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魔物と魔女編
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騎士団の支部からギルドまで馬車で移動するのかと思っていたら、騎士団の裏手にギルドがあって驚いた。騎士団とギルドの間には専用通路も作られていて徒歩で直ぐに移動は完了。私が今まで見てきたギルドは騎士団と良好な関係じゃない所ばかりだったから少し驚いていた。
「珍しいか?」
マスターの言葉に頷くとこの土地ならではの理由があると言う。
「ここは海沿いで海賊や大型の水系魔物が出やすい。その上、嵐が来た日にゃ目も当てられねぇ。そんなんで俺らが仲違いしてりゃ助かるもんも助からねぇからな」
そう話している間には専用通路の終点、ギルドの扉の前に着きドアを開けると多くの冒険者で賑わっていた。
「あ!マスターお帰りない」
「おう」
「マスター、二階の作業部屋に材料は準備しました」
「分かった。俺も一緒に行くから案内は不要だ」
マスターへ次々に声が掛かり答えていく中、カウンターの奥から赤い髪が印象的な少女が顔を出した。
「マスター、人を呼び出しておいてお客様と一緒なんてなんなのよ」
「おぉ、ナナか。お前の涙くれ」
「また?今度は何よ」
「薬を作るのに必要なんだよ。ほれお前の読みたがってた本だ」
二人の会話から"乙女の涙"を彼女から貰うようだけど、本って何かしら?私が不思議に思いながら見ていると、マスターは上着の内ポケットから一冊の本を取り出し彼女に渡した。
「キャー!これ新作じゃない!」
「報酬と別で特別手当てだ。それもやるから協力してくれ」
「はい、喜んで~」
スキップしながらマスターの後ろをついて来るナナさんは、ギルドが運営する孤児院の子供らしい。とにかく涙脆くて特に悲恋物の本は少し読むだけでポロポロと泣くのだとか。ソフィア様は呆れた視線をマスターに向けただけで何も言わない。ナナさんのテンションの高さに目が点になっていた私だけが遅れていて慌てて駆け足で四人の後について行くと、階段を上がって直ぐに作業室と書かれたドアが見えた。
「ここだ。騒がしくて悪いが緊急なんでな」
そう言いながらドアを開けたマスターが部屋の中へと促す。部屋の中には調合に必要な材料と道具が一式揃っていた。
「これを全て浄化薬に出来るか?」
ミューはフードに隠れたままで手伝えないけど、さっき作った感覚を覚えているから一人でも大丈夫そう。何時までもミューに頼っていちゃダメよね。
「はい、大丈夫です」
マスターの問い掛けに私が大きく頷くと、彼は小さく息を吐いて安堵の表情を浮かべた。早速、薬を作る為に鍋に材料を入れ混ぜながら魔力を流している私の横で、ナナさんはマスターから貰った本を読みながらポロポロと泣き出していた。え?本を読み始めて数ページよね?そんな最初から泣ける話なのかしら。
「ルナ、集中」
「は、はい!」
よそ見していたからソフィア様からボソッと指摘されて、手元に視線を戻して作業に集中していると、ナナさんから唸り声が漏れてきた。
「う~」
声を出しながら読み続ける彼女が突然、滝の様に涙を流し始めると、マスターは慣れた手付きで小瓶に涙を集めて私に渡した。
「これで足りるか?」
「じゅ、十分です」
渡された涙を加えて融合させ無事に浄化薬は完成し肩の力が抜けた。
はー、無事に完成してよかった。
「終わりました」
「おぉ、ロス無しか。大したもんだ」
完成した薬を覗き込みながら頷くと、ナナさんに労いの言葉を掛けた後、ギルドの職員を呼んで瓶詰めの指示を出した。自分の部屋へ帰ってゆっくり本を読むと言ってナナさんは笑顔で帰宅し、職員の人達が慣れた手付きで次々に瓶詰して箱にいれると運び出されて行った。
「マスター、作業が完了しました」
「薬は足りそうか?」
「今月分は大丈夫かと思われます」
職員の言葉に大きく頷いた後、一枚の紙を受け取ると私に差し出した。
「今回の報酬だ」
「はぁ」
報酬と聞いて戸惑う私に気づいたソフィア様の眉がピクリと動き、リュカ様の眉間にシワがよる。
「学園でも授業で薬を作ったら報酬を貰っただろう?」
「そうなんですが……その……金額が……」
マスターから受け取った紙に掛かれていた一瓶あたりの金額と学園の報酬で貰った金額の三倍くらい高かったから手が震えてしまう。ソフィア様は紙に書いてある金額を確認してから小さなため息を吐き出した。
「相場より、ちっと高いが驚く額じゃないね。これも学園長が横領していたからね。気にすんじゃないよ」
「あー、そうでした」
ソフィア様の言葉に納得して頷いている私をマスターが不思議そうに見ていた。そんな顔されてもねぇ?
「お嬢ちゃんは何者だ」
マスターの一言にソフィア様が眉を少し動かし不機嫌な表情になった。
「私の弟子だよ。身元確認みたいな事はしなくて良い。用は済んだしお前達は先に戻ってノリスに報告しといておくれ」
了承の返事をしたリュカ様が先にドアの外へ向かう。その後に続いて私も支部へと続く通路を歩き出した。
あれ?何か違和感を感じるけど何かしら……分からないわ。
「珍しいか?」
マスターの言葉に頷くとこの土地ならではの理由があると言う。
「ここは海沿いで海賊や大型の水系魔物が出やすい。その上、嵐が来た日にゃ目も当てられねぇ。そんなんで俺らが仲違いしてりゃ助かるもんも助からねぇからな」
そう話している間には専用通路の終点、ギルドの扉の前に着きドアを開けると多くの冒険者で賑わっていた。
「あ!マスターお帰りない」
「おう」
「マスター、二階の作業部屋に材料は準備しました」
「分かった。俺も一緒に行くから案内は不要だ」
マスターへ次々に声が掛かり答えていく中、カウンターの奥から赤い髪が印象的な少女が顔を出した。
「マスター、人を呼び出しておいてお客様と一緒なんてなんなのよ」
「おぉ、ナナか。お前の涙くれ」
「また?今度は何よ」
「薬を作るのに必要なんだよ。ほれお前の読みたがってた本だ」
二人の会話から"乙女の涙"を彼女から貰うようだけど、本って何かしら?私が不思議に思いながら見ていると、マスターは上着の内ポケットから一冊の本を取り出し彼女に渡した。
「キャー!これ新作じゃない!」
「報酬と別で特別手当てだ。それもやるから協力してくれ」
「はい、喜んで~」
スキップしながらマスターの後ろをついて来るナナさんは、ギルドが運営する孤児院の子供らしい。とにかく涙脆くて特に悲恋物の本は少し読むだけでポロポロと泣くのだとか。ソフィア様は呆れた視線をマスターに向けただけで何も言わない。ナナさんのテンションの高さに目が点になっていた私だけが遅れていて慌てて駆け足で四人の後について行くと、階段を上がって直ぐに作業室と書かれたドアが見えた。
「ここだ。騒がしくて悪いが緊急なんでな」
そう言いながらドアを開けたマスターが部屋の中へと促す。部屋の中には調合に必要な材料と道具が一式揃っていた。
「これを全て浄化薬に出来るか?」
ミューはフードに隠れたままで手伝えないけど、さっき作った感覚を覚えているから一人でも大丈夫そう。何時までもミューに頼っていちゃダメよね。
「はい、大丈夫です」
マスターの問い掛けに私が大きく頷くと、彼は小さく息を吐いて安堵の表情を浮かべた。早速、薬を作る為に鍋に材料を入れ混ぜながら魔力を流している私の横で、ナナさんはマスターから貰った本を読みながらポロポロと泣き出していた。え?本を読み始めて数ページよね?そんな最初から泣ける話なのかしら。
「ルナ、集中」
「は、はい!」
よそ見していたからソフィア様からボソッと指摘されて、手元に視線を戻して作業に集中していると、ナナさんから唸り声が漏れてきた。
「う~」
声を出しながら読み続ける彼女が突然、滝の様に涙を流し始めると、マスターは慣れた手付きで小瓶に涙を集めて私に渡した。
「これで足りるか?」
「じゅ、十分です」
渡された涙を加えて融合させ無事に浄化薬は完成し肩の力が抜けた。
はー、無事に完成してよかった。
「終わりました」
「おぉ、ロス無しか。大したもんだ」
完成した薬を覗き込みながら頷くと、ナナさんに労いの言葉を掛けた後、ギルドの職員を呼んで瓶詰めの指示を出した。自分の部屋へ帰ってゆっくり本を読むと言ってナナさんは笑顔で帰宅し、職員の人達が慣れた手付きで次々に瓶詰して箱にいれると運び出されて行った。
「マスター、作業が完了しました」
「薬は足りそうか?」
「今月分は大丈夫かと思われます」
職員の言葉に大きく頷いた後、一枚の紙を受け取ると私に差し出した。
「今回の報酬だ」
「はぁ」
報酬と聞いて戸惑う私に気づいたソフィア様の眉がピクリと動き、リュカ様の眉間にシワがよる。
「学園でも授業で薬を作ったら報酬を貰っただろう?」
「そうなんですが……その……金額が……」
マスターから受け取った紙に掛かれていた一瓶あたりの金額と学園の報酬で貰った金額の三倍くらい高かったから手が震えてしまう。ソフィア様は紙に書いてある金額を確認してから小さなため息を吐き出した。
「相場より、ちっと高いが驚く額じゃないね。これも学園長が横領していたからね。気にすんじゃないよ」
「あー、そうでした」
ソフィア様の言葉に納得して頷いている私をマスターが不思議そうに見ていた。そんな顔されてもねぇ?
「お嬢ちゃんは何者だ」
マスターの一言にソフィア様が眉を少し動かし不機嫌な表情になった。
「私の弟子だよ。身元確認みたいな事はしなくて良い。用は済んだしお前達は先に戻ってノリスに報告しといておくれ」
了承の返事をしたリュカ様が先にドアの外へ向かう。その後に続いて私も支部へと続く通路を歩き出した。
あれ?何か違和感を感じるけど何かしら……分からないわ。
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