1 / 23
1
しおりを挟む
「あら?」
この国には貴族・平民問わず、試験に合格すると通えるサラタル学園がある。幼少期より家庭教師のつく貴族は、試験に落ちたら家の恥とまで言われる。学園に入学出来ない貴族の子供は別で個性と長所を伸ばすため、本人の適正に合わせた留学や研修を受ける事が出来る。そんな学習面に恵まれたこの国は、男女問わず優秀な者が家の跡継ぎとなる。
私、カルラ・シュミットガル。伯爵家の跡取りに決まっている。幼少期から頭の良さに目をつけた教師が国王陛下の知り合いで、将来が楽しみな子供がいると報告してしまったものだから大騒ぎ。
強引な婚約の申込みに養子縁組み。果ては誘拐まで発生したのは参った。頭を悩ませた両親は、父の友人のポッター侯爵の次男を婚約者に決めた。その婚約者が大問題だった。
『バカ』
その一言で全てを表せる。学業はギリギリ、領地経営は適当、商会の運営に携われば横領。次は無いと両家から最後通告があったのは三か月前の話。
そして、今、私の目の前には学園で出会った平民の女性とイチャイチャ。腕を絡ませ唇を重ね、愛を囁いている男女の姿。
「ウィルス様、その方は何方ですの?」
「あ?ゲッ!か、カルラ!」
私が敬称をつけているのに人の事を呼び捨てにするこの男、ウィルス・ポッターがバカな婚約者。そして隣にいるのが最近の彼のお気に入り、ターナさんだったかしら?
返事を待つ私を睨み付けた二人は、お互いに手を取り合い更に体を密着させた。何かしらこのシチュエーション。私はさしずめ愛を引き裂く悪役かしらね。
「黙っていては何も分かりませんわ」
何も答えない二人に痺れを切らして再び問えば、ウィルス様はターナさんを背中に隠す様に庇った。
「煩い!!お前が黙っていれば済むことだろう!」
「私が何故、黙っていないといけないのですか?」
「こ、婚約破棄になったら困るだろう!」
何処か焦った表情で下らない事を言う婚約者に、私はわざとらしいため息を吐くと右手を頬に添えて首を傾げた。
「いいえ、ちっとも困りませんわ」
「なっ!経歴に傷がつくだろう!貴様の様な可愛げ無い女に次は見つからないだろうが!!」
「一々、叫ばないで話せませんか?煩いですわ」
私の指摘にムッとしたものの黙るウィルス様を横目に、彼の背中で震える演技をしながら人を見下すなんて器用な事をする女を見た。本当にバカね。
「婚約破棄になったら困るのはそちらで御座いましょう。私は一向に構いませんわ」
「なっ!女の癖に可愛げない!」
「可愛げがあろうがなかろうが仕事が出来れば宜しいのでわ?」
私が言い返せばまた直ぐに黙って逃げる。全てから逃げ回るこの男には心底愛想がつきた。
「黙っていても何も解決しませんわ。もう良いでしょう。婚約は破棄させて頂きます」
「そっちから破棄するなら慰謝料を払え!」
一々、叫ぶなと言ったのにもう忘れたのかしら。まぁ、関係無いわね。
ギャーギャーと叫ぶ男を無視して私は帰路についた。さて、家に着いたら先ずは婚約破棄の手続きしなくちゃ。
「あら、もうすぐテストでしたわね」
「お嬢様、今回のテスト範囲のノートは如何されますか?」
帰宅の馬車に同席しているのは我が家の従者。今までは婚約者が落第しないように、従者に頼んでノートを写して渡して貰っていたけど、二人で人目も憚らずイチャイチャする余裕があるなら手伝う必要ないわよね?
「必要無いわ。破棄の手続きを優先して頂戴」
「畏まりました」
この国には貴族・平民問わず、試験に合格すると通えるサラタル学園がある。幼少期より家庭教師のつく貴族は、試験に落ちたら家の恥とまで言われる。学園に入学出来ない貴族の子供は別で個性と長所を伸ばすため、本人の適正に合わせた留学や研修を受ける事が出来る。そんな学習面に恵まれたこの国は、男女問わず優秀な者が家の跡継ぎとなる。
私、カルラ・シュミットガル。伯爵家の跡取りに決まっている。幼少期から頭の良さに目をつけた教師が国王陛下の知り合いで、将来が楽しみな子供がいると報告してしまったものだから大騒ぎ。
強引な婚約の申込みに養子縁組み。果ては誘拐まで発生したのは参った。頭を悩ませた両親は、父の友人のポッター侯爵の次男を婚約者に決めた。その婚約者が大問題だった。
『バカ』
その一言で全てを表せる。学業はギリギリ、領地経営は適当、商会の運営に携われば横領。次は無いと両家から最後通告があったのは三か月前の話。
そして、今、私の目の前には学園で出会った平民の女性とイチャイチャ。腕を絡ませ唇を重ね、愛を囁いている男女の姿。
「ウィルス様、その方は何方ですの?」
「あ?ゲッ!か、カルラ!」
私が敬称をつけているのに人の事を呼び捨てにするこの男、ウィルス・ポッターがバカな婚約者。そして隣にいるのが最近の彼のお気に入り、ターナさんだったかしら?
返事を待つ私を睨み付けた二人は、お互いに手を取り合い更に体を密着させた。何かしらこのシチュエーション。私はさしずめ愛を引き裂く悪役かしらね。
「黙っていては何も分かりませんわ」
何も答えない二人に痺れを切らして再び問えば、ウィルス様はターナさんを背中に隠す様に庇った。
「煩い!!お前が黙っていれば済むことだろう!」
「私が何故、黙っていないといけないのですか?」
「こ、婚約破棄になったら困るだろう!」
何処か焦った表情で下らない事を言う婚約者に、私はわざとらしいため息を吐くと右手を頬に添えて首を傾げた。
「いいえ、ちっとも困りませんわ」
「なっ!経歴に傷がつくだろう!貴様の様な可愛げ無い女に次は見つからないだろうが!!」
「一々、叫ばないで話せませんか?煩いですわ」
私の指摘にムッとしたものの黙るウィルス様を横目に、彼の背中で震える演技をしながら人を見下すなんて器用な事をする女を見た。本当にバカね。
「婚約破棄になったら困るのはそちらで御座いましょう。私は一向に構いませんわ」
「なっ!女の癖に可愛げない!」
「可愛げがあろうがなかろうが仕事が出来れば宜しいのでわ?」
私が言い返せばまた直ぐに黙って逃げる。全てから逃げ回るこの男には心底愛想がつきた。
「黙っていても何も解決しませんわ。もう良いでしょう。婚約は破棄させて頂きます」
「そっちから破棄するなら慰謝料を払え!」
一々、叫ぶなと言ったのにもう忘れたのかしら。まぁ、関係無いわね。
ギャーギャーと叫ぶ男を無視して私は帰路についた。さて、家に着いたら先ずは婚約破棄の手続きしなくちゃ。
「あら、もうすぐテストでしたわね」
「お嬢様、今回のテスト範囲のノートは如何されますか?」
帰宅の馬車に同席しているのは我が家の従者。今までは婚約者が落第しないように、従者に頼んでノートを写して渡して貰っていたけど、二人で人目も憚らずイチャイチャする余裕があるなら手伝う必要ないわよね?
「必要無いわ。破棄の手続きを優先して頂戴」
「畏まりました」
312
お気に入りに追加
519
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
不実なあなたに感謝を
黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。
※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。
※曖昧設定。
※一旦完結。
※性描写は匂わせ程度。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~
tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。
ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄ですか?勿論お受けします。
アズやっこ
恋愛
私は婚約者が嫌い。
そんな婚約者が女性と一緒に待ち合わせ場所に来た。
婚約破棄するとようやく言ってくれたわ!
慰謝料?そんなのいらないわよ。
それより早く婚約破棄しましょう。
❈ 作者独自の世界観です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
傲慢令嬢にはなにも出来ませんわ!
豆狸
恋愛
「ガルシア侯爵令嬢サンドラ! 私、王太子フラカソは君との婚約を破棄する! たとえ王太子妃になったとしても君のような傲慢令嬢にはなにも出来ないだろうからなっ!」
私は殿下にお辞儀をして、卒業パーティの会場から立ち去りました。
人生に一度の機会なのにもったいない?
いえいえ。実は私、三度目の人生なんですの。死ぬたびに時間を撒き戻しているのですわ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。
なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと?
婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。
※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。
※元サヤはありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ごきげんよう、元婚約者様
藍田ひびき
恋愛
「最後にお会いしたのは、貴方から婚約破棄を言い渡された日ですね――」
ローゼンハイン侯爵令嬢クリスティーネからアレクシス王太子へと送られてきた手紙は、そんな書き出しから始まっていた。アレクシスはフュルスト男爵令嬢グレーテに入れ込み、クリスティーネとの婚約を一方的に破棄した過去があったのだ。
手紙は語る。クリスティーネの思いと、アレクシスが辿るであろう末路を。
※ 3/29 王太子視点、男爵令嬢視点を追加しました。
※ 3/25 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる