婚約破棄されたポンコツ魔法使い令嬢は今日も元気です!

シマ

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魔物と魔女編

11 side ソフィア

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 部屋を出て支部に戻る二人の姿が見えなくなると、後ろにいるワグナーから大きなため息が漏れた。

「ババァ……フードの中に隠れていたのは竜の子供か?」

「気づいていたのかい」

「あぁ、だが問題はお嬢ちゃんだ……ありゃ、ただのか?」

 獣人は人間よりは感覚が鋭いが言い方が気になるねぇ……

「人間さ。育て方を間違えた……いや、周りの大人に恵まれなかったが正しいかもしれないね」

「どういう事だよ」

「あの娘は幼い頃から呪具で魔力を奪われて育った。毎日、常に体内の魔力の半分以上を盗られたのさ」

「そんな事を続けたら死んじまうだろうが!?」

 そうさ。普通の人間なら魔力が枯渇して死んでしまう。枯渇しないだけの魔力と回復力を持って産まれた事があの娘の不幸の始まりかもしれないねぇ……
 ワグナーにルナの生い立ちを話しながらそんな事を考えていると、急に頭を抱える様な仕草をみせた。なんだい、急に気持ち悪い。

「……俺の見立じゃお嬢ちゃんの身体は数年。竜の子供に魔力を与えてるだけじゃダメだ」

「そうかい……大人のドラゴンが相手ならまだ良かったんだがね。諸事情で子供と契約するしかなかったんだよ」

「それで俺の所に来たのかよ」

「分かってんじゃないか。獣人の知恵でなんかないかい?」

「魔力を使って減らしたところで、お嬢ちゃんの回復力なら変わらねぇのは分かってんだろう。ありゃ手遅れだ」

「そうかい……参ったねぇ」

 獣人の一族に伝わる秘伝の知恵なら何かないかと思ったが無理かい。このままじゃ、もって三年ぐらいかねぇ。

「ババァ、いや大魔法使い様は何を隠している」

 考える事に集中しているとワグナーの鋭い視線が向けられる。やれやれ、ちょっとは待てが出来る様にならないのかね。

「せっかちは命取りだと教えただろう。ルナは魔女の後継者として……依代として狙われているんだよ」

「依代?魔女は何をやる気なんだよ」

「他言無用だ。いくら長寿の龍人とはいえ間もなく魔女の体は朽ちるんだよ。ルナの体を取り込んで再生する気だろうね」

「……取り込んで?さっき依代とか言ったよな」

「あぁ、人間の体のままじゃ魔力に負けてちまうからね。意識だけ乗っ取ったところで無理なんだよ……だから解せないねぇ」

 そう。前から疑問だったんだ。魔女がルナの体を取り込んだ所で人間のままならな器が堪えられない。だが、私が知る限り人間と龍人では、根本的に違い過ぎて混ざるはずはない。

「確かに成人も間近な人間なら自我があるから無理だろうが赤子なら聞いた事があるな」

「赤子……」

「あぁ、自我のないうちに体を乗っ取る闇魔法があるらしいぞ」

「闇魔法ね。それで乗っ取った所で人間の体のままじゃあ意味がないね」

「あ?……そういう事かい。いや、確か……」

 何かしら気になるのか唸りながら考えるワグナーだったが、思い出せないのかため息を吐くと頭を振った。空振り覚悟で来たから仕方ない。魔物の件を解決したら一度、帰って別の方法を探すとするか。

「邪魔して悪かったね。事件が解決したらすぐに帰るから安心しな」

 答えがでない後ろめたさかワグナーが頭を掻いて呻く。ウザったいが心根が優しいコイツにはキツイ話だったかね。

「あぁ、頼むぜ。まぁ、闇魔法の件は詳しいヤツにあたってはみる」

「……そうかい。頼んだよ」

 後味の悪さを感じながらも席を立つと、二人の後を追い掛ける様に部屋を出た。


本当に魔女はルナに何がしたいんだか……

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