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魔物と魔女編
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ソフィア様がギルドから帰って来たには支部長への報告は終わっていて、そのまま支部内にある食堂で夕食を食べて部屋で休む事になった。支部の中には応援者用の宿泊専用部屋があり、トイレとシャワーまで完備されていた。ソフィア様達から緊急事態に対応出来る服で寝るように言われ、動きやすいズボンとシャツに着替えてベッドに潜った。枕の横で丸くなったミューからすぐに寝息が聞こえるけど、私はなかなか寝付けなかった。
体を起こして膝を抱える様に座り窓の外に視線を向けると、輝く満月が見えた。静かな室内で自分のため息がやけに大きく聞こえた。
『どうして魔女は私を狙うの?何時までもリュカ様に頼っていてはダメだわ。彼は隊長さんで責任のある立場の人で……本当に私が目的?……私は目眩ましで別の目的があるのではないのかしら……』
ソフィア様に相談しようと考えては止めて、再び考えてを繰り返すうちにいつの間にか言葉に出来なくなっていた。夜に一人で考えていると不安で、無意識に触れた自分の手から腕輪の冷たい感触が伝わった。
「魔力封じ……まだ、必要なのかしら」
以前、ソフィア様にこの質問をしたら複雑な表情を浮かべて黙り込んでしまった。その様子から私には教えられていない何かがあると確信したけど、それを私に伝えるつもりがないことも察してしまう。
「……ッ!!」
再びため息が漏れた時、胸を刺すような鋭い痛みを感じて息がつまる。体を前に倒して痛みを逃がしゆっくりと息を吐き出すとすぐに消えて何もなかったように体は動いた。
『……何かしら?今までこんなことなかったのに……!?』
ボンヤリと考えていた私は見えない何かに口を塞がれる。驚いてベッドから降りようとしたけど、いつの間にか黒い何かが体に巻き付いて動けなくなっていた。
「み~つけた」
耳元で聞こえた女性の声にゾワゾワと恐怖で全身に鳥肌が立つ。声の主を確認する間もなく私の視界は暗闇で閉ざされた。
「う……」
頭の痛みで声が漏れる。声が出た事に気付いてゆっくり目を開けると、目の前にはボンヤリと光る大きなガラス容器が幾つも並んでいた。
「え?……な……に?」
「あら、もう起きたの?寝てた方が楽だったのにね」
平坦で感情のない誰かの声。痛みを我慢しながら視線だけ動かすと、白銀の長い髪の女性と目があった。
「無理に動くと辛いわよ。その台は魔法を無効にするから大人しくね?」
口元だけ見れば笑っているのに寒気がする。カチャカチャと音立てて何か作業する女性の後ろ姿を見ながら無意識に動かした腕に鎖が付けられている事に気付いた。
『え?……え?……私……誘拐監禁された?』
自分の置かれている状況を徐々に理解して震えが競り上がる。混乱する頭で周りを改めて確認すると、最初に見えたガラス容器の中に透明な液体と共に黒髪の女性が膝を抱えた状態で入っていた。ユラユラと液体の中で揺れる長い髪は生き物のように動くけど、女性は意識がないのか青白い顔で目を閉じたまま動かない。
「あー、その中身は新しい私よ。そして、貴女もその一部になるのよ」
「は?……一部」
背中を向けたまま言われた言葉の意味が理解出来ない。いや、理解したくなかったけど、並ぶガラス容器の中には内臓や四肢の一部が入っていて自分もバラバラにされる可能性があると気付いて手足の鎖が小さな音をたて始めた。
「あら、死ぬのが怖いの?生きる事に絶望していたみたいだけど?」
疑問符がつく話し方をしていても、有無を言わさない圧力がある。そして、この目の前にいる女性の声を何処で聞いたのかやっと思い出した。
「……氷の魔女」
「気付いたのね……さて、無駄話はお仕舞いよ」
作業する手を止めて振り向いた魔女の手にはガラス容器と小さなナイフ。
「早速、実験を始めましょう」
笑顔でそう言うと私の腕を掴んだ。
体を起こして膝を抱える様に座り窓の外に視線を向けると、輝く満月が見えた。静かな室内で自分のため息がやけに大きく聞こえた。
『どうして魔女は私を狙うの?何時までもリュカ様に頼っていてはダメだわ。彼は隊長さんで責任のある立場の人で……本当に私が目的?……私は目眩ましで別の目的があるのではないのかしら……』
ソフィア様に相談しようと考えては止めて、再び考えてを繰り返すうちにいつの間にか言葉に出来なくなっていた。夜に一人で考えていると不安で、無意識に触れた自分の手から腕輪の冷たい感触が伝わった。
「魔力封じ……まだ、必要なのかしら」
以前、ソフィア様にこの質問をしたら複雑な表情を浮かべて黙り込んでしまった。その様子から私には教えられていない何かがあると確信したけど、それを私に伝えるつもりがないことも察してしまう。
「……ッ!!」
再びため息が漏れた時、胸を刺すような鋭い痛みを感じて息がつまる。体を前に倒して痛みを逃がしゆっくりと息を吐き出すとすぐに消えて何もなかったように体は動いた。
『……何かしら?今までこんなことなかったのに……!?』
ボンヤリと考えていた私は見えない何かに口を塞がれる。驚いてベッドから降りようとしたけど、いつの間にか黒い何かが体に巻き付いて動けなくなっていた。
「み~つけた」
耳元で聞こえた女性の声にゾワゾワと恐怖で全身に鳥肌が立つ。声の主を確認する間もなく私の視界は暗闇で閉ざされた。
「う……」
頭の痛みで声が漏れる。声が出た事に気付いてゆっくり目を開けると、目の前にはボンヤリと光る大きなガラス容器が幾つも並んでいた。
「え?……な……に?」
「あら、もう起きたの?寝てた方が楽だったのにね」
平坦で感情のない誰かの声。痛みを我慢しながら視線だけ動かすと、白銀の長い髪の女性と目があった。
「無理に動くと辛いわよ。その台は魔法を無効にするから大人しくね?」
口元だけ見れば笑っているのに寒気がする。カチャカチャと音立てて何か作業する女性の後ろ姿を見ながら無意識に動かした腕に鎖が付けられている事に気付いた。
『え?……え?……私……誘拐監禁された?』
自分の置かれている状況を徐々に理解して震えが競り上がる。混乱する頭で周りを改めて確認すると、最初に見えたガラス容器の中に透明な液体と共に黒髪の女性が膝を抱えた状態で入っていた。ユラユラと液体の中で揺れる長い髪は生き物のように動くけど、女性は意識がないのか青白い顔で目を閉じたまま動かない。
「あー、その中身は新しい私よ。そして、貴女もその一部になるのよ」
「は?……一部」
背中を向けたまま言われた言葉の意味が理解出来ない。いや、理解したくなかったけど、並ぶガラス容器の中には内臓や四肢の一部が入っていて自分もバラバラにされる可能性があると気付いて手足の鎖が小さな音をたて始めた。
「あら、死ぬのが怖いの?生きる事に絶望していたみたいだけど?」
疑問符がつく話し方をしていても、有無を言わさない圧力がある。そして、この目の前にいる女性の声を何処で聞いたのかやっと思い出した。
「……氷の魔女」
「気付いたのね……さて、無駄話はお仕舞いよ」
作業する手を止めて振り向いた魔女の手にはガラス容器と小さなナイフ。
「早速、実験を始めましょう」
笑顔でそう言うと私の腕を掴んだ。
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