらしい。
「ガーランド辺境伯の領地と言えば夏は蒸し暑いと聞きますが、暑さの苦手なコリン殿下は大丈夫でしょうか?」
「陛下が心身共に鍛えなおすには苦手な環境に身を置いた方が良いと判断した」
確かに陛下の言う事に一理有りますが、甘やかす王妃様にまで秘密とは何でしょうね。我が子を崖から突き落とす様な厳しさですね。
「それと私も迷惑掛けたね。用でもない限り自宅に押し掛けたりしないと誓う」
「そうですか。私は振り回されないのなら何でも良いので」
「あぁ、それでも君を思う心を赦して欲しい」
「は?今更、何を仰っているのでしょうか」
まだ、子供騙しの様な事を言って私を振り回すのかと思って、再び殿下を睨むと誤魔化しの笑顔は消えて真剣な表情で見詰めていた。
「信じられないのも無理はない。最初の婚約の前に私も打診していたんだ」
衝撃の事実に唖然としている私の前で、殿下は陛下と二人で婿入りする準備をしていたと話す。昨日、陛下も言っていたが伯爵家に王家が婿入りとは釣り合わないと反対意見があり潰すのに躍起になっている間に決まってしまったと。陛下も一度、決まった婚約を無理矢理破棄させては双方に良くないと、承認するしかなかった。
「陛下からも聞きました。ですが、何故、破棄が認められなかったのですか?」
「この話はコリンも知らないのだが、君は隣国に狙われていた。婚約相手がそれなりの地位だったから、相手も手出し出来なかったんだ」
陛下の影を動かすにも準備と理由がいる。隣国に狙われていても決定的な証拠がないうちは、護衛出来なかったらしい。
「一年前ぐらいだったかな。隣国の第三王子の誘拐計画を掴んでやっと直接、護衛を付けられた。大臣達もまさか他国で犯罪を犯すとは考えていなくてね。時間が掛かってすまなかった」
「私……知りません」
「君に伝えると一人で動く気がして私が止めた。私は何を言われても良い。陛下やご両親を責めないでくれ」
「はい……ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
俯きながら謝罪すると殿下の大きな手が私の頭に触れてすぐに離れた。
「すまない。触られるのも嫌だったね。それに事の発端は陛下やローランド先生だから君は何も気にする必要ないよ」
「……」
気にしなくて良いと言われても素直に頷く事は出来なくて、私は店に到着するまで俯いたまま何も話す事が出来なかった。
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