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しおりを挟む「カルラ!貴様の部下は何だ!教育がなってない!」
私の突然の登場に驚いた表情を見せたポッター子息でしたが、私に向かって指先して叫んだ。
「婚約者でも家族でもない赤の他人に呼び捨てされるいわれわ無いわ」
「は?」
あら?このバカは婚約破棄を理解していないと?……あぁ、服が変わっていないから侯爵家に帰っていないのね。知らなくても良いわ。この際だから徹底的にやり込めてやるわ。
「大体、代金も払わず商品を寄越せ?強盗ですわ。誰か騎士団に通報して頂戴」
「承知致しました」
私の言葉を聞いて御者が通信機を持って連絡する姿を確認すると、改めてバカに向き直った。
「婚約破棄の書類はすでに提出済みでございます。他人の貴方が払わないなんて泥棒以外になんと表現されますの?」
「なっ!ふざけるな!そんな書類にサインした覚えはないぞ!!」
あぁ、もう……この方は一々、大きな声で威嚇して煩くて仕方ないですわ。当主が決めた婚約なのだから当主のサインだけで破棄出来る事を理解していないのね。苛立っているのか片足を小刻みに揺らすポッター子息を、私が静かに睨み付けていると後ろから声が聞こえた。
「あぁ、良かった。追い付いた」
「コリン殿下。外出しても宜しいのですか?」
表れたのはこの国の第二王子で私と同年のコリン殿下。生れつき胃腸が弱く食の細い殿下は病気がちでしたが、我が家の乾燥野菜を用いた療養食がお体にあった様で、この数年でかなりお元気になられました。
「シュミットガル令嬢の商会の野菜が美味しくて、最近は食べ過ぎてしまうくらいだよ」
「それは良かったですわ」
流石に王子殿下との会話の邪魔をしないだけの常識は持ち合わせていたようで、黙って成り行きを見守る二人に視線を向けた殿下はわざとらしいため息を吐いた。
「本当にこんな下らない男が君の婚約者だったとは、焦っていたとはいえ失敗でしたね」
「な、何を仰るのですか殿下!決して失敗など何もありません!この女が!」
「黙れ」
普段は穏やかでのんびりした殿下には珍しい、低く鋭い声でポッター子息の言葉を遮ります。私を背中に隠す様に立たれた殿下は、腕を組んでポッター子息を見下ろしています。
「少し聞こえたが、王家でも代金を払うのに次期当主でもない者が、ただで商品を寄越せとはあり得んな」
「え?あ、いや、そそれは言葉の綾と言いますか、その……え?当主じゃない?」
「君はそんな事も理解していないのか」
殿下が呆れた表情でため息を吐くと、羞恥心からか顔を赤くしたポッター子息が拳を握りしめ俯いた。
「正当な直系の血縁者がいるのにただの入婿の君が当主になれるはずないだろう?」
「…………」
お得意の黙りを決め込む子息に殿下が再び、大きなため息を吐いた時、御者の連絡を受けた騎士団の方々が到着した。殿下に気付いて敬礼をした後、通報者でもある私の前に立った。
「シュミットガル令嬢、強盗とのご連絡でしたが、如何されましたか?」
確認の為だろ騎士団の団員にポッター子息がただで商品を寄越せと従業員を脅した事や、店頭の商品を無理矢理持ち去ろうとしていた事を告げた。
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