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帰宅すると直ぐに応接室に急いで行くよう促され学園の制服のまま向かえば、王弟殿下が満面の笑みで私を迎えた。
「兄上から話しを聞いて居ても立ってもいられず急に来てしまったよ」
「そうですか。私は疲れているので手短にお願い致します」
私の素っ気ない態度に慌てたのは父。王族に対する態度じゃないかもしれないけど、この王弟は見た目は爽やかで優しい雰囲気を持っているがお腹は真っ黒。笑顔で毒を吐く曲者なのよね。
「その裏表の無さは好感持てます。手紙は読みましたか?」
「えぇ、新たな婚約者にルーベルト殿下をお勧めすると書いてありました」
私が手紙の内容を言うと王弟殿下はニコニコと楽しそうに笑う。父は困惑した顔で手紙を見せて欲しいと言った。王弟殿下も横で頷いたので手紙をそのまま差し出す。中身を読んだ父は暫く無言だった。そうよね。当主の父を無視して直接、手紙が届くのは異常よね。
「お勧めって……強制ではないのかい?」
「えぇ、王命では無く推薦状でしたわ」
私がそう言うと王弟殿下は良くできましたと言わんばかりに大きく頷いた。
「私としては自分の人柄や能力を見てから決めて貰えればと考えています」
そう言った王弟殿下は父の前で私を食事に誘った。親の許可も無く未婚の女性を連れ回す訳にはいかないと、なんとも常識的な模範解答。逆に模範解答が胡散臭いと思うのは、私の性格がひねくれているからかもしれない。
どうしても怪訝な表情になってしまうけど、断る理由もなくて渋々了承する。そんな私を見て父は目に見えて安堵の表情を浮かべた。その後、少しだけで二人で話がしたいと言い出した殿下へ父があっさりと許可を出してしまい今は二人きり。あぁ、本当に面倒臭い人達。
「王家は私をどうしたいのでしょう」
私の直球の問いに殿下は珍しくも表情を崩して目を丸くした。あら、記録したいわ。
「どうしたいね……何故、そう考える?」
「質問に質問で返さないで頂けませんかね。相談役を継続させたいのでしょう」
「それも一つなんだが、君が発案した怪我や病気の人を助ける共同救済制度が議会で承認された」
「なる程、私に指揮させて完成させたいと。それには王家の関係者である方がやり易いと」
「その通り」
良くできましたと頭を撫でようとした殿下の手を払いのけると、私は彼を睨み付けた。
「人をお人形か何かと勘違いされているのですか?私には私の意志があり考えがあります。本当に王家の力が必要だお考えですか?」
苛立ちを込めて強い口調で言えば、殿下は両手を上げて降参を示す。それでも私が警戒していると、やっと重い口を開いた。
「兄上は必要と考えているが、私は必要無いと考えている。世界ギルドに委託して全て任せれば良い。下手に我々が関われば汚職を生む」
やはり実務経験は陛下以上の殿下は、メリットだけでなくデメリットにも気づいた。皆がそうであって欲しいものね。
「私も同じ意見です。ギルドなら既に資産運用の実績もありますから、市民から集めたお金を減らすこと無く事業継続が可能でしょう」
「あぁ、運用に素人の我々や文官が下手に手を出せば破綻は目に見えている」
殿下は腹黒だが話は分かる人だ。これで王家が私に拘る事も無いでしょう。
「だが、婚約の話は別だ」
「は?」
「私なら君のやりたい事が手伝える。一緒に高みを目指せる。温室育ちの甥より役に立つ」
ニコニコと誤魔化す笑顔が消えて真剣な表情の殿下は、唖然とする私に次回に返事を聞かせて欲しいと言い残して帰って行った。
「兄上から話しを聞いて居ても立ってもいられず急に来てしまったよ」
「そうですか。私は疲れているので手短にお願い致します」
私の素っ気ない態度に慌てたのは父。王族に対する態度じゃないかもしれないけど、この王弟は見た目は爽やかで優しい雰囲気を持っているがお腹は真っ黒。笑顔で毒を吐く曲者なのよね。
「その裏表の無さは好感持てます。手紙は読みましたか?」
「えぇ、新たな婚約者にルーベルト殿下をお勧めすると書いてありました」
私が手紙の内容を言うと王弟殿下はニコニコと楽しそうに笑う。父は困惑した顔で手紙を見せて欲しいと言った。王弟殿下も横で頷いたので手紙をそのまま差し出す。中身を読んだ父は暫く無言だった。そうよね。当主の父を無視して直接、手紙が届くのは異常よね。
「お勧めって……強制ではないのかい?」
「えぇ、王命では無く推薦状でしたわ」
私がそう言うと王弟殿下は良くできましたと言わんばかりに大きく頷いた。
「私としては自分の人柄や能力を見てから決めて貰えればと考えています」
そう言った王弟殿下は父の前で私を食事に誘った。親の許可も無く未婚の女性を連れ回す訳にはいかないと、なんとも常識的な模範解答。逆に模範解答が胡散臭いと思うのは、私の性格がひねくれているからかもしれない。
どうしても怪訝な表情になってしまうけど、断る理由もなくて渋々了承する。そんな私を見て父は目に見えて安堵の表情を浮かべた。その後、少しだけで二人で話がしたいと言い出した殿下へ父があっさりと許可を出してしまい今は二人きり。あぁ、本当に面倒臭い人達。
「王家は私をどうしたいのでしょう」
私の直球の問いに殿下は珍しくも表情を崩して目を丸くした。あら、記録したいわ。
「どうしたいね……何故、そう考える?」
「質問に質問で返さないで頂けませんかね。相談役を継続させたいのでしょう」
「それも一つなんだが、君が発案した怪我や病気の人を助ける共同救済制度が議会で承認された」
「なる程、私に指揮させて完成させたいと。それには王家の関係者である方がやり易いと」
「その通り」
良くできましたと頭を撫でようとした殿下の手を払いのけると、私は彼を睨み付けた。
「人をお人形か何かと勘違いされているのですか?私には私の意志があり考えがあります。本当に王家の力が必要だお考えですか?」
苛立ちを込めて強い口調で言えば、殿下は両手を上げて降参を示す。それでも私が警戒していると、やっと重い口を開いた。
「兄上は必要と考えているが、私は必要無いと考えている。世界ギルドに委託して全て任せれば良い。下手に我々が関われば汚職を生む」
やはり実務経験は陛下以上の殿下は、メリットだけでなくデメリットにも気づいた。皆がそうであって欲しいものね。
「私も同じ意見です。ギルドなら既に資産運用の実績もありますから、市民から集めたお金を減らすこと無く事業継続が可能でしょう」
「あぁ、運用に素人の我々や文官が下手に手を出せば破綻は目に見えている」
殿下は腹黒だが話は分かる人だ。これで王家が私に拘る事も無いでしょう。
「だが、婚約の話は別だ」
「は?」
「私なら君のやりたい事が手伝える。一緒に高みを目指せる。温室育ちの甥より役に立つ」
ニコニコと誤魔化す笑顔が消えて真剣な表情の殿下は、唖然とする私に次回に返事を聞かせて欲しいと言い残して帰って行った。
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