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二日に分けて行われた飛び級の卒業試験も終わってのんびりしたいのに、今日は朝からメイドに全身を磨きあげられていた。コルセットをこんなに絞めたの久しぶりだわ……食事出来るかしら。
「ねぇ、これじゃあご飯が食べれないわ。今日はランチであってパーティーじゃないのよ」
「お嬢様、こちらの衣装は王弟殿下からの贈り物なので我慢して下さい」
「は?私のサイズどこで調べたのよあの変態」
メイドに言葉使いを嗜められながらやっと準備も終わり後は迎えを待つだけ。その間に商会から送られてきた乾物を使った新しいレシピに目を通していた。
「砂糖漬けをお菓子に混ぜる……野菜も乾燥してから細かく砕けばお菓子になりそう」
「野菜を菓子に入れるのですか?」
資料を見ながら呟いた言葉にメイドから疑問の声が上がる。そう普通に食事じゃなくても野菜と分からなくなれば、嫌いな野菜も食べれそうな気がする。
「先日の孤児院で、シスターが野菜嫌いの子供に苦労していたの覚えてる?」
「あー、大暴れした男の子ですね」
「そうなの。あの子、野菜を食べないから病気がちらしいのよね。シスターからも相談されていて、お菓子に混ぜて分からなくしたら食べないかしら」
「見た目に騙されそうですね」
メイドも納得したのか大きく頷いてくれた。私達は迎えが来るまで孤児院でも作れるお菓子は何か、作りやすいものは何か意見を出したあった。なるほど、クッキーは良いわね。
「今日はいい天気で良かった」
「ごきげんよう王弟殿下」
「そろそろ名前で呼んでくれないか?」
「ご冗談がお好きですね」
せっかく楽しい話をしていたのに、この男のせいで中途半端に終わってしまった。本当に嫌だわ。どうして体調を崩さなかったのかしら。
「嫌そうな顔をしない」
苦笑いしながらそう言った殿下が手を差し出す。殿下にエスコートされて馬車に乗ると、直ぐにドアが閉まり走り出した。ちょっと待って!同伴者がまだじゃないの!?
「殿下、お戯れは止して頂けます?」
「戯れとは心外だ。私は本気だよ」
「口では何とも言えますわ。キャサリンさんでしかお気に入りの娼婦は。無理に私の様な子供の相手をしなくても良いですよ」
目を見開き黙った殿下から視線を外して窓の外を眺める。何処に行くか聞いていない私は今すぐに帰りたくて仕方なかった。
どうせコリン殿下といいルーベルト殿下といい、陛下に言われて私に気を使っているだけで楽しく会話する事も私の好きな物を聞く事すらしない。上部だけみて本当の私を見てくれる人なんて何処にもいないのよ。
静な車内に車輪が回る音だけが響く。暫く走って馬車が止まった場所は、図書館とカフェが併設された新しい施設だった。ここはまだ開業前のはず……職権乱用かしらね。
「……本が好きな貴女にゆっくり読書と食事を楽しんで貰いたかったんだ」
「楽しむなんてとんでもない。ここは開業前でしょう」
「そこまで知っていたのか……ここのオーナーが私の友人なんだ。食事の味をみて欲しいと頼まれて、君と一緒ならと言ったら快諾されたんだ」
オーナーと友人ねぇ……この腹黒の言う事を何処まで信じていいか判断に迷うけど、オーナーの了承があるなら良いわ。
私は殿下の言葉を全て信じる事が出来ないまま店内に入った。店内には天井にまで届く大きな本棚が壁一面に備え付けられていて来た人を圧倒する。本好きには夢の様な空間が広がっていた。
「ねぇ、これじゃあご飯が食べれないわ。今日はランチであってパーティーじゃないのよ」
「お嬢様、こちらの衣装は王弟殿下からの贈り物なので我慢して下さい」
「は?私のサイズどこで調べたのよあの変態」
メイドに言葉使いを嗜められながらやっと準備も終わり後は迎えを待つだけ。その間に商会から送られてきた乾物を使った新しいレシピに目を通していた。
「砂糖漬けをお菓子に混ぜる……野菜も乾燥してから細かく砕けばお菓子になりそう」
「野菜を菓子に入れるのですか?」
資料を見ながら呟いた言葉にメイドから疑問の声が上がる。そう普通に食事じゃなくても野菜と分からなくなれば、嫌いな野菜も食べれそうな気がする。
「先日の孤児院で、シスターが野菜嫌いの子供に苦労していたの覚えてる?」
「あー、大暴れした男の子ですね」
「そうなの。あの子、野菜を食べないから病気がちらしいのよね。シスターからも相談されていて、お菓子に混ぜて分からなくしたら食べないかしら」
「見た目に騙されそうですね」
メイドも納得したのか大きく頷いてくれた。私達は迎えが来るまで孤児院でも作れるお菓子は何か、作りやすいものは何か意見を出したあった。なるほど、クッキーは良いわね。
「今日はいい天気で良かった」
「ごきげんよう王弟殿下」
「そろそろ名前で呼んでくれないか?」
「ご冗談がお好きですね」
せっかく楽しい話をしていたのに、この男のせいで中途半端に終わってしまった。本当に嫌だわ。どうして体調を崩さなかったのかしら。
「嫌そうな顔をしない」
苦笑いしながらそう言った殿下が手を差し出す。殿下にエスコートされて馬車に乗ると、直ぐにドアが閉まり走り出した。ちょっと待って!同伴者がまだじゃないの!?
「殿下、お戯れは止して頂けます?」
「戯れとは心外だ。私は本気だよ」
「口では何とも言えますわ。キャサリンさんでしかお気に入りの娼婦は。無理に私の様な子供の相手をしなくても良いですよ」
目を見開き黙った殿下から視線を外して窓の外を眺める。何処に行くか聞いていない私は今すぐに帰りたくて仕方なかった。
どうせコリン殿下といいルーベルト殿下といい、陛下に言われて私に気を使っているだけで楽しく会話する事も私の好きな物を聞く事すらしない。上部だけみて本当の私を見てくれる人なんて何処にもいないのよ。
静な車内に車輪が回る音だけが響く。暫く走って馬車が止まった場所は、図書館とカフェが併設された新しい施設だった。ここはまだ開業前のはず……職権乱用かしらね。
「……本が好きな貴女にゆっくり読書と食事を楽しんで貰いたかったんだ」
「楽しむなんてとんでもない。ここは開業前でしょう」
「そこまで知っていたのか……ここのオーナーが私の友人なんだ。食事の味をみて欲しいと頼まれて、君と一緒ならと言ったら快諾されたんだ」
オーナーと友人ねぇ……この腹黒の言う事を何処まで信じていいか判断に迷うけど、オーナーの了承があるなら良いわ。
私は殿下の言葉を全て信じる事が出来ないまま店内に入った。店内には天井にまで届く大きな本棚が壁一面に備え付けられていて来た人を圧倒する。本好きには夢の様な空間が広がっていた。
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