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しおりを挟む「ポッター子息、詳しくお話を聞かせ頂きたいので、騎士団までご同行をお願い致します」
私の話を聞いた団員の方がポッター子息に同行を丁寧に促します。まだ、同行を拒否して粘ろうとしていましたが、ターナさんがいつの間にか姿を消していた事に気付くと黙って団員についていきました。本当に迷惑な方々ですわ。ターナさんもこれで終わるとは思えないので、店長に警備員を手配する事を約束しました。自宅警備員の方々に負担は増えますが、暫くは交代で警備にあたらねば危険でしょう。
「シュミットガル令嬢、大変でしたね」
「殿下。いえ、こちらこそご迷惑をお掛け致しました。ところで、どのようなご用件でしたの?」
「あぁ、陛下から伝言を預かっていてね」
「でしたら、中で」
陛下と聞いて人目が無い方が良いかと考え店舗二階の応接室に案内する。ソファーに座り目の前にお茶が出されるのを待って話を聞いた。
「もう、婚約破棄の手続きが完了したのですか?」
「陛下が彼の所業を聞いて腹を立てていたんだよ。君はお気に入りだからね」
お気に入りの言葉を聞いて苦笑いを浮かべる。その言葉は有難いものだけど、そのせいで私の立場は微妙なものになったのだから。それにしても、本来なら書類提出から二週間程掛かる確認作業が一日で終わるとは……
「手続きが速いのは嬉しいですが、調査はどうされたのですか?」
通常、婚約破棄に時間が掛かるのは書類の内容に嘘が無いか調査が行われる為だ。相手に無断で婚約したり破棄しないようにする為の制度なのに、いくら陛下が優先と言った所でこんなに速く終わるはずがないのだけど……
「あー、違和感に気付いた?」
その問いに首を縦に振ると、殿下は眉を下げて話始めた。陛下のお気に入りの私は、王族でもないのに陛下の影と呼ばれる隠密部隊が護衛についているらしい。え?影からの報告書と照らし合わせて間違い無しとなったって……それは……
「職権乱用」
「そう言われても仕方ないよね。でも、大臣達も君の頭脳は国で守るべきって意見でね。上層部の許可もあるんだ」
思わず殿下の前で大きなため息を吐いてしまった。淑女にあるまじき所作ね。元婚約者よりも交流が長く信頼度の高い殿下の前ではどうも気が抜けてしまう。
「陛下のお手を煩わせて、申し訳ありませんでした」
「いや、こちらこそ親が迷惑掛けたね」
その言葉には曖昧な微笑みで返答せずに終わらせた。
「そうですわ。暗い話はここまでにして、殿下もご都合が、宜しければご一緒に試食して頂けませんか?」
重い空気を変えたくて殿下を試食に誘う。本来なら毒味が必要でしょうが、私が先に食べる事で話をつけると護衛からも許可が降りた。
早速、従業員に頼んで試食を応接室に運んで貰うと、二人で意見を出し合う。今日の試食はスムージーと言う外国のトロッとした食感の飲み物だった。
「本来は生の食材を機械で粉砕する様ですが、乾燥野菜と果物と牛乳で作ってみましたの」
「生の食材って他には何も入れないのかい?」
「えぇ、食材の水分で飲み物にするようです。その国では自宅で作って朝食代わりにする方もいるようですよ」
「朝食用とデザート用で中味も変わたりするのかな?」
殿下は興味深いのか次々に質問してくる。その問いに答えながらも、味に物足りなさを感じていた。何かしら……薄い気がするわ。
「この果物は一度、水で戻したのかしら?」
「はい、そのままでは粉砕しきれずに粒が残ってしまって……」
返答する従業員には申し訳ないが、味が薄くなっていることを伝えた。うーん、そうね……
「果物をお酒に漬けて大人用の飲み物にしても良いかもしれないわね。子供用は砂糖水に漬けてみるとか」
あっ!と今気付いたと言う表情をする従業員に思わず笑みが漏れる。彼も違和感に気付いたのね。
「全年齢の飲み物も良いけど大人と子供で分けるのも良いと思うの」
「はい!来週には新しい物をお出し致します!」
「楽しみにしているわ」
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